慈恩公国召喚   作:文月蛇

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一応、フェン軍祭編は全部書きあがっているので、どんどん投下していきます。

ジオン軍の新兵器も幾つか出していきます。話の間に説明回を近日中に設けます。







第十五話 フェン軍祭事変

中央暦1639年9月25日

 

 フェン王国は全軍を挙げて、厳戒態勢が敷かれていた。それは戦争状態になった訳ではない。それは国を挙げての一大イベント「軍祭」があるためだ。

 

 

 各要所の城には召集された歩兵と騎兵、及び軍祭に参加する儀仗兵などが配置された。

 

 空にはフェンの制空権をカバーするために、ガハラ神国から派遣された風竜騎士団所属の風竜が飛行していた。ガハラ神国は古来より関係が深いものの、近年の剣王シハンの近代化政策への反発として、竜騎兵の貸し出しという名の親善飛行は最近まで行われていない。だが、今回の軍祭には長年の友好と関係修復のために三騎の風竜が上空を飛行する。何騎かは首都やニシノミヤコなどの比較的大都市に着陸し、見世物となる。多くの風竜は肉を好むため、多くの食事が出来る大都市を選ぶ。また、子供たちにも人気があり、何より子供が好きな風竜にとって今回の親善飛行は楽しみなのである。

 

「フェン王国内に到達。各騎は散開」

 

 

派遣された風竜の指揮官である、風竜騎士団のスサノウは残りの2騎を散開させる。

 

 軍祭は、文明圏外の各国の武官も多数参加し、武技を競い、自慢の装備を見せる。各国の軍事力の高さを見せる事により、他国をけん制する意味合いもある。そのため、参加する部隊の指揮官は情報収集の秘密任務を与えられて情報収集を行う。良識ある列強諸国はこの国際行事に参加するものの、神聖ミリシアル帝国やパーパルティア皇国は参加せず、レイフォルはパーパルティアへの牽制として来たため出禁となり、唯一ムーは平和主義と国際協調を重んじているものの、距離があり関わりが少ないため領事館は置いていないが、いつも海軍と歩兵部隊を連れていき、小規模な演習を行う。また、近年になって剣王シハンの近代化政策から技術的援助も考慮に入れている。そして何よりジオンの動向を気にしている。

 

 

 

 スサノウは、上空から下を見た。

 

 其処にはジオン公国突撃機動軍とロウリア駐屯海上部隊の旗が翻る。新造艦であり、ミノフスキー粒子による電子機器妨害も想定した初のミノフスキー粒子電子戦想定の戦闘水上艦だった。従来の連邦軍海上主力艦をモデルにジオンの有視界戦闘を軸とした重巡洋艦に近い形状を持つ汎用巡洋艦である。大きさは重巡洋艦の様相であるが、MS運用を想定し、最大で三機搭載できる。巡洋艦二隻とMS小隊を組んだ軽戦隊を編成する。

 

そして、地球連邦海軍が所有するヒマラヤ級汎用空母のコピー品アルプス級を就役させ、地上戦力を載せるイオージマ級強襲巡洋艦を配備した。今回は処女航海と練習航海を兼ねており、練度向上のために航行している。

 

・タワラ級巡洋艦『タワラ』

・同  級巡洋艦『キーロフ』

・アルプス級汎用空母『アカギ』

・イオージマ級強襲揚陸艦『イオージマ』

 

の四隻は喫水が深いために、首都の湾内に入ることなく停泊していたが、その存在感は周囲の戦列艦とは全く異なる。別の海域に居るムーの重巡洋艦は重厚な存在だが、ジオン艦艇のそれと比べるとやはり小さい。

 

それを見ていたスサノウは跨っている風竜が着陸できる程の大きさに驚きを隠せない。だが、飛行甲板にはそれ以上の大きさの人型の化け物が立った状態で待っている。

 

「まぶしいな」

 

 スサノウが話したわけではない。相棒の風竜が話しかけているのだ。風竜は知能が高いが、魔導通信機器ではなく「神通力」と呼ばれる特殊な能力を用いて会話を行う。比較的高度の高い場所を飛行するため、普通に会話すると口の中が凍りつく。風竜ならば大丈夫だろうが、人であれば危険である。まるでテレパシーの如く会話する二人(人ではないが家畜ではないので匹ではない)だが、もしフラナガン機関であれば、喉から手が出る程欲しがるだろう。

 

 

「確かに、今日は快晴だ」

 

 

「いや、違う。太陽ではない。あの下の灰色の船から、線状の光が様々な方向に高速で照射されているのだ」

 

 

「船から光?何も見えないが」

 

 

スサノウは海上の船舶を見つめる。その巨大な船は城のようで、驚きを隠せなかった。しかし、其れよりも印象的なのは飛行甲板に立つ巨人の姿。それは一つ目の化け(サイクロプス)のようで、無骨な姿である。

 

 

「フッ・・・人間には見えまい。我々が遠くの同胞と会話をする際に使用する光、人間にとっては、不可視の光だ。何かが飛んでいるか、確認も出来る。その光に似ている」

 

 

「飛行竜が判るのか?どのくらい遠くまで?」

 

 

「個体差がある。ワシは120kmくらい先まで判る。あの船の出している光は、ワシのそれより遥かに強く、そして光が収束している」

 

―まさか・・・。

 

スサノウはその見えない光を自在に操るジオンに驚きを隠せなかった。

 

「まさか、あの船は、遠くの船と魔通信以外の方法で通信出来たり、見えない場所を飛んでいる竜を見ることが出来るのか?」

 

 

 

「分らんが、あの鉄の巨人にも同様のものが出ている。正直、あれには近づきたくない。」

 

 

「なんで?」

 

 

「なんというか、あの巨人のエネルギーは人が使えるものではない!古の魔法帝国のだ!今すぐ攻撃するぞ!」

 

 

「は!え!ちょっとまって!」

 

 

相棒の変貌ぶりに驚きを隠せなかったが、スツーカ急降下爆撃機のように高速で海上に向けて突き進む。

 

 

 

そして、ジオン軍タワラ級巡洋艦『キーロフ』が異常接近する機影を捉えた。

 

 

「方位220、距離30000!高度500の低空より予定コースを外れたワイバーンが接近中!」

 

 

「……まて、あれは友軍のワイバーンだ。レーダー照射するな……」

 

 

「んだこれ!?向こうの機影より、レーダー照射らしき行動を探知!」

 

それは生物がレーダー照射をするという予想外の事態。処女航海と練習航海を兼ねていた彼らは不慣れな事もあり、艦橋に大接近するという危機的状況に陥った。

 

結局のところ、跨るスサノウによる説得とキーロフの致命的な遅い判断によって誤射をすることなく、双方の指揮官の謝罪と後の派遣武官の交流にて両国のわだかまりは解消された。

 

 

ただし、派遣されたガルマ・ザビ大佐は巡洋艦キーロフの艦長を叱咤。ザビ家の叱責により、出世が危ぶまれるかと危惧されたが、その後は順当に戦績を残し、惑星派遣部隊でも『英雄』として高く評価されるに至る。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

剣王シハン天守閣の一番見晴らしのよい場所の手摺に体重を預けていた。アマノキの中心に位置するアマノキ城は代々剣王が統治する城だが、構造は軍事拠点として機能するほか、各省庁の施設や統治機能を有する。そして更に剣王としての権力基盤を固めるための象徴としても役立つ。

 

 

フェン王国の内戦は各諸侯が争う群雄割拠状態だった。それ故に数世代前の剣王はアマノキ城を比較的巨大の城として建設した。それは権威の象徴であり、信長が建設した安土城や秀吉の大阪城、徳川幕府を数百年存続させた権力の象徴である江戸城のような要素を持つ。

 

 

「あれがジオンの戦船か・・・まるで城だな」

 

 

 剣王は正直な感想を洩らす。列強の戦列艦や装甲を施したムーの重巡洋艦を見たことがあるが、其れよりも洗練されたように思える軍艦は非常に強そうに思える。

 

 

「いやはや、ガハラ神国から事前情報として聞いてはいましたが、これほどの大きさの金属で出来た船が海に浮かんでいるとは・・・。」

 

戦士団長マグレブはガハラ神国との会談に出席しており、向こうの外交官から話を聞いていた。ジオン公国の兵は接近戦に疎いものの、パーパルティアのそれらとは全く異なる戦い方をするだろうと話し、ガハラ神国の外交官達は様々な予測計算が可能な「コンピューター」について非常に興味があったようだ。

 

コンピューターは元々、砲弾の弾着予測をするために作られ、次第に暗号文解読や素早く暗号通信を行う端末として、最終的に核の応射にも耐えられるアーパネットシステムが作られ、最終的にインターネットといったものが出来上がった。それらの多くのコンピューターは現在において人々の人口の大地「スペースコロニー」を建設し、生活の場としてコンピューターは欠かせないものとなっている。

 

 

「何度かパーパルディア皇国に行った事があります。ですが、これほどの大きさの船は見た事がありませんし、あの巨人は……」

 

 

彼らの目に映るのは、重巡洋艦クラスに近いジオン軍の新規に設計されたタワラ級巡洋艦「キーロフ」の後部甲板に腰掛ける鋼鉄の巨人。それは海上作戦と陸上作戦を同時に行えるよう、搭載されているのは『MS-06Mザクマリン』

 

作戦によっては地上戦闘を行えるため、半水陸両用MSとしてザクを改修した機体である。推進制御ユニットをランドセルと足に装備され、武器は地上戦用のザクマシンガンとシールドにマウントされたサブロックロケット弾を使用する。シールドはザクのショルダーシールドを三つ付けたような装備であり、これは連邦の先行量産ジムのシールドの運用を考慮したMS開発局がシールドを活用した武装を今回配備した。

 

他にも海上戦闘用にカスタムしたザクⅡJ型やグフ先行量産型が巡洋艦や強襲揚陸艦に配備されている。

 

 

その異様な光景は既に他の観戦武官や派遣武官のめを釘付けにし、それらはフェン王国民も同じである。そのあまりにも大きいそれはフェンの大地を踏みしめると同時に、観衆の叫び声が上がる。だが、その喧騒を割くように巨人に装備されたスピーカーが響く。

 

 

【フェンの皆さん!ご安心ください!これはジオン公国軍所属のMSです!巨人ではなく、人が操縦する船と同じくこれは乗り物なんです!怖がらなくて大丈夫です!】

 

スピーカーから響いたのはなんと、その巨人改めMSに乗っていると思われるパイロットであった。演習場に近い浜辺に強襲揚陸艦は接舷し、搭載されたザクが恐れる観光民や臨戦態勢のフェン戦士へ警戒を解くように言っていた。そして強襲揚陸艦から出てきたのはマゼラアタック強襲戦車やキュイ揚兵戦車、偵察パトロール用として偵察部隊に配備されるワッパなどが登場した。

 

 

「今日の演武はなんだ?」

 

剣王シハンは近くにいた補佐官フジワラに尋ねた。

 

「午前中に陸の場。各国陸戦部隊の演習です。最後にムーの歩兵部隊の戦闘演習、ジオンの降下猟兵部隊の演習を行うとか。あと、ジオンはその際に怪我のないよう周囲の空域を開けておくように指示を出しています」

 

 

「ほう、なぜ?」

 

 

「えー、先のガハラ神国のようにワイバーンの誤射も考慮しなければならず、出来れば万全の状態で臨みたいと要望がありましたのでその通りに致しました」

 

 

「……その時に我々が知る由もないワイバーンがいれば防衛行動にはいるのだろう?」

 

 

 

剣王シハンの言葉の意味を最初は分らなかった補佐官。だが次第に理解し、まさかと思って彼を見ると、不敵な笑みを浮かべていた。剣王シハンは近代化を進めるうえで保守派の戦士団の重鎮や何名かの戦士から非難を浴びていた。それらを説き伏せ、時には剣によって叩き潰してきた政治家である。

 

あえて、ジオンにはパーパルティアの攻撃が来る可能性が高いことは予め教えているはずもなく、王として謀略を行ったに過ぎない。

 

 

彼は上機嫌のような様子で会場に赴くため、階段で降りていく。秘書官は彼の冷徹な一面を感じ、並々ならぬ恐怖を感じていた。

 

 

 

 

「これより中央暦1639年第30回、フェン王国大軍祭を開催いたします!」

 

 

その声と共に市井から歓声が挙がり、喧騒に包まれた。まず一つがフェン王国儀仗兵による行進が始まった。

 

「甲戦士隊、前進!」

 

フェン王国軍の儀仗兵と常備戦士団から抽出された精鋭の甲戦士隊は一糸乱れぬ歩調によって前進する。日本人なら参勤交代にも思えたが、長く延々とやるものではなく、5~7人の横隊が並んで街中を軍隊行進するようで、それはパレードに近い。軍祭は元々、諸侯の各軍を首都に巡邏させる事業であり、各地方の武辺者の演武を行う祭りであった。しかし、先代の剣王から諸侯の軍事力は王に集中。日本の参勤から軍事パレード、その後は各軍の交流場所とした国際行事として発展したのだ。

 

フェン王国兵はまるで近代歩兵の軍事パレードのように行進し、騎馬隊や弓兵、特別編成された少数の火縄銃兵が続く。

 

かれらの装備は戦国時代の日本の鎧、当世具足に近い。以前まではこれほどまでの装備ではなかったが、フェンの近代化政策の一環により、こうした海外の文化風潮、装備に至るまですべてではないが、フェン流にアレンジがされており、フェンと同じような文明を持つ国々の観戦武官はその様子に感心していた。

 

多くの国の部隊は別々に設けられた駐屯地から演習場に向かうまで、パレードのように行進を行う。多くはフェン王国の国威発揚もあったが、他国の部隊もかれらに賛同して、首都凱旋を行っている。ジオンからすると異国の軍隊が行進することは「占領軍行進」とかつての連邦圧政を思い出す。フェンの王国民から石でも投げつけられるのではと恐れていたが、他の部隊も同様に行っても歓声が聞こえているため、ジオン将兵は胸を撫で下ろしていた。

 

文明圏外国家と侮られていた諸外国の将兵の行進であるが、彼らはここで自分達の自信をつけて帰っていく。また、様々な文化的交流や列強参加の場合は彼らとのパイプ作りに余念がない。数か国の行進と演習場での一線の後ジオン公国の行進する部隊が整列する。

 

彼らの装備はジオン軍陸戦部隊に見られる普通の軍服であったが、ところかしこに旧ドイツ軍装備に似たものが見えたが気のせいだろう。

 

彼らの微章はキシリア率いる突撃機動軍海兵隊であり、かつてないほどの精強さを見せていた。

 

ジオン公国海兵隊

 

その名前はデラーズ・フリート時には悪名の付く部隊名であり、兵隊やくざや追剥の類のような意味合いがあった。海賊をメインとするシーマ・ガラハウ中佐指揮下のシーマ艦隊の悪名は地球圏に浸透しており、海兵隊=悪とも言われるほどだ。そうなった理由として、シーマ艦隊の九割以上がサイド3マハルの住人で占められ、コロニーレーザーとして改造された故郷に帰るわけにもいかず、本来の指揮官アサクラ大佐の嘘の告発の元、終戦時のガラハウ指揮下の艦隊がアクシズ行きを願ったにも関わらず、拒否された経緯がある。

 

時代と悪意に翻弄され、生き残るために手段を選べなかった不幸の部隊がジオン軍海兵隊だった。

 

しかし、地球消失によって彼らの運命も大きく変化した。

 

コロニーへ神経ガスを注入する任務を受けたアサクラ大佐はギレンの命令によって指揮する手はずであったが、アサクラ自身は部下のシーマ少佐の独断によるものという策略を行っていた。ギレンもアサクラの二枚舌と証拠隠滅能力に着目していたが、公王と総帥、そしてキシリアとの一件から殺戮作戦は無くなることになった。

 

 

そこで問題になったのはアサクラ大佐の証拠隠滅である。何故か、シーマ少佐が催涙ガスを「アイランド・イフィッシュ」内部に打ち込み、無力化するという作戦が漏れた。それは現存するハッテ政府にも伝わり、事実確認と作戦についてジオンへの抗議を行い、様々な調査を行って判明したのは、催涙ガスが神経ガスという事実であった。

 

ハッテ指導部とジオン本国でも大きく取ざたされ、国際問題に発展。シーマ少佐も拘束される事態となる。だが、事態は大きく好転する。

 

シーマ少佐の告発により、アサクラ大佐の行動が暴露される。主張は催涙ガスと知らされていたという一貫したものだったが、アサクラ大佐の主張と全く異なっていた。また、多くの功績が部下から奪い取ったものであり、その他にも汚職や違法行為を部下に擦り付けていた事実が露呈した。これに対して、キシリアも呆れた様子でアサクラ大佐を処刑。シーマを中佐に昇進させ、海兵隊の実働的指揮官へ正式に就任させた。

 

 

あの(デラーズ・フリート紛争)は兵隊やくざの集いだったが、今は違う。ジオン軍海兵隊は誇り高い殴り込み部隊として精鋭化。「Semper Fi!(常に忠誠を)」「一度海兵隊に入隊したなら、除隊しようとも一生『海兵隊員としての誇り』を失わず、ジオン軍人の模範たれ」というような標語を作った。正にジオン軍人の模範となる人間の育成であり、二度とヤクザモノとは言わせない。

 

ジオン海兵隊と聞けば、真っ先に戦場に派遣され、他の部隊よりも先に敵を撃滅する殴り込み部隊。こじゃれた赤い軍服を身にまとう貴公子とは程遠い汚泥と硝煙に塗れた戦いをする彼らであるが、それこそ彼らが求める戦いである。ジオン国内で海兵隊と聞けば畏怖と尊敬の眼差しを向けられるだろう。

 

数年後には「精強な海兵隊」として知られるようになるのは未来の話。

 

荒くれ者のイメージが払拭されたジオン海兵隊は一糸乱れぬ行進を行い、その宇宙世紀の歩兵の姿を現した。演習場に入ったジオン海兵隊の行進を見ていた各国観戦武官達の詰める貴賓席には、多くの外交官や武官がそれを見ていた。

 

 

「ジオン公国とはすばらしい軍をお持ちだ」

 

 

「あれは、ムーの機械荷車か?」

 

「あ、あれは砲が乗っているのか?」

 

 

彼らが見るそこには公国軍の主力戦車HT-01Bマゼラアタックと八輪型兵員輸送車が一列となって動き、サムソントレーラーに積まれたMS-06Fが見えた時、人々は驚いたような声が響き渡った。

 

「すっげぇ!鋼鉄の巨人だ!」

 

 

「ねぇ!母さんあれ動くんでしょ!」

 

一般民衆はそれを見て様々な反応を見せる。多くは興味津々な者ばかりであり、それは剣王シハンによる教育の均等化や本人自身も傾奇者(カブキモノ)と称されることから、新たな知識や物を取り込む姿勢は国民に浸透しているのだった。

 

 

だが、サムソントレーラーが演習場に到達すると、ザクⅡはゆっくりとその巨体を立たせた。

 

 

「すげぇ……」

 

 

 

「た、立った……」

 

 

ザクの排気口から水蒸気を吐き、モノアイが動作確認するように左右に動き、強く発光する。それはどこかの国の神話に出てくる一つ目の怪物(サイクロプス)やデイダラボッチのような妖怪に見え、観衆は息を飲んだ。

 

 

 

【今日はこのような場を設けていただきありがとうございます!私はジオン公国突撃機動軍所属のフランシー少尉です。ジオン軍の陸上戦闘の開設は私が承ります!】

 

 

演習場の端、貴賓席や軍関係席の方々への説明と民衆の説明であったが、演習は直ぐに始まった。

 

 

パトロール偵察小隊に所属するワッパは周囲を警戒しながら前進する。

 

 

【今回の演習は未確認的勢力の排除といったものです。基本的なジオンの展開なので見ていただけたらと思います。まずワッパによる偵察によって標的は馬馬車と武装する歩兵数名だと分かりました。……おっと、パトロール隊は敵の歩兵に発見されてしまいました】

 

 

アナウンスが響き渡った。とはいえ、標的の所にあるのはフェン王国の古い鎧を着た案山子である。すると、ワッパに乗っていた偵察兵が叫ぶ

 

 

「敵に見つかった!牽制射!てぇ!」

 

後退行動の一環としてマズラMG74/S機関銃は標的の案山子へ一斉射する。銃弾はそのまま案山子へと集中する。

 

 

これ以降、この軍祭は観戦武官の忘れられない日になった。

 

 

一気に 1,200-1,500発/分もの銃弾が立て続けに発射され、案山子はハチの巣のようになってしまう。フェンの古い鎧などどこにも見当たらず。完全に接敵で敵の歩兵能力をすべて削いでしまった。

 

 

【こちらパトロール!敵の物資輸送隊を発見これより……いや、敵の本陣を発見。緊急即応部隊を寄越してくれ!】

 

【こちら戦闘HQ了解、これより攻撃部隊を送る待機されたし。】

 

 

 

【パトロール隊ワッパの役割は主に偵察とパトロールになります。彼らは敵の輸送隊の位置を特定し、また敵の本陣をみつけることができました。これはチャンス、突っ込むしかありません。本部は彼らの報告を受け取り、戦車隊を出していきます】

 

そして整列されているマゼラアタック3両は目標である三つのテントと申し訳なしに指している案山子を標的とした。

 

 

【第一戦車隊、前進!】

 

マゼラアタック一号車の車長はヘッドセットから叫びに近い号令を出し、その彼の元、マゼラアタックは到達地点に移動する。

 

【目標を目視で確認。これより敵への砲撃を開始。】

 

【弾種・演習榴弾!照準よし、撃ぇ!】

 

 

砲手の号令と共に三両のマゼラアタック戦車は発砲。次の瞬間、仮想標的であるテントと案山子は吹き飛ばされた。炸薬を最低量にしたそれらの爆発は戦車榴弾(HEAT)などと比べれば見劣りするが、周囲の観衆の安全を配慮したものである。しかし、その破壊力は観客の度肝を抜き、観戦武官や外交官はそこまで驚くことはない。

 

 

だが、そこからが問題だった。

 

発射され、排莢された薬莢がはじき出され、新たに砲弾が自動装てんされる。その間わずか一秒から二秒。連射を目的として作られておらず、155㎜という比較的砲弾は大きいため、速射に向かない。だが、自動装てん装置によって限りなく早い速度で連射が可能となっている。二射三射と放たれると、そのたびに観戦武官の顔色は青くなっていく。

 

 

 

野砲について補足する。そもそも、火薬が発明されて以降、その破壊力や敵への示威行為によって中世から使われている。大砲は投石器の延長線の兵器であり、攻城戦や野戦・海戦などに用いられる。そこで野砲は後方支援兵器として扱われ、如何にその火力をぶつけるか数百年以上研究が続けられている。砲弾は前装填式から後装填式、弾着後に爆発する榴弾といったものは十九世紀末に開発されるが、今回使った演習用榴弾は爆発の範囲を減退したものであるため、先込め式の古い野砲でも同じような爆発をするだろう。

 

だが、毎分3~40発も放つ野砲はムーであろうとも存在しない。立て続けに放たれる砲弾は観戦武官と外交官のプライドなどを全て打ち砕く。もはやジオン公国の彼らが張りぼての軍隊だと罵ることや中傷することはない。

 

 

そしてムーの外交官と観戦武官は最早立っていられない程の衝撃を受けた。もし、文明圏外国家であればその技術力や自身のテクノロジーを比べる必要もなかっただろう。しかし、ムーは20世紀のテクノロジーを保有する。既に航空力学の基礎を学び、機甲部隊や機関銃といった兵器も所有している。そんな彼らがジオン公国の能力を理解できない筈はない。

 

 

「なんて速射能力だ……」

 

 

「至急、本国に!」

 

 

だが、ムーの衝撃は終わらない。

 

 

【敵の拠点を破壊。しかし、敵部隊はさらに戦力を投入します。さー、ここで出てきたのは地上戦力でも最強と謡われる地竜です。……それっぽく作りました】

 

 

一般民衆の観客は笑いに包まれる。そこにあったのは、ジオンのボランティアが頑張って作った張りぼてである。なんとか、恐竜図鑑のそれから頑張って作ったらしく「海兵隊工兵一同」とサインが施されている。すでに指揮官のシーマ・ガラハウ中佐は叱咤の目線を工兵に向けているが、実物を見たことのない彼らにそれは無茶というもの。

 

フェン王国の人間とて、地竜は配備されていないが、軍祭に招かれた他国軍の配備されている地竜をみたことがあった。

 

 

【さて、それに対するはわが軍の主力兵器ザクⅡ!わが軍の勇士をとくとご覧あれ!】

 

 

 

「おぉぉ!」

 

 

驚きの声が木霊する。

 

 

直立不動の緑の巨人が歩く。

 

それは人知を超えた化け物のようで、実際は人によって作られた鋼鉄の機械。中には神の炎(原子力)が宿り、人の住めない漆黒の空間で真価を発揮する。その巨体は一歩ずつ大地を踏みしめ、フェンの大地を揺らしていた。

 

 

【このザクⅡは宇宙空間、つまり星々の間を戦うために作られた……】

 

解説するフランシー少尉であるが、見ている観客にそんなことは耳に入らない。目の前で起きていることが事実なのか、信じられないような目線を送る彼らであったが、ザクは持っていたM-120A1ザクマシンガンを構えた。

 

標的は先の地竜。

 

 

先のマゼラアタック以上の発砲音と速射能力を上げたザクマシンガンは爆薬量を減らした演習弾を放った。

 

120㎜弾が地竜の張りぼてを切り裂き、小さい爆発が起こる。小さいクレーターが形成され、連射された弾が無数の破壊を引き起こす。排出された殻薬莢は今回の演習用に作られた袋に落とされ、観衆に飛んでいかないようになったが、見た目が非常に悪くなっていた。

 

だが、見ていた観衆にはそんなことなど関係ない。

 

 

地上最強戦力の地竜を吹き飛ばし、鋼鉄の足が大地をゆする。

 

神々の天地から降りてきた巨神が哀れな人へ鉄槌を下すような光景に人々は恐怖した。

 

 

瞬く間に仮想標的が粉砕され、粉々になるジオン海兵隊工兵作の地竜。砕け散る木片と大きくえぐれたクレーターはザクの強さを物語っており、その演習後、ジオン公国への『ペテン師』『嘘つき国家』の中傷は誰もしなくなった。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

軍祭、午後の部として各国海軍の軍事力を見せつけるため、多くの軍艦がアマノキ湾に集結していた。その様子を見ていたタワラ級巡洋艦タワラの艦長、アダムス大佐は周囲の海域と首都の空域の監視に務めていた。

 

 

旧時代のイージス艦をイメージし、対空能力を他の巡洋艦よりも高いタワラはMS搭載能力を犠牲にして、VLS発射装置と高感度のレーダーシステムを搭載する。防空護衛艦としての能力と艦隊の防空主軸となるように設計された。元々、タワラ級は汎用護衛艦として設計され、各武装はモジュールによって換装が可能となる。

 

 

アダムス大佐は元々連邦宇宙軍の人間であり、ジオン・ズム・ダイクンのコロニー国家建設と富国強兵思想からお願いされ、ムンゾ国防軍の宇宙艦隊設立のために尽力した。ぎりぎりジオン公国建国後、ダイクン派として粛清される前に引退しており、今回はジオンでも数少ない『海軍将校』だったことがあるため、退役軍人だったにも関わらず、教官兼艦長職を任命されている。

 

 

多くのダイクン派、所謂共和制を奉ずる原理主義者からすれば現在のジオン公国に仕えようとはしない。仮に仕えてもザビ家と刺し違えるつもりで働く謀反者である。

 

 

アダムス大佐は仇であるデギン・ザビに招聘され、説得される。再び、スペースノイドとして戦ってほしいと言われ、再び戦場に戻った彼であったが、宇宙に彼の居場所はなく、ジオンの海軍兵力育成のための数少ない教官としてタワラ級一番艦艦長に就任していた。

 

 

「で、ハウフトマン少将の話は本当なのか?」

 

「幾つかの外交筋からもパーパルティアが示威行為を行うという情報があります。それに……」

 

副長の若い少佐は持っていた電子紙の衛星からの映像をアダムス大佐に見せる。それにはフェン王国へ向かう22隻の艦隊が映されていた。

 

 

「我が艦隊の攻撃能力は想定されていた数値より少ない。それは誰の目から見ても明らかだ。あのガハラ神国の風竜だったか?あれの急接近を許すなどあってはならないことなのだからな」

 

アダムス大佐は老人の口うるさいところが非常に多く表面化している軍人である。だが、彼の言っている事は一理ある。それは彼の話すガハラ神国の急接近はあってはならないこと。あれは風竜の暴走であるとされて実害もなかったのだが、最新鋭のジオン軍艦は兵の練度不足であることが露呈した。

 

絶対防衛圏内というものが存在し、阻止限界圏ともいうそれは、被害を受ける範囲内を指し、其処に入れば必ず船に被害が出ることから呼ばれている。太平洋戦争中にアメリカ軍の神風特攻の恐怖から様々な教訓が取られ、未確認機がその圏内に入れば撃墜もやむなしという風潮が生まれた。

 

ジオンもそれらを受け継ぎ、仮に攻撃機であったなら同じタワラ級巡洋艦である、汎用巡洋艦キーロフは轟沈していただろう。

 

 

キーロフの遅かった判断を戒めるような空気になった時、艦橋とCICが一体化したそこにレーダー観測員の叫びが響く。

 

 

「艦長、西に約4000m先に不明機接近中!」

 

 

「ようやく来ましたね、IFFと衛星照合は?」

 

 

「IFF反応なし!衛星照合も取れません。赤外線映像から生物と見られます。」

 

 

アダムス大佐はフェン王国に参加する部隊がその空域にいるとは聞いていない。事前にもらっている資料にも書かれておらず、航空戦力はムーとガハラ他数か国のみ。そして、臨時管制塔からのデータ送信から、フェン王国周辺の空域の様子は全て掴んでいた。

 

 

それ故に、その未確認物体10機は赤文字で「UNKNOWN」と表示され、艦橋の天井に位置する巨大スクリーンは、タワラを中心に首都全ての空域をカバーするに足る範囲を確認していた。

 

 

「フェン王国へ照会を急がせろ。どの道、首都防空圏内に入ったら問答無用で撃墜する事を外交筋……いや、陸の担当官に教えておけ」

 

 

しかし、フェン王国が撃墜するよう要請するわけにもいかない。それがパーパルティアだと分かったとして頼むわけにもいかず、自国への懲罰攻撃とは口が裂けても言えるわけもなく、「知らない」と答えるしかない。

 

 

そして、第三文明圏を崩壊させる序章の始まりだった。

 

「対空戦闘用意!」

 

 

 

 




補足として、タワラ級巡洋艦は種ガンダムより持ってきました。

形状は歪ですが、艦橋がせりあがったタワラ級と考えていただけると幸いです。

誤字脱字頑張って修正しますw

ご感想頂けますと、「嘘だといってよバーニィ」と言って執筆速度ががん上がりします。
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