慈恩公国召喚   作:文月蛇

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サブタイってどうやって書けばいいんでしょう?

サブタイだけは何を書けばいいかわかりませんw

戦闘回は次回です

※スランプ&三か月ぶりの投稿で、文章がやや変。今後修正予定です。大目に見ていただければ幸いです




第二十六話 エストシラントの屈辱

結論として、ジオン公国の使節団本部が窓口を引き払うことは無かった。逆にカイオスの私兵が使節団本部を武装親衛隊と共同警備し、カイオス経由で格安の両替商に引き合わせてもらい、低コストで外貨を得られることに成功する。

 

カイオス自身、腐敗した官僚や皇国民と同じく人間である。目の前の利益を目にすれば、もっと欲しいと思うにきまっている。加えてジオン公国の優れた機械文明の片鱗を味わえば抗うことは出来なかった。

 

戦争の可能性がなく、ジオンとの国交が成立すれば、皇国有数のカイオス中心の巨大資本ができる。目的のための手段が『金』であるが、手段と目的が混ざり合う者も少なくない中、カイオスは哲学者的思考を持っているために、商人や資本家のような思考はなく、むしろ護衛の給与の面や国家監査軍再編のための装備調達、また予備役の雇用の確保のため、新たな事業の拡大など、人生の大半を軍人として生きてきた老体とは思えないほど生き生きしていた。「第二の人生を得たり」というレベルの動きであり、その行動はジオンの製薬会社が作ったエナジードリンクが原因だとか。

 

 

 

関係修繕に向けて進み、もしかしたら戦争は起こらないかもしれないという考え方は使節団とカイオスの脳裏の隅から全体に広がっていく。だが、時代の流れに逆らうことは到底無理なことだった。

 

 

 

会談から二週間後。

 

 

フェン王国洋上には多くの艦艇が犇めき、敵岸に向けて航行する大艦隊の姿があった。

 

パーパルティア皇国大陸軍の部隊である。本来であれば、大陸軍の性質上ここまでの艦隊を運用することは無い。だが、国家監査軍の艦艇と水兵を借り、揚陸艦の数は非常に多い。護衛艦隊は国家監査軍が使用する艦艇以上に整備された装甲艦が配備され、高出力魔導炉を使用する。そのため推進力は従来の機関と比べて早く、帆船に動力部品を取り付けた軍艦と比べれば最新鋭の軍艦だといえるだろう。

 

他にも、航空戦力であるワイバーンロードと呼ばれる非常に大きいワイバーンを配備し、攻撃力は一般的なワイバーンの30倍程。正に最新鋭の航空戦力を艦隊に有し、これを乗せる大型竜母艦は5隻を有する。

 

一度、国家監査軍の東洋艦隊が全滅している以上、これまで以上の戦力を投入することは定石。圧倒的な艦隊によって敵を撃滅し、敵の王都に自国の旗を翻す。将軍シウスは物量により敵を圧倒、皇国が敗北した事を挽回し、泥を塗ったことを後悔させなければならない。パールネウス共和国時代から、フェン王国は近海での海賊行為や暗殺など数々の妨害工作を行っていた。近隣のガハラ神国の支配地域もあるため、手出しがしにくく、舐められた態度をとっていた。だが、今回の首都への懲罰占領で馬鹿な真似などしなくなる。

 

 

現在のガハラ神国は政治家と神官との政治闘争が多く、今回の軍事行動には邪魔をすることはない。だが、第一外務局は『決して交戦してはならない』と厳命していた。神国の保有する航空戦力は強大であり、皇国のワイバーンロードや地竜は怯え、戦うことは出来ない。戦争における貴重な戦力が使えないともなれば、将軍シウスも高名目当てで手出しをしようとは思わなかった

 

 

 

『決してとらえたジオンの民は殺さずに拘束せよ。すべて魔導中継にして外交官たちの前で処刑映像を流す。』

 

第一外務局付のレミールの命令を思い出し、将軍シウスは参謀や佐官に対して命令する。

 

 

「警戒を厳とせよ」

 

将軍シウスの命令は伝わり、大陸軍の上陸部隊はフェンへと目指す。地球よりも巨大で、情報伝達技術の遅れた惑星ではフェンへの懲罰攻撃を知るには多くの情報機関への投資と人員が必要であったが、その強大な資金力とテクノロジーによって一部列強しか知らず、パーパルディア皇国とジオンの戦いには干渉しないよう、様子見を決め込んでいた。

 

だが、列強の潤沢な資金により作られた諜報ネットワークよりも、更に強力な諜報活動が存在する。

 

 

 

数百キロ上空の軌道上に設置されたジオン製の偵察衛星ズム工科大学のリヒャルト・ヴィーゼ教授の観測ポットの観測技術が使われており、連邦既得権益とした人工衛星技術や偵察衛星はセツルメントの旧連邦企業側の寝返りから、同等かそれ以上の物に仕上がっている。「KHZ-03アドラー」と命名された偵察衛星はレーザー通信リンクシステムにより、ジオン本国へリアルタイムで艦隊の様子を映像にて送っていた。

 

本気を出せば水兵が暇を弄び、ラム酒を開けている姿も捉えることが出来る。その詳細なデータはレーザー通信の中継基地を通じてジオン本国へリアルタイムに流される。アメリカ合衆国の衛星監視ネットワークに派生した地球連邦軍の広域ネットワークはジオンでも採用され、既に国家偵察局なる組織により、情報は総帥府へと伝わっていた。

 

正確には国家偵察局の情報は様々な機関に枝分かれする。宇宙攻撃軍司令部や突撃機動軍司令部、首都防衛大隊や親衛隊司令部。未だに存在する二大軍統合基幹として、国防軍総司令部に送られ、更に総帥府直轄の統合参謀本部に送られるなど、様々な機関へと伝わった。連邦のスパイには既に伝わっていることをギレンは予期していたが、惑星への軍事行動が連邦への隙となるかは別問題だった。

 

宇宙攻撃軍はルウム攻撃戦やティアンム中将への海戦により、大なり小なりのダメージを受けた。しかし、惑星からの資源供給と予備役の兵士達を元の仕事場に戻したことで産業に潤いを戻し、転移によって激減した地球連邦軍の攻撃は予想よりも少なく、開戦時よりも一割増の戦力保有率になっていた。ギレンの予想として地球攻撃の段階から、ルナⅡに割く戦力もままならないと危惧していたが、今ならばルナⅡを落とすことが出来る。だが、惑星への軍事行動や派遣部隊の護衛を考えれば、ルナⅡへの攻撃は待たねばならない。

 

 

「委細は貴様に一任する。何、地球連邦を落とせと言っているわけではない。あの程度の国家など朝飯前だろう。」

 

 

 

「はっ!この私、ガルシア・ロメオ少将!パーパルディア皇国討伐の命令承りましたぁ!」

 

パーパルディア皇国に対しての武力行使の指揮を任命された男、ガルシア・ロメオはもっともジオンに忠実な男の一人である。悪く言えば権力に靡く出世欲と権威に溺れた器の小さい男と言えるだろう。プライドが高く、直接の上官はキシリアの部下、今回は宿敵であるマ・クベを階級が高いのにも関わらず、軍務優先ということで、顎で使うこともできる。

 

彼の絶頂期は今と言っていい。

 

だが、周囲からはなぜ将官に登ったのか理解できないと口々に言われている。出世欲が強いため、何かしら賄賂をしていたのではと噂されるが、真実は闇の中。しかし、この人事を参謀本部に務める参謀が聞けば「いや、うっそだろ!あんなのに任せるの!?」と驚かれるだろう。つまりそこまでの男なのだ。

 

「総帥閣下のご期待に添えられるよう、大戦果を挙げます!」

 

「うむ、期待しているぞ」

 

ギレンは心にもないことを言い、握手を交わし、報道陣に向かって作り笑いをする。相手のガルシアはもう嬉しくてしょうがない。攻撃の段階になれば第一報で報じられ、『パーパルディア皇国に宣戦布告』と同時に『ガルシア・ロメロ少将、皇国攻略部隊司令に命ぜられる』と報じられるだろう。だが、軍関係者からすればその人事は異常と言える。

 

会談の後、ギレンは親衛隊責任者のエギーユ・デラーズが近づき疑問を投げかけた。

 

「閣下、あのような粗忽者に任命するのはどうかと……」

 

「ああ、あれは良い駒になると思ってな。何、物は試しというだろう」

 

一国の攻略に物は試し……大胆な選択をしたギレンだが、難しい事情が存在する。

 

「使える人材にも限りがあるし、あの惑星に行きたがらない者も多い。全く地球ならどんなに良かったか」

 

知らないことは人間に恐怖を抱かせる。それは惑星の住民、しいてはジオンも例外ではない。なぜなら、惑星の生態系は未だに謎が多く、その地独自の発展を遂げたウイルスやバクテリアが多く発生している。既にジオン本国へ流入している病原体は数多く、更に治療法は七割近く特定されていない。そんな状況で地上に行き、治療法のまだない病気に罹りたくない。

 

忠誠よりも命を選ぶ将官がいるのは事実。嫌がる将官を無理やり連れて行って、敵対する陣営に取り込まれても困るギレンは数少ない志願者を派遣した。条件に適うのがガルシア・ロメロ少将だった。

 

キシリアの部下であるが、ギレンに忠実であり、権力に忠実。病についてこれ程無理解であれば戦線投入にも、罪悪感を抱かない。

 

「ここで使えなければ、マ・クベを後任に。それまでの男だったということさ」

 

「そうですか」

 

慢心と呼べるギレンの判断だが、知略を持つ将軍ほど単純明快な進撃作戦や電撃戦を行えないもの。常套手段でしか対処できない凡庸な指揮官ほど扱いやすいものはない。寧ろ、司令部に忠実的な方が総司令官としては無駄に配慮しなくて済みやすい。マ・クベなどの知将の方がギレンの予想を超えたことをするため、何かと手に余る。寧ろ、キシリアのように任せっきりにした方が良い結果を招く。

 

ギレンにとって、不安材料が残る方が判断に困るというもの。

 

今回のパーパルディア皇国については、MSによる圧倒的な攻撃と地上と空、そして海による電撃作戦が求められる。多重攻撃により、司令部機能をマヒ。対応できないうちに敵首都陥落まで突き進む必要がある。

 

「作戦は参謀本部の人間が考えている。あとは実行する人形が必要なのだ」

 

「……軍は人の集まりです。」

 

理詰めで考えるギレンと軍人として誇りを持つデラーズ。住む世界が異なる彼らが一緒にいて、どうやってギレンに惚れ込むデラーズが生まれたのかは定かではない。だが、政党組織として躍進した陰にはデラーズによる親衛隊創設がある。

 

人と人のつながりによってデラーズという軍人が出来上がるが、戦略として捨て駒にする覚悟は当然ある。だが、総指揮官の台詞は許容できないものだ。

 

人の命を預かる以上、部下の命を最良な形で失わせる。願わくば、誰一人として欠けることがなければ尚良い。だが、現実はそう簡単ではない。戦争をしている以上、不測の状況になり、部下の命を犠牲にして勝利を得なければならない。軍の指揮官とはそういうもので、なによりも信頼に重きを置く。理想に熱いデラーズであるが、人を駒として扱うのは仕方がないにしても、総司令官が人を「人形」扱いするのは、軍人として見過ごせなかった。

 

「分っている。今回の作戦は全てのピースを嵌めてこそ、成功に導ける。マ・クベのような柔軟性のある男、義憤に駆られて追撃するケラーネや貴様も適任ではない。寧ろ、愚かな者こそが適任の場合がある。それと……フェン王国に特務隊を。例の部隊を派遣するんだ。」

 

「あの部隊ですか?」

 

デラーズはギレンの言葉に驚きを隠せなかった。何故なら、設立してからまだ日は浅い。実戦投入は時期尚早と考えているからだ。しかし、ギレンは今回の投入に対して迷うつもりはない。

 

「ああ、フェンでの戦いでは、彼らのような特殊作戦のための部隊が必要だ。ルナⅡでの技術資料の奪取、ビショップ博士の救助作戦にも従事している。彼らなら何とかなるだろう」

 

 

―救出作戦は失敗したがな

 

とギレンは先の作戦の失敗を嘆く。転移事象を起こした研究に携わっていた、元連邦軍研究員のビショップ博士。改めてその知識は連邦とジオン双方にとって必要なものであると再認識させられる。そして今回の失敗を糧に連邦軍並みの精鋭になっていることを願っていた。連邦軍の能力とジオン軍の能力とではノウハウや経験値からして雲泥の差がある。そもそも、ジオン軍の母体は連邦軍のスペースノイド出身将校。それだけにジオン軍上層部は全ての部分で連邦が勝っていると自覚していた。

 

軍の成り立ちや組織の質に至るまで、全てがジオンに足りていない。連邦が唯一足りていないのは、資源と戦線で戦う兵。兵士を育成する知識やノウハウを持つ彼らにとってみれば、新兵さえ居れば、再建することもできる。それ故に、連邦が力をつける前に、根絶やし(・・・・)にする必要があった。

 

 

「分りました。例の部隊を派遣いたします。……それはロメロ少将に伝えますか?」

 

一応、デラーズは親衛隊大佐。なので特務以外だと、ロメロ少将へは上官対応をしなければならない。分不相応なのは仕方ない。寧ろ、貫禄や武人としての才覚は断然デラーズが上だった。

 

 

「構わん。あれには、もう少し察しが付くところを学ばないとな」

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

フェン王国へ艦隊が向かっている頃、皇城の一角。皇族の居住区画で惰眠を貪る者がいた。

 

その居住区画でも、第一級の国家の中心人物。皇帝を守るべく、護衛の近衛兵も立ち入れないその奥には女性ばかりが配属される部門がある。男尊女卑といった思想は皇国にはない。良い噂を聞かない皇国における唯一の美徳であるが、その皇帝の居住区である部門は男子禁制。皇帝の父や母でさえも立ち入れない神聖な空間とされる。そこには入れるのは近衛兵でも女性限定。皇帝からお呼びが掛かった幸運な者か皇帝と婚約をした者しか許されない。

 

まるで、クイーンサイズのベッドを更に巨大化。10人は裕に入るであろう巨大なベッドに男女が横になっていた。

 

掛けてあるシーツで隠されているが、何も纏っていない全裸状態。そこで何があったのかは想像できよう。真夜中に熱い情交を結んだ男女は朝日が昇ってもなお、その体を起こそうとはしない。だが、女の方。皇帝の婚約者であるレミールは皇帝を起こさないよう、ゆっくりと寝床から起きだした。

 

その姿はまるで女神のようだと皇帝は情交の最中、彼女に言ったという。それは比喩的な表現やお世辞ではない。均整のとれた身体。乳房が程よく大きく、臀部の張りがよく、肌は絹のように滑らかで白い。その顔はまるで希代の画家が描く美女のようだ。

 

画家が美女を思い描くとすれば、まず彼女を描く。

 

もし、現代であったなら、通りすがる十人のうち十人が振り返り、芸能界にいる人物であれば、声を掛けるほどの美貌の持ち主だ。それは本人も知るところ。彼女の欠点はその姿があることで、傲慢な性格になっている。もし、その地位から引きずり降ろそうとすれば、彼女は何が何でもその邪魔する者を蹴散らす筈だ。それが何人であろうとも。皇帝と自分の仲を引き裂こうものなら一族もろとも皆殺し。奴隷であっても、四肢を引き裂いた上で雄奴隷の慰み物にさせるつもりだ。それが自分の親類であれ、肉親であれ、容赦のない鉄槌を落とす。

 

 

現代でいう「ヤンデレ」に近く、嫉妬深い感情は皇帝のメイドにさえ向けられる。

 

「レミール様、お召し物になります」

 

「そこに置いていけ。お前らの世話は受けぬ」

 

―近衛兵から召し上げられた町民の女に触れてほしくない。

 

 

レミールの嫉妬のような黒い感情が言葉の節々から出ていた。服を持ってきたメイドは武術の訓練を受け、必要とあらば皇帝の寵愛を受ける。レミールの生む子供が何らかの事情で皇位を継げなければ、メイドの子供をあたかも二人の子供として育てなければならない。既にレミールの知っている皇帝の隠し子は数名。既にこの城で教育を受けている。

 

将来は近衛兵か城お抱えの乳母になるのだろう。独占欲の強いレミールはそのことに対して嫌悪感を抱いていた。皇帝に躁を捧げ、皇妃として君臨する予定の彼女。誰かも知らぬメイドの子供を自分の子供として扱うのは何としても避けねばならない。若い今の自分はまだいいが、十数年経てば老いぼれ、皇帝は若い女を見つけるだろう。

 

彼の全てを狂うほど愛している彼女の心はその時どうなるのか、彼女自身分らなかった。歴史上、皇妃以外の女に寵愛を与えた皇帝など幾らでもいるし、その事に耐えられずに心を病み、遠い別邸に幽閉された皇妃が多く存在する。

 

二十代後半という、皇国でいう行き遅れにも関わらず、婚約したレミールには焦りの感情があり、それだけに女以上に政治家としての采配も必要であると感じていた。

 

メイドから服を受け取った彼女は彼女達の力を借りずに浴室へ直行し、身体を清める。寵愛を受けた痕やその名残を洗い流すのは不本意ではあったが、何があったのか悟る官僚の厭らしい目つきを想像して洗い流していく。本来なら、多くの召使に補助をさせるのだが、殆どのメイドは殆ど皇帝の寵愛を受けている。公務や仕事があるために、レミール毎夜皇帝と一緒にいるわけではない。寵愛を受けるのは彼女らの方が多い。如何に愛されてきたか、差を付けられているようで、彼女の心にどす黒いものが溜まっていった。そんなメイドたちに補助されるつもりはないレミールは自身で身体を洗い流し、素早く公務へと向かった。

 

 

 

皇城の中にある第一外務局は皇帝直轄の機関の一つであり、規模は国家監査軍を有する第三外務局より小さいが、権威は彼らの数十倍。出世の登竜門はここだと言わんばかりの豪華絢爛な装飾に囲まれた外務局の建物は、国の威信をかけたものだ。

 

その一室にはレミールの他、第1外務局長エルト、No2の次長ハンス、ほかの列強支配下の保護国や系列国との外交を任される下位列強担当部長シラスなど、外務局のお歴々が集まっていた。

 

そして、今回の主役である第三外務局長カイオスの登場により、会議室で糾弾が始まった。普段なら、頭ごなしに局長級のカイオスを非難することはない。基本的にそれは皇帝の仕事だ。しかし、非難し、叱咤するのは書類上同位の地位にあるエルトや下の階級のシラスとハンス、それにレミールだった。

 

「皇帝陛下命での、第1外務局からの呼び出しとは・・・。どういった御用件ですかな?」

 

皇帝による命令書。皇帝の署名と印の押された書類であり、皇帝の命令書。神の運命をも曲げられるとも揶揄される公式書類の一つ。だが、実質的に皇帝の代理人である第一外務局長エルトが代理印を押し、皇帝の名を借りた行為を平然と行っているのが現状である。エルトとカイオスが対立していることや第一外務局が国家監査軍の取り上げを画策していること。国軍の再編をもくろみ、第三外務局の権力縮小をも視野に入れていることも考えれば対立しても仕方がないことだった。

 

「解らぬのか?身に覚えが無い訳ではなかろう」

 

外務局監査室付及び外務局長付を兼任する、言わば皇帝の目となる人物だ。

 

カイオスは姿勢を正して、疑問符を浮かべた。

 

「して、いったい何の事でしょうか」

 

「ジオン公国についてだ。あの国は第三外務局の管轄。皇帝は彼の蛮族について何と仰られていたか?」

 

彼女の手元にあったのは、正確に書き記された議事録だった。本来ならば、カイオスによる偽装書類が送られ、ジオン公国についての議事録は皇帝の納得する内容になって然るべき。その内容は三流劇のような様相のジオン公国使節がカイオスに屈する内容だったが、『機密』『局外持ち出し厳禁』の判子と共にあった書類はカイオスの立っている足元に叩き付けられた。

 

「あの国賓のような対応は一体何か?担当者だけでなく局長その他重役が首をそろえ、その内容が弱腰外交、いや、平伏外交というほかない。列強たる皇国の外交担当の長がここまで皇帝の意を汲めないとは失望したぞ」

 

カイオスは額に汗を浮かべる。ジオン公国使節団には様々な便宜を図っている。使節団施設の共同警備や商会への商会、為替を代わりに行うなど、文明圏外国家にそれほどの便宜を図ることは有り得ないことだ。議事録以外の情報が載っていた書類ならば、国家反逆罪の容疑で処刑されても文句は言えない。皇国のプライドは異常の一言に尽きるが、レミールの激情に任せた判断も皇帝の判断として、その場で斬殺されても文句は言えない。

 

 

だが、幸運なことに記されていたのは、『カイオス自らがジオン公国に対し説教。内容は不明だが、帰国予定だった公国はしばらくの間、滞在を伸ばすと回答』としか書かれておらず、皮一枚で生き延びたようなものだった。

 

だが、皇国の命運は尽いたも同然の決定が下される。

 

「カイオスよ、今後ジオンとの外交は第三外務局ではなく、第一外務局が行う事とする。また陛下の代理として、今後の外交担当は私が行う。本来であれば、任を解かれてもおかしくない身。今回の処遇についてありがたく思え。」

 

 

20代の若輩が60代のベテランに言うセリフとは到底思えず、カイオスは顔には出さないが、拳を握りしめてしまう。カイオスからしてみれば、世界を知らない小娘。『井の中の蛙大海を知らず』、あのジオン公国が嘘八百を並べ立てる欺瞞国家という皇国のプロパガンダを盲信している唯の独り善がり。

 

そんな小物が皇国の命運が掛っていることに不甲斐なさを覚えた。

 

「は・・・承知いたしました」

 

 

第一外務局の重役の前での屈辱的なこの仕打ち、まるで晒し者に等しい。

 

だが、この決定により、カイオスからレミールに委ねられた外交判断はパーパルディア皇国の興廃を決定づけることになるとは誰も知らない。歴史家からは『カイオスが担当のままであれば、列強のままの皇国があった』と可能性を論じられるが、机上の空論として言われることとなる。

 

だが、列強と名高いパーパルディア皇国が一か月あまりの戦いで属領や植民地を全て失い、国土の二割を焼失。戦後はパールネウス共和国として第二次共和制に基づく、建前上民主主義を標榜。カイオス総統を中心とする軍の独走状態になり、後援としてジオンが軍事的安定の後ろ盾になる。そして、元属領における国際紛争、領土問題などの混乱を収めていく。

 

 

後の世に対立の種火を残す大戦、フィルアデス大陸解放戦争の前夜となる一連の出来事は『エストシラントの屈辱』として、歴史の分岐点として記録された。

 

 




ガルシア・ロメオ少将はジャブロー攻略戦でシャアの電文から総攻撃をした将軍の一人です。

オリジンでは……咬ませ犬に近い役処。そんな人物を皇国にぶつけていきます。

近日中にフェン王国上陸作戦が開始!

お見逃しなく(TV版風)

書きためあるので、七月までには、遅くて七月初めには投稿予定です。


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