慈恩公国召喚   作:文月蛇

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若干スランプ抜け出したばかりで、かなり誤字脱字。元々無い語彙力も含め、表現が色々ヘンテコなことになってます。

ミスが多いようです。

すっごい辛口評価いただき、投稿した前話と前々話の文章読み直し、改めて大幅加筆修正と全体的なシナリオの修正が必要と感じました。

すっごい読みにくいとは思いますが、今後大規模修正を行う予定です。多分、狂い始めたのは第二章あたりですので、そこから軌道修正を行います。

三か月のスランプで方向性を見失っていますので、この話も修正するかもしれません。




第二十七話 フェン王国上陸戦(1)

かつてのフェン王国では東西に分かれた内戦があった。今でも東西の戦士は仲が悪いと評判ではあるが、想像してみては如何だろうか。かつての薩摩藩や長州藩など、長年の戦争で対立関係にあったものの、国外の勢力に対しては一致団結してきた歴史がある。フェンも同じく、西部の大都市「ニシノミヤコ」は嘗ての国内対立により建設された城塞都市。いや、城塞の面影を残している都市と表現できる。

 

かつて濠のあった場所は庶民の涼む場として利用され、軍用倉庫は民用の倉庫として活用。雑多な増築を繰り返した結果、軍事的な戦術的防御はもちろん、城壁の門が閉められない状況。更には内戦終結後、三割の防護壁が破壊された。表向きは通商にとって邪魔という名目だったが、実際は反乱分子蜂起が起きた時に早急な鎮圧が出来るようにするため、防衛設備を破壊したのである。

 

 

フェン王国軍は既にニシノミヤコの防衛計画をあきらめ、周囲を囲む山陵地帯を防衛線とする構えを見せていた。だが、ニシノミヤコの民間人はそのことを伝えられない。戦訓として『悪戯に民を刺激してはならない』というものがあった。嘗て城塞都市として機能した時代。敵の総攻撃に対して、当時の戦士長は避難命令を発令。しかし、住民の多くがパニックを起こし、一つの城門に群衆が押し寄せる事件が発生した。

 

結果、戦士や民間人など多数が圧死。民のすべてが戦士として鍛え上げられた現在では、パニックなど起きない。しかし、現在のニシノミヤコは多くのジオン公国人やセツルメントから来た観光客によって賑わいを見せていた。それこそ、ニシノミヤコの全住民よりも多い。

 

どれほどの文明を持ち、テクノロジーを持ちえたとしても、人の根源にある精神について鍛えてなければ、雑兵との差に違いはない。恐怖から逃げのびようとする生存本能が刺激され、暴動となる。それを懸念したニシノミヤコ当局は皇国の侵攻が迫っているにも関わらず、避難勧告は直前まで出すことが無かった。

 

 

 

十キロ先の山陵地帯の山陵線上に防衛線陣地として、『ニシノトリデ』前線基地が急遽設置。ムー情報機関『マンダ』の支援とジオン公国軍事顧問団による指導の元、あたかも西部戦線の塹壕陣地のごとく、防衛線陣地を構築し、機関銃陣地や観測陣地、砲兵陣地や野戦病院施設などムーの野戦戦闘兵器やジオンの復刻兵器が多用された。

 

それはあたかも、ムーとパーパルディア皇国、ジオン公国と皇国の代理戦争のようにも見える。嘗ての旧ソ連とアメリカによる東西冷戦。大国による軍事援助により、朝鮮戦争やベトナム戦争など数々の小国がパワーゲームに巻き込まれ、焦土と化した。それの再現なのか、連邦による搾取から逃れるために、独立戦争を起こしたジオン公国が小国の戦争に介入し、兵器を輸出。顧問団を派遣して、皇国に対する牽制を行う。力による抑圧から逃れようとしていた国が逆に抑圧を、覇権国家になろうとしているのは、何とも皮肉なことか。

 

 

不幸なことに、そこに民間人の避難といったものは陣地構築の途中『国民皆兵』の思想の元切り捨てられ、来訪していたスペースノイドは体のいい、囮として利用されることとなる。

 

 

 

「敵さん来ねーかな……」

 

「馬鹿、不吉なこと言うな」

 

ニシノミヤコ市街地より十キロほど離れた港町にある、砲兵隊の観測陣地が存在した。近代化を求めすぎたあまり、練度はお世辞にも高いとは言えない。しかし、国民皆兵の思想のためか新兵以上の働きをするフェン王国兵。白兵戦にもなれば無敵とも言われるが、惑星の標準的な戦争は、魔導銃の撃ち合いや砲撃による敵防衛線崩壊を目的とし、歩兵の任務は敵陣地の掃討に充てられる。もはや、これまでの戦い方では勝つことが出来ないため、急激な近代化と武装化によって国力増強が図られていた。

 

「つい最近までは剣を振ってこそ男だったじゃんか。なんか、しっくりこない」

 

「確かに……まてお前は女だろ」

 

「何を!フェン王国に生まれたからには剣に生き、剣で死ぬのが常識だろう!」

 

パーパルディア皇国と同じく男尊女卑の概念のない国家であるフェン。生物学上、男性の方が肉体的にも頑丈であるとされるが、フェン国民の遺伝子はやや異なる。この惑星の基本的な能力である魔力がないかわりに、男女共々強靭な肉体を得ることに成功していた。そのため、魔力のないことをハンデにせず、前フェン国王により国民皆兵化。全ての国民が国に忠誠を誓うという軍事国家化を狙った。

 

『戦いは数だよ、兄貴!』とめぐりあい宇宙でMSを求めるドズルの思考と全く同じである。とはいえ、今回はフェンの戦士団の能力を超えた、皇国大陸軍の軍勢が押し寄せていた。

 

 

「だけど……やっぱり時代遅れなのかなー」

 

女性兵士は廃刀令に近い、決闘の禁止や街中での帯刀の禁止などの新法に対して反発を持っていた。だが、王国軍に創設された新しい部隊に配属されれば、嫌でも自分達の戦いが如何に時代遅れであったか分るのだ。

 

突撃する鎧を身に着けた戦士達は、騎馬隊を斬り込みとして敵陣に攻め込む。しかし、自動小銃で武装した敵の一斉射撃によって騎馬隊は壊滅し、更には機関銃陣地による十字砲火で歩兵戦力の大半を削がれてしまう。

 

更に砲兵隊による砲撃によって、フェン王国軍の後詰めの部隊は悉く壊滅する。更に、機械鳥と王国では呼び、『爆撃機』による攻撃で後方支援は壊滅的打撃を受ける。パーパルディア皇国は魔導文明が発達し、周辺諸国もそれに伴った文明を持つ。魔法を使わないフェンは時代に取り残された形で剣へ魂を注ぎ、武勲を誉としてきた。だが、国民を守れなければそれまで。守ってきた者は屠られ、家畜のように辱めを受けることとなる。

 

「そうだな……この前来てたジオンとムーの教官たちの言葉聞いたか?ムーとジオンの会話ってわかるか?」

 

女性兵士の話に頷く相棒の男兵士。支給されたムーのボルトアクション式小銃を膝に抱え、片手で双眼鏡を掴み、海へと視線を向けていた。

 

「いや全然。というか、ムーの教官たちもジオンの教官が言っていることを理解しかねたみたいだよ」

 

ムー曰く、水際での防衛戦が最も有効である。従来の戦術ではこれが習わしであると説いて回った。しかし、ジオンの場合、水際防衛は砲撃のみにしておき、浜辺に相当数誘導してから、砲撃で敵の勢いを削ぐ。そして敵が侵攻してからは、深部に突出した部隊を深部に引き寄せ、三方からの包囲に持ち込む。

 

若しくは相手が気を緩む瞬間を狙った奇襲攻撃も有効だろう。

 

フェン王国指揮官はムーと同じく、水際防衛を貫くつもりだったが、実際のジオンの主催する将棋盤のような机式演習では、敵損耗度は水際防衛よりも深部に誘き寄せてから攻撃する方が最も効果的であることが分かり、方針を転換した。

 

最終的な判断は両軍の最高指揮官の決定で為されるが、末端の兵士たちにとってはそれが限界だった。何しろ『皇国による電撃作戦』『塹壕防御の危うさ』『機動戦術理論』など、フェン王国だけでなくムーですら追いつけなくなった。

 

何せ、塹壕戦術や機関銃と砲火による対処。それらの戦訓は日露戦争の旅順包囲戦からなり、第一次大戦中の塹壕戦。それらを突破するための戦車の投入。それらを経験した強固な防御を無効とする、陸と空からの同時攻撃。いわゆる電撃戦(ブリッツフリーク)

 

これらの陸空からの攻撃は第二次大戦時に、ヒトラー率いるナチス・ドイツの同時攻撃として、ヨーロッパを一気に占領。航空機による歩兵支援や主力戦車(バトルタンク)の概念。これらを理解するには、一連の大戦を経験しなければ分らない。フェンはともかく、ムーは文献やリバースエンジニアリングのテクノロジーといった歴史を持つ。

 

失われた歴史や文化。そして、相対する国家が魔導文明だったことも考えると、塹壕を突破する兵器としての戦車の有効性を理解していても、ほぼ全ての砲を機甲化して、大陸を掛けるような機動戦術を行うなど、理論としてはあっても、第一次・第二次世界大戦を経てみなければ理解のしようがない。

 

 

「私にも分んないや」

 

それに戦術理論は末端の兵士たちには分らない。戦争そのものは数万や数百万の兵士たちがシステマチックに動くものであり、それを指揮するものが理解すればよく、末端の兵士が理解する必要はない。無駄な思考力に力を注ぐよりも、目の前の敵を打倒すことを求めるのであり、兵士一人一人の理解はそこまで必要なかった。

 

(本部より各観測、状況知らせ)

 

(こちら観測点01、海上に変化なし)

 

(こちら観測点02、同じく変化なし)

 

(03、同様に変化なし)

 

通信手である女性兵士は支給された無線機から異常なしと報告を入れようとするが、マイクを抑えて通信できなくする相棒の姿があった。

 

「何すんのさ」

 

「待ってくれ、それを貸してくれ」

 

マイクを取り上げ、代わりに双眼鏡を渡して、見るように伝える。

 

「こちら観測点04、西の洋上に船舶多数。国籍不明艦多数あり、電探で確認されたし」

 

双眼鏡をのぞき込む彼女が見たのが、うっすらと赤い国旗を掲げた黒い装甲の貼った船。それは徐々に速度を上げてくる様子を捉えたが、その数は百を超えるのではないかという勢いだった。それはどう見ても、軍祭に遅れてきた軍艦などではない。

 

赤い双竜旗はまさしく、パーパルディア皇国のものだ。

 

 

(本部より全部隊!西の洋上20㎞の海域にパーパルディア皇国の……大陸軍艦艇を認む。全砲撃観測点はこれよりビーバー作戦を開始する。各部隊は指揮官の指揮に従い行動せよ)

 

 

ジオン製の機械警告音装置が作動し、フェン王国西海岸全域に敵軍の侵攻を知らせた。

 

「来る……」

 

女性兵士は声を震わせ、双眼鏡を落としかける。震える足に力を入れ、海岸へ向けられた砲は今か今かと観測手の指定座標を待っていた。既に何度もやってきた仕事。敵に見立てた老朽木造船を何度も破壊し、自分の目で訓練が実った瞬間を何度も見てきたのだ。

 

「よし、来るぞ。指揮官の言っていた通りにすれば勝てる!」

 

詳しいことは理解できない。だが、作戦が成功することはこれまでの演習で明らかになっている。観測地点である小島から撤退するときに足が縺れて転ぶなんてことがないようにしなければならないが、万が一の確率の話だ。

 

後のフェン王国で語り継がれる英雄の物語。硝煙と血潮に塗れる泥に汚れた、「ニシノミヤコ沖防衛砲撃戦」と呼ばれるフェン王国での戦いは序章に過ぎない。この後、ニシノミヤコの港町での攻撃や防衛戦、城塞都市手前での野戦。幾重の防御線が越えられれば、ニシノトリデでの決戦に挑むことになるかもしれなかった。。

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

 

ニシノミヤコ沖、30㎞に近づくパーパルディア皇国、大陸軍艦隊は上陸部隊の準備を始めていく。装甲艦十数隻による艦砲射撃により敵陣地を制圧。橋頭堡を確保して、一気に地上軍を上陸させて大陸軍部隊と竜母艦隊による航空支援をしつつ、前進していく。地竜による歩兵支援により、従来の数倍の物量を要するが、生半可な戦力では対応できない。敵部隊を完全に殲滅させる事を考え、将軍シウスは笑みを浮かべる。

 

とはいえ、大陸軍上級中将アルデがフェン全域の領土を獲得することは皇帝との密約で定められており、シウスの奪えるものは、ニシノミヤコ周囲のエリア。「ニシグン」の支配地域だという。

 

フェンは長い間の内戦から、多くの砦や城が建設されている。ニシノミヤコもその一つである。内戦では結局現王国勢力に吸収されたが、いまだに王国への反抗心は残されているという。シウスはそのこと利用して、侵略の際も、感情に働きかけ、フェンの西部住民を懐柔する作戦を考えていた。

 

 

「シウス将軍、ニシノミヤコ周囲の小島に複数の砲兵陣地ありとの報。ワイバーンロードの攻撃隊を発進させますか?」

 

「まずは海岸堡を確保したい。後ろから上陸部隊を砲撃されても面倒だ。ムーの兵器がどれほどか見てみよう」

 

シウスは小回りの利く駆逐艦や木造快速艦を前面に押し、大陸軍の小島攻略部隊を揚陸船に乗せて進ませる。望遠鏡で確認している参謀は島から発射されたと思しき砲煙を捉えた。

 

「敵陣、発砲!」

 

「まだ射程外だろう!」

 

だが将軍の推測は外れる。前面に押し出していた駆逐艦の周囲に水柱は立ち上がり、やや遅れて砲撃音が響く。

 

「駆逐艦ヴェルペン、至近弾!」

 

「敵は練度もよく、おまけに砲撃精度も良い。……楽しめそうだ」

 

そこらの蛮族を殲滅するだけでは、国家監査軍と同じである。監査軍は遠方の田舎の野蛮な国を統治するために作られた尖兵。一方で大陸軍は栄えある大陸の軍というだけあって仮想敵は大陸の文明国に絞られる。だが、前皇帝による宥和政策によって安穏とした状況が続き、国家監査軍は実戦を。大陸軍は大陸文明国へのけん制として、日夜パレードや演習を行ってきた。戦わない軍隊はフラストレーションが溜まる。国家監査軍の縄張りを荒らして、国家監査軍と同等であると宣言してなければ、国家監査軍にすら吸収されてしまう。フェンの戦いぶりを見て、フラストレーションを吹き飛ばす絶好のチャンスであるとやる気を漲らせた。

 

そして、先の砲撃で射角修正した第二射が行われる。砲弾は木造の駆逐艦ヴェルペンの魔導防御の施された上部装甲を貫通。前甲板が吹き飛んだ。

 

「駆逐艦ヴェルペン中破!」

 

「先遣隊より連絡、【ワレ後退ス】」

 

「そのまま進ませろ!敵の砲火に惑わされるな。長距離射程の砲艦とロケット艦は島に集中砲火。敵の砲兵陣地を黙らせるんだ!」

 

大陸軍艦隊には砲艦の他に魔導噴射式弾頭、所謂ロケット砲が積まれていた。既に19世紀初期には既に存在したロケット砲。ロケット花火にも似た構造であるが、あれを巨大化させ、陣地攻略のための海上兵器として利用した。

 

火薬が湿って不発することもなく、術式と高密度の魔石があればしっかりと作動する。国家監査軍より兵器配備の進んだ大陸軍だからこその芸当だった。

 

 

 

「目標、ニシノミヤコ手前の敵砲陣地!炸薬最大!放てぇ!」

 

発射術式を込めた発射管制装置により、魔導噴射装置が作動。まるで、軍艦の弾薬庫に火が付いたように、発射炎が甲板上で光る。それが一隻だけならまだしも、十数隻ものロケット弾が空を舞う。噴射装置によってロケットは空高く上げられ、放物線を描きながら島周囲に着弾する。4割は海中に沈んだものの、残りのロケット弾が命中。直撃を受けた砲兵陣地の弾薬庫は誘爆。大きな花火を地上で咲かせた。

 

 

「ロケット弾命中、六割が島に到達。敵砲陣地が一つ沈黙!」

 

「一つだけか……仕方ない。先遣隊はそのまま前進。砲撃戦に移行。先遣隊の判断で歩兵部隊を上陸させよ」

 

「ワイバーンロード攻撃隊より入電。【ワレ、敵陣ヨリ後退スル敵影多数ミトム】」

 

「奴ら、驚いていきおったわ」

 

「こちらも驚きだがな」

 

今のロケット弾攻撃の命中率は6割。非常に高い数値となった。訓練でさえ目標群に命中したのは4割。海上では2割も当たらない。更に言えば、海上で風が強い場合、先遣隊の駆逐艦に命中する恐れもあった。それでもなお使ったのはその攻撃力が並々ならぬ事と、ジオンやムーの支援があるためだった。

 

 上空からの偵察情報によれば、海岸には貧相な木製の防壁が設置されているようだった。

 

「まずは、港近くの敵陣地に艦砲射撃を行い、これを破壊する。その後は歩兵部隊を投入。先の演習通りに行う。第一次上陸は第4歩兵大隊と第七騎兵大隊を投入。海岸堡を確保し、その後地竜や主力軍の陸戦兵器の揚陸を行う」

 

 

「はっ!!」

 

 

 

 

 

装甲艦十数隻を盾にして、数十隻の戦列艦や砲艦から砲撃をする様は火山の噴火と形容できる。現在の魔導技術や美術の巨匠が如何に描こうとも、実際見ることでしか味わえない現実感があった。

 

魔導技術によって発射される度に漂う独特の香り。魔素が散ることで匂う金属臭が艦隊の周囲に漂っていた。そのほか、フェン海域の潮の香りや負傷した戦友の血の匂いも交じり合う。そうした匂いは、絵画では表現できないものだ。

 

 

敵陣から放たれた砲弾が水柱を上げ、砲弾の命中によって空気が振動する衝撃を三半規管に受ける。幸運にも一時的な麻痺をしていない水兵は命令を下す甲板士官の叫び声を聞く。絵画では表現できないが、映画で表現できるかもしれない。だが、運によって鼓膜が破れ、爆風に煽られて鼓膜が破れる危険がない以上、本物ではない。

 

 

 

そして、眼前に見える艦砲射撃の一斉射。緑色の魔導炎や煙により、艦隊の周囲は緑色の霞んだ状態となる。やや汚いオーロラと形容するのがいいかもしれない。発射炎と共に球体型の砲弾が飛来し、目標物に到達すると同時に魔導術式が作動。周囲に金属片を降らせ、爆炎を発生させた。

 

そして運が悪ければ船に穴が開く。敵の弾が徹甲弾であれば、船体を抉るだけ済む。しかし、これが榴弾や白燐弾であればこうはいかない。

 

運悪くも命中すれば、爆裂と共に金属片が飛び散り、砲兵の四肢を引き裂き、手足を捥ぎ取る。即死であれば良い方であり、白燐弾であれば、灼熱の炎が身を焦がしていく。生き残った兵士は手持ち無沙汰となった対空魔導機銃で味方兵士を楽にする事を選ぶ。火傷の致命傷はたとえ高名な医療魔術師でも治すことは出来ない。それが末端の水兵なら尚更だった。

 

港町は完全に火の海に包まれ、海岸手前に設置されたフェン王国の砲兵陣地は何百発もの砲弾が着弾。海上に弾除けとして廃止した装甲艦はその防御力の高さ故に艦隊を守り、運悪く上を通り過ぎた砲弾が砲艦に命中することもあったが、予想以下の損害に作戦参謀は胸をなでおろす。

 

 

「全員、揚陸艇に乗船!」

 

下士官の怒号と共に上陸艇に乗り込む歩兵。パーパルディア皇国大陸軍という、国家監査軍と比べると実戦経験は少ない。だが、最新鋭の魔導銃は正に文明国の武器に相応しく、機械文明のように水で濡れて壊れることはない。縄梯子で上陸艇に乗り、魔導エネルギーでもって稼働する魔導エンジン起動する。スクリューを用いた木造上陸船だが、20ノット近く出ることから、軍に重宝される逸品だった。

 

形状はWW2の米軍が使っていたLCVP(ヒギンズ・ボート)によく似ていたが、それ以上に巨大な強襲揚陸艇が後ろに控え、地上最強戦力である地竜が載っている。正に巨大なトカゲ、地を這い、広範囲な火炎放射を行う。生半可な火力をぶつけてもびくともせず、地竜が皇国国旗に描かれていることから、地竜を飼いならす、重騎兵隊はワイバーンロードの竜騎士以上に誉としていた。

 

「パーパルディア皇国万歳!皇帝と大陸軍に神のご加護があらんことを」

 

「フェンの野蛮人共を皆殺しにしろ!」

 

「われらが大陸軍に栄光あれ!」

 

大陸軍所属の水兵や出向している国家監査軍の水兵は、上陸する歩兵部隊に歓声を送る。上陸戦で一番死傷率の高いのは彼ら第一陣。彼らが敵を掃討して確保しなければ、数万の歩兵部隊は海上で待機することとなる。

 

 

「浜辺まで3分だ!上陸後は急いで陸に上がる。フェン王国兵は最近になって火薬銃を使うが、恐れることは無い!奴らの訓練期間など我々の足元には及ばない。」

 

 

「奴らを近づけず、複数人で撃て。敵は白兵戦を好む。できる限り接触は避けろ。銃撃で殺すんだ」

 

 

「敵には女戦士もいる。フェンの女どもは美人が多いかもしれない。だが、油断するなよ。てめぇのナニを食いちぎるぞ」

 

小隊指揮官の大尉や少佐の言葉により、歩兵部隊は頷く者や叫び声を挙げる者、内容によっては緊張をほぐす為笑い話をする。だが、上陸地点に近づくにつれて緊張からか無言になる。ある者は神に祈りを捧げ、震えた手でお守りを握りしめる。それは国に残した恋人か妻のくれた者かもしれない。新兵は震え、緊張のあまり朝食を足元にまき散らす。

 

古参兵は新兵を慰めながら、次に死ぬのは自分か彼かを考える。持っていたサーベルや銃剣、魔導弾の弾がしっかりと撃てるか確認するなど、反応は様々だった。

 

上陸艇の操舵手はせり上がった席から近づく上陸地点を見て、目測で叫ぶ。

 

「残り30秒!」

 

 

「いいか!上陸したら一気に前進する。上陸後は集結地点で指揮官を待て!全員で港町の酒場で飲んだくれるぞ」

 

第一陣は港町の廃墟で略奪の名誉にありつける。ただし、あるかどうかわからない賭けのようなものだ。完全に破壊され、酒瓶すら見つからないかもしれない。だが、その台詞は兵士たちの心を元気づけ、活力を与えていた。上陸が始まれば死屍累々の血の海を渡ることになるかもしれない。目の前の分厚い木造扉が開かれれば、戦友の死体や血の海面を掻き分け、集結地点へ走らねばならなかった。

 

国の色である真っ赤な軍服に身を包んだ戦列歩兵と連装型魔導銃は、パーパルディア皇国を列強と位置付けている。誇り高き大陸歩兵として辺境の蛮族に後れを取ってはならない。そんな感情が彼らを押し動かし、優れた兵装に身を包んだ兵士たちは死への恐怖を抑え込み、上陸の時を待った。

 

「上陸開始!」

 

 

 

座礁ギリギリの上陸地点に到着した上陸艇は木製の魔導装甲の扉を開き、皇国大陸兵はフェンの大地に上陸した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




続きは七月中に投稿予定です。

今後はこの第二章を大幅改編予定です。

題名に<修正済み>、前書きに修正事項を記します。

誤字脱字などご指摘、ご感想など大歓迎です。

辛口評価も大歓迎ですので、是非ご意見いただければと思います。

とはいえ、実力が伴ってないとか、気概は買いますとか、いきなり上から目線で言われても困ります(実体験)
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