慈恩公国召喚   作:文月蛇

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第二話 戦後 【修正済】

【こちら、ズムシティ公王府前です。宣戦布告して一日が経過しましたが、依然として公王府前には公国軍警戒治安維持部隊の装甲車とMSが立っており、緊張状態が続いています。反体制派のテロ攻撃の警戒をしているものとみられ、公国軍大本営は今日の午後6時より広報官の記者会見を行う予定です】

 

【現在、ルウム植民地政府はジオン公国に対して降伏の意を公王に伝え、明後日には総軍旗艦である戦艦『グレート・デギン』にて降伏調印が行われる予定です。ルウム政府イヌカイ首相は先程、ルウム公営放送にて『誠に遺憾ながらルウムは敗北した。スぺースノイドとして考えることを怠り、地球連邦側についてしまったこと、そしてこの戦いにおける死傷した国民に対し、深く謝罪いたします』とコメント。同政権は降伏調印直後に辞職を決定。新たな政権移行前までの間、イヌカイ政権がルウムの行政を担うということです】

 

【ジオン国営放送、ジオン公国ギレン・ザビ総帥の演説の模様を生中継でお届けします】

 

画面は移り変わり、演壇にたつギレンが映される。後ろにはジオンの国旗がクロスされており、近くには護衛の衛兵の姿を見ることが出来た。

 

「我が忠勇なるジオン軍兵士たち、そして戦禍によって遭われたスぺースノイド達よ!今や地球連邦軍艦隊の半数以上が宇宙の塵と消えた。

 

だが、この塵は戦士達の遺灰である!

 

彼らは地球無き今も、彼らに忠誠を誓った間違うことなき勇士。たとえ、彼らが偽りの命令と偽りの指揮官に惑わされたとて、彼らの戦い方はポリスのスパルタと同じようなものだった。

 

我々は忘れてはならない。地球連邦が無き今も、勇士たちの気持ちを踏みにじり、寄生虫のような者どもは各地に潜伏している。彼らの上層部は降伏しなくてはならない!決定的打撃を受けた地球連邦軍残党に如何ほどの戦力が残っていようとも、それは既に形骸である。敢えて言おう、カスであると!

 

彼らに訴えかける!我々には貴官らの降伏を受け入れ、制限を受ける暮らしを提供しよう。嘗ての敗戦国の指導者に対してするように、処刑することは無い。

 

 

 

だがか、我らスペースノイドの独立を改めてここで誓おう。

 

これまで搾取してきた地球連邦はなく、我々は遂に自由を勝ち取った。地球連邦はすでになく、スペースノイドによる、スペースノイドのための発展をしようではないか!

 

我等ジオンがコロニー政府を統合し、セツルメント国家連合を設立することを提言する。

 

スペースノイドを一つに纏め、人類の発展と未来のため、共に往こうではないか!!!     」

 

【以上がギレン総帥閣下の演説となります】

 

【ギレン総帥は先程、外交文書に署名。残りの各サイド自治政府へ「セツルメント国家連合」の設立協力の要請などを明記し、各大使館の大使に渡す模様です】

 

【大本営の情報によりますと、残存する連邦艦艇はルウムから撤退。ルナⅡやサイド7などの宙域に逃亡したとみられており、今後掃討作戦に移行すると予測されます】

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 

「勝ったな!兄貴!あのルウムにいたレビルの顔が見たかったぞ」

 

「ふん、奴の顔などどうでもいい。肝心な時にサラミス級がカミカゼするなんて誰も思わなかったのだからな」

 

 

―励ますつもりだったんだが……

 

と的外れな励ましをしようとしたドズルは戦以外、抜けているといえるだろう。先のルウム戦役において、宇宙軍司令部に奇襲し、無人コロニーをもって大質量兵器として、司令部のあるニューヨコスカのコロニーにぶつけようとしていた。予測では衝突と同時にコロニーの脆い円筒部分の外壁を貫き、完全に破壊する作戦だった。これにより、宇宙軍の軍艦湾に係留する軍艦も衝撃によって出港不可能にさせ、敵戦力を釘付けにしてレビルの首をとろうと考えていたのである。元教導隊の黒い三連星はパトロール艦隊を全滅させると、スペースポートに駐留する軍艦を撃破。エース級の活躍をした。

 

だが、実際はそううまくはいかない。全滅に近いパトロール艦隊のうちのサラミス級巡洋艦一隻が自爆前提で質量弾として使われるコロニーに吶喊し、中心につくとともにエンジンを臨界まで上げて、そのまま大爆発を起こし、コロニーは二つに折れたのだ。それでも、残った質量のコロニーの残骸はニューヨコスカのコロニー外壁を貫通した。しかし、そこまでの被害を与えることはできず、駐留していたマゼラン級戦艦5隻とサラミス級巡洋艦20隻、コロンブス級輸送艦3、強襲揚陸艦3はそのドタバタの隙を突いて脱出し、ルナⅡへと進路を取ったときく。

 

その報告を聞いたギレンは「コロニー落しよりはマシだろう?キシリア」と彼女に皮肉を込めて言う。一方キシリアも鼻で笑い、ギレンの作戦指揮を執るはずであったドズルは酷く動揺していた。実はブリティッシュ作戦の作戦指揮はドズルに任されており、コロニーへのガス攻撃によって皆殺しにする方法も黙認していた。戦争においては両手が血に染まっても完遂しなければならない任務があると考えていたドズルにおいて、アイランドイフィッシュの住人を皆殺しにすることは躊躇しつつも、仕事をしっかりとこなす。

 

だが、それでも高潔な軍人として虐殺行為は彼としても容認できるものではない。己を恥じていたのか、報告をつづけた。

 

「ルウムの奴らは無条件降伏に等しい。既にラコックの部隊が連邦軍駐屯地を抑えて、総督府の設置に向けて準備を進めている。ハッテやムーアも同様だ。リーアは中立路線だが、今のところ連邦艦艇は数えるほどしか停泊してない。」

 

「ふむ、サイド7の方に残存艦隊を集結させているか」

 

「連邦のMS計画と目される場所です。反攻作戦を練っているはずですが……彼らの資源や人員は我々よりも下回っています」

 

ルウム会戦によって司令部と支持するコロニー政府を失ったことで地球連邦軍の兵力はかなり落ちてしまった。ルナⅡは地球連邦軍の中でも有数の宇宙軍拠点の一つであるが、先のニューヨコスカのコロニーと比べるとかなり劣る部類だ。ワッケイン他、宇宙軍艦艇がジオン軍の攻勢に対処すべく、艦艇を増員していたが、ルウムより撤退した艦艇を受け入れるのに今しばらく時間がかかる見通しだ。

 

また、ジオンもかなりの戦力を消耗しており、十数隻のムサイやパプア輸送艦の喪失は回復するまでに半年を擁する。加えて、失った人員は多大なコストを経て養成することで一人前になるために、船が出来ても人がいない状況であった。今までは職業軍人や志願兵が中心であったが、召集兵や民間からの宇宙飛行士を軍人として載せなければならず、練度は格段に落ちる。士気もさることながら、正史の「ジオンに兵なし」は的を得ていた。それでも当初の予定よりも、かなり損害は抑えられている。

 

そして、目下の課題として……

 

「兄上、あの惑星はどうします?予定通り地球降下作戦を行います?」

 

「コロンブスのように疫病をジオンに持ってきたくはない」

 

かつて、新大陸に上陸したコロンブス一行はその情報を持ち帰り、英雄として凱旋した。しかし、彼らには他にも持ち込んだものがあった。疫病である。

 

代表的なのが、梅毒。大航海時代において疾病対策の十分でない当時は未知の病原体を船乗りや貨物が疫病を広げる手段だった。すぐにそうした病気は広まり、ヨーロッパには多くの感染者が溢れかえった。宇宙世紀に入っても、ウイルスや菌に対しての耐性は付いたものの、ジオン軍が最悪のシナリオである「コロニー落し失敗の場合、連邦政府が徹底抗戦を打ち出した場合における戦略転換」に際して、長期戦の資源確保のため、地球降下作戦を視野に置いていた。コロニーのような、人間の管理が行き届いた環境になれたスぺースノイドにとって、地球という過酷な自然界はまさに悪夢のような場所である。

 

コロニーでは流行することのなかった疫病に晒されることもある他、コロニー落しの影響下では様々な疫病が蔓延する占領地を得る場合もある。既にそうした複数のシナリオが考えられ、地球攻撃方面軍は綿密な調査が求められたのである。

 

そして、地球が無くなり、目の前に新たな惑星がある現在。かなり豊富な資源や未知の有益な鉱物が手に入る可能性が高い。しかし、一方で人体に悪影響を及ぼす可能性のあるウイルスや菌がある可能性も否定できず、慎重に行動しなければならないのはギレンも含めその会議室のザビ家面々は理解していた。もしかすると、惑星には未知の生物が文明を築き上げている可能性もあり、H.G.ウェルズの「宇宙戦争」のように自分たちが侵略者になる可能性もある。また、侵略する宇宙人のように、微生物が人体を攻撃する可能性もあることから及び腰になっているのである。

 

「だが、セツルメントからの突き上げも激しい……なし崩しに占領した方が都合がよかったんじゃないか?」

 

 

セツルメント国家連合

 

ギレンがコロニー自治政府をまとめ上げるために提案した国際連合である。軍は保有しておらず、未だに草案の段階であるが、前時代的な『国際連盟』や『国際連合』にちかい組織にするつもりであった。ただし、圧制者として君臨するつもりはギレンとしても不本意であり、かつて世界の警察として自他共に認められていたアメリカを模倣するつもりであった。だが、そうした姿勢はギレンが立ち上げた親衛隊や母体であるシオニスト政治団体、一部の右翼団体から非難を受けており『地球連邦の再現』とまで言われていた。彼らからすれば、ジオンとその民は人類を指導すべき種であり、それ以外は隷属されてしかるべきという思想を持っていた。ギレンは戦争前にも同様の主張を展開していたが、現在ではすっかりなりを潜めていたためでもあった。

 

ギレン以外のキシリアやドズルは兄の様子に驚きを隠せなかったが、かつてキシリアに気持ちを打ち明けた時を思えば、冷酷な政治指導者をこれ以上続ける必要がなくなったとも言えるだろう。内心、戸惑っていた二人であったが、ギレンは多くの考えがあった。

 

「ジオンの産業は軍需に依存している。これでは旧世紀のナチスドイツの二の舞だ。今後の産業は他のコロニー輸出用に幾らか切り替えても大丈夫だろう。またあの経済不況になっては困る」

 

―紙幣がトイレットペーパーよりも拭きやすいなんてことは無いようにしないとな。

 

とギレンは付け加えた。

 

かつてジオンは工業化に成功したものの、地球連邦の経済制裁に等しい関税の大幅な引き上げにより、急激なハイパーインフレが引き起こされ、ワイマール共和国のハイパーインフレと同様に、ムンゾマルクは紙切れ同然の扱いを受けた。失業者はあふれ、低所得者の多いコロニー「マハル」では無政府状態が数か月続いたほど、不安定な状態が続いたのだ。

 

独立戦争はそうした地球連邦の圧政から抜け出すための手段でもあった。戦時体制が続けていけば、軍需産業を潤すために各地の紛争地帯へ武器を売るアメリカのような事になるかもしれない。ギレンはそこまで考え、内務省を監督するキシリアや経済産業省へ連絡をいれ、内需の方向転換に乗り出した

 

「つまり、他のコロニーに商品を売り付けるわけですか」

 

「左様、国内産業のために血を流すなど……今後のジオンに禍根を残すだけよ」

 

 

「「・・・・・・・・・」」

 

 

ギレンの言葉に固まる二人。あまりにも大きい方針の転換に驚いた表情を浮かべていたキシリアとドズルであったが、二人の様子に怪訝な表情を浮かべるギレンだった。

 

「なんだ、二人とも黙って」

 

「いや・・・・・」

 

「うん・・・・・」

 

「ほら、兄貴って血も通ってないような鬼畜極まりない冷酷指導者だったから」

 

「まるで戦隊シリーズの極悪将軍みたいな」

 

「私はそんな風にみられていたのか……」

 

ギレンは二人の評価に顔を覆い、自身の言動を後悔したという。彼の秘書(兼愛人)はギレンを励ますのに苦労したという話は都市伝説として語り継がれることになる。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

ジオンと連邦が宇宙で激闘を繰り広げる時、地上でも同様に激闘を繰り広げていたところがあった。

 

とは言っても戦争ではなく、机上の戦いというか罵り合いである。夜空を見るのは嘗て天文学者以外にも星占いといったものを行う術師がおり、宇宙世紀となった地球ではほとんど見向きもされないようなことを行っていた。

 

だが、魔法という科学技術や神秘的な術式は地球のどれにも似つかない精密且つ真実の折り込まれた結果に見合うため、国家単位で信用を置いていたのだ。

 

 

「そんなことあるわけがない!つい6時間前に新しい星が生まれただと!しかも、直ぐ近くで?!嘘も大概にしたまえ」

 

「お前たち、なぜ我々の星占いを信じぬのだ?ああまでして、星が瞬き墜ちていったのだぞ!」

 

「馬鹿馬鹿しい!!町の薬物中毒者が幻覚を見たぐらいで・・・・」

 

「貴様、師匠を中毒者と一緒にするな!」

 

言い争いは罵り合いに。そして殴り合いに発展した話し合い。本来は有識者会議の名の元、あまり表舞台に出ない星占いの術者協会が王国首脳部に連絡しに来たことがきっかけだ。魔法文明が進んだ現在において、占いは国家方針を定めるのに用いられる。そのため、あまり表舞台にでない星占い協会の要請によって高官級の有識者会議を開いたのは、そうした事情があった。

 

だが、彼らは厳密には人類ではない。

 

 

二足歩行であり、衣服を身にまとっているが、爬虫類のような皮膚を持っている所謂、『竜人』と呼ばれる種族である。人類と比べると、その力や魔力は比べるべくもなく、その強靭な肉体は人類の屈強な戦士でも倒すことはおろか、十人がかりでも倒すことはできない。そして、彼らは優れた魔法技術や占いといった未来予知がある程度可能であり、国際社会においても一目おかれるのである。人口100万人と少なく、砂漠などの過酷な環境に身を置いているが、彼らは高潔かつ高貴な種族と自称し、他の種族と隔絶し、差別意識を持っている種族なのだ。

 

そんな彼らであったが、同族でもやはり研究者と政治家。

 

相容れることはない。

 

「第一、星がいきなり地球周回軌道上に現れ、しかもそこから現れた星々が落ちてくるなど信じられるわけないだろう!!」

 

天文学上、地球周辺に新しい星が現れることなどありえないことである。しかも、その異変の後に現れた流星群。しかも、その大きさは巨大であり、伝承に伝わる隕石ではないかと言われたほどである。

 

「しかし、我々の他にも一般人が星々が増えたことや点滅する星すら見えたという。昨日はまさにすごい光景だったぞ!お偉い王宮務めも見たはずだ!」

 

政府側はその質問の答えに窮する。なぜなら、その時別の占い師が他の報告を行っており、王宮内でもその予言に対して意見が割れていたのだ。よもや、一般民衆に近い彼らに真相を明かすわけにはいかず、政府も彼らの意見を頭ごなしに否定するほかない。

 

王宮お抱えの占い師は「遠き星々より「慈恩」なる王国が現れ、時代の流れを変える」と予言を伝えた。

 

彼らは巨人を従え、よもや世界を征服できる能力を持っていると伝えたのである。そんな古の魔法帝国を上回るような予言に対して王宮も様々な憶測と意見が飛び交い紛糾していたのだ。

 

彼らエモール王国以外にも、人間や亜人と呼ばれる種族に天文学が明るく、その異常事態に際して警告を政府に出す者は多かった。しかし、いたずらに不安を煽るようなことは政府として避けなければならず、多くはその意見を封殺し、観測員の見間違いや機器の故障とした。のちに都市伝説や不確かな伝承として語り継がれるのだろうと高を括っていたのである。

 

しかし、エモール王国は建国以来。もしくは古の魔法帝国以来の激震が走ることになる。

 

「大変です!!ここから300㎞の砂漠地帯に何らかの隕石が落下!」

 

「なんだと!?」

 

会議は騒然となり、一時中断され、幾人かは夜空を眺める。その光景はあたかも神秘的であり、世界の終わりではないかと恐怖に包まれるほどであったという。

 

大気圏で燃え尽きなかった連邦宇宙軍の艦艇の残骸が、あまたの隕石となって大地へと降り注いだのだった。

 




2019/06/30 一部表現修正

今後の予定として、ティアンム中将のザーン救援艦隊とシャア・アズナブルがどう攻撃したか描こうと思います。一応、時系列は0章ですが、パーパルディア皇国編の方へ入れようか検討中です
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