学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語   作:ソーナ

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面白くないのですかね?あまり感想や評価がこないです


クローディアからの頼み

~綾斗side~

 

「――――はい、これでおしまいです」

 

「ありがとう、クローディア。助かったよ」

 

「ですが、本当に医務室に行かなくてよろしいのですか?あちらでならもっとちゃんとした治療が受けられますよ」

 

「うん。でも、これで大丈夫だよ」

 

右手を握ってみるが、火傷による痛みはほとんどない。ややジンジンするが対して気にすることではないだろう。

 

「まあ、綾斗がそうおっしゃるなら構いませんが・・・・・・」

 

今、俺とクローディアは再度生徒会室にいた。

理由は、俺が《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》を掴んだ際に軽く火傷を負ったため、その治療のためクローディアが泣かば強引に、無理矢理引っ張ってつれてきたのだ。

治療を終えたクローディアは応接用のソファに対面して座っている。

 

「だけど、本当に俺が使ってもいいのかな?」

 

あの騒動の後、結局《黒炉の魔剣》は俺が借りることになったためクローディアに尋ねた。

 

「適合率九十七パーセントに文句を言う人はいませんよ。それとも《黒炉の魔剣》では不服ですか?」

 

クローディアは苦笑しながらそう答えた。

 

「いや、そりゃ姉さんが使っていたかもしれない純星煌式武装(オーガルクス)なんだから、俺も気になっているのは確かだけど・・・・・・ただ、ね」

 

ちなみに今、この場に俺が借り受けることとなった剣。《黒炉の魔剣》はない。登録手続きに、軽く二、三日程かかるらしいからだ。

 

「マクフェイルくんのことですか?」

 

「うん。なんか横取りしたような形になったからさ」

 

「それは仕方ありません。この都市の本質は競い合いです。もちろん友情や助け合いを否定するものでははありませんが、他者が己よりも高い評価を得たのであれば、それを素直に受け入れることも必要です」

 

「まぁ、確かにね。レスターもそう思ってくれたらいいんだけどね」

 

「マクフェイル君と何かあったのですか?」

 

「うーん、正確には俺、じゃなくてユリスなんだけどね・・・・・・」

 

俺のその一言でわかったのかクローディアは納得したように頷く。

 

「あぁ、なるほど。なんとなくわかりました」

 

「え。それだけでわかるもんなの?」

 

「ええ。マクフェイル君がユリスに執着しているのは有名ですから・・・・・」

 

「なるほどね。でも、まあ、俺が恨まれる分には諦めもつくしいいんだけど、ユリスに変な形で迷惑をかけることになったら嫌なんだ」

 

「・・・・・・綾斗はユリスを襲った犯人がマクフェイル君だと?」

 

「そうは言ってないんだけど・・・・・・何か引っ掛かるんだよね」

 

「引っ掛かるとは?」

 

「クローディアから見て彼は不意討ちとかするような人だと思う?」

 

「・・・・・・私から見た感じでマクフェイル君は不意討ちなど卑怯な真似をするような人物とは言えません。ですが、彼には動機があります」

 

「うん。けど、彼はそんなことしないと俺は思うな。別にレスターに味方してる訳じゃないけどね」

 

「と言うと?」

 

「彼は、ユリスを恨んでいると言うよりも、ただユリスに勝ちたい・・・・・自分の能力を周りの人に認めてもらいたんだと思う。それに俺が彼と同じなら不意討ちなんて卑怯な真似はしないで、大勢の観客がいるところで勝負して、正々堂々と勝ちたいかな」

 

「なるほど・・・・・・では、綾斗はどうしてユリスに迷惑がかかると考えたのですか?」

 

「犯人はかなり慎重にユリスの隙を伺っているみたいなんだ。俺との決闘の時と昨日の時といい」

 

「確かに、いくらユリスと言えども決闘となれば目の前の敵に集中しなければなりませんからね」

 

「うん。格好の狙い目、だと思う」

 

「ですから、あえてマクフェイル君を刺激して、万が一ユリスが闘うような事になったら危険だと言ったんですね」

 

「うん。まあ、俺の憶測だけどね」

 

「いえ、素晴らしい炯眼ですよ綾斗」

 

クローディアは感心したかのようにうなずいた。

すると、クローディアは居住まいを正し俺に向き合った。

クローディアの雰囲気から、重大な話をするのだと感じた俺は、クローディアと同じように居住まいを正した。

 

「綾斗、あなたにお願いしたいことがあります」

 

「もしかしてユリスのこと?」

 

「ええ」

 

その言葉に俺は周囲を警戒するようにする。

 

「内密のお話なので、今夜、少しだけお時間をいただけますか?」

 

「俺は構わないよ」

 

今、話さないのは得策だと思う。

いくら、クローディアが許可しないと入れないとは言え、いつ、どこで、誰が、いるのかはわからないからだ。

 

「ありがとうございます。詳しい場所と時間については追々連絡いたします」

 

「わかった。確かに、壁に耳あり障子に目あり、だからね」

 

「ええ。権謀術数渦巻くここは、存外に安全ではありませんからね」

 

そう言うと、クローディアは肩の力を抜いて楽にした。

 

「ところで、綾斗。今、校内で噂になっていることがあるんですが」

 

「え。噂?」

 

ここで、俺は嫌な予感がした。

 

「ええ。綾斗が同じクラスの沙々宮紗夜と《孤毒の魔女(エレンシュキーガル)》ことオーフェリア・ランドルーフェンと《戦律の魔女(シグルドリーヴァ)》ことシルヴィア・リューネハイムと幼なじみ、だと言うことです」

 

「ゲホッ!コホッ!コホッ!な、ななな、もう学校内で噂になっているの!?」

 

俺はクローディアの問いにある程度予想していたとは言え喉に息を詰まらせ噎せた。

 

「ええ。と言うより全校生徒が知っている噂かと」

 

「・・・・・・・・・・」

 

俺はクローディアの言葉に呆気にとられ呆然とした。

 

「綾斗?大丈夫ですか?」

 

「うん・・・・・・ちょっと、驚いただけだから」

 

「それで、綾斗に多分ですけどこれから大変なことが起きるかと・・・・・・」

 

「た、大変なこと?」

 

俺はクローディアの『大変なこと』にとてつもなく嫌な予感がした。

 

「ええ。恐らく綾斗にはこれからいろんな人に妬みや嫌みなどされるかと」

 

「あーーー」

 

「な、なんか呑気ですね綾斗」

 

「いや、大体予想していたし。それに、紗夜が言わなかったら秘密だったんだけどね。でも、まあ。久しぶりに紗夜に会えたしいいかなって」

 

「大人ですね綾斗は」

 

「そうかな?」

 

「ええ。あ、綾斗一つだけレヴォルフに関して注意があります」

 

「!!」

 

クローディアがレヴォルフと言い、俺は背筋がビクンッ!となった。

 

「綾斗、レヴォルフの諜報機関《黒猫機関(グルマルキン)》には気を付けてください」

 

「《黒猫機関》?」

 

「ええ。詳しくは言えませんが、各学園には諜報機関があります。ですが、レヴォルフのは他の学園とは違うんですよ。ですのでおきつけください」

 

「わかった。ありがとう、クローディア」

 

「いえ」

 

それで、この場での会話は終わった。

その後、クローディアから内密の話をする場所の連絡が来たのは夜8時になる手前だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

21時 女子寮前

 

「まさか、一昨日に続いてまた来ることになるなんて」

 

俺は1人、女子寮の前でそう苦笑いぎみに呟いた。

何故、俺がここにいるのかと言うと、クローディアがメールで知らせてきた場所が、女子寮。それもクローディアの自室だったからだ。

幸い、今日はシルヴィもオーフェリアも各自明日の準備をするため、俺の家にいない。

そして、今日は寮で寝ようと俺は考えたのだ。

同室の夜吹はまだ、帰ってきてなかったが、すでに昼間に伝えているため問題ない。

 

「ユリスに見つかったら今度こそアウトだろうな・・・・・・」

 

そして俺は顔をあげ、視線を最上階に向けた。

 

「さてと、あそこか。まあ、足掛かりがあるからこの前よりは楽だけど・・・・・・」

 

人目につかないように壁まで移動すると、わずかな足掛かりを伝って慎重に最上階まで上った。

 

「これじゃあ本当に変質者だよ・・・・・・」

 

最上階のテラスにつくと、苦笑いで呟く。

 

「クローディア?入るよ?」

 

俺はテラスから声をかけると室内に入った。

室内はシックな装いで統一されていた。まず最初にこれを見た人は誰しもこう思うだろう。寮と言うより高級ホテルの一室、と。

室内に入るが、当の主の姿が見えなかった。

 

「あれ?もしかして留守・・・・・かな?でも、明かりついているし、時間もこの時間だったような・・・・・」

 

窓際の近くでそう考えていると、不意に奥の扉が開いた。

 

「あら、いらしていたのですか。すみません、シャワーを浴びていたものですから」

 

そこからクローディアが出てきた。

 

「・・・・・・・・」

 

シャワーを浴びていたらしく、髪には僅かに水が付着していた。

だが、問題はクローディアの格好だった。

今、クローディアはバスタオル――――では、なくバスローブだけを着ていた。

 

「(これ、シルヴィとオーフェリアにバレたら今度こそ死ぬかも、俺)」

 

俺は以外に勘が鋭い二人を思いだし、そう思った。

 

「どうぞ、ゆっくりしてください。今、飲み物を持ってきますので」

 

そう言うと、クローディアはキッチンへと姿を消した。

しばらくするとティーカップとグラスの飲み物を持って戻ってきた。

 

「お待たせしました。こちらへどうぞ」

 

「・・・・・・うん」

 

クローディアに案内され、もう一つの部屋。寝室へ入る。

 

「なんというか、必要以上にくつろいだ格好だね・・・・・」

 

俺はベットに腰かけたクローディアに苦笑いをしながら言う。

 

「自室ではいつもこうなんです」

 

「そうなんだ」

 

「ええ」

 

俺は若干目のやり場に困りながらソファに座る。

ソファへ座ると、クローディアは用意していたグラスにルビー色の液体を注いだ。

 

「それ、もしかしてワイン?」

 

「ええ。綾斗の分もご用意してありますが、どうします?」

 

「遠慮しておくよ」

 

「フフ。だと思いました。綾斗のはこちらです」

 

クローディアはそう言うと、ティーカップを俺に渡した。

マグカップの中身は紅茶だ。

 

「ありがとう・・・・・・それにしても広い部屋だね。これも生徒会長の特権なのかい?」

 

「いえ、これは生徒会長のではなく序列上位者としての特権です。《冒頭の十二人(ページ・ワン)》になればこのような個室もいただけますし、資金面でも色々と優遇があるのですよ」

 

「そう言えばクローディアも《冒頭の十二人》で序列二位だったね」

 

「あら?知っていらしたのですか?」

 

「まあ、シルヴィから聞いていたからね」

 

「なるほど」

 

クローディアは納得したようにうなずいた。

 

「そもそも、生徒会長なんてものは面倒なだけで、思ったより美徳は少ないのですよ」

 

「それならどうして生徒会長を引き受けたのさ」

 

「私は面倒なことが好きなんです」

 

「ず、ずいぶんと個性的だね。つまり、クローディアのお願いも、その面倒なことが絡んでいるのかな?」

 

「話が早くて助かります。まずはこれをご覧ください」

 

クローディアは携帯端末を取り出し操作すると、空間ウインドウが複数展開した。それぞれに違う学生が映っているが、特に統一感はない。

あるとすれば、それは全員が星導館の生徒だと言うことだ。

 

「彼らは次の《鳳凰星武祭(フェニクス)》にエントリーしていた学生です。《冒頭の十二人》はいませんが誰もが『在名祭祀書(ネームド・カルツ)』の序列上位者ばかりで、ある程度活躍が期待されていた方々ばかりです」

 

「・・・・・過去形だね。と言うことは・・・・・」

 

「ええ、そうです。彼らはここしばらくの間にけがを負って出場を辞退せざる得ない状況になってしまいした」 

 

クローディアは溜め息をつき、ウィンドウを消した。

 

「原因は様々です。事故であったり、決闘中のケガであったり・・・・・・そもそもこの都市ではある程度のケガは珍しくもありません。そのため対処が遅れてしまいましたがどうも怪しいところがありましてね」

 

「第三者の介入があったと?―――ユリスの時のように・・・・・・?」

 

「ええ、先日のように直接的な介入は確認してませんが、ユリスの時も綾斗との決闘の時みたいに狙撃で直接的な介入はしませんでしたしね。同じように彼らの時も暗躍してないとは言い切れません」

 

「・・・・・なにか証拠は?」

 

「いいえ、なにも。と言うのも、狙われた生徒たちは皆捜査に非協力的でして」

 

「なるほどね」

 

俺はクローディアの苦悩になんとなく察した。

星脈世代(ジェネステラ)》特有の問題であり、なおかつ己の力に自信があるものは、あまり他人を頼ろうとしないのだ。それよりも逆に、自分で犯人を見つけ叩きのめしたいと言う人もいるのだ。

 

「ええ。全て事情を説明すれば協力してくれるのでしょうが、生憎そう言うわけにもいきませんから」

 

これで全て話すとパニックや他校に知られることになるからだろう。生徒会長と言うのも苦労しているんだな、と感じた瞬間だった。

 

「ちなみにここだけの話ですが・・・・・・風紀委員はマクフェイル君を有力な容疑者候補として調べています。彼とランディ・フック君の二人は昨日の襲撃事件の時間帯にアリバイがないそうですから・・・・・・」

 

「でもクローディアはそう思ってない」

 

「ええ、貴方と同様で」

 

「ところで、今の話だとサイラスは容疑者候補に入ってないのかい?」

 

俺は疑問に思ったことを素直に訪ねた

前回の時もそうだが、今回の時も、レスター、ランディ、サイラスは一緒にいたため、三人一緒にいるという印象が強い。

そのため、サイラスが容疑者候補に入ってないのは逆に不自然なのだ。

 

「サイラス・ノーマン君には明確なアリバイがあるそうです。その時間帯彼は確かに寮の部屋で勉強していたとルームメイトからの証言があります」

 

「そっか・・・・・・でも、なんにせよ、こうもなにも手がかりがない以上後手に回るしかないみたいだね」

 

「そうですね。ですが我々には一つだけ有利なことがあります」

 

「それは、次に狙われるのが誰かわかっていることだよね」

 

「ええ。恐らく次に狙われるのは――― 」

 

「ユリス、だね」

 

「ええ。犯人が狙いが誰でもいいと言うのならわざわざ姿を現してまで襲撃をしたりはしないでしょう。そもそも《冒頭の十二人》を狙うようなこと自体しないはずです。ですが犯人には難しいとわかっていながら有力学生を狙う理由がある。推測するに―――」

 

「―――他学園の意向が絡んでいる可能性が高い、と」

 

「はい」

 

「ほかの学園。ね」

 

「そして犯人はうちの学園の生徒です。犯行場所はほとんど学園の敷地内ですし、わざわざ他学園の生徒がうちに侵入するにはリスクが高すぎます」

 

「それに関してはまあ、俺も同感かな」

 

「ですが無論、あってはならないことです。禁じられていることは言うまでもありません。ですが、過去にもいくつか事例があり、どの学園も本当に必要とあらばその程度のことはやってのけるのが事実なのです」

 

それは、つまり必要ならば星導館もやるということを意味しているのだろう。

 

「まず、今回はクインヴェールとガラードワースは除外していいでしょう。あちらはイメージがありますから、万が一露見した際に被るダメージが大きすぎます。それにクインヴェールの理事長である彼女がそれを許そうとはしないでしょう。更にガラードワースは、今回の件で得られるメリットでは釣り合いがとれません。この手のことが得意なのはレヴォルフですが・・・・・・あちらは≪王竜星武祭(リンドブルス)≫に注力しているはずなので・・・・・・この時期に動くとは考えられません。となると界龍かアルルカントになりますが・・・・・まぁぶっちゃけそれはどうでもいいのです」

 

「どうでもいい?」

 

「はい。問題は他の学園が絡んでる以上こちらも迂闊には動けないということです。実のところ、星導館学園には統合企業財体直轄の特務機関が存在します。上の許可が下りない限り、私でも自由に動かすことができませんが、風紀委員よりもはるかに強い権限を持った組織です。ですが、彼らを動かせば遠からず相手もそのことに気づくでしょう。統合企業財体はお互いにその動向を厳しく監視していますから」

 

クローディアはやれやれと肩をすくめ、じっと俺を見つめる。

 

「そうなれば犯人の背後にいる学園はすぐさま手を引くでしょう。それでは意味がないのです。彼らが関与していたという証拠を押さえられないなら、それはすなわち我々の 敗北を意味しますから。そして我らが統合企業財体は無意味な敗北を許してくださるほど寛容ではありません」

 

「確実な証拠か、あるいは犯人を捕まえられる保証がない限りその人たちを動かせないってことか・・・・・・」

 

「ですが逆に言えば、それまでは向こうも襲撃を続行させる可能性が高いということでもあります。そこで綾斗にお願いなのですが・・・・・・しばらくの間ユリスの傍についていてもらえないでしょうか?」

 

「え?」

 

俺は以外なお願いをしたクローディアを見返す。

 

「ユリスは近いうちにまた襲撃を受けるでしょう。おそらく次はあの子だけでは対処しきれないはずです。その時に綾斗にはユリスの力になってあげてほしいのです。もちろん可能な範囲で構いません。本来は一学生であるあなたに頼むようなことではないのですが・・・・・・」

 

「俺じゃないとダメな理由が?」

 

「ご存知の通り、あの子は他人と距離を取りたがる傾向があります。ですが、幸いにもあなたには気を許してるようなので」

 

「そうかなぁ・・・・・・そりゃ一応学園は案内してもらったりしてるけど」

 

クローディアはああ言ってるが俺はあまりそうは思えなかった。まあ、初めてあった時がアレだから、ではあるが。

 

「ふふ、あなたは本当に人の感情に鈍ちんですね」

 

クローディアは楽しそうに笑みを浮かべる

 

「そ、そうかな?って、なんか前にも言われたような気が・・・・・・じゃなくて、話はわかったけど、俺じゃ力になれないと思うよ」

 

「あら、どうしてです?」

 

「自分で言うのもなんだけど、頼りにならないからさ」

 

「ご謙遜を」

 

「いや・・・・・事実だよ」

 

"今の"俺がいるところで、あまりユリスの役には立てないだろう。

それこそ、"今の"俺ではシルヴィやオーフェリアにはとても及ばない。

俺はそんなことが過った。

 

「先ほど申し上げたように、できる範囲で構いません。自身の身が危ないと思ったら逃げてくださっても結構です。それに側に誰かがいるということだけでも抑止力になるでしょう?」

 

「はぁ・・・・・・・わかったよ。引き受けるよ。でも、あんまり期待しないでね」

 

「わかりました」

 

「ところで、どうしてそこまでユリスのことを気にかけるのか聞いてもいいかな?」

 

「あら、生徒会長が学園の生徒の身を案じるのは当然ではありませんか?」

 

「もちろん、それも理由のひとつだと思うけど。本当にそれだけ?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

俺の問いにクローディアはしばらく沈黙していたが、観念したかのように口を開いて話した。

 

「私も他の学生同様、私自身も叶えたい望みがあるのです。そのために私に必要なことをしているだけにすぎません」

 

「望み・・・・・・」

 

「あ、そうそう、お願いと言うからには報酬も必要ですね」

 

「えっ?いや、いいよ。そんなの」

 

俺は手を振って遠慮する。

だが、その程度で引き下がるようなクローディアだと言うことを、俺はこの時まだ知らなかった。

と言うより今知った。

 

「確か、綾斗は明日、六花に外出するんですよね」

 

「えっ?う、うん。そうだけど」

 

「でしたら―――」

 

クローディアはベットから降り机の引き出しから何枚かの紙を持ってきた。

 

「明日、よろしければこちらをお使いください」

 

クローディアが差し出したのは六花の商業区で使える割引券だった。

 

「え、でも?」

 

「たまたま、もらったものですので気にしないでください。それに、私はあまり商業区に行きませんので持っていても仕方ないのですよ」

 

「それなら、ありがたく受け取らせてもらうよ」

 

クローディアの言葉を聞き俺はクローディアから券を受け取った。

 

「はい」

 

「ありがとう、クローディア」

 

「いえいえ」

 

クローディアから券を受け取った後はしばらく雑談に走らせ、結局、クローディアの部屋を出て自室に戻ったのは十一時半を過ぎた頃だった。

 




今回はここで。




それではまた次回、Don't miss it.!

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