学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語 作:ソーナ
では、どうぞ。
~綾斗side~
「早すぎたかな?」
俺は待ち合わせ場所である、星導館学園の正面で待っていた。
現時刻は午前9時20分だ。
昨日の夜、シルヴィのメールで9時半に星導館前で待っていて、と書かれていた。
そのため、10分早く来たのだが・・・・・・
「そう言えば、2人とも何で来るんだろう?」
そう考えていると。
「綾斗くん、お待たせ~」
「・・・・・・綾斗、お待たせ」
後ろから声が聞こえてきた。
「え?」
後ろを向くと2人の女の子がいた。
1人は栗色の髪に大きめのピンク色の帽子を深くかぶり、ジーンズにブラウスといった格好。もう1人は黒髪に薄むらさき色帽子をかぶり、やや丈の長いワンピースにオーバーニーソックス、そして、素肌を覆う白の長手袋といった格好だ。
「えーと・・・・・誰?」
俺は正直分からず2人の女の子に尋ねた。
すると、2人の女の子は自分の姿を見て、そう言えば変装してるんだった、と言っていた。
「ちょっとこっちに来て」
栗色の髪の女の子に連れられて、俺は人気のない場所まで来た。
「これで分かるかな綾斗くん」
そう言うと、2人の女の子は帽子を取り、着けていたヘッドホンのスイッチを押した。
すると、髪の色が栗色から紫色に、黒から白へと変わった。そして、ようやくわかった。
「え!?シルヴィ!?オーフェリア!?」
「・・・・・・やっと、分かった?」
「いや、さすがにあれは初見の人は分からないと思うよ」
「まあ、それはそうだよ。それで、どうかな私とオーフェリアちゃんの格好」
「うん。2人とも似合ってるよ」
「ありがとう綾斗くん。ホントはもう少しお洒落したいんだけどね」
「・・・・・・私はともかくシルヴィは目立つと思う」
「え~。オーフェリアちゃんも目立つと思うよ」
「あー、確かに」
俺は2人の言葉に納得したように頷いた。
シルヴィアとオーフェリアと一緒にいたら絶対に目立つ以前に注目され、出掛けられないだろう。
「ところで、2人の着けてるそのヘッドホンって?」
「あ、これ?これ、音楽を聴けたり変装に使えたりするから便利なんだ。私は元々持っていたんだけど、オーフェリアちゃんのはペトラさんが用意してくれたの」
「・・・・・・昨日、シルヴィと一緒にペトラさんが来て、くれたわ」
「アハハ、なるほどね」
さすがペトラさん、と俺はペトラさんに感謝していていた。
「それじゃあ、早速行こうよ」
「そうだね。今日は案内お願いね2人とも」
「うん。もちろんだよ」
「・・・・・・任せてちょうだい」
2人は再度ヘッドホンのスイッチを押し、髪の色を変えると、帽子をかぶり変装した。
これで、2人が誰かは分からないだろう。・・・・・・多分。
そう思っていると、2人は俺の両手を左右につかんで引っ張って市街地に向かって行った。
「うわっ!ちょ、2人とも、引っ張らないでよー」
引っ張られながら俺はそう言った。
アスタリスクの市街地は主に外縁居住区と中央区に分かれている。
俺のここでの自宅がある外縁居住区にはモノレールの環状線が通っていて、緑の部分にあたる港湾ブロックと移住エリア、そして六つの学園を繋いでいる。
それに対して中央区での移動は地下鉄が中心だ。これは学生同士の決闘などが交通機関に影響しないように配慮されたものらしい。
そして、中央区はさらに商業エリアと行政エリアに分けられ、その中のステージが点在する形になっているそうだ。
そして、俺とシルヴィ、オーフェリアはその中央区《
「ここがアスタリスク最大の規模を誇るメインステージだよ。《星武祭》の決勝戦は全てここで行われるんだよ」
「へぇー。結構大きいね」
「・・・・・・このドームの収容人数は約十万人みたい」
「そんなに入るんだ」
「綾斗くんが《
「決勝まで行けたらね」
俺はそう苦笑しながら言うが、恐らく"今の状態"俺では無理だろう。
「・・・・・・そんなことない。綾斗に対応できるって言ったら限られてくるはずよ」
「そうだね~。ガラードワースの《
「てことはシルヴィとオーフェリアは《王竜星武祭》に絞ってるってこと?」
「私はね」
「・・・・・・私は、あの人に言われたから仕方無く」
オーフェリアの雰囲気が暗くなったのを察した俺は、話題を変えることにした。
同様にシルヴィも察したようだ。
「そう言えば、ローマのコロッセオをモチーフにしてるんだよね?」
「・・・・・・ええ。だけど、本物のコロッセオとは別物よ。この他にも大規模ステージが3つ、中規模ステージが7つ存在するわ。小規模の野外ステージは数え切れないわ」
「へぇ、そんなにあるんだ」
「けど、市街地での決闘でも、原則的にステージを利用するのがマナーになってるんだ。だけどあくまで原則で・・・・・・基本あまり守られてはいないみたいなんだよね・・・・・・」
「それは街中でも決闘が行われているってこと?」
「うん。流石綾斗くん察しがいいね。その通りだよ」
「でも、その決闘のほとんどはレヴォルフの生徒よ」
「それ、どう考えても危ない気がするけど」
だがまあ、それは俺が口にするまでもなくアスタリスクに来た人なら誰でも思うことだと思う。
だがこのアスタリスクに来て長い人間はその状況に慣れてしまっているのが今のこのアスタリスクの現状だ。
それにはさすがに呆れるしかない。
「でも、それはここの住人たちは承知の上なんだよ綾斗くん。それはもちろん観光客もね・・・・・・」
「・・・・・それに、住むにしろ観光にしろそういう危険性について書かれた誓約書があるわ。まず第一に、それにサインしないとこのアスタリスクには入れないわ」
「む、無茶苦茶すぎだね。まあ、それでもここに来たがる人がいるんだからわからないもんだなぁ・・・・・・」
「企業からしてみればアスタリスクに出店するってことはステータスであり宣伝にもなるからね。仕方ないよ。それにイベントによってはこの中央区そのものが舞台になることも多々あるからね」
「俺は住みたくないなぁ・・・・・・と言ってももう住んでるけど」
「フフフ・・・・・」
「ハハハ・・・・・綾斗くんは絶対そういうと思ったよ。けど私も同感かな。私も綾斗くんの家に住んじゃってるけどね」
「ここ以外でそんなのがあったら堪ったものじゃないわ」
「確かに」
俺たちはオーフェリアの言葉に笑うしかなかった。
ここ以外でそんなのがあったら大変だ。
「・・・・・・次はどうする?まだこの辺を見る?」
「いや、ここはもう大丈夫だよ」
「だったら、次は行政区に行って治療院を見てみない?綾斗くんもこの先、決闘とかする機会が多くなると思うし。それに・・・・・・≪星武祭≫に出るかは知らないけど出るなら知ってて損はないからね」
「・・・・・・まあ、出なくても知っておいたほうがいいと思うわよ・・・・・・治療院には治癒の能力者がいるから、大ケガしたときとかは便利よ」
治癒系の能力者は極めて少ない。
その為どの学園の生徒でも平等に治療が受けられるように、協定によってアスタリスク直轄の治療院に集められている。
ただし、手が回りきらないため、命に関わったり後遺症が残ったりするような怪我でない限り治療能力は受けられない。
「あとは・・・・・・・オーフェリアちゃんあるかな?」
「・・・・・・それなら、一度再開発エリアを見ておくのもいいわ。あの辺りは一部がスラム化していて治安的には問題があるけど」
「あー、確かに知らないで、迷い込むのはもっと危険だからね。まあ、綾斗くんの実力なら何かあっても問題ない気がするけどね」
スラムには様々な事情で学園に居られなくなったものや、外から逃げ込んだ≪
なんとも物騒な話だが、このアスタリスク内ではこういった影の部分があるのは仕方がないことだろう。
「そういえば、紗夜が買い物に行こうとして怪しげな場所に迷い込んだことがあるとか昨日言ってたなぁ・・・・・・なんか、古くてボロボロのビルやら潰れたお店やらが並んでた、って言ってたっけ」
「・・・・・・それは再開発エリア」
「アハハ・・・・・・紗夜ちゃんの方向音痴は相変わらずなんだね・・・・・・」
昔、4人でかくれんぼで遊んだ際に紗夜が自分の居場所が分からなくて大変で悩まされた記憶がある。
まあ、そのときは姉さんも協力して探してくれて見つけた。
「・・・・・・多分一生治らないんじゃない?」
「いや、それは・・・・・・・・・・・・・・・・あり得るかも」
「確かに・・・・・・紗夜ちゃんならあり得るね」
紗夜の方向音痴が治る可能性があることを、俺とシルヴィは否定できなかった。
事実、紗夜は自身で方向音痴、だと認めているのだ。
「・・・・・・そろそろお昼にしない?」
「あれ、もうそんな時間?」
端末を開き時間を確認すると、すでに時間は午後1時近くになっていた。
「それじゃあ、商業エリアに行こうか」
俺たち3人は、商業エリアの中でも最もにぎわっているメインストリートへと歩き始めた。
商業エリア メインストリート
「うわ、すごい人だね」
「さすが休日なだけあるね」
「・・・・・・人が大勢いるわね」
綺麗に整備された石畳風の道は学生たちで溢れかえっていた。当然のように全員私服だが、それでも学生だとわかる理由は、全員所属している学校の校章を身に着けているからだ。アスタリスクにおいては休日であっても常に校章を携帯するのが義務となっている。
もちろん、俺もシルヴィもオーフェリアも校章をキチンと身に着けている。
「じゃ、この辺りで適当に決めようか」
「・・・・・・そうね」
メインストリートの両脇には色々なお店が並んでいるが、どうやらこの辺りは丁度飲食系のお店が集まっているみたいだ。
「んー、どこにしようか」
そのまましばらく歩いていると、見知った人がいた。
「・・・・・・あれ?」
「・・・・・・ユリス?」
「ホントだ」
視線の先には世界的に有名なハンバーガーチェーン店を覗いている、星導館学園序列5位《
「何してるのユリス?」
俺は、覗いているユリスに声をかけた。
「おわっ!!・・・・・・・なんだ、天霧か」
「奇遇だね。ところでユリスは何してるの?」
「わ、私は少し気になったから見ていただけだ。それより、お前は何でここに――――ん?そこの2人はお前の連れか?」
「え?ああ、うん。そうだよ。あ、ユリスもどうせなら一緒にお昼どうかな?」
「なに?」
「2人はいいかな?」
「私はいいよ~」
「・・・・・・私もかまわないわ」
「ん?今の声・・・・・・まさか・・・・・・」
「中で食べながら説明するよ」
俺はそう言うとユリスも連れて中に入り、注文をした。
中では他の人に聞かれる可能性があるため、外のテラスにある一角に座った。
席順は俺、シルヴィ、ユリス、オーフェリアの順で円型だ。
「話してもらうぞ天霧。この間は沙々宮がいたが聞けなかったのでな」
席に着くとユリスが早速聞いてきた。
「いいよ。それと、俺のことは綾斗で」
「ん、わかった」
「さてと、2人ともユリスに教えてあげてくれる?」
俺はシルヴィとオーフェリアに訪ねる。
「うん。え~と、私はシルヴィア・リューネハイムだよ。よろしくね、《華焔の魔女》さん」
「なっ!?シルヴィア・リューネハイムだと!?と言うことはそっちはまさか――――」
「・・・・・・久しぶりね、ユリス」
「オーフェリア・・・・・・やっぱりお前だったか」
今度はユリスも分かったようだ。
「ええ。それにしても相変わらずなのね、ユリスは」
「な!そ、それはどういう意味だ」
「そのままの意味よ」
「う・・・・・・!」
オーフェリアはユリスを懐かしめるかのように見る。
「アハハ、まあまあ」
「はあー・・・・・・まあ、沙々宮が幼なじみだと言っていたならな、大体予想はしていたが・・・・・・・にしても女子を二人侍らせて案内させるか普通?」
「あー、それは・・・・・・・」
「綾斗くん、ユリスさんには言ってもいいんじゃないかな?」
「え?いいのか?」
「私はいいよ。オーフェリアちゃんはどうかな?」
「・・・・・・私もいいわ」
「ん?何の話だ」
「あーー。ユリス、今から言うことを回りに広めないでほしいんだけどいいかな」
「?まあ、かまわんが」
「実は、俺とシルヴィとオーフェリアは付き合っているんだ」
「ほう、なるほど・・・・・・・・・は?すまん、もう一回言ってもらえるか」
「ユリス、俺とシルヴィとオーフェリアと付き合っている」
「ゲホッ、コホッ、ケホッ!な、なぁ!?つ、つつつ、付き合っているだと!?ふ、2人とか!?」
「うん」
「すまん。あまりにも衝撃過ぎて処理が追い付かん。あー、オーフェリアと《戦律の魔女(シグルドリーヴァ)》は認めているのか?」
「《華焔の魔女》さん、私はシルヴィ、って呼んでくれていいよ」
「む。そうか。では、シルヴィア、私のこともユリスでかまわん」
「オッケー。それで、ええ~と認めてるのか、だっけ?」
「ああ」
「認めてるも何も私とオーフェリアちゃんから告白したからね~」
「なに!お、オーフェリアもなのか!?」
「・・・・・・ええ。そうよ。正確にはシルヴィアに同じて告白したのよ」
「そ、そうか。まあ、2人が認めてるなら私は何かを言うつもりはないが、綾斗」
「ん?なにかな?」
「この事は決してバレないようにしろよ」
「分かってるよ。はじめからそのつもりだよ」
「そうか」
その後は、女子は話の会話を盛り上げて話していき、時々俺に聞いたりしてきたが何て答えたらいいのか分からなかった。
特に、オーフェリアの話が多かったのは気のせいだと思う。現に、オーフェリアは顔を少し赤くしている。
「ところで――――少し真面目な話をしてもいいかな、ユリス」
「ん、なんだ?」
会話の終わりを見て、俺はユリスに話した。
「ユリスが襲われた一件なんだけど・・・・・」
俺は昨日、クローディアから聞いたことを伝えた。
この場には当事者のユリスだけではなく、シルヴィとオーフェリアもいるが、別に口止めされているわけではないので良いだろう。
それに、もしかしたら2人にも協力してもらうかもしれない。
俺はユリスにクローディアからユリスを助けるよう頼まれたことを言わないでおいた。反発されるのが目に見えてるからだ。
「なるほど、ありそうな話だ。他所の学園の手引きか・・・・・・・あ、すまないオーフェリア、シルヴィア。別にお前たちの所を言っているわけではないのだが」
「・・・・・・わかってるわ」
「うん。それに、多分だけどそれアルルカントが関わっていると思うよ。まあ、確証がないからハッキリとは言えないけど」
「そう言えばクローディアもそんなことない言っていたな」
「・・・・・・恐らく、ユリスが最後のターゲット」
「だろうな。だからこそ姿をさらしてまで仕留めに来たんだろう」
「そんなわけで、しばらく一人での外出や決闘は控えた方がいいと思うんだけど・・・・・・「断る」・・・・・・言うと思ったよ」
俺の台詞最中に即答で断ったユリスに俺は予想していたとはいえ、即直な答えに苦笑した。
「なぜ私がそのような卑怯者のために自分の行動を曲げねばならんのだ」
「・・・・・・ユリスは変わらないわね」
「当たり前だ。私のことは私自身で決める」
「・・・・・・あなたは昔からそうだったわね。初めてあったときからそうだったわ」
「う・・・・・!よく、覚えてるな」
「・・・・・・当然よ」
「アハハハ」
「ウフフフ」
俺とシルヴィはオーフェリアとユリスの会話につい笑ってしまった。
オーフェリアがまた、こうして話してくれるのが嬉しいのだろう、ユリスも楽しそうに話す。
「綾斗、シルヴィア、まず言っておく。私の道は私が決める。私の意思は私だけのものだ」
ユリスが右手を自身の胸に当て、ハッキリ言うと。
「―――ほぉ、相変わらずいさましいじゃねえか」
ユリスの後ろから巨大な人影が現れた。
それではまた次回、Don't miss it.!