学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語   作:ソーナ

14 / 41
遅くなりごめんなさい。
次回は早く投稿できるようにします。


裏切り者

~綾斗side~

 

ユリスの様子がおかしい。

まず最初に俺がそう思ったのは、今朝教室に夜吹と入ったとき、挨拶をしたがユリスは何か考え込んでいるような返答だった。

そして、その手には一枚の紙が握られていた。

そして、放課後。

 

「ユリス、どうかした?」

 

「――――いや、なんでもない。すまないが、今日は用事がある」

 

「え?ちょ、ちょっとユリス?」

 

ユリスは俺の方を見ようともせずに席をたち、足早に教室を出ていってしまった。

 

「どうしたんだろう・・・・・・」

 

俺は教室を出るときに視界に入ったユリスの瞳を思いだし、呟いた。

ユリスの瞳は何か決意を決めたような瞳をしていたのだ。

 

「あらら、なんだかまた昔に戻っちまったみたいだな」

 

「昔って?」

 

「おまえさんが来る前はいつもあんな感じだったんだよ。頑なに誰とも関わらないでさ。せっかく雪解けしてきた感じだったのにな」

 

「・・・・・・・・・・」

 

俺は夜吹の話を聞きながら、ユリスの机を見る。

この時、俺はとてつもなく嫌な予感がした。

取り敢えず、昨日の件も含めてクローディアに報告しとかないといけないため、俺は教室の出口で夜吹と分かれ生徒会室に向かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒会室

 

 

「ごきげんよう、綾斗。お待ちしておりました」

 

生徒会室に入ると、室内にはクローディアだけらしくクローディアは1人執務机に座って俺を迎えた。

 

「クローディア。早速だけど昨日、またちょっかいをもらったよ」

 

「ええ。話だけは聞いています。今回はレヴォルフの生徒を使ったみたいですね」

 

「さすがに耳が早いね。・・・・・・それと、今回の襲撃の犯人がわかったよ」

 

「本当ですか?」

 

「ああ。―――――だよ」

 

「その根拠は?」

 

俺は―――――が犯人だと言う根拠をそっと耳打ちした。

 

「なるほど・・・・・・さっそく調べてみます。ところで、ユリスは?」

 

「そう言えば、用事があるとかで帰ったよ・・・・・・・って、ん?・・・・・・・ヤバいかもこれは・・・・・・」

 

「どう言うことですか?」

 

「恐らくユリスは―――――と決着をつけに行った」

 

「まさか・・・・・!」

 

「いや、多分そうだと思う。くっ、あの時気付いていれば・・・・・」

 

「しかしそうなるとどこに呼び出したんでしょう?」

 

「う~ん・・・・・・」

 

俺とクローディアは首を捻り、ユリスが向かった先を考える。

その時。

 

「ん?」

 

俺の携帯端末がなった。

 

「紗夜?」

 

かけてきたのは紗夜だった。

 

「どうしたの紗夜?」

 

『・・・・・・綾斗、助けて』

 

「助けて・・・・・・ってことはもしかして・・・・・・」

 

『道に迷った』

 

「え、え~と、ごめん、ちょっと今手が放せなくて・・・・・・ユリスを探さないといけないんだ」

 

『・・・・・・・リースフェルト?リースフェルトならさっき見た』

 

「え!?」

 

紗夜の言葉に驚いていると、

 

『・・・・・・綾斗、急にごめん』

 

紗夜とは違う空間ウインドウが出てきた。

 

「オーフェリア?どうしたの?」

 

かけてきたのはオーフェリアだった。

 

『・・・・・・ユリスが再開発エリアに向かって走っていくのを見たんだけど、何かあったの?』

 

「それ本当オーフェリア!?」

 

『・・・・・・ええ』

 

俺は紗夜とオーフェリアの言葉を聞き、クローディアに視線を向ける。

 

「恐らく、ユリスは再開発エリアにいるでしょう。そして、今回の犯人も・・・・・」

 

「だね」

 

『綾斗、オーフェリア。リースフェルトに何かあったの?』

 

「あー、その・・・・・」

 

『・・・・・・綾斗、もしかして・・・・・』

 

「オーフェリア、紗夜を迎えに行ってあげてくれる?」

 

『・・・・・・わかったわ。紗夜、辺りの風景を見せてくれないかしら?』

 

『わかった』

 

紗夜はオーフェリアの言う通り、スクリーンに周囲の映像を見せる。

 

『・・・・・・だいたいわかったわ。紗夜、迎えに行くからちょっと待ってて』

 

『おお~。助かる。ありがとうオーフェリア』

 

「あははは・・・・・・それじゃあオーフェリア頼んだよ」

 

『・・・・・・ええ。綾斗も無理しないで』

 

「わかってるって」

 

オーフェリアに紗夜を任せると、俺は空間ウインドウを閉じ、クローディアの方を向く。

クローディアは呆気に取られて俺を見ていた。

 

「本当に《孤毒の魔女(エレンシュキーガル)》と幼馴染なんですね」

 

「まあね。意外かな?」

 

「正直に言えばそうですね。彼女は最強の《魔女(ストレガ)》と言われ、他人からは畏怖の対象ですから」

 

「そう・・・・・・だね」

 

俺はクローディアからオーフェリアが他人から畏怖されていることを聞き、何があってもオーフェリアを守らなくてはと決意した。

 

「・・・・・・それにしても、どうしてユリスは何も言ってくれなかったんだろう」

 

「それは、ユリスは綾斗を守るべきだと思ったんですよ。以前にも話した通り、あの子は自分の手の中の物を守るのに精一杯なんです。その中にあなたも入ってしまったんでしょうね」

 

「ユリスが守る・・・・・?俺を―――ああ、そうか・・・・・・そう言うことだったんだね、姉さん」

 

俺は、あの時姉さんに言われた言葉の意味を理解した。

それは、とても単純なことだったのだ。

そして、今ならわかる。自分が『成すべきこと』が、なんなのか。

 

「綾斗?」

 

「いや、なんでもないよクローディア」

 

「そうですか?あ、綾斗、再開発エリアに行くならこちらをどうぞ」

 

クローディアは携帯端末を開き、何かを送信してきた。

送られてきたのは、再開発エリアのマップデータだった。

 

「ありがとう、助かるよ」

 

「いえ。それと――――」

 

クローディアは執務机に向くと、何かを取り出して俺に渡した。渡されたそれはシルバーのケースだった。

 

「調整は済んでいます。どうぞお持ちください」

 

中を開けると、そこには1つの純星煌式武装(オーガルクス)の発動体が収納されていた。

 

「ありがとう。それじゃあ行ってくるよ」

 

俺はそれを取ると、生徒会室から弾丸の速さで出た。

目指す場所は、ユリスのいる再開発エリアだ。

 

~綾斗side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ユリスside~

 

私は今再開発エリアにある廃ビルの1つを訪れていた。

解体工事中のそこは逢魔が時の薄闇を支配している。すでに一部の壁や床が打ち壊されているので広く感じられる。が、あちこちに廃材が積まれているため死角は多い

それでも私はためらうことなく奥へと進んでいった。

傾いた日が不気味な影模様を作り出す中、険しい顔で黙々と歩みを進める。

もちろん、警戒は怠らずに。

が、一番奥の区画へ足を踏み入れた途端、吹き抜け状になっている上部分に視線も向けずに私は呟く。

 

「咲き誇れ―――隔絶の赤傘花(レッドクラウン)

 

星辰力(プラーナ)を纏わせ言うと、私を守るように五角形の花弁が現出し、落下してきた廃材をすべて跳ね除ける。

私を守る五角形の花弁の姿、それはまるで炎の傘のようだ。

 

「今更この程度で私をどうにかできると思っていたないだろう?いい加減姿を現したらどうだ―――」

 

屋上まで貫いた吹き抜けの更に向こうにはうっすらとした月が浮かんでいるのが見える。

弾かれた強化鉄骨が床に突き刺さり、廃材が巻き上げた土埃がもうもうと立ち込める中、一人の少年がゆっくりと姿を現した。

 

「――――サイラス・ノーマン」

 

「これは失敬。余興にもなりませんでしたか」

 

痩せた少年―――サイラスは、芝居がかかった仕草で頭をさげる。

 

「よく僕が犯人だとわかりましたね?」

 

「昨日、貴様が口を滑らせたお陰でな」

 

「昨日?はて、なにか失敗しましたか?」

 

「昨日、商業エリアで顔を合わせたときにあいつの連れがレスターを挑発しただろう?あの時、貴様はレスターを止めようとこう言ったのだ。『決闘の隙を伺うような卑怯なマネ、するはずがありません』とな」

 

「・・・・・・それがなにか?」

 

「どのニュースも私が襲撃者を撃退したと伝えただけで、そのとき沙々宮と決闘していたことを伝えていない。決闘の隙を狙った、と言うことを知っているのは直接見たか、あるいは知らされたか・・・・・・いずれにしろ犯人かその仲間以外ありえんのだ」

 

「これはこれは、僕としたことが・・・・・・と、するとあの時の天霧くんの連れの女性たちは、あえてレスターさんを挑発した・・・・・・」

 

「だろうな・・・・・・あいつらはあれくらいの腹芸をやってのけるからな」

 

「ふむ・・・・・・やはり標的を天霧くんに変えたのは正解だったみたいですね。まあ、天霧くんの連れの女性は予想外でしたが・・・・・・。あなたを狙う上で彼はいかにも邪魔者だ」

 

「っ!貴様・・・・・・!!」

 

「フッフッフ・・・・・わかっています。わかっていますよ。あなたがわざわざ此処に足を運んでくださったのは、そうさせないためでしょう?だったら取引をしませんか?」

 

「取引だと・・・・・?」

 

「はい。こちらの条件は、あなたの《鳳凰星武祭(フェニクス)》出場辞退です」

 

「・・・・・・・・・話にならんな」

 

私は腰のポーチから細剣(レイピア)型の煌式武装《アスペラ・スピーナ》を取り出し、展開する

 

「ここで貴様を叩きのめせば済むことだ!」

 

「・・・・・・・・フ」

 

私は煌式武装の切先をサイラスに向け構える。

サイラスは余裕の表情で私を見る。

その時。

 

「今の話は本当かサイラスッ!」

 

私の背後から聞き飽きた程、聞き慣れた声が聞こえた。

私は声のした方に顔を向ける。

そこにいたのは――――

 

「レスター!」

 

「やあ、お待ちしてましたよ。レスターさん」

 

「ユリスが決闘を受けたと聞いて来てみれば・・・・・・!」

 

レスターはそのまま、私たちの方に歩いてくる。

 

「てめぇがユリスを襲った犯人だと!」

 

「こいつはどこぞの学園から依頼を受けて、《鳳凰星武祭》に出場する有力学生を襲っていたのだ。知らなかったのか?」

 

「同じ学園の仲間を売ったのか!」

 

「仲間?ははっ、ご冗談を」

 

サイラスは何が可笑しいのか笑いながら首を振る。

 

「ここに集まっている者は皆敵同士じゃありませんか。チーム戦やタッグ戦のために一時的に手を組むことはあっても、それ以外ではお互いを蹴落とそうとしている連中ばかりです。あなた方のように序列が上位の人はよくお分かりでしょう?必死で闘って、血と汗を流して勝って、ようやくそれなりの地位を手に入れたと思ったら、今度はその立場を付け狙われる。僕はそのように煩わしい生活は真っ平なんですよ。同じくらいに稼げるのであれば、目立たずひっそりとしていたほうが賢いと思いませんか?」

 

「・・・・・・・貴様のの言い分にも一理あるな。学園では仲良しこよしの関係ではないし、名前が広まれば煩わしさもついてくる。現に、私はレスターに事あるごとに決闘を申し込まれているからな」

 

「おい、ユリス・・・・・・」

 

レスターは私の言葉に顔をしかめる。

 

「だが――――決してそれだけではない」

 

「おや、これは意外ですな。あなたはどちらかと言えば僕に近い方だと思っていたのですが」

 

「こちらも心外だ。貴様のような外道と一緒にされるとはな」

 

私は話はこれで終わりとばかりにサイラスを睨み付ける。

 

「サイラス、なんでわざわざオレを呼び出した?」

 

「あなたは保険のような物ですよ。もしユリスさんとの交渉が決裂した場合、誰か代わりに犯人役をやっていただく必要がありますからね」

 

「オレがそれを聞いて、はいそうですかと引き受けるわけねぇだろ」

 

「ですから、お二人にはここで揃って倒れてもらいます。そうですね、お二人が決闘のあげく、仲良く共倒れと言うのが一番無難なところでしょうか」

 

今のサイラスの発言に私は少し、いや、かなりイラッときた。

レスターも同様に堪忍袋の緒が切れたようだ。

レスターは自身の持つ、煌式武装の発動体を取り出すとら展開する。レスターの煌式武装は三日月斧型の戦斧《ヴァルディッシュ=レオ》だ。

 

「おもしれぇ、てめぇのチンケな能力でオレを黙らせるっていうなら、是非ともやってもらおうじゃねぇか」

 

「レスター、あまり先走るな。何を仕掛けてくるかわからないぞ。やつも《魔術師(ダンテ)》なのだろう?」

 

「あいつの能力は物体操作だ。せいぜいそこら辺の鉄骨を振り回すことしかできやしねえさ。ユリス、てめぇは手を出すんじゃねぇぞ!」

 

レスターが地を蹴ると、一瞬のうちにサイラスとの距離を詰めた。

私は気を抜かずに、レスターとサイラスを見る。

 

「くたばりやがれ!」

 

レスターの振るう三日月斧がサイラスに命中する、が、その寸前。

 

「なにっ!?」

 

突如上から降ってきた黒ずくめの男が間に入りそれを防いだ。しかも、素手でだ。

 

「へっ!そいつがご自慢のお仲間ってやつか」

 

「仲間?くくっ、バカを言わないでください」

 

笑いながらそう言いサイラスが指を鳴らすとさらに黒ずくめの大男が数人姿を現した

 

「こいつらはかわいいかわいい僕のお人形ですよ!」

 

黒ずくめの男たちがローブを脱ぎ捨てるとまさしく人形と言うにふさわしい機械人形がそこにいた。

 

「なるほど、戦闘用の擬形体(パペット)か・・・・・・?」

 

私は冷静に観察しその人形をみてそれとなく呟いた。

擬形体、それは戦場で使われる、いわゆる機械兵器だ。主に遠隔操作用のが用いられる。だが、それらを扱うには専門の施設を必要とする。

いくらサイラスが他学園の生徒だとしてもそこまで大掛かりなものは用意できるとは思えない。

 

「あんな無粋なものと一緒にしないでください。こいつらに機械仕掛けは施してませんよ」

 

サイラスの言ってることが確かなら動くはずがない。だが、現にそれらは動いていた考えられるとすれば一つだけだ。それは――――

 

「なるほど、それが貴様の能力というわけか・・・・・・」

 

そう、サイラス自身の魔術師としての能力ならば簡単に説明がつく。

機械仕掛けではない人形を動かせても不思議ではない。

それに私が襲撃されたときなぜ気配をギリギリまで察知できなかったのか理由も簡単だ。

人であるならまだしも機械・・・・・・人形であるなら気配を察知するのは難しい。それこそ“理”に至っている人間、例えば界龍の序列一位《万有天羅》なら機械の気配すらも感じられそうではあるが・・・・・・

そもそも私は武の領域でそこまで至ってはいない。それこそ界龍の序列二位や三位ならば至っているとは思うが。もちろん今戦っているレスターもその限りではない。

 

てめぇ、隠してやがったのか!自分じゃナイフを操るぐらいが関の山とかほざいてやがったくせに!!」

 

「まさか、それを信じていたんですか?あはははは!いや、これは失敬。ですが、冷静に考えて下さいよ。わざわざ、手の内を見せる馬鹿がどこにいますか?」

 

レスターの言葉に、サイラスは大げさに肩をすくめてみせる。だが、サイラスの言う通りだ。

最初からサイラスがこの計画を練っていたのだとしたら能力をわざわざばらす必要はない。

ばらせばそれこそ計画の妨げになるからだ。

 

「レスターさんの言う通り僕の能力は印を結んだものに万応素(マナ)で干渉し操作すること。それが無機物である以上、たとえこの人形のよう複雑な構造であっても干渉することが可能です。もっともこのことを知ってる星導館の学生はいませんけどね」

 

「貴様はターゲットをその人形共に襲わせていた。そして貴様が人形をコントロールできることを知らないのであれば、貴様を捕まえるのは難しいだろう」

 

魔女(ストレガ)》や《魔術師》が犯罪行為をした場合、極めて立証が難しいのが現状だ。そのためどこの国でも登録が義務付けられている。

だが、サイラスのように能力を隠すというのもあるが《星脈世代(ジェネステラ)》でも特に《魔女》や《魔術師》の数が極めて少ないのも理由のひとつである。

 

「くだらねぇ!そんなものここで、てめぇを張り倒して風紀委員にでも突き出せば済むことだ」

 

「それはあなた方が無事に帰れたらの話でしょう」

 

「いいだろう、だったら次は本気で行くぜ!」

 

そう言うとレスターは自身の持つ煌式武装《ヴァルディッシュ=レオ》に星辰力を込める

するとレスターの持つ戦斧《ヴァルディッシュ=レオ》が二倍近く大きくなる。

私もサイラスも知っているレスターの必殺の流星闘技(メテオアーツ)

 

「喰らいやがれ、《ブラストネメア》」

 

巨大化した三日月斧型煌式武装をレスターは振り下ろす。

レスターの必殺の流星闘技(メテオアーツ)によってサイラスの人形は三体同時に吹き飛ばされ三体のうち二体は完全に機能が停止していた。

腕などがありえない方向にねじ曲がっている。

最も三体目の大男タイプの機械人形はヒビが入っただけの軽症ですんでいるが。

 

「ほう、ちっとは丈夫なやつがいるじゃねぇか・・・・・・」

 

軽症の人形を見たレスターが不敵な笑みを浮かべる。

驚かない様子を見るとあらかじめ、予期していたのかそれともまだ自分に自信があるのかだが、レスターの性格上、後者だろうと私は結論付ける。

 

「これは対レスターさん用に用意した重量型です。通常のノーマルタイプとは防御力が違いますよ。体格も武器もあなたにあわせてあります。いざという時、代わりを務めてもらうためにね」

 

「オレ様に罪を着せるためにか?ってことはそのクロスボウ型の煌式武装を持った人形はランディ役か?」

 

「ま、そんなところです」

 

「ふん、わざわざご苦労なこった。だが、残念だったなそいつは無駄に終わりそうだぜ!」

 

再びレスターは煌式武装《ヴァルディッシュ=レオ》を振り下ろす。が、その刃が重量型の人形に届く寸前、柱の影から現れた新たな人形がレスターの背中にに光弾の嵐を浴びせていた

 

「ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

「レスター!!」

 

私は飛び出そうとするがそれを阻むように人形が目の前に立ちふさがる。

 

「おっと、貴女はそこでおとなしくしておいてください。そいつらも特別仕様でしてね、貴女用に耐熱耐性を限界まであげてあります」

 

「くっ・・・・・・」

 

私を囲むように更に数体の人形が現れる。

それぞれ、その手には剣型の煌式武装が握られている。

私はすかさず細剣型の煌式武装《アスペラ・スピーナ》を構える。

 

「ぐっ・・・・・・。きたねぇ、不意打ちしか出来ねぇようだな・・・・・・」

 

光弾を背中に受けたレスターは膝をつきサイラスを睨みつける。

 

「おや、存外に元気ですね」

 

とっさに星辰力を防御に回したのだろう。だてに序列九位と言うわけではないのだろう。思いのほか元気そうだ、所々に血が目立つがレスターほどの男なら大丈夫だろう。

 

「こ、こんな木偶の坊、何体かかってこようとオレ様の敵じゃ・・・・・・」

 

「やれやれ、レスターさん。あなたは何も理解していない」

 

その瞬間レスターの前にまた新たな人形が現れる。吹き抜けから飛び降りてきたのだ。

それだけではない人形は更に一体また一体と飛び降り、増えていく。その数今確認できるだけでも十や二十を大きく凌駕していく。

 

「何体でかかってこようと?いいでしょう、それならお望み通り相手してあげますよ。僕の操作できる最大数――――百二十八体の人形でね!」

 

「ひゃく・・・・・」

 

レスターの先程の自信に満ちた表情は消えそこには恐怖や絶望しかなかった。

私自身も百二十八と言う数に驚愕している。

 

「あぁ、いい表情です。そうそう、あなたのそういう表情がみたかったんですよ。それでは・・・・・・ごきげんよう」

 

サイラスが合図を出すと百体以上の人形が一斉にレスターへと襲いかかった。

 

「やめろ、サイラス!!」

 

私は叫びながらもなんとか人形たちの包囲網を突破しようと試みるがなかなかうまいように突破できないでいる。一体一体の人形の戦闘能力はそれこそ大したものではない。言うならば雑魚の類だ。

だが、この人形たちは連携が何かと上手い、それが未だに私が突破できない理由の一つだ。

そして人形の数が余りにも多すぎる。これではきりが無い。

 

「ご安心を、まだしばらく息をしてもらわないと困ります。なにしろレスターさんは貴女が倒したことにしないとマズいですからね!適当に火種を用意しませんと」

 

「咲き誇れ!呑竜の咬焔花(アンテリナム・マジェス)!」

 

《アスペラ・スピーナ》を振るうと魔法陣が描かれそこから巨大な焔の竜が出現する。

 

「おぉ、これは初めて見ますね」

 

サイラスが感心したようにつぶやくがそれを無視して焔の竜を操り人形たちをその焔の竜が呑み込んでいく

 

「おお!?」

 

耐熱耐性を限界まであげてると言ったその人形も意味をなさずいとも簡単に焼き尽くす。

 

これは大したものですね。さすが、序列五位は伊達ではないということですか・・・・・・!」

 

サイラスは一旦距離を私から取ると指を鳴らす。

 

「しかし多勢に無勢です」

 

サイラスの合図とともに人形たちは焔の合間をくぐって迫ってきた。

 

「くっ・・・・・・」

 

細剣《アスペラ・スピーナ》で応戦するが、とてもさばききれない。

それは少しでも集中を乱せば今出してる≪呑竜の咬焔花≫のコントロールが効かなくなるからだ。

そのため近づいてきた人形たちに対処しきれない。

 

「舐めるな!!」

 

私は目の前の鍔競り合いになっている人形を弾き後ろから襲いかかってきている人形を刺して戦闘不能にする

だが人形はまだ余るほどある。数体やられた程度ではなにも変わらないだろう。

レスターを倒し終えたのかレスターの方に向かっていた人形たちもこちらに向かってきている。

更にサイラスの前にいる人形たちが銃をユリスに向けていた。

盾にするべく焔の竜を呼び戻すが―――――――

わずかに間に合わなかった。

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

レスターを撃ったのと同じ光弾の嵐が私を打ち抜いていった。

苦悶の表情を浮かべながらも立ち上がろうとするが身体に力が入らず立てない。

幸いわざとなのか致命傷は避けてるようで命に別状はない。私がダメージを受けたせいか焔の竜はあっけなく消えてしまった。集中力が欠けたためだ。

 

「貴方の能力は強力ですが、自身の視界を塞いでしまうのが難点ですね」

 

「ふん、流石によく観察しているじゃないか。だが、私にもひとつわかったことがある」

 

「なんです?」

 

「貴様のバックにいるのがアルルカントであるということだ」

 

その言葉にさっきまで余裕の笑みを浮かべていたサイラスから笑みが消えた。どうやら図星らしい。

シルヴィアやオーフェリアが言っていた通りアルルカントだと、私が気づいたのにはサイラスの操る人形が答えだった。

 

「その人形特別仕様とか言っていたな?だが、私やレスターの攻撃に耐えうる装甲をどこで手に入れた?ましてその人形の数からみてもバックにどこがいるのか一目瞭然だ。ま、あの二人のお陰でもあるんだがな」

 

「これはこれは。ご明察。これはいよいよ見逃すわけにはいかなくなりましたね」

 

「元々、そんなつもりないくせによく言う」

 

「なぁに、貴女もレスターさんももう少し痛めつけてからと思いましたが気が変わりました」

 

サイラスが合図すると一体の人形が巨大な戦斧型煌式武装を私に向かって振り下ろしていた。

普段の私なら簡単に避けるか破壊出来ただろう、だが先程の人形の攻撃を喰らったせいでうまく動けずにいた。

躱すことも、歩くことも簡単でないそんな状態で人形の攻撃など、かわせるはずがない。

私は咄嗟に痛みに耐えるため目を瞑った。

だが、いつまでたっても痛みはこない。

ゆっくりと目をあけてみるとそこには両断された人形が視界には映っていた

 

「ごめん、ユリス。遅くなった・・・・・・」

 

そして、目の前には人形を両断したであろう人が立っていた。

黒く大きな剣型の煌式武装。いや、純星煌式武装を持って。

 

~ユリスside out~




次回はついに決着です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。