学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語   作:ソーナ

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やっと1巻が書き終わった~
次回から2巻目かな~


解き放たれし者

~綾斗side~

 

 

「ごめん、ユリス。遅くなった」

 

駆けつけた俺は、今まさにユリスに向かって振り下ろされる斧型煌式武装とユリスの間に入り、展開させた純星煌式武装《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》で振り下ろされる煌式武装と人形(パペット)を薙ぎ払い切り裂いた。

俺が凪ぎ払ったのとと同時にユリスを一陣の風が撫でた。

 

「綾斗っ!?・・・・・おまえ、どうしてここに・・・・・・?」

 

「紗夜とオーフェリアのお陰だよ」

 

「沙々宮とオーフェリアが・・・・・・?」

 

「うん」

 

「まさか、私を助けに来たとでも言うつもりか・・・・・・?」

 

「え?いや、言うつもりか、も何も助けに来たんだけど?」

 

「なっ・・・・・・!?これは私の問題で、おまえとはなんの関係もないはずだ。 それなのにわざわざ危険な目に遭いに来たと言うのかおまえは!?」

 

「んー・・・・・・ユリスだけの問題じゃないかな?現に俺も紗夜もオーフェリアもシルヴィも巻き込まれちゃってるし。 それに・・・・・・ねぇ、ユリス。人と人が関わってる以上関係ないなんてことはないと思うよ。俺はもうユリスと関わってるんだから」

 

俺がユリスにそう言うと、何体かの人形が煌式武装(ルークス)を構えて迫ってきた。

 

「綾斗!」

 

ユリスが警告するように言い、俺は迫ってくる人形を検分する。

 

「5体・・・・・か」

 

迫ってくる人形はどれも近接煌式武装を装備した人形だ。

 

「何呑気に言ってるんだ、おまえは!?」

 

ユリスは焦ったように言うが、俺は焦らない。

 

「ふっ・・・・・・!」

 

俺は一薙ぎで迫ってきた人形5体を2分割にする。

僅か一刀で切り裂いた人形の切断面に残る鋭い切れ味は、通常の煌式武装とは比べ物にならないくらいだ。

 

「これが・・・・・・《黒炉の魔剣》・・・・・・」

 

後でユリスが感嘆としているのが感じ取れた。

俺が先日行った純星煌式武装(オーガルクス)≪黒炉の魔剣≫での適合率検査で合格したことは、ユリスも知っているはずだ。だが、ここまでの純星煌式武装だとは思わなかったのだろう。

 

「いやはや、思わぬ飛込みゲストですね。天霧綾斗くん」

 

自身の周りに人形を従わせているサイラスは芝居がかかった仕草で肩をすくめる。

一瞬で人形が数体一刀両断されたというのにサイラスの表情に焦りは感じられない。まだ余裕があるということなのだろう。

 

「今のが《黒炉の魔剣》の力ですか・・・・・・。なるほど、少々厄介ですね・・・・・・しかし、使い手が二流だと折角の純星煌式武装も宝の持ち腐れというものです。綾斗くん、あなたの戦いぶりは拝見しましたが、正直この学園に置いて凡庸の極みです。先ほどはうまく不意打ちが行えたようですが・・・・・・百体を超える僕の人形たちになにができると――――」

 

「―――黙れ。不意打ちしかできないのはあなたのほうだろ、サイラス・ノーマン」

 

俺はユリスを左手で支え、右手だけで構えた《黒炉の魔剣》の切っ先をサイラスに向け、冷たい、底冷えの声で言う。

 

「・・・・・・言ってくれますね。でしたら試してみますか?」

 

サイラスはそう言い指をならすと、居並んでいる人形たちがそれぞれ煌式武装を構えた。

 

「これだけの数を一人でどうにかできるというならやってみるがいい!」

 

サイラスの言葉と同時に、四方から遠距離型煌式武装を装備した人形の放つ光弾が乱れ飛び、その合間を縫って剣や斧、槍、短剣といった近接煌式武装を持った人形が飛び掛かってくる。

光弾が迫り来る寸前、俺はユリスを左手で抱き抱え跳び退りかわす。

 

「―――――内なる剣を以って星牢を破獄し・・・・・・・我が虎威を解放す!」

 

俺は自分に施された枷を解放するための祝詞を言う。

苦悶の表情が浮かばせながら俺は、自身の星辰力(プラーナ)が爆発的に高まったのを感じた。

自身の周囲に、複数の蒼く輝る魔方陣が浮かび上がり、蒼光の火花を散らして砕け散った。封印されていた星辰力が解放され、蒼い光の柱が俺とユリスを包み込んだ。

 

「綾斗・・・・・・・」

 

次の瞬間、俺はその場から消えて去っていた。

 

「は・・・・・・?」

 

サイラスは唖然と間抜けな声を漏らす。

それと同時に何かが切られる音があちこちに響いた。

サイラスの周りには高熱で焼ききられたように赤熱した切断面が残る人形の残骸があった。

もちろん斬ったのは俺だ。

襲い掛かってきた人形を俺は一瞬の内に斬り裂いたのだ。

 

「・・・・・・なっ!ば、馬鹿な!?」

 

「ここだよ」

 

「ひっ!」

 

俺は一振りで人形を薙ぎ払い、サイラスの斜め後ろにユリスを抱えて回り込んだ。

サイラスは恐怖のあまり引きつっている。

 

「な、な、な・・・・・?」

 

「お、おまえは一体・・・・・・!?は、早く私を下ろせ!足手まといになるつもりはない!」

 

「悪いけど、もう少しだけ我慢してくれないかな」

 

「い、いや、しかしだな。さすがにこれではオーフェリアとシルヴィアに・・・・・」

 

「ああー・・・・・・・まあ、事情を話せばわかってくれると思うよ」

 

「・・・・・・・・」

 

まあ、確かに後でシルヴィとオーフェリアに何か言われると思うけど。

俺は頭でそう思考してサイラスに《黒炉の魔剣》の切っ先を向ける。

 

「ぐっ・・・・・・。次は本気でいかせてもらいますよ・・・・・・!」

 

サイラスの言葉に、人形たちが整然と隊列を組み始めた。

前列には槍や戦斧などの長柄武器、後列は銃やクロスボウなど、その間を剣や手斧を装備した人形が埋め、最後列にサイラスが指揮官のように鎮座した。

 

「これぞ我が《無慈悲なる軍団(メルツェルコープス)》の精髄!凌げるものなら凌いでみせろ!」

 

サイラスが言い終わると同時に前列の人形たちが猛然と突っ込んできた。

一斉に繰り出される穂先を真上に跳躍してかわす。だが、そこへ狙いすましたかのように光弾が叩き込まれた。

 

「へぇー・・・・・・」

 

俺は《黒炉の魔剣》の腹で防ぎ、光弾を切り裂く。が、今度は着地の隙をついて剣や手斧を構えた人形たちが飛び掛かってきた。

 

「よっと!」

 

俺は攻撃せずにステップでリズムよくかわす。リズム感は昔、シルヴィに教えられたというか強制的に鍛えられたので出来る。

まあ、オーフェリアと紗夜も一緒に特訓はしたが。

 

「なるほど、個別に動かせる人形は、せいぜい六種類までなんだね?」

 

俺は光弾を防ぐため、近くの柱を盾に身を隠し言う。

 

「はぁ?」

 

「そして、ある程度パターン化するのが十六体。残りは単純な動きをしてるだけだ」

 

「・・・・・・・」

 

「ああ、六種十六体ということは―――――」

 

俺は身を隠していた柱から出て、サイラスに向き合い言った。

 

「――――チェスのイメージなのかな?」

 

「くそがああああああああああああああああああああ!」

 

先ほどの余裕の表情は消え、一転して顔を真っ赤にしてサイラスが吠えた。

 

「潰れろッ!潰れてしまえッ!」

 

再度人形たちが襲い掛かってくるが今度は避けない。

 

「遅いよ」

 

今の俺には人形たちの行動が手に取るように見える。

雲霞のごとき人形の群れに向かって歩きながら《黒炉の魔剣》を無造作に振るう。

 

「動きが単調すぎる。これじゃあ相手にならないよ、っと」

 

向かってくる人形を次々と切り裂いて地に付していかせる。

俺は、今度は人形の群れに突っ込んで行き斬る。

 

「ば、バカな・・・・・・」

 

人形たちは煌式武装で防ごうとするが《黒炉の魔剣》はそれすらも切り裂いていく。

 

「一切防御のできない剣だと・・・・・・ありえない・・・・・・ありえるはずがない・・・・・・」

 

サイラスは脅えた表情で言うのが聞こえた。

現実に起こっていることが信じられないのだろう。

 

「ゲームはおしまいだよ、サイラス」

 

数十秒後には全ての人形が切り裂かれていた。

 

「あ・・・・・・ああ・・・・・・・ああぁ・・・・・・・」

 

サイラスは腰抜けたように後ずさる。

 

「ま・・・・・・まだだ、僕には奥の手が、あるッ!」

 

突如サイラスの後ろの瓦礫の山から何かが現れた。

 

「・・・・・・!」

 

現れたのはこれまでの人形の5倍はあるだろう程の身丈をもった人形だ。

 

「ふ・・・・・は、ははは!さあ、僕のクイーン!――――やってしまえ!」

 

サイラスの命令に従い、その巨体に似合わぬ素早い動きで迫ってきた。武器は何も持っていなかった。

 

「ふぅ・・・・・・・」

 

俺は迫ってくる巨大人形を目に、小さくため息をつき、《黒炉の魔剣》を構え直す。

そして、巨大人形の両拳の振り下ろしがきた。

俺はそれを左横に飛んでかわす。

 

「五臓を裂きて四肢を断つ―――――」

 

巨大人形の横に立ち。

 

「天霧辰明流中伝―――」

 

巨大人形が俺たちに気づいたのと同時に、人形の懐に入り、

 

「"九牙太刀(くがたち)"!」

 

両手足を切り裂き、倒れる前に胴体にYの字を刻むかのようにして切り裂いた。

次の瞬間には地響きを立てて両手足を失った人形はサイラスの方に倒れた。

 

「ひ、ひぃぃ!」

 

転がるようにかけながら、半泣き顔で人形の残骸の一番上に乗っかっていた人形にすがり付いた。

すると、サイラスの体がフワリと浮いた。どうやら、人形にしがみ付いて《魔術師(ダンテ)》としての能力を発動させたようだ。

 

「往生際が悪いなぁ」

 

俺は人形にしがみついて吹き抜けを上っていくサイラスを見上げてそう言う。

 

「ごめん、ユリス。ちょっと追いかけてくるから、ここで待っていてくれるかな」

 

「それはいいが、間に合うのか?」

 

「・・・・・・正直、微妙なところだと思う」

 

視線を上げるとすでにサイラスは屋上近くまで上っていた。

 

「ふん、だったら私の出番だな」

 

「え・・・・・・?」

 

「言ったはずだ?足手まといにならないとな!」

 

ユリスが不適に笑い言うと、星辰力があふれでた。

 

「咲き誇れ―――――極楽鳥の燈翼(ストレリーティア)

 

ユリスが言うと、俺の背中に万応素(マナ)が集約し、緋色の魔方陣が現れた。その魔方陣からは三対六枚の紅い、焔の翼が現れた。

 

「うわっ!」

 

「行くぞ、コントロールは私がする!」

 

ユリスはそう言うと、翼を羽ばたかせ、俺とユリスを空中に浮かばせる。

サイラスの後を追うように、吹き抜けを昇っていく。

 

「今度こそあの卑怯者に一発かましてやれ!」

 

「それ・・・・・・お姫様の台詞じゃないよね」

 

そして、あっという間に廃ビルから飛び出し、前を行くサイラスを追い抜いて反転した。

反転してサイラスを見ると、空浮かぶ人形に掴まりながら驚愕に目を見開く人形遣いがいた。

 

「チェックメイトだ!サイラス・ノーマン」

 

「や、やめ、やめろおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

 

サイラスに迫り、すれ違い様に一閃。

人形はその一閃で真っ二つに切り裂かれ粉々に砕け散り、サイラスは廃ビルの谷間に落ちていった。

 

「まあ、サイラスも星脈世代(ジェネステラ)だしこのくらいでは死なないさ。それに、下にはクローディアたちが待ち構えているはずだし、後はそっちにまかせようか」

 

「そうだな・・・・・・」

 

いろいろあったが、とにかくこれにて一件落着だ。

空に浮かんでいるため、強く吹き抜けていく風が心地よい。

 

「綺麗だ・・・・・・」

 

「ああ・・・・・・絶景だなこれは」

 

沈み行く夕日が、都市を赤く染め上げていて、街も空もどこもかしも赤い。

 

「さて、これ以上おまえといると、あの二人に怒られてしまうな」

 

「う、う~ん。どうだろ――――ぐっ!」

 

「ど、どうした?」

 

俺の苦痛な表情にユリスが驚いて尋ねてきた。

だが、その答えを返すことが出来ない。

 

「な、なんだこれは・・・・・・?」

 

ユリスが驚いたように俺の周囲を見る。

周囲には万応素が俺を中心として集約されていた。それもとんでもない量の万応素だ。

 

「ぐっ!」

 

「綾斗!おい、綾斗!」

 

「ああああああああああああっ!」

 

俺の絶叫と同時に、複数の魔方陣が俺を取り囲む。さらにそこから蒼く光輝く鎖が、何重にも俺の体を縛り付けていった。

 

「これは、先ほどの―――!?」

 

「う・・・・・・っ」

 

「お、おい!しっかりしろ、綾斗!お―――あ―――と――――!」

 

ユリスが何か言うが、俺は何も聞こえなかった。

意識が、暗闇に落ちていったのを感じ取った。

 

~綾斗side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~オーフェリアside~

 

「・・・・・・この万応素は―――――!?」

 

「・・・・・・オーフェリア?」

 

「・・・・・・紗夜、ちょっとついてきてくれるかしら?」

 

「・・・・・・わかった」

 

私は迎えに行った紗夜を連れて、先ほどの感じた万応素の場所へと向かう。

その万応素は私が知っている感じの万応素だった。

 

「・・・・・・綾斗――――!」

 

~オーフェリアside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~シルヴィアside~

 

「!?この万応素の反応は――――!?」

 

私はふいに膨大な万応素を感じ取った。

 

「今感じた万応素もしかして――――」

 

歩んでいた道から反転して、万応素の反応があった場所へとかける。

 

~シルヴィアside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

「―――ごめんね、綾斗」

 

「姉さん・・・・・・?」

 

薄暗い道場の中、一人の少女と少年がいた。

道場の中を照らすのは冊子から出る、月明かりだけ。

少年の前にいる少女の様子がどこかいつもと違っていた。

 

「――――ごめんなさい」

 

「え・・・・・・?」

 

少年が不思議に思って口を開く。

その時、天地がひっくり返ったかのような猛烈な衝撃が少女を襲った。

 

「うわあああああああああああああああああっ!」

 

少年の喉から出る絶叫が響き渡る。

高電圧の電流が流されたかのような激痛が体中を走り、思わずのたうち回りそうになる。だが、それは出来なかった。突如として、その体を戒めるように、虚空に現れた魔方陣から現れた碧紫色の無数の鎖が縛り上げた。

少年はかろうじて視線を上げると、目の前の少女がかざした手の周囲に複雑怪奇な魔方陣文様が浮かんでいた。

少年にはこれがなんなのかわかっていた。幼馴染みの女の子が目の前の少女と同じだからだ。その力は《魔女(ストレガ)》と呼ばれる者だけが持つ魔性の力。

少女の《魔女》としての能力は、森羅万象の流れを封じ、万物を押し留める禁戒の力。

だが、少女はその力を嫌っていた。なによりも少年に向けてそれを使うなどと言うことがあるはずがなかった。

 

「ね、姉さん・・・・・・なんで・・・・・・?」

 

「ごめんね、綾斗。――――――円輪の枷鎖を以って汝が虎威を禁獄す」

 

目を伏せたまま厳かに少女が呟くと、その瞬間、少年の感覚が弾けるように消え失せた。

意識が朦朧としするなか、視界の端に紫色の長い髪の幼馴染みの女の子の姿が見えた。少年の三人の幼馴染みの内、二人は海外に引っ越してしまい、少年の最後の幼馴染みだった。

 

「綾斗くん・・・・・・!」

 

幼馴染みの女の子は倒れる寸前の少年の体を支えた。

 

「遥お姉ちゃん・・・・・・どうして・・・・・・?」

 

「昔、言ったよね?あなたはあたしが守ってあげるって。だから―――」

 

少女の声が遠のく中、少年はすがり付くように女の子に支えられながら右手を伸ばす。

 

「嫌、だ・・・・・・!俺だって、姉さんを守るって・・・・・!」

 

「シルヴィアちゃん、綾斗のことお願いね」

 

「遥、お姉ちゃん・・・・・・」

 

「い、や、姉、さん・・・・・・・」

 

「じゃあね、綾斗――――大好きだよ」

 

それが少年の思い出に残っている、少女の最後の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

これは今から五年ほど前の、ある日の夜のことだった。

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

~綾斗side~

 

 

目を見開くと、俺の目の前にシルヴィとオーフェリアが心配そうに眉を寄せる顔があった。

 

「あ。綾斗くん、気が付いた?」

 

「・・・・・・大丈夫綾斗?」

 

「ええっと、ここは・・・・・・ぅぐっ!」

 

二人が何故ここにいるのかわからない俺は身体を起こそうとするが、激痛が走り顔をしかめる。

その激痛のおかげで思い出す。

 

「そっか―――やっぱり気を失っちゃったか」

 

「あまり無理をするな、綾斗」

 

「・・・・・・無理は禁物」

 

「そうするよ―――――って!?シルヴィとオーフェリア!?しかも紗夜まで!?あれ!?まだ、夢の中なの!?」

 

「アホか。ここは現実だ」

 

「ユリス・・・・・・これどういう状況なの?」

 

「オーフェリアたちは、私がおまえをあの廃ビルの屋上に着いたのと同時に来た」

 

「そ、そうなの?ってあれ?俺、シルヴィたちにこの場所言ったっけ?」

 

「あーー、なんだ。オーフェリアたちはおまえの万応素を追いかけて来たらしいぞ」

 

「はい?え、どういう意味?」

 

「あはは。私たちは綾斗くんの万応素を頼りにここまで来たんだよ」

 

「・・・・・・シルヴィアの言うとおり」

 

「――――らしい」

 

さすがにこれには俺も絶句するしかなかった。

ま、まあ、最強の魔女と歌姫なら可能―――――なのか?

 

「・・・・・・私はオーフェリアと一緒に。オーフェリアの後を追いかけていったら綾斗とリースフェルトがいた」

 

「そ、そうなんだ」

 

そう言えば、オーフェリアに紗夜を迎えに行ってもらっていたこと忘れていた。

 

「よっ・・・・・」

 

「あ。動いちゃダメだよ」

 

俺は頭を上げようとするが、シルヴィに押し止められた。その時気が付いた。俺の頭の後が何か柔らかい物の上に乗っていることに。

 

「この柔らかいものは・・・・・・・」

 

「私の膝だよ。気持ちいいかな?」

 

「え?う、うん」

 

シルヴィの顔が若干近かったわけがわかった。

俺はシルヴィにずっと膝枕されていだ。

オーフェリアは反対側で、やや不満そうに頬を膨らませていた。

 

「あのなぁ、この間私は言ったはずだぞ。あまり人前でイチャイチャするなって」

 

「あー、うん」

 

ユリスの呆れた声に俺は苦笑いで答えるしかなかった。

 

「・・・・・・・綾斗、聞きたいことがある」

 

「何、紗夜?」

 

「綾斗、シルヴィアとオーフェリアに告白された?」

 

紗夜が突然爆弾質問をしてきた。

 

「ゲホッ!コホッ!な、なんでそれを!?」

 

俺はその質問に噎せた。

 

「なんとなく。綾斗を見ているときのシルヴィアとオーフェリアの表情が何時もと違っていたから」

 

「「「鋭い。さすが紗夜(ちゃん)」」」

 

こういうときの紗夜の勘はとてつもなく鋭いのだ。

 

「あー。うん、告白されたよ」

 

「・・・・・・それで?」

 

「えーと、シルヴィとオーフェリアと付き合うことになりました。はい・・・・・・」

 

俺は正直に答えた。

シルヴィとオーフェリアは頬を赤くしている姿が見え、ユリスはやれやれと呆れていた。

 

「おおー・・・・・・・ついに、付き合うことになった。それは良かった良かった」

 

「え、え~と、それだけ?」

 

「・・・・・・?うん」

 

「ほ、他にはないの?」

 

「・・・・・・?私は綾斗とシルヴィア、オーフェリアの恋を応援する。それ以外に何がある?」

 

「あー、いや、何も」

 

俺はそう答えると紗夜は満足したように頷いた。

 

「全く。おい、沙々宮」

 

「なに、リースフェルト?」

 

「三人が付き合っていることは、不用意に話すなよ」

 

「・・・・・・それくらいわかってる」

 

「ならいい」

 

紗夜はユリスの言葉に首を縦に振って言う。

 

「・・・・・・ところで綾斗、さっきの万応素は何?」

 

「さっきのって?」

 

「・・・・・・綾斗の万応素を抑え付けた魔方陣の能力」

 

「そ、それは・・・・・・」

 

俺はオーフェリアからの問いに口を濁らす。

 

「綾斗くん、さっきの万応素。あれって遥お姉ちゃんのだよね」

 

シルヴィが俺に聞いてきた。

 

「・・・・・・・・」

 

「もしかして、あの時遥お姉ちゃんが綾斗くんにしたのって・・・・・・」

 

状況がわからないオーフェリアたちは首をかしげた。

 

「・・・・・・・・・オーフェリア。さっきの魔方陣から発せられた能力は姉さんのだよ。そしてシルヴィ。シルヴィが推測してる通り、俺は姉さんに力の大半を封印されているんだ」

 

「ん?どういうことだ?」

 

「・・・・・・姉さんの能力は万物を戒める禁獄の力なんだ」

 

「・・・・・・つまり、綾斗は綾斗のお姉ちゃんの能力によって力を封印されているってことよ、ユリス。でも、それで納得いったわ」

 

「そう、か・・・・・・。と言うことは、やはりあれがおまえの本当の実力なのだな?」

 

「そうとも言えるし、違うとも言える、かな」

 

「なんだそれは」

 

「だって満足に扱えないものを『本当の実力』なんて言うのはおかしいでしょ」

 

「十分使いこなしていたように見えたが?」

 

「制限時間内なら、ね。それに五分以上持ったのも今回が初めてなんだよ?しかもその後はこうして身動きすらままならなくなっちゃうんだから、とてもじゃないけど偉そうなことは言えないよ」

 

「・・・・・・つまり、綾斗は制限時間が超えると、反動で動けなくなるってこと?」

 

「うん」

 

紗夜の問いに肯定を示すと、四人は神妙な顔付きになった。

 

「・・・・・・おまえの姉は何故そんなことを?」

 

「出来れば俺も聞いてみたいんだけどね。でも、姉さん5年前に失踪しちゃってるんだ」

 

「・・・・・・ハル姉が失踪?」

 

「うん」

 

「・・・・・・なんで教えてくれなかったの?」

 

「うっ・・・・・。ごめん、紗夜」

 

「・・・・・・でも、まあ、綾斗にも綾斗で事情があったと思うし別にいい」

 

「紗夜・・・・・・」

 

「でも、シルヴィアとオーフェリアには謝っといたほうがいい」

 

紗夜は視線でシルヴィとオーフェリアを示す。

 

「二人ともごめんね、これの事言わなくて」

 

「・・・・・・綾斗には何かあると思っていたから・・・・・・それに、ちゃんと話してくれたからいいわ」

 

「そうだね。私も見ていたのに知らなくてごめんね綾斗くん」

 

「大丈夫だよ、二人とも。きっと姉さんにもなにか事情があったんだろうし、これにもきっと意味があると思うんだ」

 

俺は気まずそうに言うシルヴィとオーフェリアにそう言い、身体を伸ばす。

所々激痛はするが動けないほどじゃない。

 

「・・・・・・ところでユリス。聞きたいことがあるの」

 

「ん?なんだオーフェリア?」

 

「あなた《鳳凰星武祭(フェニクス)》に出るみたいだけど、そののタッグパートナーって、もう決まったのかしら?」

 

「うぐ・・・・・・!」

 

「その反応を見る限り、まだみたいね」

 

「そ、それはだな・・・・・・・」

 

ユリスは露骨に顔をしかめてオーフェリアからの視線をそらす。

 

「ユリス。なら、俺とパートナーを組んでくれないかな?」

 

「なに?」

 

「ユリスが言っていた基準値ほど、清廉潔白ではないけど真っ黒って訳じゃないし、頭の回転もまあ人並みくらいの早さはあると思うけど・・・・・・・・」

 

「ほ、本気なのか・・・・・?」

 

「うん」

 

「だ、だが、シルヴィアとオーフェリアはいいのか?わ、私が綾斗とタッグを組んで・・・・・・」

 

ユリスはシルヴィとオーフェリアの方を見て震えた声で尋ねた。いつもの自信に満ちた声とはまるで違う声だ。

 

「私はいいよ。綾斗くんが決めたことなら私は口出ししないもん」

 

「・・・・・・私は元々、綾斗にユリスのタッグパートナーをお願いしようとしていたの。だから、私はもちろんいいわよ」

 

「オーフェリア・・・・・・シルヴィア・・・・・・」

 

「・・・・・・あら?ユリス、ひょっとして照れてるのかしら?顔が真っ赤よ」

 

「ば、馬鹿、そんなわけあるか!」

 

ユリスはオーフェリアに指摘され恥ずかしそうに顔を背ける。

 

「・・・・・・ユリス?」

 

「・・・・・・まったく、本当に変わったやつだな、おまえは」

 

「それじゃあ・・・・・・」

 

「ああ!こちらこそよろしく頼むぞ、綾斗」

 

「こちらこそよろしくユリス」

 

俺とユリスの《鳳凰星武祭》でのタッグパートナーが今ここにできた瞬間だった。

まあ、俺は未だにシルヴィに膝枕されていると言う状況なのだが・・・・・・

 

~綾斗side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~outer side~

 

綾斗とユリスの《鳳凰星武祭》出場でのタッグパートナーが出来たとき、ある場所で――――――

 

 

 

 

「まさかやっちまったんじゃないでしょうね」

 

「大丈夫ですよ。まだ、息はありますから」

 

「ええ~・・・・・・」

 

街灯の影から染み出るように現れた少年と、不気味な形状の剣を握った少女は、目の前で全身から血を吹き出して倒れている少年を見て感嘆と話していた。

 

「取り敢えず、あとの処理はあなた方《影星》に一任します。なので、ちゃんと情報は引き出してくださいね」

 

「そりゃもちろん。うちらはそれがお仕事ですから」

 

「結構」

 

少年は横たわる少年―――――サイラス・ノーマンに視線を向け、肩をすくめる。

 

「で、あっちはどうなったんです?」

 

「先ほどユリスから連絡がありましたが、うまくいったようですよ」

 

「あれ?嬉しそうな表情っすね?何かいいことでもあったんすか?」

 

「あら・・・・・・あなたに気取られてしまうとは、私もまだまだですね」

 

「いやいや。それくらいわかりますって」

 

「そうですか?」

 

「そうっすよ」

 

少年は呆れたように少女に言う。

 

「それより、さっさとそれを終ってくれませんか、生徒会長?」

 

少年は不気味に輝く双剣の純星煌式武装を握る少女―――――クローディア・エンフィールドに、向かって言う。

 

「それもそうですね」

 

クローディアは自身の持つ純星煌式武装《パン=ドラ》を待機状態にしポーチに収納する。

 

「では、おれはこれで」

 

「ええ。後はお願いしますね。夜吹英士郎くん?」

 

「わかってますって」

 

少年―――――夜吹英士郎は路地裏から立ち去っていくクローディアの背を見て淡々と言う。

そして、その場に影が差し込み、再び夕日に照らされたときにはすでにそこには誰もいなかった。

 

~outer side out~

 

 

 

 




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