学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語 作:ソーナ
今回から第2章に入りますのでよろしくお願いいたします。
出会い
~綾斗side~
「え、明後日からツアーなのシルヴィ?」
「うん」
「・・・・・・どのくらいの予定なの?」
「え~と、確か3週間程だったかな?」
「結構長いね」
「イヤー、1ヶ月や半年のツアーライブよりはまだいいよ~」
「・・・・・・それは確かに」
サイラスの起こした襲撃事件から数日。俺とシルヴィ、オーフェリアは自宅で夕食後のティータイムをしていた。
俺たち3人はあの後、紗夜とユリスたちを迎えに来たクローディアに後を任せ、自宅へと戻ってきていた。
ちなみにその場で《
そんなユリスを見るのは初めてだったので多少驚いたのが印象だった。
そんなこんなで話を戻して、
「そうなると、3週間はオーフェリアと二人だけなんだね」
「・・・・・・そうなるわね」
「あっ、言っとくけどオーフェリアちゃん、抜け駆けはダメだからね」
「・・・・・・わかっているわよシルヴィア。やるときは二人で、よね」
「うん」
「ぬ、抜け駆け?」
「なんでもないよ綾斗くん♪」
「・・・・・・なんでもないわよ綾斗」
「そ、そう・・・・・・」
シルヴィとオーフェリアの解答に俺は深く聞かないでおくことにした。聞いてしまうと何かとてつもなく取り返しの付かない事になる可能性があると予想したからだ。
「あ~あ、でもその間綾斗くんと一緒にいれないんだよね~」
「ん?電話すればいつでも会えるけど?」
「う~ん、そうじゃないよ。なんて言うのかな、綾斗分が無いから」
「あ、綾斗分?な、なにそれ?」
「綾斗くん成分、略して綾斗分」
「・・・・・・または綾斗エネルギー、略して綾エネ」
俺はシルヴィとオーフェリアが真顔でそんなことをいい、ソファーからずっこけた。
幸いにもカップはテーブルの上においてあるから割れたり溢れたりする事はなかった。
「そんなわけで、今日と明日で3週間分の綾斗分を補充しよっと」
そういうと否やシルヴィはカップを置き俺に甘えてきた。
「ニャー♪」
「か、かわいいわシルヴィア!」
シルヴィの甘猫風景にオーフェリアはいつの間にか構えた端末でシルヴィを撮っていた。
「ニャ~♪」
あ、あれ、二人ってこんな性格だったかな?
俺はシルヴィとオーフェリアの二人を見てそう思わずにいられなかった。
まあ、シルヴィのこの姿は他では見られないからな。オーフェリアもだけど。
「あ、そう言えばオーフェリア」
「・・・・・・なに?」
「オーフェリアって身体から瘴気が漏れ出ているんだよね?」
「ええ。綾斗たちと一緒にいるときは出来るだけ漏れでないようにしているわ」
「もしかして綾斗くん。オーフェリアちゃんの漏れ出ている瘴気をどうにかしようと思ってる?」
「まあね。瘴気が漏れ出ているとオーフェリアに余り触れられないし。なにより俺自身がどうにかしたい」
「・・・・・・気持ちは嬉しいわ、けど無理よ。これは無尽蔵にあふれでているもの」
「けど、やってみないと分からないと思うよ」
「綾斗くんはどうやってオーフェリアちゃんから漏れ出ている瘴気を消すつもり?」
「これを使ってやってみようと思う」
俺は近くにある、シルヴィの銃剣型煌式武装《フォールクヴァング》の隣にある俺の純星煌式武装《
「《黒炉の魔剣》?」
「・・・・・・それでどうやって?」
「《黒炉の魔剣》を使ってオーフェリアの瘴気を焼き切ってみる」
「でもそれだとまた出るんじゃないかな?」
「普通にやったらね」
「?・・・・・・どういうこと?」
「オーフェリアの内部。・・・・・・・瘴気を産み出している所を焼ききる」
俺の台詞にシルヴィとオーフェリアは驚きの表情を出した。だが俺自身実際、成功するかはわからない。
俺はこの考えを聞いたときの事を二人に話す。
この考えを編み出したのは《黒炉の魔剣》だ。
適性検査で《黒炉の魔剣》に触れたとき頭のなかにある声が聞こえてきたのだ。
その声は可憐で優しい音を出す女性の声だった。
そしてその声は聞いてきた。
『あなたの守りたいものはなんですか?何故あなたは私を求めるのですか?』
と。
その時俺の頭のなかにオーフェリアが言ったことが過った。彼女は元々は
オーフェリアは望んで自らこうなったわけでは無いのだ。俺はその時、ある決意をしていた。オーフェリアを決して独りにしない、と言うこととなにがあっても信じ守る、と。それはオーフェリアに限ったことじゃない。シルヴィや紗綾、姉さんもだ。
そして俺は思念で言った。
『俺はシルヴィやオーフェリアを・・・・・・俺の関わっている全ての人を・・・・・・そして姉さんを守りたい!その為に俺に力を貸してくれ!《黒炉の魔剣》!!』
と。
結果、《黒炉の魔剣》は発していた炎を納め俺を適合者として認めた。
そしてまた聞こえた。
『あなたの思い、しかと受け取りました。私は全てを焼き切る剣。触れなば溶け、刺せば大地は坩堝と化さんと云うものなり。あなたに今、力を授けます。あなたの愛するもの、守りたいものを守るために。――――私の名はセレス。この純星煌式武装、《黒炉の魔剣》の思念です』
『俺の名は天霧綾斗。これからよろしく、セレス』
『よろしくお願いします。我が
と。
頭に直接聞こえてきたため回りには気取られなかった。
時間は1秒と言うほんの一瞬だ。
そして俺は《黒炉の魔剣》―――――セレスに聞いた。
『あふれでる星辰力はどうしたら消すことができるかな?』
と。
俺の問いにセレスは。
『星辰力があふれでる場所に私を使えば消し去ることが出来るかもしれません』
と、返してきた。
俺はその事をシルヴィとオーフェリアに話した。
「・・・・・・驚いてなんとも言えないわ」
「うん。私も驚いたよ・・・・・・」
案の定二人は驚きの表情を出してそう言う。
俺自身、純星煌式武装が思考を持って話してくるとは思わなかったのだから。
「実際、今でも俺は驚いているんだよ?《黒炉の魔剣》―――――セレスが話しかけてくるなんて思わなかったんだから」
「でも納得がいったよ。どうして《黒炉の魔剣》の所有者があまり現れなかったのか」
「・・・・・・ええ。気難しいと聞いていたのだけど納得よ。一部の人しか《黒炉の魔剣》が気に入らなかったのね」
「多分ね。セレスに聞いたんだけどあの時レスターは、力だけを求めていたみたい。セレスはただ適当に扱わられるのがイヤだったんだって。だからあの時セレスはマイナス値になったんだってさ」
あの後セレスから聞いたことを俺は伝えた。
「あー。確かに・・・・・・。あの時ユリスさんに勝負を吹っ掛けていた時から、彼は力だけを求めているんじゃないかな、って感じてたよ」
「ユリスが言っていたわよ、レスターって人はただ力を求めるだけって」
「そう言えばそんなことユリスが言っていたような・・・・・・。まあ、でも俺はレスターのそんな所は嫌いにならないかな?」
「どうして?」
「レスターはただ認めてもらいたいんだよ。それにランディも言っていた、レスターは正々堂々とした勝負を好み、自分の力で勝利を掴んでいるって。まあ、セレスに力だけを求めていたってのはどうかなって思うけど・・・・・」
「・・・・・・まるで昔の綾斗みたいね」
「え?そうかな?」
「ええ。あの時の綾斗はハルお姉ちゃんだけを見ていたから」
「そうだね~。それであんなこともしちゃったんだから」
「うぐっ・・・・・・!」
二人が言っている『あんなこと』とは姉さんを馬鹿にした門下生数人を圧倒的力の差で叩き潰したことだろう。
「そ、それはほら、あの時姉さんを馬鹿にされたからで・・・・・」
「でも、それで遥お姉ちゃんに怒られたでしょ」
「そ、そうだけど・・・・・・」
「・・・・・・今でも綾斗はハルお姉ちゃんを追い掛けているわよね」
「ま、まあ・・・・・・」
「シスコン過ぎじゃないかな綾斗くん」
「・・・・・・シスコンね綾斗は。まあ、昔からそんな気はしていたけど」
「ぐっ・・・・・・。し、シスコン・・・・・・」
俺は二人にシスコンと言われ、心臓に矢が突き刺さったような気がした。
まあ、俺自身若干シスコンかなとは思っていたけど・・・・・。
「ま、まあ、話は戻して。可能ならやってみたいんだけど・・・・・・どうかな?」
俺は話を戻すためオーフェリアに聞いた。
「・・・・・・可能ならやってほしいわ。でも・・・・・・」
「《
「一応《鳳凰星武祭》の願いでオーフェリアの所有権と姉さんの捜索をお願いしようと思うんだけど・・・・・・」
「なら、今の案はオーフェリアちゃんの所有権を《悪辣の王》から奪った後の方が良いかもね」
「そうしたほうがいいね」
俺はシルヴィの言葉に頷いた。
「で・・・・・・なんでオーフェリアまで甘猫みたいにしてるの?」
「・・・・・・ダメだったかしら?」
オーフェリアは子猫みたいに首をかしげた。
「い、いや、そんなことは無いんだけど・・・・・・」
「けど?」
「いや、シルヴィが・・・・・・」
「シルヴィア?」
オーフェリアがシルヴィの方を向くと、シルヴィは先程のオーフェリアと同じようにいつの間にか構えた端末でオーフェリアを撮っていた。
「オーフェリアちゃん、もっと綾斗くんに甘えて!」
「・・・・・・こ、こうかしら?」
シルヴィがオーフェリアにそうお願いすると、オーフェリアはさらに近寄ってきて、
「ニャ、ニャー?」
先程のシルヴィと同じように猫の鳴き声をした。
右手を招き猫のような振り付けをして。
「ぐはっ!」
「し、シルヴィ!?」
突如シルヴィが吐血したかのように倒れた。
「だ、大丈夫シルヴィ?」
「オーフェリアちゃんの甘猫姿・・・・・・・チョーかわいいよ!」
シルヴィは興奮したように言った。
「・・・・・・そういえば昔もこんなことあったわね」
オーフェリアが思い出したかのように呟いた。
そう、シルヴィは昔からこういうかわいいものに眼がないのだ。よくそれで、紗綾とオーフェリアはシルヴィの着せ替え人形とさせられていたのだ。
「あはははは・・・・・・・・」
当時の事を思いだし俺は苦笑いを浮かべた。
そのあとシルヴィはオーフェリアに頬擦りをしたりして思う存分甘えていた。ちなみに、そのなかには俺も含まれていたりする。
まあ、今日は金曜で明日は休みだからかな。
そんなわけで、翌日俺はシルヴィとオーフェリアに思いっきり甘えられました。ちなみに家に来た紗夜は端末を持ちながら独特のサムズアップをしながらシルヴィとオーフェリアの写真を撮り、ユリスはオーフェリアのその姿に絶句していたとここに記しておこう。
週明け
「ふぅ・・・・・・・。今日はここまでにしようかユリス」
「そうだな・・・・・・」
俺は展開していた《黒炉の魔剣》――――セレスを待機状態にし収納ポケットにしまった。
日曜はシルヴィがペトラさんとともにツアーライブに行ったのを見届け、自宅の地下のトレーニングルームでオーフェリアに手伝ってもらって特訓した。そして今日、授業が終わり放課後になると星導館にあるトレーニングルームで《鳳凰星武祭》のトレーニングをしていた。
「それにしても《黒炉の魔剣》はやはり封印を解放しないと使えないか」
「うん・・・・・。今の段階だと5分が限界かな」
「5分・・・・・・か」
「まあ、通常の煌式武装なら使えるんだけどね」
俺は収納ポケットに入っている剣型煌式武装を取り出して言う。
「ふむ・・・・・・やはり、一度作戦を考えた方が良さそうだな」
「ごめん・・・・・・」
「別に謝ることではないだろう。《鳳凰星武祭》まであと1ヶ月と少し・・・・・・それほど時間があるとは言えないがなんとかなるだろう」
ユリスはそう言うと軽く伸びをする。
すると。
『そろそろ退室時間となります』
壁のスピーカーからそんなアナウンスが聞こえてきた。
「それじゃあまた明日だな」
「そうみたいだね」
俺とユリスは手早く身支度を整えトレーニングルームから出て分かれた。
ユリスはそのまま寮に、俺は自宅へと帰っていった。
自宅前につくとすでにオーフェリアが帰ってきているのか、明かりがついていた。
「ただいま」
「・・・・・・お帰りなさい綾斗」
「ただいまオーフェリア」
中に入るとオーフェリアが部屋着にエプロンを着けて左手にお玉を持った状態で出てきた。
「・・・・・・・どうかしたの綾斗?」
一回自室に戻り部屋着に着替えリビングに戻ってソファーに座りながら部屋を見渡す俺にオーフェリアが聞いてきた。
「あ、いや・・・・・・シルヴィがいないとなんか家が少し暗いかなって思ったんだ」
「・・・・・・それは私も思ったわ。シルヴィアがいるといないとでこうも変わるのね」
オーフェリアは台所のIHを止めて、エプロンを脱いで俺の腰かけるソファーの隣に座った。
「そうだね。子供の頃は紗夜も一緒で4人一緒にいたけど、紗夜とオーフェリアが海外に引っ越して、俺とシルヴィの二人だけになって、更に姉さんもいなくなっちゃったから、少し寂しかったかなあの頃は・・・・・・」
「それは私もよ・・・・・・・。両親を事故で失って天涯孤独の身になった私はあの頃、かなり塞ぎ込んでいたわ。綾斗やシルヴィア、紗夜とハルお姉ちゃんに会いたいって。何時も思っていたもの・・・・・・・。でも、ユリスと出会ってあの子に私は元気付けられた」
オーフェリアは懐かしむようにして語った。
「でも、孤児院の借金の肩代わりとして統合企業財体、フラウエンロープ系列の研究所に引き取られ、アルルカントの《
「オーフェリア・・・・・・」
「・・・・・・でも、またシルヴィアや紗夜と出会って微かな希望も生まれたわ。そして、綾斗にも再会した。・・・・・・・綾斗、あの時気付いていたかしら私が少しだけ泣いていたことを?」
「え?そうだったの?」
「・・・・・・ええ。嬉しかったものまた3人に出会えて。・・・・・・・でも私は今はディルクの所有物。だから、今こうして会えていることが奇跡なのよ」
「それは違うと思うよオーフェリア」
「なぜ?」
「シルヴィや紗夜ならこういうと思うよ。『それは奇跡なんかじゃなくて運命だって』。子供の頃、4人で誓ったよね、離れていても俺らは変わらない何処にいてもまた会おう、って」
「・・・・・・そんなこともあったわね。あの頃が懐かしいわね・・・・・・。そうね、確かにこれは奇跡なんかじゃなくて運命なのかも知れないわね。私たち、4人の」
「ああ。だからオーフェリアも待っていてくれ。俺が必ずユリスと一緒に《鳳凰星武祭》で優勝してオーフェリアの所有権を奪還してくるからさ」
「・・・・・・ええ。待っているわ」
オーフェリアは目尻に涙を浮かべ微笑んで言った。
「それじゃあそろそろ夕飯にしましょう」
「そうだね」
そのあとオーフェリアの作った夕飯を食べ、それぞれ風呂に入り終わりのんびりしていると、ツアー中のシルヴィからテレビ電話が来たりして一日を過ごした。
シルヴィが不在の生活から2週間が立ったある日の放課後。
星導館
「まずいなあ、これじゃちょっと間に合いそうにないぞ・・・・・・」
今俺は薄く汗をにじませて、木々の間を縫うように中庭を駆け抜けていた。
遅刻の原因は担任である八津崎先生から雑用を押し付けられたことが原因なのだが・・・・・・時間に特に厳しいユリスがそれで納得してくれるかどうか。
ここ最近、俺とユリスはタッグでの訓練をしていた。
もっとも、俺もユリスもタッグ戦の経験がないため大苦戦してるが。
「せめて近距離での連携くらいはなんとか形にしないと、俺ごと焼かれかねないからな―――――」
中庭を抜け、中等部校舎と大学部校舎を結んでいる渡り廊下を横切ろうとしたそのとき、
「―――っ!?」
ちょうど死角になっていた柱の陰から、一人の女の子が唐突に現れた。
事前に人の気配は感じていたが、気づいたときにはすでに遅く慌てて速度を緩めるが、間に合わない。
「―――っ!?」
俺に一瞬遅れてその女の子も気が付いたようで、驚いた表情をして視線を俺に向けていた。
このままでは正面衝突は免れない。
そう判断した俺はかなり無理矢理に方向転換を試みた。
無理矢理なその行動に、身体中に電撃に似た痛みが迸った。
これで回避できるかと思いきや――――
「えっ?」
「きゃっ・・・・・!」
何故か身をそらしたその先に、女の子の顔があったのだ。
さすがにそれは避けられず、結局俺とその女の子は正面から派手にぶつかることになった。
「キミ!大丈夫?怪我はない?」
「あ、はい・・・・・・大丈夫、です」
「本当にごめん!」
恥ずかしそうに微笑みながら小さな声で答えた女の子に、俺は深々と頭を下げ、改めてその女の子を観た。取り敢えず目立った外傷や傷はないようで安心した。
――――が、同時にもう一つ重大なことに気が付き、瞬時に目をそらした。
何故なら、女の子が膝をたてているため、思い切りスカートが捲れてしまっているのだ。
「はぅ・・・・・・っ!」
女の子もそれに気づいたのか、わたわたと焦った様子でスカートを直し、縮まるかのように両手でぎゅっと自分の体を抱き締めた。
涙目で怯えるような姿は小動物を思わせるが、今度は逆にそれがかえって女の子の豊満な胸を強調してしまっていることに気が付いてなかった。
その女の子は中等部の制服を着ているため、少なくとも俺よりは年下だとわかった。
くりくりとした大きな瞳と、ツンとした鼻が可愛らしい。銀色の髪を二つに結び、背中に流している。にいかにも気弱そうな雰囲気を全身から発しているが、シルヴィやオーフェリアとは違う感じのかなりの美少女だ。
「その・・・・・・ごめんね。急いでいるからって、不注意だったよ」
俺は若干視線をそらして手を差し伸べた。
「い、いえ、わたしの方こそごめんなさいです。音を立てずに歩く癖が抜けなくて。いつも伯父様に注意されるんですけど・・・・・・」
俺の手を、おずおずと取り立ち上がった女の子はスカートの埃を払うと、ぺこりとお辞儀をして言った。
「そうなんだ・・・・・・・って、ちょっと待って。そこ、なにかついてるみたいだ」
「ふぇ・・・・・・っ?ど、どこですか?」
俺が指摘すると女の子は慌てた様子で髪に手をやるが、見当違いの場所ばかり探っていた。
その女の子のおろおろする可愛らしい姿に、幼い頃のシルヴィを思いだし、俺は苦笑しながら女の子の髪に手を伸ばした。
「ほら、動かないで」
「え・・・・・・」
俺は髪に絡まっている小指ほどの小枝を、そっと髪を痛め付けないように優しく取り除いた。
「あ、ありがとうです」
女の子は顔を真っ赤にしてお礼を言った。
「気にしないで。・・・・・・・これはキミの?」
俺は女の子のすぐ横に落ちていた物を拾い上げ渡した。
「あ、はい。そうです」
「はい」
「あ、ありがとうございます。あの・・・・・・先輩の名前はなんて言うんですか?」
「俺は高等部1年天霧綾斗、特待転入生として一か月前に来たばかりなんだ」
「天霧先輩、ですか。わたしは中等部1年、刀藤綺凛、です」
「よろしくね刀藤さん」
「は、はい、よろしくです。天霧、先輩」
女の子―――――刀藤さんと挨拶をすると、ふいに中等部校舎の方から大きな声が響いてきた。
「綺凛!そんなところでなにをやっている!」
「・・・・・・は、はいっ!ごめんなさいです、伯父様!すぐに参ります!」
刀藤さんはビクリと身をすくませて、焦った様子だった。
「そ、それじゃ、天霧先輩・・・・・・!」
「ああ、うん。またね刀藤さん」
「は、はい」
刀藤さんは中等部校舎の入り口に立っている壮年の男性のところに小走りで向かっていった。
かなり体格のいい男性だが、星辰力が全く感じられない、恐らく《星脈世代》ではないだろう。
刀藤さんの親族なんだろうが、親族といえども学園の敷地には容易に立ち入ることはできないはずだ。ここに立ち入っているということは、あの男性は学園の関係者なのだろう。
漠然とそんなことを考えていると、ふいに携帯端末が着信を知らせた。
「あ・・・・・・」
はっと思い出して時間を確認すると案の定、約束の時間はとうに過ぎていた。
つまり、この着信は・・・・・・。
嫌な予感がしながらも・・・・・・というよりも半ば確信をもって空間ウインドウを開いた。
ウインドウには不機嫌そうなユリスがこちらを睨んでいる姿が映し出されていた。
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