学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語   作:ソーナ

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星導館序列一位

~綾斗side~

 

「―――――というわけで、その人たちについて何かわかるかな?」

 

「ほっほぉ、なるほどなるほど、アルルカントの連中がうちにねえ」

 

アルルカント・アカデミーのカミラとエルネスタの二人との会合の翌日の昼休み、歩きながら俺は夜吹にアルルカントの二人について聞いていた。

 

「うん。夜吹なら知ってるんじゃないかなって」

 

「任せな。えっとー、まずは・・・・・・・」

 

夜吹は空間ウインドウを表示させ、昨日の二人組を映し出した。

 

「このエキゾチックな美人さんはカミラ・パレード。アルルカント研究院所属。アルルカントにおける最大派閥《獅子派(フェロヴィアス)》の代表だな。煌式武装の研究開発が専門で、彼女のチームが作成した煌式武装を使ったタッグが昨年の《鳳凰星武祭(フェニクス)》を制してるな。他の二つの《獅鷲星武祭(グリプス)》と《王竜星武祭(リンドブルス)》でも彼女の作成した煌式武装を使った学生がかなりのポイントを稼いでいる。昨シーズンアルルカントを総合成績二位に押し上げた立役者だ」

 

「へぇ。そんなにすごい人だったんだ」

 

俺は昨日のカミラを見て感じた第一印象は苦労人ということだったのだが、夜吹の説明で凄いということがわかった。

 

「で、もう一人の方はエルネスタ・キューネ。アルルカントきっての天才と名高い《彫刻派(ピグマリオン)》の代表なんだが・・・・・・」

 

「どうかしたの?」

 

「いや、実はこのエルネスタってやつに関してはあまり情報がないんだよ。聞いた話だと、かなりエキセントリックな性格の持ち主らしいが」

 

「あぁー」

 

昨日のことを思いだし、カミラが苦労人の理由がわかった気がする。

この時、俺はカミラに敬意を懐いた。

何故なら近くに似たような感性の持ち主がいるからだ。

 

「ただまあ、弱小派閥だった《彫刻派》をほとんど一人で一大勢力にまで叩き上げたらしいから、やり手なのは間違いないだろうな」

 

「ところで、その《獅子派》とか《彫刻派》とかってのは?」

 

「星導館にも言えるんだが、どこの学園も多かれ少なかれあるんだが、特にアルルカントってのは内部勢力争いが激しいんだ。研究内容によって派閥が分かれていて、それが研究資金やら実践クラスの有力学生やらを取り合ってる」

 

そう言うと夜吹は新たにもう一つ空間ウインドウを展開させた。

そのウインドウには円グラフのようなものが記されていた。

 

「ちなみにこれがアルルカントの派閥の勢力図だ。そして、最大勢力は煌式武装の研究開発を行っている、この《獅子派》だ」

 

「圧倒的じゃないか」

 

夜吹が展開させた円グラフの半分は《獅子派》の色で埋まっていた。

 

「ただアルルカントは図体がデカい反面、纏まりに欠けていてな。しかもアルルカントは生徒会より研究院の議会の方が強いんだが、議決には三分の二の賛成票が必要だ。これを確保するためには何処かよその派閥と手を組まなくきゃならない」

 

「へぇ。そりゃ大変だ」

 

「ああ。《獅子派》は以前、生体改造技術なんかを研究している《超人派(テノーリオ)》ってとこと連携してたんだが、何年か前にこの《超人派》が相当な失敗をやらかしたみたいで、大きく勢力を減退させたらしい」

 

「相当な失敗?」

 

「ああ。なんでもでフラウエンロープ系列の研究所で《大博士(マグナム・オーパス)》がトラブルを発生させたとか」

 

「大・・・・・・・博士・・・・・・?」

 

「天霧?」

 

俺は《大博士》という単語に身体が硬直した。

オーフェリアがあの時言っていた事と同じだったからだ。

 

「夜吹、その失敗って何年前だ?」

 

「え?あー、確か5~6年くらい前だったか?だが、噂で聞いただけだからなぁ。信憑性は低いと思うぜ」

 

「そう・・・・・・」

 

俺はそれで確信した。

アルルカントの《超人派》の失敗は《大博士》がオーフェリアにした人体実験、だと。

 

ギリッ!

 

許せない。

人体実験を認可したアルルカント自体が俺は許せなくなっていた。恐らくシルヴィと紗夜も同じく反応をするだろう。そしてもちろん、ユリスも。それにもしこの話を姉さんが聞いていたら物凄く激怒する。姉さんはオーフェリアとシルヴィ、紗夜を妹のように可愛がっていたから。実際、俺は今すぐアルルカントに行ってアルルカント自体を滅ぼしたい気持ちで一杯だった。もし今この場に《大博士》がいたら、俺はセレスを使って斬っていただろう。それも細かく。原型を止めていないほどに。

それを思っていた俺は無意識に両手を強く握っていた。

 

「お、おい?天霧?」

 

そこに夜吹が心配したような声で聞いてきた。

その声には若干怯えが含まれていた。

 

「大丈夫か天霧?」

 

「あ、うん。大丈夫。ごめん話を折っちゃて」

 

「まあ、構わないけど。話を戻すぞ。んで、その《超人派》が減退して、《獅子派》が新たに手を組んだのが《彫刻派》ってわけだ」

 

「なるほどね。ちなみに《彫刻派》は何を研究してるの?」

 

「サイバネ技術や擬形体(パペット)の研究開発だったか」

 

「なるほど」

 

昨日彼女が言っていたことは本当らしい。

そして今回の《鳳凰星武祭》に参加ということは恐らくカミラの作成した煌式武装を持った、エルネスタの擬形体が出場するのだろう。

二人の代役として。

 

「そう言えば基本的な疑問なんだけど、どうしてアルルカントじゃ学生が研究開発までやってるんだろう?統合企業財体に任せて、学生は《星武祭(フェスタ)》へ集中させた方が効率がいいと思うけど・・・・・・?」

 

「ああ、そりゃ適正の差だよ。万能素(マナ)星辰力(プラーナ)を扱う研究に関しちゃ《星脈世代(ジェネステラ)》の方が圧倒的に向いてるらしい」

 

「へぇ」

 

「ちなみにアルルカントのコンセプトは、どうせ《星脈世代》を集めるんだったら、そいつらも一緒に育成しちまおう、らしい」

 

「なるほどね」

 

そのまま夜吹から聞きながら話していると、視界の端に二つの影を見つけた。

 

「ん?」

 

「おわっ。おいおいどーした天霧」

 

「いや、あそこ」

 

視線の先には、渡り廊下の柱の影に隠れるように星導館中等部の制服を着た少女と壮年の男性がいた。

 

「あれは―――――」

 

「へへっ、こんなところで面白そうなネタを見つけちまうとは」

 

「――――刀藤さん?」

 

「おっ、さすがのおまえさんもあの刀藤綺凛をしってるか」

 

「え?刀藤さんって、なにか有名なの?」

 

懐から年季の入った手帳を取り出して、手元を見ずに何やらそこへ書きつけている夜吹に問いた。

 

「・・・・・・おまえさん、本気で言ってるのか?」

 

「え、いや、本気だけど・・・・・・?」

 

「だっておまえ、刀藤綺凛って言ったらうちの――――――」

 

夜吹がそこまでいいかけたその時。

 

 

パァン!

 

 

「っ!」

 

乾いた音が響き渡った。

壮年の男が、刀藤さんの頬を、平手で叩いたのだ。

その瞬間、俺の中で何かが弾けとんだ。

 

 

「――――それはお前が考えることではないと言ったはずだぞ、綺凛」

 

「で、ですが伯父様、わたしは・・・・・・」

 

「口答えを許した覚えもない」

 

再び男の腕が振り上げ、刀藤さんがビクリと身をすくませた。

刀藤さんの頬に再び男の手が当たる直前。

 

「――――――はい、そこまで」

 

俺が男の腕を掴んだ。

 

「え・・・・・・?天霧・・・・・・先輩・・・・・・?」

 

刀藤さんが驚いたように目を見開いた。

俺は刀藤さんに軽く微笑み、男の顔を見る。

 

「・・・・・・なんだ、貴様は」

 

一方男の方はわずかに眉を顰め、短く言う。男の視線には冷ややかな侮蔑が宿っており、その声にはあからさまな嫌悪がにじみ出ていた。

 

「どんな事情かはしらないが、無抵抗の女の子に手を上げるのはどうかと思いますけど」

 

「くくっ、笑わせるな。自分の欲のために争いを繰り広げている貴様らが、今さらどの口でそんな綺麗ごとをほざくんだ?」

 

「俺たちは争っているのではなく、競いあっているんです。一方的な暴力と一緒にしないでもらいたい。それに、自分の欲のために争いを繰り広げている、と言いますけど、あなた方も己の欲のために争いを繰り広げていますよね?そんなあなた方と俺たちを一緒にしないでもらえません?」

 

俺は睨みを鋭くして男を見る。

男は僅かに下がり、俺の腕を振り払うようにして鼻を鳴らす。

 

「・・・・・・ふん、今のはただの躾だ」

 

「躾・・・・・・?」

 

「そうだ。これは身内の問題だ。部外者が口出しするな」

 

「身内・・・・・・?」

 

俺は刀藤さんに視線を向けて、説明を求めた。

苛立ち抑えながら。

 

「この方は、わたしの伯父、刀藤綱一郎、です」

 

刀藤さんは脅えた表情をしながらも説明してくれた。

 

「わかったらそこを退け、小僧。そもそも貴様ら《星脈世代》がこの程度でどうにかなるわけないだろう?」

 

「だからといって、痛みを感じない訳じゃない」

 

「!」

 

刀藤さんは、俺の言葉にはっと顔をあげた。

 

「貴方は俺たち《星脈世代》をなんだと思ってるんです?」

 

「ふん、私からしてみれば貴様らなど単なる物としか思っとらんわ」

 

「物・・・・・・?」

 

「ああ、そうだ」

 

「・・・・・・・・・・」

 

正直今の俺はかなり頭に来ている。

 

「たかだか学生風情が生意気な口を叩くものだ。貴様、名前は?」

 

「・・・・・・天霧綾斗」

 

刀藤さんの伯父は懐から携帯端末を取り出すと、手慣れたしぐさでそれを操作し、空間ウインドウを展開させた。

 

「天霧・・・・・・ふん《在名祭祀書(ネームド・カルツ)》入りもしていない雑魚か」

 

この人、今自分の発言でほとんどの星導館の生徒を敵に回したこと分かんないのかな?

 

「ほう、《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》をな――――なるほど、それならば無価値と言うわけでもないか・・・・・・」

 

目の前の刀藤綱一郎がそう呟くのが聞き取れた。

すると、刀藤綱一郎は不適に笑うと、俺へ向き直った。

 

「いいだろう、小僧。貴様が私を気に食わぬと言うなら、どうして欲しいのか言え」

 

「え?」

 

「聞いてやろうというのだ。言ってみるがいい」

 

「ずいぶんと上から目線でいいますね・・・・・・。俺が言いたいことは、もう二度と、刀藤さんに暴力を振るわないことです。それは約束できますか?」

 

「ああ、構わん」

 

俺の言葉に刀藤綱一郎は鷹揚にうなずくと、悪意に満ちた笑みを浮かべた。

 

「――――ただし、貴様が決闘に勝ったならばの話だがな」

 

「決闘・・・・・・?」

 

「伯父様!待ってください!」

 

俺が理解できないなか、刀藤さんも驚いたように声を上げた。だが、刀藤綱一郎は意にも介さないで言葉を続けた。

 

「そうだ。それがこの都市の―――――貴様らのルールだろう?」

 

「確かにそれは俺たちのルールです。・・・・・・ですが、貴方はそのルール外の人間でしょう?それに、貴方は《星脈世代》ではないですよね?どうやって決闘するんです?」

 

「当たり前だ!貴様らのような化け物と一緒にするな・・・・・・!」

 

刀藤綱一郎はそう吐き捨てると、俺を睨み付けながら刀藤さんの背後に回り――――――

 

「貴様の相手は、‘これ’だ」

 

「なっ・・・・・・!?」

 

俺は今度こそ絶句した。

 

「どういうつもりです・・・・・・?」

 

「安心しろ。貴様が負けたところで、こちらから要求するようなことはなにもない」

 

「そう言うことじゃない!何故、刀藤さんと決闘することになるのかと聞いているんです!刀藤さんは関係ないですよね!」

 

これは勝ち負け以前の問題だ。

 

「伯父様!わたしは・・・・・・!」

 

「黙れ。おまえはわたしの言うとおりに動いていればそれでいい」

 

刀藤さんは抗議の声をあげるが、刀藤綱一郎は聞く耳を持たない。

 

「で、ですけど―――!」

 

「ふざけるな!刀藤さんは貴方の姪じゃないんですか!それなのに道具のような扱い・・・・・・彼女の意思は無視ですか!」

 

刀藤さんの言葉を遮り、俺は強めの口調で言う。

 

「だからどうした?これが私の姪で道具扱いして貴様になにか関係あるか?」

 

「大有りですね。貴方は彼女の意思を尊重してない。彼女はまだ中学生なのに・・・・・・。もう一度言います。刀藤さんは貴女の道具ではない。俺は刀藤さんとは決闘はしません。もし、それが彼女の意思なら俺はそれを受けます。ですが、彼女の意思ではなく貴方の命令なら断ります」

 

「ふっ、貴様も道具に過ぎないだろ。特待転入生として入った時点で貴様も道具だ。さらに言うなら、《王竜星武祭》で二連覇を成し遂げたとかいう小娘も道具に過ぎないだろ」

 

俺は刀藤綱一郎のその言葉に猛烈にイラッときた。

《王竜星武祭》で二連覇を成し遂げたのはオーフェリアだ。この人はオーフェリアを道具扱いした。

その時点で俺は許せなくなっていた。

 

「黙れ・・・・・・」

 

「・・・・・・っ!」

 

俺の低く冷たい声に、刀藤綱一郎は勿論のこと、刀藤さんや夜吹、いつの間にか集まっていたギャラリーも退いていた。

 

「綺凛!やれ!」

 

「で、ですが!」

 

「――――――綺凛。まさか私に逆らうつもりか?」

 

「・・・・・・いえ、そんなことは・・・・・」

 

「ならばいい。あの《黒炉の魔剣》を下したとなれば、またそれなりに箔が付く。期待しているぞ」

 

刀藤綱一郎は逃げるかのように、刀藤さんに背を向け、ゆったりとした足取りで距離をとった。

 

「・・・・・・」

 

「刀藤さん、どうしても闘わないといけないのかな?」

 

「・・・・・・ごめんなさいです、天霧先輩。わたしだって先輩と闘いたくなんてないです・・・・・・。でも、仕方がないのです。わたしには叶えたい望みがあります。そのためには伯父様の言うとおりにするしか・・・・・・」

 

刀藤さんは感情を無理矢理圧し殺すなか、それでもなお隠しきれない悲痛が滲み出しながら言った。

 

「わたしは・・・・・・刀藤綺凛は天霧綾斗先輩に決闘を申請します」

 

刀藤さんの声に応えるように、俺と刀藤さんの校章が赤く発光する。

 

「お願いします天霧先輩。出来れば引いてください」

 

「刀藤さん・・・・・・」

 

「わたしのことは別にいいのです。どうにもならないことですから」

 

「―――――わかった。悪いけど、俺も引くわけにはいかない」

 

「そうですか・・・・・・天霧先輩は優しいんですね」

 

刀藤さんは弱々しい苦笑を浮かべて、腰の鞘へと手を伸ばし、

 

「―――――では仕方がありません。わたしも、負けるわけにはいかないのです」

 

その瞬間、俺は大きく距離をとった。

全身の総毛が立ち身体が反射的に動いたのだ。

刀藤さんが鞘からすらりと抜いたのは刀だった。

それも、煌式武装ではなく、現代風に拵えてはいるが、それは間違いなく真剣――――日本刀だ。

 

「――――――決闘を受諾する」

 

右手を胸の校章にかざして、決闘の申請を受諾する。

決闘を受諾するのと同時に俺は星辰力を身体の内側に集中させ、それを圧縮する。

星辰力が高まり、光の火花を伴って俺の周囲に黒紫色の魔方陣が蒼光の光とともに黒紫の鎖とともに弾けとんだ。

そして、俺は《黒炉の魔剣》を起動させ両手で構える。

目の前の刀藤さんは今の光景に驚いたように目を見開いた。だが、構えた剣先は微塵たりとも微動だにしなかった。

 

『セレスいくよ!』

 

『了解綾斗。気を付けて』

 

『うん』

 

俺が思考でセレスと会話すると、刀藤さんの背後にいる刀藤綱一郎の声が飛んでくる。

 

「綺凛、そいつの純星煌式武装とは剣を打ち合わせるな。刀ごと斬られるぞ」

 

刀藤綱一郎はどうやらセレスの能力を知っているらしい。

 

「(まあ、セレスの能力は調べれば分かることだし、取り敢えず今は刀藤さんに集中しないと)」

 

俺は刀藤さんに合わせるように《黒炉の魔剣》を正眼に構える。

 

「――――――参ります」

 

「っ!」

 

刀藤さんが短く言うや否や、次の瞬間には俺の胸元に白刃が迫っていた。

 

「(速いっ!)」

 

俺は反射的にバックステップでかわす。だが、そこに間髪いれずに斬り上げの追撃が迫る。

 

「っ!」

 

その追撃をセレスで受けようとしたが、刃が当たる寸前でその軌道が変化した。

刀藤さんの刀がセレスの刃を避けるように空中で弧を描いて、俺の右小手に切り下ろしてきた。

それを俺はとっさに右手を離しかわし、セレスを左手で構え直し間合いをとる。

 

「――――――天霧先輩、お強いです。びっくりしました」

 

「それはこっちの台詞だよ・・・・・・」

 

そう言うと、俺と刀藤さんは同時に間合いを詰める。

 

『驚きました。まさか私と刃を合わせることなくここまでするとは・・・・・・』

 

『セレスもそう思う?』

 

『ええ。けどこのままじゃヤバイです綾斗。彼女は今の綾斗と同じくらい強い』

 

『確かに。なんとかできないかな?』

 

『現状では難しいよ。それに時間がない』

 

『だね。あとどのくらい持てる?』

 

『長くて残り4分30秒』

 

『そう・・・・・・。なら、攻めるしかないね』

 

俺は刀藤さんの攻撃を避けて、刀藤さんに攻撃しながら念話でセレスと会話する。

剣を撃ち合わせずにかわし続ける攻防が続き、俺はバックステップで間合いをとり、セレスの柄を握る手を見る。

 

「(くっ!時間が・・・・・・!)」

 

俺の両手は軽くだがプルプルと痙攣していた。

 

「(太刀筋は見えているんだ、ギリギリで避けながら・・・・・・いって出る!)」

 

セレスを構え素早く間合いを詰め、上段からの切り下ろしをする。

刀藤さんはそれをギリギリのところで避け、刃を返して制服を軽く切り裂いてきた。

俺はセレスを右手で構えさらに距離を詰める。

 

「焦っている・・・・・・?何故・・・・・・?」

 

俺の攻撃は刀藤さんの左肘により軌道をずらされ、刀藤さんを横を通りすぎていく。

そしてカウンターに刀藤さんの刀が胸元に迫ってきた。

 

「(これも・・・・・・避ける!)」

 

刀藤さんの刀をギリギリで避け、下がってセレスを構える。

が―――――。

 

 

 

決闘終了(エンドオブデュエル)勝者 刀藤綺凛』

 

 

 

「え・・・・・・!?」

 

決闘終了のアナウンスに驚いていると、胸の校章が真っ二つに分かれ地面に落ちた。

俺がそれに驚いていると、

 

『綾斗、校章の重みを忘れてませんでしたか?』

 

と、念話でセレスが少し呆れた声で言ってきた。

 

『あ』

 

セレスの言葉に俺は思い出したかのように言った。

 

『途中まで良かったんですけど、最後の攻撃がダメでしたね』

 

セレスがそう言うなか、刀藤さんは刀を鞘にしまっていた。

 

「ふん、終わったか。行くぞ」

 

自分が闘って勝ったわけでもないのに、刀藤綱一郎はさも自分が勝ったかのように言うと刀藤さんにそう言った。

 

「あ、はい・・・・・!」

 

刀藤綱一郎の言葉に刀藤さんはそう返事し、落ちていた刀をしまっていた袋を手に取り、

 

「あの、その、ごめんなさいです、天霧先輩」

 

俺にそう言うと、刀藤綱一郎の後を追っていった。

 

「あっ・・・・・・」

 

呆然とするなか不意に肩を叩かれた。

 

「ユリス・・・・・・?」

 

左後ろにいたのはユリスだった。

 

「さっさとこの場を離れるぞ。リミットまで時間が余りない」

 

ユリスは周囲に聞こえないよう、小声で言う。

 

『綾斗、残り2分です。急いでこの場を離れましょう』

 

「あ、あぁ・・・・・・」

 

「それと、あとで話してもらうぞ。どんな理由でお前が、ウチの序列一位と決闘することになったのかをな」

 

「えっ!ウチのって・・・・・・」

 

ユリスの言葉に俺は歩いていく刀藤さんの背中を見ながら言う。

 

 

 

「刀藤さんが・・・・・・ウチの・・・・・・・序列一位!?」

 

 

 

 

 

 

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