学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語   作:ソーナ

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綺凛の悩み

~綾斗side~

 

「なるほどな・・・そういう経緯か」

 

「うん」

 

俺は、あの決闘のあとユリスに連れられて彼女が使用しているトレーニングルームに来て、俺は横になって説明していた。

 

「ほら」

 

「あ、ありがとう」

 

ユリスから飲み物を受け取り、喉を潤す。

 

「さて。まず、言っておく。今の私の感情は怒り4割、褒めたい気持ち6割だ」

 

「褒めたい気持ちが多いのは何故?」

 

「む。逆の方が良かったか?」

 

「い、いや、そんなことないけど・・・・・・」

 

「まあ、いい。ちなみに褒めたい気持ちの中には感謝の気持ちも入っている」

 

「感謝の気持ちって?」

 

「オーフェリアのことだ。正直、私もそれを聞いたとき腹が立ったからな」

 

ユリスは似た者同士だと言うかのように肩をすくめていった。

 

「あはは。まあ、実際俺もあれ以上言われていたら我慢できずにあの人斬っていたかもしれないね」

 

「おいおい、それはやめてくれ。いくら私でもそれは擁護できんぞ」

 

『全く、綾斗は本当に殺りそうで恐いです』

 

『それは言わないでよセレス。それにセレスもイラついていたでしょ?』

 

『それは当然です。さすがの私でも綾斗と綾斗の大切な人を道具扱いされたらイラつきます』

 

『あはは、セレスらしいよ』

 

ユリスと会話しながら、俺はセレスと思念で会話をする。

 

「まあ、オーフェリアのこともあるが、自分の姪に手を上げるような親族になにもしなかったら私がお前を炙っていたがな。さすがの私も自分の姪に手を上げる奴を許すわけにはいかない」

 

「ユリスならそう言うと思ったよ。・・・・・・それで刀藤さんなんだけど、うちの序列一位ってホント?」

 

俺はユリスから聞いたときから聞きたかったことを聞いた。

 

「全く・・・おまえは何もしらないのだな。・・・・・・刀藤綺凛は中等部1年にして武器は刀。しかも日本刀一本で星導館序列一位にまで登り詰めた。しかも、今年入学してから負け無しだ。私が星導館で勝てないと思った三人のうちの一人だな」

 

「日本刀一本で負け無し・・・・・・」

 

俺は刀藤さんとの決闘のことを思い出した。

確かに彼女の剣の力量は凄いものだ。あそこまでの高みに辿り着くまでどのくらいの時間がかかったのだろう。

 

「ん、ユリスが勝てないと思った三人のうちの一人?」

 

「ああ、そうだ。ちなみにあとの二人はおまえとクローディアだ」

 

「え!?俺も入ってんの!?」

 

「当然だ。本気のお前の技量はクローディアと恐らく刀藤綺凛さえも凌ぐだろう。まず、一番私が勝てないと思ったのはおまえだぞ?」

 

「そ、そんなに・・・・・・?って、クローディアはどうして勝てないと思ったの?」

 

「ああ、まずクローディアに勝つこと事態が難しいのだ。特にあいつの持っている純星煌式武装≪パン=ドラ≫の未来予知が驚異だ」

 

「み、未来予知!?そんな純星煌式武装があるの!?」

 

「ああ、といってもそう頻繁に使えると言うわけでもないようだがな」

 

「へぇー」

 

俺はクローディアも純星煌式武装を持っていることと、その純星煌式武装の未来予知に驚きをだした。

 

『未来予知、ですか・・・・・・』

 

『ちょっとクローディアと決闘してみたいかも』

 

『私も同じです』

 

『あ、でも未来を読まれるんだよね。どうしたらいいかな』

 

『そんなの決まってるに当然ですよね』

 

『まあね』

 

『『未来が見れないようにすればいい』』

 

思念でセレスと同じ考えに至った俺は、思念でセレスと笑いあった。

 

「さて。おまえの実力が割れてしまったことが問題だが・・・・・・・まあ、その当たりはなんとかなるだろう。幸いにも制限時間がついているということはバレてないしな」

 

「ご、ごめん・・・・・」

 

「別に謝らんでいい。今回の決闘は私にとってもお前にとっても無視できんものだったしな」

 

「そう言ってもらえると助かるよ」

 

そのあと俺はユリスと今後の対策について話し合い、クローディアから新たな校章を受け取ったりと、あっという間に放課後になった。

そして・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

「夜吹から俺にお客さんがいるってメールが来たけど・・・・・・誰だろう?」

 

俺はクローディアから新たな校章を受け取り、刀藤さんのことを話して、いざ帰ろうとしたとき夜吹からメールをもらい高等部の男子寮の前に来ていた。

 

「おっ、来たな天霧」

 

「夜吹、俺に客って?」

 

「2階の応接室に通しているぜ。まあ、おれもはじめ彼女が訪ねてきたときは驚いたけどな」

 

「了解。って彼女?」

 

「行ってみればわかる」

 

「?」

 

俺はあまり利用しない寮の玄関を通り、2階の応接室へと向かった。

その道中、何故か寮内の男子たちから好奇心や嫉妬、憐憫が入り混じった小言を言われた。恐らく俺に来たお客はかなり有名な女性らしい。だが、俺の知り合いで有名な女性、というと・・・・・・・。

 

「(ペトラさんはクインヴェールのOGでかなり有名だけどペトラさんはシルヴィのツアーに行っているし。オーフェリアならユリスか紗夜に連絡ぐらいいれるし、ユリスと紗夜は何時でも会えるし、クローディアはさっき一緒にいたらないし・・・・・・。さすがにアルルカントの二人ってことはないし・・・・・・。誰だろう?)」

 

考えながら歩き、応接室へと辿り着いた。

 

 

コンコン

 

 

応接室の扉をノックすると、

 

『あ・・・・・・ど、どうぞ』

 

中から声が聞こえてきた。

というか、

 

「あれ、この声ってもしかして――――――」

 

聞き覚えのある声だった。

応接室の扉を開け中に入るとそこには。

 

 

「あ、あの、先程はごめんなさいです天霧先輩!」

 

ソファーから立ち上りいきなり謝ってきた少女。星導館学園序列一位―――刀藤綺凛その人がいた。

 

「刀藤さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの!いきなりすみませんでした!」

 

「い、いや、それはいいんだけど・・・・・・」

 

入室と同時に刀藤さんから謝罪を受け、事態に追い付いていなかった俺は、なんとか理解し刀藤さんと対面してソファーに座って話していた。

 

「それより俺の方こそごめん。キミをさらに困らせちゃったみたいで」

 

「い、いえ、そんな・・・・・・!」

 

頭を下げたままの刀藤さんはわずかに顔を上げ、おずおずとこっちの様子をうかがうような視線を向けた。

 

「?どうかした?」

 

「あの・・・・・・お、怒ってないんですか?」

 

「むしろなんで俺が怒らなきゃならないのさ」

 

刀藤さんの問いに苦笑して言う俺に、ようやく刀藤さんの表情が少しだけ緩んだ。

 

「でもまぁ、刀藤さんの伯父さんには少なからず思うところがあるけどね」

 

「う・・・・・・それは、その、誠に申し訳なく・・・・・・」

 

「・・・・・・う~ん、刀藤さんが謝る必要は無いんだけどなぁ」

 

「で、ですが、伯父様は天霧先輩だけでなく、天霧先輩の幼馴染さんに対しても失礼なことを・・・・・・」

 

「オーフェリアのこと?」

 

「はい・・・・・・」

 

「・・・・・・確かに俺だけじゃなくてオーフェリアのこともあの人は道具扱いしたからね・・・・・・。さすがにあの時はちょっとだけ本気で怒ったよ」

 

「あぅ・・・・・」

 

「あ、ごめん。別に刀藤さんに怒ってる訳じゃないからね」

 

再び俯いた刀藤さんに俺は困ったように頭を掻く。

 

「(いい子なのは分かるんだけど、どうにも気が小さいみたい。これであの強さなんだからちょっと反則・・・・・・というよりなんかギャップがすごいような・・・・・・)」

 

今にも泣き出しそうな様子の刀藤さんの頭に俺はぽんと右手を乗せ、優しく撫でる。

 

「はぅ・・・・・・」

 

刀藤さんの顔がほんのりと赤く染まるのを見て、俺は無意識で撫でていた手を引いた。

 

「えっと、それで―――なにか俺に用事でも?」

 

「え?」

 

「まさかわざわざ俺に謝るために来たわけじゃないでしょ?」

 

「いえ、そうですけど?」

 

「ああ、そうなんだ・・・・・・(律儀なんだ刀藤さん。なんとなくだけど刀藤さんの性格がつかめた気がする)」

 

「あ、でも、それだけじゃなくて―――」

 

刀藤さんはそこで言葉を切ると、改めて俺に向き直り深々と頭を下げた。

 

「あの、ありがとうございましたっ!」

 

「・・・・・・はい?」

 

感謝されるようなことに心当たりがない俺は、ポカンとした顔で刀藤さんを見る。

 

「ありがとうって・・・・・・なにが?」

 

「あ、天霧先輩は、一度あっただけの私を伯父様から庇ってくれました・・・・・・!その、あんなことになってしまいましたが、ほ、本当に嬉しかったのです!」

 

「いいよ。結局、俺はキミの力になれなかったわけだしね」

 

「そんなことは・・・・・・!」

 

そう言いかけた刀藤さんに、俺は真剣な表情で人差し指を口の前で立たせた。

さっきから感じる視線に俺は視線を応接室の扉へと向けた。

刀藤さんもすぐに察したのか、息を潜めて視線だけで了解の意を示してくれた。

俺は気配を殺しつつ扉に近づき、タイミングを計ってから、

 

「おわあっ!?」

 

ぐっと扉を手前に引いた。

すると、扉にへばり付いて中の様子を伺っていたらしい連中が、雪崩のように転がり込んできた。

そして、

 

「ずいぶんと取材熱心だね、夜吹?」

 

当然のように先頭にいた顔馴染みのクラスメイトとルームメイトに向かって呆れ顔とほんの少しの殺気を乗せて言った。

 

「よ、よお天霧・・・・・・」

 

「それで夜吹たちはなにしていたの」

 

「お、落ち着け天霧・・・・・・!目が笑ってないぞ」

 

刀藤さんが慌てふためく中、俺はにこやかな笑みを浮かべながら夜吹たちに問いていた。

 

「刀藤さん、ちょっとだけ部屋の外にいてくれるかな?」

 

「え?あ、はい。わかりましたです」

 

「ありがとう刀藤さん」

 

「ちょ、と、刀藤さん!ま、マジで助けてくれ!」

 

刀藤さんが首をかしげながら応接室を出ていくなか夜吹はそう刀藤さんに言うが、無情にも刀藤さんの耳に入らなかった。

刀藤さんが出ていったのを確認すると、俺は未だに倒れている夜吹たちを見て、

 

「さてと、お説教の時間だよ?」

 

そう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

『『『『『ギャァァァァァァァアア!!!!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその数分後寮の中だけに止まらず外にまでも夜吹たちの悲鳴が響き渡った。

さらに、その悲鳴は星導館七不思議のひとつに後日付け加えられたらしい。理由は不明だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね刀藤さん」

 

「いえ、わたしは気にしてないので大丈夫です。それより、あの方たちは・・・・・・?」

 

「夜吹たちなら多分大丈夫だと思うよ?」

 

「そ、そうですか・・・・・・?でも、すごい悲鳴が聞こえたような・・・・・・」

 

「気のせいだよきっと」

 

「はあ・・・・・・」

 

俺は刀藤さんを寮に送るため、一緒に女子寮の方へと向かっていた。

 

「やっぱり不思議です・・・・・・」

 

「不思議って?」

 

「その、天霧先輩に関してもなんですけど、わたし、男性の方はお父さ―――――父としか歩いたこと無かったんですけど、天霧先輩といると父が隣にいるみたいで・・・・・・」

 

「へぇ。優しいお父さんなんだね」

 

「はい!父は公私にも厳しくて強く、そして優しくてわたしの憧れなんです」

 

「なるほど。刀藤さんのお父さんってやっぱり星脈世代?」

 

「はい・・・・・・」

 

刀藤さんが急に暗くなったのを感じた俺は、別の話題を繰り出すことにした。

 

「ところで。刀藤さんって、あの刀藤流宗家の娘さんなんだよね」

 

「うちの流派をご存知なのですか?」

 

「そりゃ、俺も剣士の端くれだからね。『鶴を折るが如し』と謳われる刀藤流を知らないわけないよ」

 

俺の何気ない言葉に刀藤さんの暗くなっていた表情がぱぁっと明るくなった。

 

「天霧先輩の流派は古流ですよね?」

 

「え?うん、そうだけど・・・・・・・よくわかったね」

 

「決闘の際、時折腰を落とした構えが見受けられたので、そうじゃないかと」

 

これは少し驚いた。

確かに天霧辰明流は開祖から数えて五百年の歴史を持つ古流剣術だ。この時代の剣術はいわゆる介者剣術であり、重装備の防具を付けたまま動くことを前提しているため、基本姿勢は深く身を落とすことになる。

一方の刀藤流は幕末に開かれた比較的新しい流派だ。こっちは天霧辰明流と違い、直立姿勢を基本とする素肌剣術なのだ。どちらが優れていると言うわけでは無いのだが、少なくともアスタリスクでの決闘のように双方身軽な状態で一対一の闘いとなった場合、速度面で後者が若干有利であることは否めない。

確かに長い歴史の中で天霧辰明流も刀藤流と同様に素肌剣術を取り入れているが、開祖から伝わるような技を使おうとすれば、必然的に身を沈める形となる。

刀藤さんはどうやらその辺りを見抜いたみたいだ。

 

「天霧先輩は防御姿勢から動くときは摺り足でしたし、正眼に構えた際の剣先がかなり高めでした。これも古流の特徴です。本当は剣を会わせてもらえればもう少しわかったのですけど、天霧先輩の《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》相手ではそうもいかなくて・・・・・・あ、でもあの純星煌式武装はすごいですね!相対しているだけでも天霧先輩の星辰力が大量に流れ込んでいくのを感じました。あれを維持できるなんて、それこそ――――――」

 

瞳をキラキラさせ、ぐっと身を乗り出して喋る刀藤さんは、その途中ではっとしたように口をつぐんだ。すると見る間にかぁっと赤面して、チョコチョコとした足取りで後ずさった。

 

「す、す、すみません。わたし、つい・・・・・・」

 

「ハハ。刀藤さんは剣術が好きなんだね」

 

「は、はいっ。それに・・・・・・わたしは剣術以外能がないですから」

 

「そんなこと―――」

 

「いいえ、本当なのです。わたしは頭も良くないですし、ドジで、臆病で、家事だって満足にできなくて・・・・・・でも、そんなわたしでも剣を握っている間は誰かの役に立てるのです。だから、それは楽しいし、大好きです」

 

「そっか」

 

今の刀藤さんの言葉に、俺が口を挟むことはできない。そう判断した俺は、ただそれだけを言った。

刀藤さんの志と行動の間に、やはりなにか微妙な齟齬があるような感じが俺はとれた。

俺はそれがどうしても気になった。

 

「それにわたしには叶えたい―――いえ、叶えなければならない願いがあります」

 

「刀藤さんの願いって?」

 

「・・・・・・父を助けることです」

 

まるで自分自身に言い聞かせているように聞こえたのを俺は捉えた。

 

「――――そのために、伯父さんの言うことをきいているのかい?たとえ、あの人の出世に利用されているとしても?」

 

「はい・・・・・・わたしは自分の願いを叶えるための道を示してもらって伯父様にはとても感謝しています。そして、伯父様はその過程で相応の利益を得る―――だからこれは対等の取引なのです」

 

「・・・・・・俺からしてみればとてもそうは見えなかったけど」

 

つい数時間前の出来事を思いだし、俺は顔をしかめた。

 

「伯父様は私たち《星脈世代》を嫌っていますから」

 

「―――」

 

刀藤さんの瞳を見た俺は、続く言葉を紡ごうとしたが止めた。

彼女の瞳はオーフェリアと似たような瞳だった。

オーフェリアは運命に囚われてしまったと自分に言い、俺たちと出会う前のその瞳は、絶望と拒絶、希望もなにもなくただ虚無の闇が浮かぶだけだった。

だが、いまのオーフェリアの瞳はシルヴィや紗夜、ユリスのお陰もあるのか虚無の闇が薄まり、瞳には以前と変わらない明るい瞳が戻っている感じだった。

そして、刀藤さんの瞳は、だから仕方ないのだと。自分が我慢すればそれでいいのだと。自分を犠牲にして成し遂げようとしている瞳だった。

今はまだ、言うことではない。そう俺は自分に言い聞かせた。

 

「あ、ところで・・・・・・わたしからもお伺いしていいですか?」

 

「うん、なんだい?」

 

俺の顔をおずおずと覗きこんできた刀藤さんに俺は答える。

 

「天霧先輩は、普段どんなトレーニングをしているのでしょう?」

 

「トレーニング?」

 

「はい」

 

「えーと、朝は走り込みと型稽古、それから素振りかな。放課後は今はユリスと一緒にタッグ戦の特訓をしてるし・・・・・・。休日はオーフェリアに協力してもらってトレーニングかな?」

 

「えっ?オーフェリアって《孤毒の魔女(エレンシュキーガル)》のオーフェリア・ランドルーフェンさんですよね?」

 

「そうだよ?」

 

「あの、天霧先輩は寮に住んでいるんでは・・・・・・・」

 

「あー、実は俺、六花の方に自宅があってそこから基本登校してるんだよね。まあ、寮の方に泊まることもあるけど」

 

「な、なるほど。あの、その、もしかして天霧先輩はオーフェリア・ランドルーフェンさんと一緒に住んでいたりするのでは・・・・・・」

 

「あー、うん、まあ、一緒に住んでるよ。同居かな?後もう一人いるけど」

 

俺は周囲を警戒して刀藤さんに小声で言った。

 

「ど、どどど、同居!?」

 

「うん。それと、悪いんだけどこれあまり口外しないでね。周囲にバレるとややこしくなるから」

 

「は、はい、もちろんです」

 

「ありがとう刀藤さん」

 

そんな話をしているといつの間にか女子寮の前にまで来ていた。

 

「あ、あの、天霧先輩。よろしければ、その、そのトレーニング、わたしもご一緒してもいいですか」

 

「うん、いいよ」

 

「えっ?い、いいのですか?」

 

刀藤さんはまさか、いいと言われると思ってなかったのか大きく目を見開いた。

 

「うん。あー、でも放課後は無理かな。ユリスと訓練してるし。それに刀藤さんもその方がいいでしょ?」

 

「はい・・・・・・。リスト入りしている方々―――特に《冒頭の十二人》の皆さんとは距離をおくよう伯父様からきつく言われているので」

 

「なら、早朝訓練なら大丈夫だと思うよ。俺は《冒頭の十二人》でもないしリストにも載ってないからね」

 

俺は若干苦笑気味に言う。

 

「そ、それは天霧先輩と、ふ、ふ、二人っきりで、ということ、ですか?」

 

「そうなるかな?あ、でもたまにオーフェリアともう一人が来るかも。あー、でも今オーフェリアしかいないんだよね。もう一人の方はちょっと遠くにいるから」

 

ここで、もう一人がシルヴィだと言わなかったのは得策だろう。もしシルヴィも一緒に住んでいるとバレたら刀藤さんがショートするのは目に見えてるから。

 

「そ、それではお言葉に甘えて・・・・・・」

 

「じゃあ、細かい時間とか場所は後で連絡するから――――」

 

取り敢えず、俺は刀藤さんと携帯端末の連絡先などを交換した。

 

「あの、今日はいろいろとありがとうございました」

 

「うん、こちらこそ」

 

「じゃ、じゃあ、また明日、よろしくお願いします」

 

刀藤さんは直角になるくらいしっかりと頭を下げると、小走りで女子寮へと入っていった。

俺はそれを見送ると、場所を離れて軽く息を吐き出した。

空を見上げるとやや暗くなっており月が濃く見えた。

 

「・・・・・・・・・・いるんでしょ、紗夜」

 

俺は近くにあった植木を見て言う。

 

「・・・・・・むー。さすが綾斗。今回はうまく行くと思ったのに」

 

すると、上から紗夜が猫のように飛び降りてきた。

 

「・・・・・・なんで気が付いた?」

 

「んー、なんとなく視線を感じたのと驚かせようとするのは紗夜しかいないと思ったからかな?」

 

「・・・・・・おー、さすが」

 

「それ誉めてるの?」

 

「・・・・・・誉めてる誉めてる。ちょーグッジョブ」

 

紗夜独特のサムズアップで紗夜は言った。

 

「あはは」

 

「・・・・・・・ところで今のって話題の序列一位?」

 

「あ、刀藤さん?」

 

「・・・・・・そう・・・・・・。あれで中等部一年・・・・・・」

 

紗夜は何故か自分の体を、特に自分の胸を見て恨めがましいように刀藤さんがいた場所を見る。

 

「・・・・・・世の中は不公平。平等にするべき」

 

「あははは・・・・・・」

 

紗夜の言葉に僕は苦笑いをするしかなかった。

俺ら幼馴染のなかでも特に紗夜は自分の体型と身長にコンプレックスを抱いているからだ。

 

「彼女も紗夜と似たような目的みたいだよ」

 

「・・・・・・私と?」

 

「うん。紗夜は伯父さんの為にでしょ?」

 

「・・・・・・そう」

 

「刀藤さんも父親のためにいるんだって」

 

「・・・・・・そう・・・・・・・・・父親・・・・・・・・」

 

紗夜は静かにボソッと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで《鳳凰星武祭》のタッグパートナーは見つかった?」

 

「・・・・・・まだ。綾斗助けて」

 

「ええーー・・・・・・。大丈夫なの紗夜・・・・・・・?」

 

「・・・・・・・問題ない、なんとかなる」

 

「不安しかないんだけど・・・・・・」

 

 

 

 

 

 




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