学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語 作:ソーナ
~綾斗side~
刀藤さんから決闘のメールを受け取った翌週、俺と刀藤さんは星導館学園の総合アリーナのステージで対面していた。ステージの観客席は、溢れんばかりの学生で埋まっている。
「ぶしつけなお願いを聞いていただいて、ありがとうございます―――天霧先輩」
「うん。それより・・・・・・」
俺はいつものように丁寧に頭を下げる刀藤さんの表情を見る。
「その表情は、決めたんだね刀藤さん」
「はい。これからわたしは自分で考えていきます」
「うん。ところで・・・・・・なんでまた俺と決闘なんだい?」
「わたしがここで本当の一歩を踏み出すために、どうしても必要だと思ったからです」
「はは、なるほどね」
「ご迷惑・・・でしたでしょうか」
「いや、俺も刀藤さんとはまた決闘したかったんだ。それも今度は純粋な、本人の同意の決闘をね」
俺は首を横に軽く振り刀藤さんに言う。
「わたしもです、天霧先輩」
「じゃあお互い悔いが残らないように全力で闘おう。・・・・・・まあ、前の時も十分全力だったけどさ」
「はい!もちろん・・・・・・望むところです」
俺は苦笑いを浮かべながら言い、刀藤さんは軽く微笑んだ。
そして、刀藤さんは腰に下げている刀。千羽切の鯉口を切った。
俺も同様に、刀藤さんから距離を取り、セレスではなく普通の片手剣型煌式武装を起動させる。
「天霧先輩《
俺がセレスではなく普通の煌式武装を構えたのを見て、刀藤さんが驚いたように訊いてきた。
「《黒炉の魔剣》じゃ刀藤さんのスピードに多分ついていけないからね。まあ、俺がまだ上手く《黒炉の魔剣》を使えないのが悪いんだけどさ」
以前セレスから聞いたことを俺は思い出した。
『綾斗はまだ私を上手く使いこなせてないわ』
『ん?どう言うこと?』
『私―――《黒炉の魔剣》は使い手によって刀身の形状が変わるの』
『え!?そうなの!?』
『えぇ。ちなみに遥は私を上手く使いこなせていたわよ』
『うっ・・・・・・!ちなみに姉さんの時はどんな刀身だったの?』
『遥の場合は小太刀のような感じね』
『小太刀・・・・・・』
『たぶん、綾斗が自身の星辰力を上手く制御できるようになれば、そのときは私をもっと使いこなせるわ。それこそ、歴代の使い手を凌駕するほどね』
『・・・頑張ってみるよセレス』
『ええ。頑張って綾斗』
「それに同じような負け方をしたらユリスが許してくれないし、あの二人も怒るからね。それに、姉さんに追い付けない。だから、少しは工夫しないとね」
セレスとの会話を思い出し終えた俺は、刀藤さんに苦笑ぎみにそう言った。
「工夫ですか・・・・・・楽しみです」
刀藤さんも、すらりと千羽切を引き抜いた。
ステージの照明を受けてその刀身がどこか艶やかに煌めいた。
「それじゃ、そろそろ始めようか。本当はこういう派手なステージは苦手なんだけど、こうまで集まってくれるとあんまり待たせるのも悪い気がしてきた」
「ふふっ、同感です」
~綾斗side out~
~ユリスside~
「おい、クローディア。わざわざこんなステージを用意しないでも良かったろうに・・・・・・」
ステージにいる綾斗と刀藤を見ながら、私はアリーナの特等席でクローディアや沙々宮など一同と座っていた。
「あら、注目の一戦なんですからこれくらいは当然でしょう?なにしろ刀藤さんはうちの、序列一位ですし、綾斗はその刀藤さんと互角の戦いを演じた方です。それが再戦するとなれば、誰だって一目みたいと思うはずですよ」
「むぅ・・・・・・しかしだな」
私は少々心配した表情で綾斗へ視線を移した。
するとそこへ。
「・・・・・・ユリス、心配する必要はないわ」
「そうだね。だって綾斗くんだもん、大丈夫だよ」
クローディアの後ろの沙々宮の隣に座った女子二人からそう言われた。
「・・・・・・・・・・今更ながら聞いておくが、何故、オーフェリアとシルヴィアの二人がここにいる」
何故か知らんがオーフェリアとシルヴィアがここにいた。もちろん二人とも変装はしているが。
どうせ大方クローディアが呼んだのだろう。
「・・・・・・エンフィールドに呼ばれたからよ」
「私もクローディアさんに呼ばれたからだよ」
「クローディア?」
「どうせなら綾斗の大切なお二人にも綾斗と刀藤さんの闘いを見てもらおうと思いまして、私の知り合い経由でお伝えしたんですよ」
「知り合い、だと?」
「ええ。ウフフ」
クローディアは何時もの企みめいた微笑みでそう返した。さすが、自称腹黒女だことだ。
「・・・・・・二人の言う通りそんなに心配するな、リースフェルト」
「そうは言うがな」
「大丈夫、問題ない」
よほど綾斗のこと信頼してるのか、沙々宮がきっぱり言い切ると、シルヴィア、オーフェリアの二人は同時に首をたてに振った。
「だが、前回の対戦を見ても、刀藤綺凛の剣技はかなりのものだ。三人は見たのか?」
「ん、見た」
「・・・・・・動画で見たわ」
「私は見てないかな?でも、問題ないかな」
まあシルヴィアはついこの間までツアーに行っていたようだし知らないのは当然かもしれんが、沙々宮とオーフェリアは、知っているようだが。
「刀藤は強いと思う。剣技だけなら綾斗以上かも」
「ええ。でも、剣技、だけならね」
「だったら―――!」
「心配いらないわユリス。綾斗はもっと強い相手と戦いなれてるわ」
「そうだね~。綾斗くんと剣での戦いで互角だと思うのは、《剣聖》だけかな?」
「・・・・・・なに?」
「あらあら」
私とクローディアは驚いたように身をよじって後ろの三人を見る。
レスターと夜吹の二人も驚いたように見ている。
「強い相手?誰だ、それは?」
「ハル姉」
「遥お姉ちゃん」
「ハルお姉ちゃん」
「は、ハル姉・・・・・・?誰だ、それは?」
「「「綾斗(くん)のお姉さん(ちゃん)」」」
三人の答えは簡潔だった。
「むぅ・・・・・・あいつの姉は、そこまでの実力者だったのか?」
唸りながら言う私に、三人はこくりとうなずいた。
「ま、あいつもなにか考えがあるみてぇだし、ただでやられやしねぇだろ」
するとそこへ、クローディアの横に座ったレスターが口を挟んできた。
「なんだ、レスター。おまえ、なにか知っているのか?」
「ああ、ちょっとな。煌式武装の調達を頼まれた。つっても予備のを貸してやっただけだけどな」
「煌式武装・・・・・・?そんなもの、装備局に申請すればいいだろうに」
「あそこは調整だなんだで時間が掛かるからだろ。すぐに揃えるなら、誰かから借りたほうが手っ取り早ぇ」
「へぇー、あんたにも頼んでたんだ」
意外そうな声を出したのはガラスにへばり付くようにしてカメラを構える夜吹だ。
「あんたも、ってことはてめぇもか」
「まーね。・・・・・・っと、そろそろ始まるか」
夜吹の声に全員の視線がステージに立つ、綾斗と刀藤綺凛に向いた。
『
アナウンスとともに試合が開始される。
~ユリスside out~
~綾斗side~
『
システムのアナウンスによりそうアナウンスされると観客席からの歓声が一際高くなった。
「―――参ります!」
そういうや否や刀藤さんは千羽切を構えて迫ってきた。
右下段からの切り上げ下ろし。
俺はそれを青い刀身の煌式武装で受け止め、反撃する。
「くっ・・・・・!」
そしてさらに迫る突きを煌式武装で弾いてかわす。
鋭い打ち込みだが、力では俺の方が勝ってる。鍔迫り合いになったとしても負けはしないだろう。
しかし跳ね上げたはずの刀藤さんの刀は空中で弧を描き、即座に逆袈裟に斬り下ろしてきた。その切り返しの速度は、とてつもなく早い。俺が剣を横に構えてそれを防ごうとする。が、次の瞬間には千羽切の切っ先が俺の右小手を狙っていた。俺はそれを腕を引いてかわすが、その隙に刀藤さんは大きく右足を踏み入れ、内腿から斬り上げを放ってきた。
途切れもなく続く連続攻撃に、俺は完全に防戦一方だった。
剣速ではほとんど差はない。だが、刀藤さんの攻撃は一撃一撃の繋ぎ目が恐ろしく滑らかだ。正直、反撃に入り込む隙間すらない。
「くっ!」
そして神速で繰り出された突きに、あえて身をさらし、脇腹に星辰力を集中させ固い壁のようにする。
それでも、脇腹に痛みの熱が走るが、構わず刀藤さんめがけて、上段からの斬り下ろしを放つ。
だが、それを刀藤さんは俊敏な動きで身を翻し、あっさりとかわした。
「・・・・・・さすがは天霧先輩、すごいです。まるで厚い鋼を突いたような手ごたえでした」
「星辰力の量だけは、多少自信があってね」
「それに―――"連鶴"から逃れられたのも初めてです」
「なるほど、あれが"連鶴"か・・・・・・」
「"
わずかに身を沈めた刀藤さんは、脇構えに取った。
「"連鶴"に果て無し―――次は、仕留めます!」
「じゃ、こっちも全力で答えさせてもらおうかな!」
俺と刀藤さんはそう言うと、ほぼ同時に星辰力を一気に高めた。
刀藤さんは再び俺の間合いに踏み込むと、"連鶴"をはじめていた。
俺はそれを素早くかわす。
そして、刀藤さんから少し離れ、煌式武装の切っ先を右下に向け構える。
「!?」
刀藤さんが軽く目を見開いたのがわかった。そして、剣の間合いに入った刀藤さんに、星辰力を煌式武装に流して下段からの切り上げをする。
俺の剣と刀藤さんの振り下ろした刀が激しくぶつかり合う、そしてその瞬間、俺の構える煌式武装が眩い光とともに弾け飛んだ。
「なっ・・・・・・!?」
弾け飛んだ煌式武装からは爆風と白いスモークのような煙が現れる。
「
爆風からとっさにバックステップで間合いを取り直した刀藤さんからそんな声が聞こえてきた。
「(俺は流星闘技をセレス以外使えないんだよね。それに今回借りたこの煌式武装は未調整だし)」
俺はそう思いながら腰のホルダーから素早く新しい煌式武装を起動させ、煙が晴れない内に刀藤さんに爆煙をふきとばすような突き技をする。
だが、それはさすがの反応速度で刀藤さんの刀に弾かれた。
「天霧辰明流槍術―――"
「っ!―――槍術!?」
「少しは驚いてもらえたかな!」
俺が新たに展開させた煌式武装は槍型の煌式武装だ。
そして、俺は素早く槍で刀藤さんに突き技をする。
「はい!ですが―――奇策は奇策、です!」
だが、刀藤さんは冷静にその間合いを見極め、槍を刀で弾き、剃らしたりして迫る。
そしてやりの切っ先を跳ね上げそのまま、俺の校章目掛けて斬り上げようとするが、再度刀藤さんは驚くことになった。
何故なら。
「まさか・・・・・・っ!」
俺があっさりと槍を手放し、刀藤さんに放ったからだ。
そして、その槍を刀藤さんが柄を二つに斬る。
「―――奇策は重ねてこそ奇策、だよ!」
俺は槍を手放したのと同時に、腰のホルダーから三つ目の煌式武装を取り出し、瞬時に起動させる。
瞬時に起動させたのは、二つの小さな短刀型煌式武装だ。
「ッ!ハアァアアアアッ!」
俺はそれを逆手に持ち構え、気合いの声とともに来た刀藤さんの刀を受け流し、その勢いを利用して身体を一回転させる。
「天霧辰明流小太刀術―――"
左手に持った短刀を放り、右手の短刀で攻撃する。
「くぅっ!」
刀藤さんは半ば反射的に刀を返して、真っ向から受け止めた。俺と刀藤さんの短刀と刀が火花を散らす。
今この瞬間、刀藤さんの腕には重い衝撃が圧し掛かってるだろう。
そのとたん、刀藤さんの力が緩み、刀に沿って僅かにずれた短刀を切り上げて上に振り上げた。
刀藤さんはそのまま自分の勝利を確信したのか、表情が少し緩んだ。刀藤さんはそのまま上から俺の校章を狙って刀を斬り下ろしてくる。
だが―――
「天霧辰明流組討術―――」
俺は左腕をするりと伸ばし、刀藤さんの奥襟を掴み、
「―――"
ふわりと身体を浮き上がらせて、天地を逆転させ刀藤さんを投げ、倒れた刀藤さんにそのまま真上から肘を刀藤さんの胸の校章に叩きつける。
「ガハッ!」
背中と胸に衝撃が走り、肺から残らず空気が追い出されたのだろう、刀藤さんは呼吸できない苦しさに顔をしかめた。
「大丈夫かい、刀藤さん」
俺は心配そうに刀藤さんの顔を覗きこんだ。
「・・・・・・やられました。槍も小太刀も、全部囮だったんですね?」
刀藤さんがそう言うのと同時に、刀藤さんの胸の校章から、ピシリとひび割れる音が聞こえた。
「あ・・・・・・まいりました。完敗です」
刀藤さんが笑顔を浮かべながら、俺が伸ばした右手を掴んだのと同時にスタジアムのアナウンスが流れた。
『
アナウンスが流れると、アリーナを割らんばかりの大歓声が鳴り響いた。
アリーナ控え室
「はあ・・・・・・」
「まさか本当に勝ってしまうとはな」
「おめでとう、綾斗。かっこ良かった!」
ところ変わってアリーナの控え室。
ぐったりと椅子に座る俺に、ユリスと紗夜が嬉しそうに声をかけてきた。
「うん、ありがとう」
俺が二人にそう言うと、
『綾斗?よろしいでしょうか』
空間ウインドウが開きクローディアがそう言った。
「どうぞ」
俺は入室の為に扉のロックを解除し、扉を開ける。
「失礼しますね」
クローディアは何時もの笑みを浮かべて入ってきた。
「ふふっ、さあ、どうぞ」
クローディアは、少し横にずれると誰かと一緒にいるのかその場所を譲った。
「あ、あの、お邪魔します・・・・・・」
クローディアが一緒にいたのは刀藤さんみたいだ。
「あれ?刀藤さんも」
「ええ、なんでもこちらにご用があるだとか」
「あ、あの・・・・・・私も天霧先輩たちの練習に、参加させてもらってもいいでしょうかっ?」
「えっ?」
刀藤さんの申し出にクローディア以外の俺たち三人はきょとんとした。
「その、以前、天霧先輩からお誘いいただいて・・・・・・そのときはお断りしなければならなかったのですが」
「綾斗?そんな話聞いてないぞ」
「い、いや、刀藤さんくらいの人が参加してくれれば練習の幅が広がるでしょ?」
「それはまあ、そうだが・・・・・・」
「うん、別に構わない。ばっちこい」
両手で手招きする紗夜にユリスがどやしつけた。
「何故おまえが答える!というか、おまえもあれから毎日入り浸っているではないか!認めた覚えはないぞ」
「リースフェルトは一々細かい。なし崩しは世の常。諦めろ」
「それを横暴だというのだ馬鹿者!」
「それに綾斗の浮気防止にもなる」
「浮気なんてするわけないだろうが!」
ユリスと紗夜のやり合いを横目に俺は刀藤さんに聞く。
「こんな面子だけど、それでも大丈夫?」
「はいっ!もちろんです!」
「わかった。それじゃ―――」
刀藤さんに手を伸ばしたその時、またしても空間ウインドウが開いた。
『綺凛っ!ここにいるのだろう!出てこい、綺凛!ええい、ここを開けろ!』
ノックとは言いがたい、扉を殴り付けているような荒々しい音と怒声がウインドウを通じて聞こえる。
「・・・・・・・・・・」
俺はウインドウを横目にクローディアを見る。
「・・・・・・・・・・」
クローディアも頬に手をあて「どうしましょう」といった顔で困ったように眉を下げた。
目線で刀藤さんに確認すると、刀藤さんはきゅっと唇を噛みしめながらも、気丈に頷いた。
俺は刀藤さんに軽く頷き、ウインドウに浮かぶロックを解除し扉を開けた。
「綺凛、おまえというやつはなんという愚か者なのだ!勝手に決闘した挙句、あんな無様な負け方をしおって!だが、これでわかっただろう!おまえには私の力が必要なのだ!」
入ってくるなり煩いほどの大声で叫んだ。
ここが防音で良かった。そうでなかったら外にまで響いていると思う。
そのまま刀藤さんの腕を掴もうと手を伸ばすが、
「・・・・・・ごめんなさいです、伯父様。わたしは自分のやり方で闘っていこうと決めたのです」
刀藤さんはあっさりとそれを払い除けた。
「黙れ黙れ!おまえはわたしの言うことを聞いてさえいればいい!」
刀藤鋼一郎は顔を怒りに染めて腕を振り上げ、刀藤さんに振り下ろす。
だが、そのまえに。
「彼女はもう自分の足で一歩を踏み出しました。あなたの出る幕は、もうない」
俺が刀藤鋼一郎の振り下ろそうとしている握り拳を掴んだ。
「な、なんだ貴様・・・・・・わ、私は《
刀藤鋼一郎は怯えた表情を隠そうともせず、震える声で言った。
「そ、それに良いのか貴様!貴様とあのレヴォルフの化け物が幼馴染みだと言うことを世間に口外するぞ!」
「っ!?」
刀藤鋼一郎の言ったレヴォルフの化け物という言葉が、オーフェリアだと言うことを察した。
「貴様・・・・・・!」
「今、オーフェリアの事なんて言った・・・・・・!」
ユリスと紗夜は怒気を含ませた声で刀藤鋼一郎に言う。
紗夜に限っては煌式武装を展開している。
「それでもいいのか貴様・・・・・・っ!」
刀藤鋼一郎はそこで言葉を途切れさせた。
何故なら。
「黙れ・・・・・・!」
俺が紗夜とユリスを越えるほどの殺気と冷たい、絶対零度、永久凍土のような声で遮ったからだ。
刀藤鋼一郎は数歩下がり、そこで何かに気づいたように刀藤さんに視線を向けた。
「そ、そうだ!いいのか、綺凛!おまえの父の所業を隠蔽してやったのは私だぞ!もしおまえが私の下へ戻らぬというなら、全てぶちまけて・・・・・・」
刀藤鋼一郎の言った、父という言葉に煌式武装の砲口を刀藤鋼一郎に向ける紗夜の眉が少し動いたのを視線の端で見た。
「―――あら、面白いことおっしゃりますね」
黙って推移を見ていたクローディアが刀藤鋼一郎の声を遮った。
「なっ!エ、エンフィールドの・・・・・・!」
「刀藤綺凛さんとあなたのご関係に口を挟むつもりはありません。ですが、この星導館の生徒で、学園の財産でもあり、統合企業財体の財産でもある彼女を私情で汚そうというのなら・・・・・・見過ごすわけにはいきません。おそらく私の母も同じ判断を下すと思いますが?それに、私の親友の幼馴染みをそう言う風に言うのは止めて下さいません?」
クローディアの声に刀藤鋼一郎はただ口をパクパクと、顔を真っ青をにした。
やがて刀藤鋼一郎はがくりと肩を落とし、そのままふらつきながら踵を返し、力ない足取りで部屋を出ていった。
「お、伯父様っ!」
刀藤さんがそのまま出ていく刀藤鋼一郎の背中に呼び掛けた。
「わたしは伯父様に感謝しています。それは嘘じゃありません。伯父様がいなければアスタリスクにも・・・・・・・この出会いもありませんでした。ですから、今まで・・・今まで・・・・・・本当にありがとうございました!」
そして刀藤さんは何時ものように、誰にたいしてもそうしてきたように、真摯に丁寧に、ペコリとこちらに向かない刀藤鋼一郎の背に頭を下げた。
「・・・・・・・・・・」
「伯父様・・・・・・」
刀藤鋼一郎は刀藤さんのそれになにも答えることもなく、振り返りもせず静かに出ていった。
「あ・・・・・・」
悲しそうな顔でうつむく刀藤さんの頭に、そっと手をのせ、そのまま優しく撫でる。
「これからよろしくね、刀藤さん」
「・・・・・・・はい。ありがとうございます」
ぐしぐしと目元をぬぐいながら、刀藤さんは小さく頷いた。
「あ、あの・・・・・・天霧先輩」
「ん?なんだい?」
「その、一つ・・・・・・じゃなくて、ふ、二つほどお願いがあるのですが・・・・・・いいですか?」
「お願い・・・・・・?」
「は、はい・・・・・・できればその、あ、天霧先輩のことを、お、お、お名前でお呼びしたいなと・・・・・・」
「はは。なんだ、そんなことか、もちろんいいよ。で、もう一つは?」
「は、はい・・・・・・じゃ、じゃあ、綾斗、先輩・・・・・」
「うん」
「・・・・・・わ、わたしのことも・・・・・・オーフェリアさんと、同じように名前で呼んでもらえますか、か・・・・・・?」
俯き、上目使いにもじもじとしながら、意を決したように言う刀藤さんに、ちょっと驚いた。
とはいえ、もちろん断る理由はない。
俺は笑顔で頷き、
「わかったよ―――綺凛ちゃん」
刀藤さん、いや、綺凛ちゃんと呼んだ。
「はい!」
綺凛ちゃんは嬉しそうに笑顔で答えた。
「じゃあ、次の練習から参加する?」
「はい!よろしくお願いします!」
「これで一件落着か」
「・・・・・・そうみたい」
「ふふっ」
綺凛ちゃんを見てユリスと紗夜、クローディアがそう言うのが聞こえた。
「あ、綾斗」
「なにクローディア?」
「今から少しの間だけ扉のロック解除してといて下さいね」
「え?いいけど」
よくわからないが、俺はウインドウを操作して扉のロックを解除した。
するとその十秒後。
「綾斗く~ん♪」
「え!?って、おわぁっ!!」
扉が開いたかと思いきや、いきなり入ってきた人に飛び抱き締められた。
「序列一位、おめでとう綾斗くん♪」
「え!ええっ!?な、なんでここにシルヴィが!?」
抱きついている人を見て俺は驚いた。
入ってくるなり飛び抱きついて来たのは、変装して髪の色は栗色だが間違いなくシルヴィだったのだ。
「ど、どういうことクローディア?!」
「ウフフフ」
クローディアに聞くが、当のクローディアは何時ものにこやかな笑みを浮かべてなにも言わずに微笑んでいる。
「・・・・・・綾斗、お疲れ様」
「オ、オーフェリアまで!?」
そして、シルヴィの次に入ってきたのは髪の色を黒にしたオーフェリアだった。
幸いにもオーフェリアが入った時点で扉が閉まったため外に声は漏れてない。・・・・・・はず、多分。
「さ、紗夜、説明して!」
俺はユリスの隣にいる紗夜に事情説明を求める。
「エンフィールドがシルヴィアとオーフェリアの二人を呼んだ」
「ってことは・・・・・・?」
「さっきの決闘もバッチリ見たよ、綾斗くん♪」
「・・・・・・・・・・」
シルヴィが抱きついたまま言い、オーフェリアはコクコクと頷く。
「あぁ~、綾斗くんの匂いだよ~」
「ちょっ、シルヴィ!?ここ家じゃないんだけど!?オーフェリア、紗夜、ちょっ、助けて!」
「・・・・・・無理よ。諦めて綾斗」
「・・・・・・オーフェリアの言う通り。しばらく綾斗はそのままでいるべき」
「そ、そんなあ!」
俺がそう漏らすなかもシルヴィは気持ち良さそうに俺に抱きついている。
「あ、あわわわ・・・・・・あ、あの、これは、一体、どういうことなんですか?!」
「ハァ・・・・・・・。やれやれ」
「ウフフフッ」
綺凛ちゃんは顔を真っ赤にしてゆでダコみたいになっていて、ユリスは額に手をあて呆れたようにしていて、クローディアは相変わらずの感じだった。
そしてそれから10分後。
「はあ~、綾斗くん成分補充完了だよ」
「そ、そう・・・・・・」
やっとシルヴィが離れてくれた。
「あ、あの、綾斗先輩、これは一体・・・・・・」
「あー・・・・・・」
この場に事情のわからない綺凛ちゃんがいるのだが、シルヴィが抱きついて来たので事情説明するしかなかった。
「え~と、シルヴィ、変装解いてくれるかな?」
「了解~」
俺の声にシルヴィはヘッドホンを操作して髪の色を元の鮮やかな紫色に戻した。
「これでいい綾斗くん?」
「うん。え~と、綺凛ちゃん?いいかな?」
「は、はい・・・・・・」
「えーと、一応紹介しとくね。彼女はシルヴィア・リューネハイム。クインヴェール女学園の序列一位で生徒会長。そして、俺と紗夜、オーフェリアの幼馴染」
「はじめまして刀藤さん。私はシルヴィア・リューネハイム。シルヴィアって呼んでくれるといいな」
「は、はい。刀藤綺凛です、よろしくお願いします、シルヴィアさん」
「よろしくね綺凛ちゃん」
「はい」
シルヴィアの登場に驚いていた綺凛ちゃんも、自身を自己紹介した。
「あれ、クローディアって、もしかして俺たちの事情知っていたりする?」
俺は恐る恐るクローディアに聞いた。
俺とシルヴィ、オーフェリアの関係を知っているのは、紗夜、ユリス、ペトラさん、レスターだけだと思うが・・・・・・。
「はい、もちろん知ってますよ」
「クローディアさんには私が前に言ったんだよ綾斗くん」
「し、シルヴィ!?」
俺はまさかシルヴィがクローディアに言っていると思わずかなり驚いた。
まあ、これで納得がいった。以前オーフェリアがここに入ってこれたのもシルヴィから聞いていたからなのだろう。多分、生徒会長同士の話ではなく女子同士の話で話したのだろう。
「あ、あの・・・・・・綾斗先輩、どういう意味ですか・・・・・・?」
「あー、実は俺とオーフェリアとシルヴィは付き合ってるんだ」
「はい?」
「つまり恋人、カップルってことだよ綺凛ちゃん」
綺凛ちゃんに説明すると、綺凛ちゃんは間の抜けたような返事をして動きを止めた。
そして。
「ええぇぇぇええええええええええええ!!!?」
綺凛ちゃんには珍しい大きな声を出した。
「あ、綾斗先輩と、シルヴィアさん、オーフェリアさんが、つ、つつつ、付き合っている、なんて・・・・・・」
処理能力がオーバーヒートしたのか綺凛ちゃんの頭から蒸気が立ち上っているように、綺凛ちゃんは顔を赤くした。
「刀藤もその内慣れる」
そこへ紗夜がフォローなのか肩を叩いて言う。
「あの、綺凛ちゃん?」
「ひゃ、は、はい!なんでしょう綾斗先輩」
「出来ればあまり口外しないようにお願い」
「は、はい、わかりました」
「うん」
綺凛ちゃんもこれについては他人に言わないと言ってくれたから良かった。
「ところで綾斗」
「なに紗夜?」
「夜吹にはどう説明する?」
「え?なんで夜吹にも?」
「実は特別席に夜吹もいたから」
「ええっ!?マジ?」
「マジ。それも超マジ」
俺は夜吹への説明を考えると頭がいたくなったが、夜吹には仕方なく説明することにした。もちろん、口外はさせないつもりだ。
「夜吹には俺がどうにかしとくよ」
「了解~」
紗夜と話している間シルヴィと綺凛ちゃんは早速仲良くなったみたいでクローディアも交えて会話していた。オーフェリアはユリスと何かこそこそ話していた。途中ユリスの顔が真っ赤になったのが不思議だった。
~綾斗side out~
~outer side~
「・・・・・・ところで刀藤」
「あ、はい。なんでしょう、沙々宮先輩」
「刀藤はお父さんのために闘っていると聞いた。本当か?」
「は、はい・・・・・・そうですけど・・・・・・」
「なるほど偉い。とても偉い」
「はぁ・・・・・・」
「実は私も同じ。お父さんのために闘っている」
「えっ、そうなんですか」
「そこで提案がある」
「・・・・・・て、提案?」
「私と―――タッグを組まないか?」
~outer side out~
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