学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語   作:ソーナ

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食事と力の代償

~綾斗side~

 

 

「食事に誘われただと?」

 

紗夜の迷子とウルサイス姉妹との遭遇といろいろあった翌日。俺はユリスに昨夜届いたメールについて話していた。

話すとユリスはどこか呆れたように額に手を置いて仰いだ。

 

「ハァー・・・・・・一体何をどうしたら食事に誘われるんだ」

 

「あー・・・実は昨日いろいろあって・・・・・・」

 

「私はあまり面倒なことを起こすなと言ったはずだが?」

 

「うっ・・・それに関しては・・・・・・ゴメン」

 

「まあ、過ぎたことを言っても仕方ない。だが、今回のことは私もお前と同じことをしたかもしれんな」

 

「ユリスも?なんで?」

 

「オーフェリアの友達なのだ、なら、私が助けるのは当然のことだと思うが。それに、それを見過ごす私ではない。まあ、助けるのならお前のやり方ではないやり方でやるがな」

 

「例えば・・・・・・・?」

 

「む?そうだな・・・・・・私の炎でウェルダン程まで炙ってから助けるな」

 

「そ、それは流石にアウトな気がするけど・・・・・・」

 

「冗談だ」

 

「ユリスが言うと冗談に聞こえないのは気のせいかな・・・・・・」

 

「失礼だな。加減ぐらいするぞ?」

 

「いや、そういう意味じゃ無いんだけど!?」

 

「まあいい。それで場所はどこなのだ?」

 

「えっと、確か・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後

 

 

 

「ここで合ってるのか?」

 

俺とユリスの二人はアスタリスク内の住宅街のマンションの一つに来ていた。

 

「合ってる・・・はず。オーフェリアにも教えてもらったし」

 

俺は空間ウインドウを開いて住所を確認した。

 

「ふむ・・・まあ、取り敢えず中に入るか」

 

そう言ってマンションの中に入るユリスを追って俺も中に入った。

マンションのエントランスの内装は白で統一されていて、綺麗だった。

そのまま、プリシラさんから送られてきた部屋番号の前に着き、インターホンを鳴らした。

しばらくすると、扉が開き、エプロン姿のプリシラさんが満面の笑みで迎えてくれた。

 

「いらっしゃいませ!お待ちしてました天霧さん、リースフェルトさん」

 

「あ、ああ・・・・・・」

 

予想通りと言うか前にも見たようなユリスのプリシラさんへの、毒気を抜かれた姿を見た。

 

「さぁ、遠慮せずに上がってください。すぐにお料理を用意しますから。あ、オーフェリアさんも中にいますよ」

 

「え?」

 

プリシラさんに言われて部屋の中に入ると、綺麗に片付けられたリビングにテーブルセットがあり、椅子の一つに仏頂面のイレーネさんが座っていた。そしてその対面には。

 

「・・・・・・鳩が豆鉄砲食らったような顔してどうしたのかしら綾斗?」

 

プリシラさんが言ったようにオーフェリアがお茶を飲んでいた。

 

「・・・・・・綾斗?」

 

「天霧さん?」

 

「綾斗?」

 

今一思考回路が追い付かない俺にオーフェリア、プリシラさん、ユリスが心配そうに訪ねてきた。

そこでようやく理解できた俺は。

 

「オーフェリア・・・」

 

「なに?」

 

どうしてここにいるの?(よく似合ってるよその服)

 

あれ、なんか今違ったような・・・・・・。

オーフェリアにそう言った。

すると椅子に座ったイレーネさんが。

 

「おい、天霧。本音が出てるぞ」

 

苦笑いを浮かべて言ってきた。

 

「へっ?」

 

「オーフェリアを見ろ」

 

呆れたように言うイレーネさんに言われオーフェリアを見ると、オーフェリアは顔を真っ赤にして顔を伏せていた。

 

「あ、あれ?」

 

「おい綾斗。お前、こんなところでもそうなのか」

 

「あわわ、さすが天霧さんです」

 

「あたしでもさすがにこれは呆れるぞ」

 

ユリス、プリシラさん、イレーネさんの反応を見る限りどうやら俺が何か言ったみたいだが・・・・・・・。

 

「あ・・・」

 

そこて俺は自分がなにを言ったのか思いだし、一気に気恥ずかしくなった。

 

「・・・・・・おい、《華焔の魔女(グリューエン・ローゼ)》」

 

「なんだ、《吸血暴姫(ラミレクシア)》」

 

「これって何時ものことなのか?」

 

「まあな・・・はぁ・・・・・・」

 

「苦労してんだなお前も・・・・・・」

 

「なんかすまない」

 

視界の端ではユリスとイレーネさんが嫌悪感処か、どこか気疲れたように互いに落胆している姿が見え、プリシラさんはキッチンに戻っていく姿が見えた。

 

「それでオーフェリアはなんでここに・・・・・・確か今日は出かけるって言ってたような・・・・・・」

 

「ええ。プリシラに食事に呼ばれたのよ。まあ・・・大方、イレーネとユリスのストッパー役・・・・?とかも担ってるわ」

 

「なるほど・・・・・・。あれ、でも、それなら俺たちと一緒に来ても良かったんじゃ」

 

「・・・・・・それじゃ、サプライズにならないでしょ?」

 

「はは・・・なるほどね」

 

俺たちといない間のオーフェリアの一面が見れて、俺はどこかホッと安堵の息が心の中で出た。

 

「・・・・・・どうかしたの?」

 

「なんでもないよ」

 

オーフェリアに軽く微笑みながらそう返して、オーフェリアの横に座る。

そして、俺の左隣にはユリスが座った。

 

「お待たせしましたー」

 

と、そこへプリシラさんが料理を運んできた。

前菜なのか、小皿に盛り付けられた料理がいくつもテーブルに並べられていく。

 

「ひよこ豆とトマトのサラダ、ポテトのアリオリソース、小エビのニンニク唐辛子炒め、それからマッシュルームのセゴビア風です」

 

「おおー、これこれ!」

 

「って、お姉ちゃん!お行儀悪いでしょ!」

 

イレーネさんは見たことないほどの笑顔で早速プリシラさんの運んできた料理に手を伸ばしたが、それをばしっとプリシラさんが叩いて止めた。

 

「ええー。いいじゃねえか、ちょっとくらい」

 

「よくないよ!大体今日は天霧さんにお礼をってことなのにお姉ちゃんが最初に手をつけたら・・・・・・って、ああっ!」

 

「いっただきまーす!」

 

イレーネさんはプリシラさんの制止も聞かずに、ひょいひょいと料理をつまんでいった。

 

「もー、お姉ちゃんってばー!」

 

それを見たユリスが静かにクスリと笑うと、そっと俺とオーフェリアに聴こえるほどの声で言ってきた。

 

「《吸血暴姫》はあれでも気を使ってるようだな」

 

「うん?」

 

「毒見のつもりなのだろうさ。何も怪しいものは入ってないって証明するためにな」

 

「なるほど」

 

「・・・・・・イレーネらしいわ」

 

「まったく、そんなことしなくてもここにオーフェリアがいる時点でこれが罠ではないと言うことぐらい分かると言うのに」

 

「・・・・・・イレーネは普段は優しいのよ?」

 

ユリスとオーフェリアの言葉を聞いて、視線をプリシラさんとイレーネさんの二人に向ける。二人の姉妹の姿はほんと仲の良い姉妹そのものだ。二人の姿を見ていると、俺は姉さんやウルスラ姉さんのことを思い出した。

俺たちが子供の頃、よくこうして姉さんとウルスラ姉さんと一緒に食事をしたから。

 

「・・・・・・綾斗?」

 

「いや。オーフェリアの言う通りなんだなって」

 

「・・・・・・ハルお姉ちゃんとウルスラお姉ちゃんのことを思い出していたの?」

 

「うん・・・・・・。二人を見ているとなんか懐かしく思えてきたんだ」

 

「そうね・・・・・・」

 

プリシラさんとイレーネさんの姉妹を見て、オーフェリアと物思いに耽っていると。

 

「ほら、あんたたちも食えよ。オーフェリアは知ってるだろうが、プリシラの料理はどれも最高だぜ」

 

制止を諦め、溜め息と呆れた表情のプリシラさんを横に、イレーネさんはさらに料理を食べていった。

 

「すみません、お二人とも。オーフェリアさんも」

 

「大丈夫よプリシラ」

 

「うん。それじゃ俺たちもいただこうか」

 

こうしてなし崩し的に食事が始まった。

 

「・・・・・・お、美味しい」

 

「こ、これは・・・・・・」

 

プリシラさんの料理を一口食べたユリスと俺は、あまりの美味しさについそう声を漏らした。

 

「美味しいわ。プリシラ、更に料理の腕を上げたのね」

 

「はいっ!ありがとうございます!天霧さん、リースフェルトさん、オーフェリアさん」

 

「ふふん、そうだろうそうだろう」

 

自慢気に胸を張るイレーネさんにユリスは呆れ顔だった。

 

「・・・・・・別におまえを誉めたわけではないぞ?」

 

「やれやれ。イレーネは相変わらずのシスコンね。何処かの誰かみたい」

 

オーフェリアはジト目でイレーネさんを見ると、視線を俺に移してきた。

 

「も、もしかして俺のこと?」

 

「・・・・・・綾斗以外誰がいるのよ」

 

小声で言った俺に、オーフェリアも小声で返してきた。

 

「そういえば今更だけど・・・・・・ここってどういう部屋なんだい?」

 

すっかり忘れていた疑問を思い出して、イレーネさんに訊ねた。

すると飲み物を呷っていたイレーネさんが、素っ気なく言って返してきた。

 

「あたしが普段使ってる部屋だが、それがどうした」

 

「普段使ってるって・・・・・・・寮は?」

 

アスタリスク内の六学園はすべて全寮制だ。学生が市街地に暮らすことは原則として許可されていない。まあ、俺は例外だが。

 

「レヴォルフの《冒頭の十二人(ページ・ワン)》にはそういう特典があるのさ。もちろん表立って言ってるわけじゃねぇがな」

 

「へぇ」

 

「言っとくがオーフェリアもアスタリスクに部屋があるはずだぞ」

 

「えっ!?」

 

イレーネさんの言葉に俺は驚き、ユリスは驚愕していた。

 

「・・・・・・そう言えば言ってなかったわね。一応、寮もあるのだけど・・・・・・」

 

「そう言うことか」

 

オーフェリアの言葉にユリスは瞬時に理解したようにうなずいた。

 

「そう言うこと、って?」

 

俺の疑問に答えたのはイレーネさんだった。

 

「オーフェリアの瘴気に部屋が耐えられないんだよ。いつ、オーフェリアの星辰力が暴走するかわからねぇ。オーフェリアは基本、寮ではなくここの近くの部屋から通ってる」

 

「なるほど・・・・・・あれ?でも、オーフェリアここ最近ずっと俺の家にいるけど?」

 

「綾斗の家は、私の部屋とここと同じで私の瘴気に耐えられるの。だから、問題ないのよ。・・・・・・それに、折角綾斗たちと過ごせるのだから部屋に戻るなんて以てのほかよ」

 

「オーフェリア・・・・・・」

 

「ふふ」

 

俺の視線に気付いたオーフェリアは優しい笑みを返し、俺は顔が赤くなった。

そこへ。

 

「まったく、ここで惚気けるなよなおまえら・・・・・・。プリシラ、コーヒー頼めるか?」

 

「うん!」

 

「あー、すまないがわたしの分も頼む」

 

「わかりました!」

 

そんな会話が聞こえてきた。

コーヒーを運んできたプリシラさんが。

 

「でも今回はお姉ちゃんのお陰で助かっちゃいました。さすがにお二人にレヴォルフに来てもらうわけにはいきませんから」

 

「さすがレヴォルフ。おそるべき自由さだな・・・・・・」

 

「でも、なんでわざわざ外に部屋を?」

 

「・・・・・・ここからだと歓楽街(ロートリヒト)が近い。なにかと便利なんだよ」

 

俺の疑問に、コーヒーと料理を食べながら、少し具合の悪そうな顔で答えた。

 

「なるほど。夜遊び用というわけか」

 

皮肉るように言うユリスに、イレーネさんは顔を更にしかめた。

 

「別に遊んでるわけじゃねぇよ。金が必要だから稼いでるだけだ」

 

「金・・・・・・だと?」

 

「どういうこと?」

 

ユリスと俺の疑問に、イレーネさんはちらりと隣のプリシラさんに視線をやった。

 

「―――あ、じゃあ私、ちょっとオーブンの様子見てきますね」

 

プリシラさんが曖昧な笑みを浮かべて席を立ち、キッチンへ向かった。

それを見届けるとイレーネさんは息を吐き、わずかに椅子を軋ませた。

 

「簡単に言えばあたしの立場はレヴォルフ黒学院生徒会長ディルク・エーベルヴァインの手駒だ。オーフェリアと同じでな。あたしは昔ディルクの野郎に莫大な金を借りて、すでに望みを叶えてもらった。そしてあいつの命令に従うことで、それを少しずつ清算している」

 

「《悪辣の王(タイラント)》か・・・・・・」

 

「その契約であたしは《星武祭》への参加は制限されてるし、仮に優勝したとしてもその賞金を返済に当てることはできないことになってるのさ。まあ、出来るだけ長くあたしを手駒として使いたいんだろうな。ホント、いけすかねえ野郎だよ、あいつは」

 

イレーネさんはそう言って肩を竦めた。

 

「とはいえ、あたしだっていつまでもあいつの下で働くのはごめんだ。だから少しでも早く金を返すために、夜な夜な涙ぐましい努力をしてるってわけさ。このことはオーフェリアも知ってるし、ロドルフォのやつも知ってる」

 

「ロドルフォ?」

 

「ロドルフォ・ゾッポ。私たちと同じレヴォルフ黒学院所属で《冒頭の十二人》の一人。序列二位で、《砕星の魔術師(バサドーネ)》の二つ名を持つ男よ。歓楽街のあるグループの頭領(リーダー)でもあるわ」

 

「聞いたことある。確か星脈世代の天敵だと言われていたな」

 

星脈世代(俺たち)の天敵?」

 

「ああ。《砕星の魔術師》は星辰力に干渉できるのだ。それ故に星脈世代で有る限り勝つことはほぼ不可能だと言われている。まあ、以前調べて知ったことなのだがな」

 

「・・・・・・ええ。ユリスの言った通りよ。ロドルフォはイレーネのことはもちろん、私のことも知っている」

 

オーフェリアのことも知っているということは、そのロドルフォさんはオーフェリアが星脈世代に。《魔女》になった経緯を知っているということだ。

 

「ロドルフォの野郎には感謝してるぜ。あいつのお陰で歓楽街での行動が楽になったからな。たまにこの間みたいなやつが来るが、基本ロドルフォが対処してくれてる」

 

「・・・・・・私もロドルフォからはたまに情報もらったりするのだけど、とても感謝してるわ」

 

「へぇー。今度会ってみたいな」

 

俺がオーフェリアたイレーネさんにそう言うと。

 

『私も会ってみたいわね』

 

脳内に、念話で《黒炉の魔剣(セレス)》のそんな声が聞こえてきた。

 

『セレスも?』

 

『ええ。それにその人と戦ってみたいわね』

 

『ええ・・・・・・。俺としてはできれば勘弁してほしいのだけど』

 

『ふふ。冗談よ冗談。でも、会ってみたいってのは本当だけど』

 

『会ってどうするのさ?』

 

『どうしようかしらね』

 

『やれやれ、セレスったら』

 

ややセレスに呆れながらも苦笑して念話で返す。

 

「それと、今回あたしらが《鳳凰星武祭(フェニクス)》に出場したこと自体、ディルクからの指示だ」

 

「・・・・・・そう言えばイレーネたちが鳳凰星武祭に出場した理由を知らなかったわ」

 

「オーフェリア、あたしが今回ディルクから受けた命令は―――天霧綾斗、あんたを潰すことだ」

 

「なにっ!?」

 

「・・・・・・どういうことかしら?何故ディルクが綾斗を・・・・・・まさか・・・・・・!」

 

「ああ。オーフェリア、お前の予想している通りだ」

 

「ディルクの狙いは綾斗の純星煌式武装(オーガルクス)黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》ね?」

 

「ああ」

 

「なっ!?《黒炉の魔剣》だと!?」

 

「確かに《黒炉の魔剣》は強力な純星煌式武装だけど・・・・・・」

 

「あいつは・・・ディルクは確かに冷血で外道な最低の野郎だが、無能でもなければ小心者でもねぇ。あいつがその純星煌式武装を警戒するからには、なにかもっと大きな理由があるはずだ。オーフェリアは知ってるか?」

 

「・・・・・・ええ。知ってるわ・・・・・・」

 

「やっぱりか。あいつの口振りから推察出来たことが一つだけあってな、どうやらあいつは以前にもその純星煌式武装の使い手をその目で見たことがあるらしい。あいつは、あたしにこの命令するときこう言ってた。"あれを目の当たりにすりゃあ、誰だってそう思うだろうぜ"、ってな。おかしいよな。公開されている過去の貸与履歴を見る限り、ここ数十年その純星煌式武装の使い手は現れてねぇはずだ。なのにあいつはそれを見たように言っていた」

 

「まさかそれって・・・・・・」

 

「・・・・・・恐らくそうでしょうね」

 

俺とオーフェリアは同じことを同時に考えていた。ディルク・エーベルヴァインが以前見たことがある使い手は、俺の姉。天霧遥だ。そして、それを見たのは恐らく前にペトラさんが言っていた《蝕武祭(エクリプス)》でだ。

 

「だが、イレーネ。何故その事をわたしたちに言う?」

 

「あたしにも仁義ってもんがあってな。天霧にはプリシラを助けてもらった恩がある。このままじゃ次の試合がやりづらくてしょうがねぇんだ。それに、オーフェリアにはあたしがいない間、プリシラをよく守ってもらっててな、その礼も踏まえてだ」

 

「なるほどね」

 

「それとこれは私情だが・・・・・・天霧、おまえオーフェリアの幼馴染で恋人なんだよな?」

 

「あ、うん」

 

「あたしたちはよくおまえたちの話を聞かされてな、その時、ロドルフォも入れて約束したんだよ」

 

「約束?」

 

「ああ。彼女・・・・・・オーフェリアの助けになるってな」

 

「・・・・・・私の?」

 

「ああ。オーフェリアは以前は星脈世代でもねぇ、只の一般人だった。これは間違ってねぇな?」

 

「うん」

 

「ああ」

 

「だが、それを《大博士(マグナム・オーパス)》が人体実験でオーフェリアを《魔女》にした。あってるな?」

 

「・・・・・・ええ」

 

「それを聞いたときな、あたしとロドルフォは怒ったよ。あそこまで怒ったのはプリシラが人身売買に掛けられそうになったとき以来だ。プリシラは怒りながらも泣いていた。ロドルフォの奴は近くにあった壁を殴っていたよ。あたしもおんなじだ。人の人生を狂わせたんだからな」

 

「イレーネ・・・・・・」

 

「・・・・・・あたしとプリシラは実の親に売られた。プリシラは稀有な再生能力者だからな人体実験に利用される可能性があった。だからあたしは、その時いたディルクの野郎に願ってプリシラを買い戻してもらった。それ以来あたしはディルクの手駒だ。だが、オーフェリアの場合は違う。オーフェリアはあらゆる自由を、ディルクの野郎に縛られてる。オーフェリア・ランドルーフェンという一人の人間をあいつは道具のように扱ってるんだよ。だから、あたしたちは約束した。オーフェリアをこれ以上悲しい目に遇わせないってな。天霧。天霧と再び出会ってからのオーフェリアは何時もと違っていてなあたしたちとしても喜ばしいんだ」

 

「イレーネさん・・・・・・」

 

「オーフェリアはなレヴォルフでもあたしたちとごく一部の人間としか話さなくてな、常に無表情なんだ。けど、天霧と一緒にいるオーフェリアはそんなことねぇ。ただの恋する女子だ。そんなやつの邪魔をするならあたしはそいつを絶対に許さねぇ、って決めてんだ」

 

「イレーネ・・・・・・」

 

「よし、そんじゃあこれで義理は通したぜ」

 

さっきまでの辛辣な真面目な顔からさっぱりした顔のイレーネさんが言ったところで、プリシラさんが大きな鉄鍋を持って現れた。

 

「お待たせしましたー。シーフードとキノコのパエリアです」

 

「ふふん、プリシラのパエリアは特に絶品だからな。心して食えよ」

 

「ほらほら、お姉ちゃん。それはいいから早く取り分けて」

 

胸を張るイレーネさんに、プリシラさんが照れくさそうな顔で応えた。

その微笑ましい姉妹仲の姿に、俺は言葉にならない思いが湧き上がるのを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、それじゃそろそろお暇しようか」

 

「うむ、そうだな」

 

プリシラさんの料理のあと、コーヒーをいただいた俺とユリスは視線を交わして立ち上がった。

 

「えっ、もうですか?あと少しゆっくりしていっても・・・・・・」

 

「やめとけ、プリシラ。下手に馴れ合っても、

どうせ明日にはやり合うんだ。お互い用件は済んだんだし、もう十分だろ」

 

「・・・・・・そうよプリシラ」

 

「オーフェリアさんも・・・・・・わかりました」

 

「それじゃ私もそろそろお暇するわね」

 

「ああ。・・・・・・・おい、天霧」

 

「うん?」

 

「あたしは明日、あんたを存分に叩きのめす。オーフェリアには悪りぃがな」

 

「大丈夫よイレーネ。下手に手を抜いたらあなたの方が危ないわよ?」

 

「わあってるよ」

 

「・・・・・・・お手柔らかに頼むよ、イレーネさん」

 

「イレーネで構わねぇよ。プリシラ」

 

「はいっ」

 

イレーネの声にプリシラさんは俺たちを見送るたに部屋からでてエントランスに来た。

 

「今日はごちそうさま、プリシラさん。美味しかったよ」

 

「いえ、とんでもないです。その、お姉ちゃんがいろいろとすみませんでした」

 

「いいや、《吸血暴姫》の言い分もわからんではない。我々とて明日は全力で相手をするからな」

 

「それは・・・・・・・わかってます」

 

ユリスの言葉にしょんぼりと項垂れるプリシラさんにオーフェリアが声をかける。

 

「プリシラ、聞きたいことがあるのだけどいいかしら?」

 

「はい?」

 

「《覇潰の血鎌》を使ってるときのイレーネの様子は・・・・・・・どうかしら?」

 

「・・・・・・《覇潰の血鎌》を使ってるときのお姉ちゃんは、少し怖いです。最初は慣れてない武器だからかなって思ってたんですけど・・・・・・・あれを使ってるときのお姉ちゃんは、なんだかすごく凶暴っていうか、まるで人が変わったみたいで、お姉ちゃんがお姉ちゃんじゃないみたいなんです。しかも、最近はそれがどんどん・・・・・・・」

 

「そう・・・・・・・」

 

「はい・・・・・・・」

 

「それじゃ、また」

 

「はい!」

 

プリシラさんと分かれた俺たちは街灯が照らす夜の町並みをしばらく歩き、ユリスと星導館近くの橋で明日のことを軽く話、分かれたあと家に帰るなか俺はオーフェリアに訪ねた。

 

「オーフェリア、さっきの話って・・・・・・」

 

「・・・・・・・綾斗、明日の試合出来たらでいいのだけどイレーネの持つ《覇潰の血鎌》を破壊してくれないかしら」

 

「オーフェリアはイレーネが《覇潰の血鎌》に支配され始めてると言いたいの?」

 

「・・・・・・・純星煌式武装には使用条件があるのは知っているわね。《覇潰の血鎌》のような純星煌式武装は使い手に干渉してくるのよ」

 

「使い手に干渉?」

 

「ええ。中には使い手の意識や性格を自分好みに変質させるものもあるの。そして《覇潰の血鎌》の影響は肉体を変えるほどよ」

 

「なるほど・・・・・・・そういうことか」

 

「ええ」

 

「出来るだけのことはやってみるよ」

 

「お願いするわ」

 

「うん」

 

あのあとオーフェリアとともに家に戻った俺は、家に帰ってきていたシルヴィからペトラさんに渡されたと思うシルヴィの六花内のライブチケットを受け取り、明日に備えるために早々に寝ることにしたのだった。

 

 

 

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