学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語   作:ソーナ

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追憶闘破
五回戦


~綾斗side~

 

 

―――《鳳凰星武祭(フェニクス)》十一日目

 

 

「まったく、たった一日でよくもまあここまで広まったものだな」

 

イレーネと闘った四回戦の翌日、《鳳凰星武祭》五回戦当日、俺はすっかり通いなれたシリウスドームの控え室に入ると、先に来ていたユリスが呆れ顔を浮かばせて大小様々な空間ウインドウの群れとともに出迎えてくれた。

 

「おはよう、ユリス」

 

「おはよう、綾斗。どうだ、全世界に自分の弱点を吹聴された気分は?」

 

訊いてくるユリスに俺は軽く肩を竦めて返す。

 

「体調はどうだ?」

 

「それに関しては問題ないよ。オーフェリアのお陰でなんとか回復したし。・・・・・・まあ、全力は無理だけど」

 

「ほう、昨夜は一体オーフェリアとなにをして過ごしたんだ?」

 

眉を潜めて意地の悪い笑みを浮かべてユリスが聞いてきた。

 

「え、あ、いや、なにもしてないからね!」

 

「冗談だ。それより・・・・・・・報道のほうはご覧の通りだ」

 

空間ウインドウに《鳳凰星武祭》関係の記事が映し出されているが、そのすべてが俺に関連するものばかりだった。

 

「報道のほうはまだあやふやな推測の域を出てないが・・・・・・出場選手の元へは各学園の諜報機関が調べた、より詳細なデータが渡っているだろうな」

 

「・・・・・・どれくらいまでバレてると思う?」

 

「さてな・・・・・・だが、どの学園もクローディアと同じくらいの情報は掴んでいると見た方がよさそうだな」

 

俺の封印について知っているのはシルヴィア、オーフェリア、ペトラさん、紗夜、ユリス、綺凛、レスターだけだ。だが、クローディアは何故か知っていた。考えられる推測は恐らくは星導館学園の特務機関《影星》の働きだろう。クインヴェールにも《ペネトナーシュ》と呼ばれる情報機関があるらしくそれと同機関なのたろう。だが、クローディアも俺の封印については詳しくは知らないらしい。

ペトラさんはこの辺りは知っているが、あの人はそう簡単に俺たちのことを言わないはずだ。というより、ペトラさんは俺たちの保護者のような感じなのだ。

 

「だが、大雑把な制限時間はイレーネ・ウルサイスとの試合が基準となるだろうな」

 

「そうか・・・・・・・」

 

その点については、諦めるしかない。

 

「問題は、おまえの反動のことまでバレていると言うことだ」

 

そう言うとユリスは手近な空間ウインドウを拡大して見せた。そこには関係者談ということで『どうやら彼は一度力を解放するとしばらく反動で身体を動かすのも大変になるという話も聞いたことがあります。なんでも、そうなると再び全力を出すには一定のインターバルが必要で・・・・・・』といった記事が載っていた。

 

「クローディアの調べでは、この噂の出所はレヴォルフらしいぞ」

 

「レヴォルフ・・・・・・・ってことは」

 

「ああ・・・・・・・十中八九《悪辣の王(タイラント)》だろうな」

 

レヴォルフの生徒会長。ディルク・エーベルヴァインは姉さんを知っているらしい。ならば、姉さんの能力、禁獄の縛鎖についえ知っていてもおかしくはないだろう。

 

「《悪辣の王》については文句の一つや二つは言いたいがこの際それは無視だ。とにかく今は目の前の相手を倒すのをどうにかしないとな」

 

深いため息をついて空間ウインドウを消しながらユリスが言った。

 

「俺たちの対戦相手は《界龍(ジェロン)》の序列二十位と二十三位のペアだっけ?」

 

「そうだ。三回戦でも《界龍》のペアとはぶつかっているが、それとは別格だと認識した方が良いだろう。なにしろ、あの《万有天羅》の直弟子だからな」

 

「だね。そうなると、どういう作戦で行く?」

 

「そうだな・・・・・・・。ああ、そう言えば二つほど聞きたいことがある」

 

「なに?」

 

「おまえの封印、一瞬だけなら力を解放できるか?」

 

「あー・・・・・・今の状態だと五秒だけ・・・・・・なら出来るけど。あ、でも試合の頃には少しだけなら・・・・・・一、二回ほどならできる、とは思う」

 

「ふむ。では二つ目だ、私のときもそうだがおまえの防御、封印されたままでもかなりのものだが、今の状態では出来るか?」

 

「その点については問題ないよ。ただ、相手が格上だと今の状態だと無理・・・・・・とは言えないけどキツいかもしれない」

 

「いやいや、そもそもおまえより格上の相手なんてイレーネクラス以上だろ。封印を解放していたらガラードワースの《聖騎士(ペンドラゴン)》クラスじゃないと相手にならないはずだ」

 

俺の言葉にユリスは呆れた口調で言った。

呆れた口調で言い終えると、至極難しい顔をして、しばし指を顎に当てて考え込んでいた。

やがて。

 

「―――よし、だとしたらこういう手はどうだ?」

 

顔を上げたユリスは、ニヤリと悪巧みを考えてそうな笑みを浮かべながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『や~って来ました!《鳳凰星武祭(フェニクス)》五回戦最終試合!ベスト8を勝ち取るのはどちらのペアか!』

 

『今年はレベルが高いッスからどのペアにも優勝の可能性はあるッスよ!』

 

『それでは、現在勝ち残っている注目ペアをご紹介していきましょう!』

 

『まずは、今大会の大本命。アルルカントの最新パペット!アルシィ&リムシィ!エルネスタ選手とカミラ選手の代理選手です』

 

『一回戦からの相手にまず一分間攻撃させてからの勝利は衝撃的だったッスね』

 

『続いて界龍の誇る双子の悪魔!《幻映創起》こと黎沈華(リーシェンファ)選手と《幻映霧散》こと黎沈雲(リーシェンユン)選手』

 

『多彩な攻撃からなす星仙術と双子ならではのトリッキーな技は極悪に質が悪いッスよ。これまですべての対戦相手を手玉にとって勝利してるッス』

 

『さらにさらに銀翼騎士団(ライフローデス)の誇りと名誉をかけて戦う。ガラードワースのドロテオ・レムスとエリオット・フォースター!』

 

『ドロテオ選手は三回目の星武祭出場となる歴戦の猛者ッス!エリオット選手は中等部ながら銀翼騎士団入りした若き天才ッス』

 

『鳳凰星武祭は星導館学園のもの。その意地を示せるか!刀藤綺凛&紗々宮沙夜!』

 

『接近戦に強い刀藤選手と火力で押す紗々宮選手の連携がはまりまくってるス』

 

『しかーし!星導館学園と言えばこれから試合の行われる天霧、リースフェルトペアも要チェックすね!』

 

『はい!純星煌式武装(オーガルクス)覇潰の血鎌(グラヴィシーズ)を有するイレーネ、プリシラペアに見事勝利したッス』

 

『一方、天霧選手について様々な憶測が乱れ飛んでいます』

 

『報道されている内容が本当だとしたら大きなハンデっスよ』

 

『彼の能力解放によるダメージは回復しているのか?そして今度もあのパフォーマンスが見られるのでしょうか?さぁて、いろんな意味で注目するこの試合。星導館学園天霧綾斗、ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトペア!そして界龍第七学院宋然(ソン・ラン)羅坤展(ルオ・クンザン)ペアの入場です!』

 

 

 

解説席からの言葉を聞きながらステージにユリスとともに入ると反対側の入場口から入ってきた対戦相手に声をかけられた。

 

「天霧君」

 

その声に俺とユリスは脚を止め相手を見る。

 

「君に関する噂の真相がどうあれ、我ら全力で相手をさせてもらう!」

 

「え・・・・・・」

 

「本音を言えば、万全の君と一対一で拳を交えたかったが」

 

「これはタッグ戦ルールの鳳凰星武祭だ。悪く思わないでくれ!」

 

「あ、いや、そんな・・・・・・」

 

「戦う前にそれだけ言っておきたかった」

 

「は、はあ・・・・・・」

 

それだけ言うと対戦相手の二人はステージに降り立った。

 

「なるほど。まさしく武人といった趣きだな」

 

「ああいう人たちもいるんだね」

 

さすがにああいう風に言われたのは初めてだったので驚きと意外の感想を口にしてユリスとともにステージに降り立つ。

 

 

 

 

『さあ、両選手でそろいました!』

 

 

 

 

 

「あちらはまず、おまえが全力で戦えないか試してくるだろう。そしてすぐに見抜く。・・・・・・真実だとな・・・・・・」

 

アナウンスを聞きながら、ユリスは対戦相手の二人に聞こえないように、小声で言う。

 

「だろうね・・・・・・」

 

「よし。いいか綾斗」

 

自身の煌式武装アスペラ・スピーナを起動させると、ステージの床に刃先を当て、小さくバツ印を書いた。

 

「ここが目印だ。よく覚えておけ」

 

「う、うん」

 

目印のバツ印を見ながら、再度確認を取った。

 

「合図は花火でいいんだよね?」

 

その問いにユリスは無言のうなずきで返した。

 

「それまでに条件をクリアしておけよ」

 

「了解」

 

ユリスと作戦を話終え、対戦相手の二人と相対し腰のポーチから《黒炉の魔剣(セレス)》ではなく、普通の片手剣煌式武装を取り出して起動する。

 

『頑張りなさい綾斗』

 

『うん。できる限りのことはするよ』

 

セレスからの思念通話での応援にそう答え、意識を集中させる。

 

 

 

 

『果たして、この五回戦を突破してベスト8へと進むのはどちらのペアか!鳳凰星武祭五回戦第八試合試合(バトル)・・・・・・開始(スタート)です!』

 

 

 

 

 

 

解説者の試合開始のアナウンスとブザーとともに試合が始まった。

先に仕掛けてきたのは界龍の宋選手だった。

 

「参る!はああああああっ!」

 

宋選手は一気に間合いを詰めて右の拳を放ってくる。

その攻撃を煌式武装の剣の腹で受けるが、ずんと重い衝撃が手から身体全体に伝わってきた。

まるで巨大な鉄球がぶつかってきたような衝撃に強く奥歯を噛み締める。

 

「ほおぅ!」

 

さらにそのまま身体ごとぶつかるように踏み込み、右の肘を腹部へと叩き込んできた。

 

「ぐっ・・・・・・!」

 

とっさに星辰力を腹部に集中させてなんとか耐えるが、その一撃は膝から崩れ落ちそうになるほどの威力だった。

 

「あいぃ!」

 

そして追撃として、その場でくるりと回転すると、空気を裂くような裏拳を顔めがけて見舞ってきた。

 

「うわっ!」

 

瞬時に腕をあげてそれを逸らし、大きく後ろへ跳んで間合いを取った。

 

「なるほど・・・・・・どうやら噂は本当だったようだな」

 

そう言うと宋選手は、ゆっくりと構えを取った。腰を落とし、左足を大きく前に出した独特の形。構えからして、拳法の構えなのだろうが生憎、俺はそこまで中国武術は詳しくないため、流派まではわからない。

 

「(すごい・・・・・・。強いなこの人。芯がまっすぐで・・・・・・正に武人・・・・・・)」

 

宋選手を見ながら、頬を軽く拭いそう思考する。

正直三回戦の時に闘った相手とは比べ物にならない程の強敵だ。

 

「(やっぱり全力を出せないからか少しキツいな)」

 

ユリスとセレスには大丈夫だとああ言ったがさすがにこれはキツイ。

そう思いながらユリスの方を見ると。

 

「はあぁ!」

 

「咲き誇れーーー九輪の舞焔花(プリムローズ)!」

 

羅選手と闘っていた。

 

「はあああぁ!」

 

そう思考しながら宋選手と相対していると。

 

「すまん綾斗!抜けられた!」

 

ユリスからの声が耳に聞こえた。

それと同時に脇腹に羅選手の持っていた棍が突き出された。

間一髪それをかわしたが、羅選手の棍は途中で軌道を変え、今度は上段から打ち下ろされた。

とっさに煌式武装を掲げて受け流すが、今度は反対側から回り込んでいた宋選手が雷光のような飛び蹴りを放ってきた。さすがにこれには間に合わず、脇腹に星辰力を集中させて衝撃を緩和するが、肉を抉られたような痛みが鋭く走る。

しかも宋選手は打ち下ろされた棍の上に爪先で着地し、羅選手は寸分の狂いもなくそれを跳ね上げた。

 

「なっ・・・・・・!」

 

完璧なコンビネーション。息の合ったプレイ。相手のことを完全にわかっているからこそできる芸当だ。

ここまでに到達するのには生半可ではない時間と修練が合ったのだろう。

宙に舞った宋選手は俺の背後に着地し、振り返るよりも早くその背中へ掌打が叩き込まれた。

 

「―――っ!」

 

先程の攻撃とは桁違いの衝撃が身体を貫いた。

一瞬意識が遠のきそうになったがなんとかそれを振りきり転がるように距離を保つ。

 

「ふむ。今の一撃に耐えるか・・・・・・さすがだな」

 

感嘆の色を滲ませて宋選手が呟くが、改めて構えるその動きには微塵の隙もない。それは隣の羅選手も同様だった。

 

 

 

 

『おおっと!あの天霧選手が一方的に攻められています!驚きの展開です。確かに栄、羅ペアの動きはすさまじいものだったですが・・・・・・』

 

『例のパフォーマンスもなし、星辰力(プラーナ)の練りこみも今までと段違い。やっぱり噂は本当なんじゃないッスか?』

 

 

 

 

解説者二人のそんな解説を意識の傍らで聞く。

その間にも宋選手と羅選手は挟み込むようにしながらじりじりと間合いを詰めてくる。

二人が丁度俺の左右にいるのを見て、視線を奥のユリスに見やる。

ユリスは小さくうなずき。

 

「綻べ―――赤壁の断焔華(ロロペタルム)!」

 

凜とした声と同時に、ステージの中央を中心に地面から吹き上がった巨大な炎の壁がステージの端から端までを二つに両断した。

 

 

 

 

『おおおおー?これはリースフェルト選手の技なのでしょうか、いきなり現れた炎の壁がステージを大分割!』

 

 

 

 

「これは・・・・・・」

 

宋選手は驚いた顔で高さ十メートルはある炎の壁を見上げていたが、すぐにその意図に気がついたらしい。

 

「なるほど、私と羅を分断したか」

 

宋選手の言う通り、俺は宋選手とユリスは羅選手と炎の壁で分断し、一対一の形を作り上げた。

 

「・・・・・・取り敢えずこれで一対一です」

 

「ほう・・・・・・一対一ならば勝機があると?」

 

「正直厳しいと思いますけど、だからと言って諦めるわけにはいかないでしょう?」

 

「ふふっ、それもそうだ。つまらぬことを聞いたなら。謝っておこう」

 

「いえ、気にしないでください」

 

構えを取りながら会話をし、俺のその言葉を最後に、再び俺と宋選手はぶつかった。

 

~綾斗side out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~ユリスside~

 

 

「どうした、その程度か?だとしたら噂ほどではないな、《華焔の魔女(グリューエンローゼ)》」

 

「くっ・・・・・・!」

 

羅選手の猛攻をなんとか凌ぎながら私は思わず唇を噛んだ。

手はず通り、強制的に一対一の状況を作り出すことには成功した。私の策においてこれは必須条件だからここまでは順調だ。

だが、羅選手の実力は計算外だった。

 

「(これで序列二十三位だと?星導館(うち)でなら十分に《冒頭の十二人(ページ・ワン)》入りだぞ・・・・・・!)」

 

内心で舌打ちしつつ、連続で繰り出される棍を細剣型煌式武装アスペラ・スピーナで防ぎ、展開させた赤焔の灼斬花(リビングストンデイジー)で背後や上空から立体攻撃を仕掛けるが、羅選手は長い棍を器用に操り、有利な間合いを維持しながら私の焔の戦輪をまるで寄せ付けない。

 

「―――いや、違うな。この炎の壁の維持に力を裂いているのか」

 

しかも星辰力の大半を赤壁の断焔華に注いでいることも見抜かれた。

 

「これだけの火力をこれだけの規模で維持するとなれば、星辰力の消費も並大抵ではないだろう。そのため戦闘に使う分の星辰力を絞らざるを得ない」

 

「さて、どうかな」

 

綾斗に近接戦の特訓をしてもらってなかったらヤバかったであろう。本来ならば赤焔の灼斬花は十数個の戦輪を出すことが可能だが、今は一度の展開に最大で六つが限界だ。

 

「仮にそうだとしたら、これは上策とは言いがたいな。わざわざご大層なマネをしなくとも、一対一に持ち込む方法はあったろうに」

 

「仕方あるまい。私たちが勝つためにはこれしかなかったのだ」

 

「・・・・・・ほう。ということはまだ次の矢があるということか」

 

羅選手は棍を器用にくるくると回しながら、ニヤリと笑った。

 

「それは楽しみだが―――だったら早くすることだ。でないと壁の向こうは決着がついてしまうぞ?」

 

「それは私のパートナーが敗れると言いたいのかな?」

 

「今の《叢雲》の力ではオレたちに及ばない。あんたもわかっているだろう?」

 

「・・・・・・ああ、その通りだ。今の綾斗がおまえたちに勝つには、せいぜい上手く不意を打つくらいしかなかろうな」

 

「不意打ちか・・・・・・まあ、そんな隙を見せるほどオレも宋も甘くはないがな」

 

「・・・・・・・・・・」

 

お喋りは終わりとでも言うように、羅選手は棍を構え直した。

わずかに後退しながら、展開している戦輪を少しずつ防御の布陣へと組み替える。そして同時に、壁向こうの気配を探りながら横目でそっと地面を確認する。

 

「―――そこだ!」

 

と、その隙をつくように羅選手が動いた。

 

「しまっ―――」

 

「遅い!」

 

裂帛の突きが防ごうとした細剣を弾き飛ばして、そのまま私の胸に叩き込まれた。

 

「くぁ・・・・・・っ!」

 

反射的に身をよじって校章は守ったが、思いっきり吹き飛ばされた。

 

「(くっ・・・・・・!あばらが何本かいったな・・・・・・だが、このタイミングなら!)」

 

受け身をとってすぐさま体勢を整えると、赤焔の灼斬花を解除して意識を集中させる。

 

「させるものかよ!」

 

止めとばかりに追撃してくる羅選手に、痛みをこらえて小さく笑い、両手を開く。

 

「咲き誇れ―――六弁の爆焔花(アマリリス)二輪咲(デュオフロース)!」

 

両手に一つずつ小さな火球が生まれる。

だが、それでも羅選手は怯まずそのまま迫ってくる。

しかし私は右手の火球を羅選手ではなく、真上に向かって放った。

 

~ユリスside out~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~綾斗side~

 

「―――正直、感服する」

 

言葉とは裏腹に、どこか呆れた表情で宋選手が言う。

 

「ここまで私の攻撃を凌ぎきるとは、防御に徹していたとしても大したものだ。しかも明らかに君の反応はどんどんと良くなってきている。私の呼吸や間合い、攻撃のタイミングを見切ってきているのだろうな。優れた対応能力の証左と言えよう。だが―――悲しいかな、君の身体がそれについてきていない」

 

荒い息をつきながら宋選手から視線を外さず意識を集中させる。

 

「もし君が万全の状態であったら、この立場は逆だったかもしれん。いや、ここまで粘ることさえ出来なかっただろう」

 

「そんなことは、ないと、思いますけど」

 

呼吸を整えつつ、律儀にそれに応える。

宋選手の相手をしながら、ユリスのタイミングを待つ。

 

「だがこれ以上痛め付けることになるのは私としても忍びない。君に敬意を表して次で終わらせるとしよう」

 

宋選手が言いながら右の拳を握ると、一気にその拳に星辰力が集中した。

恐らくあの一撃は流星闘技クラスの一撃だろう。

 

「君がいかに防御しようが、この拳は防いだ武器や腕ごと粉砕する。まあ、君の純星煌式武装ほどではないが、防御するよりはかわすことをお勧めしておこう。無論、かわせればだが、ね」

 

いい終えると同時に、宋選手が一息で間合いへ踏み込んできた。

今の俺の星辰力では宋選手の言うとおり、防ぐことは出来ないだろう。例え一転に星辰力を集中したとしてもそれが破られるのは目に見えている。

大地を揺るがすような震脚と、えぐるような掌打。

だが、その掌打が俺の胸に届く寸前、俺と宋選手の頭上で小さな爆発が起こった。

 

「(ユリスからの合図―――!)」

 

「はあっ!」

 

俺はユリスからの合図を確認すると、一瞬だけ力を解放し、宋選手の掌打をかわして自分の背後にそびえる炎の壁へ向かって飛び込んだ。

 

「なっ・・・・・・!?」

 

絶句したような宋選手の声が聞こえるが、すでに俺の意識はそこへは向いていない。

俺の姿が炎に飲み込まれるその直前で、まるで旧約聖書に記されたモーゼのように炎の壁が二つに割れた。

それと同時に、向こうからはユリスがこっちに飛び込んで来た姿が見える。

ユリスとすれ違い様に目線だけかわすと、炎で炙られながらも一瞬で俺は羅選手をユリスは宋選手へと目標をスイッチする。

 

「なんだと・・・・・・!?」

 

「まさかっ!?」

 

宋選手と羅選手の驚愕に目を見開きながら慌てて構えをとる姿が見えるがもう遅い。

 

「天霧辰明流剣術初伝―――"貳蛟龍"!」

 

「弾け飛べ!」

 

俺の煌式武装の切っ先が羅選手の校章を切り裂き、ユリスの左手に持った火球が宋選手の校章を打ち砕く。

 

 

 

 

 

校章破壊(バッジブロークン)

 

 

『試合終了!勝者、天霧綾斗&ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルト!』

 

 

 

 

校章の機械音声の判定後、試合終了と勝者の宣言が解説者席からアナウンスされた。

 

 

 

 

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