学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語   作:ソーナ

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歌姫の帰還と再検査

 

~綾斗side~

 

 

シリウスドーム控え室

 

 

鳳凰星武祭(フェニクス)準々決勝が終わって30分後、俺とユリスはドーム内の選手控え室にいた。室内には俺とユリスのほか。

 

「おめでとうございます、姫様!天霧様!本当にほんっとーにすごかったです!フローラ、大興奮でした!」

 

「おいおい、少し落ち着けフローラ」

 

「ありがとうフローラちゃん」

 

ユリスの侍女であるフローラちゃんと。

 

「あらあら、フローラは相変わらずですね」

 

「クローディアはフローラちゃんのこと知ってるんだ」

 

フローラちゃんをここまで連れてきたクローディアがいる。

 

「ええ、まあ。ユリスの侍女として何度かお会いしたことがありますので」

 

クローディアの言葉に、俺はクローディアの両親が銀河に所属してることを思い出した。両親が銀河に務めているなら、リーゼルタニアのお姫様であるユリスの侍女たるフローラちゃんを知っていて当然だ。まあ、クローディア自身ユリスの友達だからその関係上、フローラちゃんと知り合っていても何ら不思議はないけど。

 

「エンフィールド様は何時も優しいです!先程もフローラにお菓子をくださりました!」

 

そう言うとフローラちゃんは、ポーチからクローディアから貰ったであろうマドレーヌを袋から取り出してパクッと、小さな口で食べた。小動物みたいで見ているだけで癒される感じがした。

 

「良かったなフローラ」

 

「あい!あ、姫様もどうぞ!」

 

「あ、いや、それはおまえがクローディアから貰った物だからな。私が貰う訳にはいかない」

 

「うぅぅ・・・・・・そうですか」

 

ユリスの言葉にあからさまにガッカリするフローラちゃんの姿に、流石のユリスも慌てふためく。

 

「あ、あぁ。いや、や、やっぱり貰ってもいいかフローラ」

 

「っっ♪!あい!どうぞです姫様!」

 

ユリスの言葉にフローラちゃんはガッカリから一転、満面の笑みを浮かべてユリスにクローディアから貰ったマドレーヌを渡した。

 

「――――――うむ。美味いな」

 

「あい!」

 

フローラちゃんの頭を撫でながらユリスはマドレーヌの感想を言う。クローディアも作ったかいが在ったというのか嬉しそうだ。

 

「まったく。ほんと、おまえは何でもそつ無くこなすよなクローディア?」

 

「いえいえ。さすがの私も不得手としている事ぐらいありますよ」

 

「どうだかな・・・・・・」

 

クローディアの言葉にユリスは半眼で見ながら言う。そのやり取りに、俺は思わず苦笑いが出てしまった。

 

「綾斗もお一ついかがでしょう?」

 

「ありがとうクローディア。助かるよ」

 

クローディアから手渡された、ラッピングされた袋に入ったクッキーを一口食べると、脳に糖分が染み渡って行った。この疲れた体に嬉しい食べ物だ。甘過ぎず、甘く無くなく、丁度いい適度な甘さのクッキーだ。

 

「うん。美味しいよクローディア」

 

食べて感想をクローディアに言いながら、俺はこのクッキーを前に何処かで食べた気がした。

 

「それは良かっです。彼女から教えて貰ってましたから綾斗のお口に合うと思います」

 

「彼女?」

 

「ええ」

 

クローディアの彼女、という単語に俺はすぐさま候補を探す。そしてすぐに俺は誰かわかった。

 

「もしかしてシルヴィから?」

 

念の為クローディアに訊くと。

 

「ええ、そうです」

 

クローディアはいつもの笑みを浮かべたまま肯定した。

クローディアの肯定に俺は思わず苦笑いを浮かべた。大方、生徒会長同士という事で、内緒でお願いしたんだろう。シルヴィのその行動が目に浮かぶ様子に内心微笑ましくなった。

 

「さて、綾斗、ユリス。鳳凰星武祭(フェニクス)準決勝進出おめでとうございます。我が星導館学園は予想以上のポイントを得ています。学園を代表して喜びと感謝をお二人に申し上げます」

 

「あ、いや・・・・・・別に感謝されるような事じゃ」

 

深々と頭を下げるクローディアに俺はそう答える。

 

「もちろん、学園の代表としてだけでなく私個人、友人として喜ばしく思っております」

 

「ありがとうクローディア」

 

「いえ」

 

クローディアと話していると。

 

「・・・・・・お待たせ」

 

ルームの扉が開き変装したオーフェリアが入ってきた。

 

「オーフェリア」

 

「遅かったな、何かあったのか?」

 

「・・・・・・ちょっとした野暮用よ。それより傷の方は大丈夫なのユリス?」

 

「ん。ああ、まあな。明日は休みだからな、問題ない」

 

「そういう問題ではない気がしますけど・・・・・・」

 

ユリスの問題ないに、引き攣り笑いを浮かべてクローディアが反論する。それに俺もオーフェリアも同意するように頷く。

そこにクローディアが思い出したように俺に。

 

「綾斗。明日の適合率検査は午前9時から、以前測定しました場所で行いますので、遅くとも10分前にはいらして下さいね」

 

「分かったよ」

 

「では、私はこの辺で失礼しますね」

 

そう言うと、クローディアは軽く頭を下げルームから出て行った。

 

「私たちも先に帰るからな綾斗。フローラと街を見て回るのでな」

 

「うん、お疲れユリス」

 

「そっちこそな。それじゃオーフェリア、あとは頼んだぞ」

 

「・・・・・・ええ。任されたわ」

 

「うむ。行くかフローラ」

 

「あい!天霧様!ランドルーフェン様!失礼します!」

 

「うん、またねフローラちゃん」

 

「・・・・・・また」

 

フローラちゃんを連れてユリスはそのままルームから出た。これでルームには俺とオーフェリアの二人っきりになった。

 

「・・・・・・・・・・」

 

「あー。な、なに、オーフェリア?」

 

二人が居なくなってからジッと見つめるオーフェリアにたじろぎながら訊ねる。

 

「・・・・・・・・・・」

 

しかしオーフェリアはジッと、なにかを見つめるように俺の顔を瞬きもせず見る。

やがて。

 

「・・・・・・綾斗」

 

「な、なに?」

 

「・・・・・・ここじゃあれだから早く私たちの家に帰りましょう」

 

「あー。うん、そうだね」

 

手早く着替え、俺はオーフェリアとともにルームを出てシリウスドームを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数十分後

 

 

「・・・・・・ただいま」

 

「ただいま」

 

俺とオーフェリアは買い物を軽くしてアスタリスクにある自宅に帰ってきた。俺はそのまま荷物をリビングに置き。

 

「・・・・・・それは私がやっとくから、綾斗は着替えてきたらどうかしら?」

 

「それじゃあお願いするよ」

 

オーフェリアに荷物類を任せ、自室に戻った俺はラフな格好に着替えリビングに戻った。

リビングに戻ると、丁度オーフェリアが夕飯を作っている最中だった。

 

「なにか手伝おうか?」

 

「・・・・・・大丈夫よ。綾斗は明後日の準決勝に向けて身体を休めて」

 

「それじゃあお言葉に甘えて」

 

オーフェリアにそう言われ、俺は身体を休めるためリビングの戸棚にセレスの発動体を置き、ソファに横になって眼を瞑った。

どうやら思っていた以上に自身の身体に疲れが溜まっていたみたいだ。オーフェリアはそれを見越していたから身体を休めるように言ったのかもしれない。まあ、その気遣いに少し照れくさくもなったが。俺はそのまま意識を奥に潜らせると眠りに落ちた。

 

「んん・・・・・・」

 

小さく声を出して目を開けると。

 

「あ、起きた綾斗くん?」

 

目の前に見慣れた顔の少女がいた。

 

「ん・・・・・・シルヴィ?」

 

「うん。おはよう、綾斗くん」

 

「おはよう・・・・・・んん!?」

 

眠気眼を擦って身体を起こ―――そうとしたがシルヴィに押し留まれた。あまりに自然な事だったからつい普通に返したけど。

 

「あれ?!なんでシルヴィがいるの!?」

 

シルヴィが居るということに俺は驚いた。

その俺の声が聞こえたのか、台所から。

 

「・・・・・・起きたの綾斗」

 

エプロン姿のオーフェリアが姿を見せてきた。

 

「あ、ああ。じゃなくて、いつの間にシルヴィ帰ってきてたの!?」

 

「・・・・・・1時間くらい前」

 

オーフェリアの言葉に時計を見ると、俺が寝てから約四時間ほど過ぎていた。かなり寝ていたようだ。とまあ、それは別として先程から俺の頭の下になにか柔らかい物があるのに気になった。

 

「綾斗くんかなり熟睡していたね。私がこうしても起きなかったんだもん」

 

「え?」

 

シルヴィの言葉に俺は今の状況を見る。

やがて。

 

「もしかしてこれってシルヴィの膝?」

 

頭の下にある柔らかい感触に俺はシルヴィに訊く。

 

「そうだよ。気持ちいい?」

 

「う、うん」

 

シルヴィの言葉にそう返すと。

 

「・・・・・・シルヴィアずるい」

 

少しムッとした表情のオーフェリアがいた。

 

「えへへ」

 

対するシルヴィは笑みを浮かべるだけだ。というかそろそろ起きたいんだけどな~。

 

「あー。シルヴィ、そろそろ起きたいんだけど・・・・・・いいかな?」

 

「うん。疲れはとれた?」

 

「まあね」

 

起き上がった俺は立ち上がり、軽く延びをする。

軽く延びをして部屋を見渡すと、戸棚にはセレスの他にシルヴィの銃剣型煌式武装《フォールクヴァング》の発動体が置かれていて、テーブルには夕食の準備がされていた。

 

「・・・・・・夕飯、出来たから早く食べましょう」

 

「そうだね」

 

「うん。あ~、久しぶりのオーフェリアちゃんのご飯だよ♪」

 

シルヴィは楽しみそうに言いながら席についた。

俺とシルヴィが席に着くと、台所からオーフェリアが料理を持ってきてくれた。

 

「・・・・・・はい、どうぞ」

 

「ありがとうオーフェリアちゃん!」

 

「ありがとうオーフェリア」

 

「・・・・・・どういたしまして」

 

「それじゃ―――いただきます!」

 

「いただきます」

 

「・・・・・・召し上がれ」

 

シルヴィの待ちきれないとでも言うような声に俺とオーフェリアはクスリと笑みをこぼして、オーフェリアの作った夕飯を久しぶりの三人で食べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数時間後

 

 

夕飯を食べ終え、それぞれお風呂に入って寝る準備をした俺たちはリビングのソファに腰掛けて話していた。

 

「まずは鳳凰星武祭準決勝進出おめでとう綾斗くん」

 

「あはは。ありがとうシルヴィ」

 

「うん!」

 

「・・・・・・綾斗、二つ目の封印が解けたのね」

 

「まあね」

 

「なるほど~。だから、さっきから綾斗くんの星辰力(プラーナ)の光が強いんだね」

 

「え、星辰力漏れてる?」

 

俺はシルヴィの声に自身の体を見渡す。だが、星辰力が漏れ出てるようには感じ取れない。

 

「あ、漏れてはないよ。感覚、かな?」

 

「・・・・・・ええ」

 

「へぇー」

 

俺には感知出来ないが、シルヴィとオーフェリアは俺の変化が分かってるみたいだ。さすが、片や世界の歌姫と片や世界最強の魔女だということか。

 

「あ、二人とも明日のライブは午後6時から始まるから忘れないでね」

 

「もちろん」

 

「・・・・・・ええ、わかってるわ」

 

明日のシルヴィのライブはかなり楽しみだ。

小さい頃にシルヴィの歌ってる姿はなんとも見たけど、こうした大きな場所で歌ってる姿は見たことないからだ。まあ、シルヴィのライブ動画はかなりネットに流れてるけど。もちろん、俺もネットで見たことはあるけど、直に観たことはなかった。

そのまま今日の準々決勝のことや、シルヴィのツアーライブの事とか話し眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日 午前9時

 

 

 星導館学園内保管庫

 

 

 

「それでは綾斗、只今から《黒炉の魔剣(セル=ベレスタ)》の適合率検査を行います」

 

翌日の早朝、俺は予定通り星導館学園の保管庫。以前セレスの適合率検査をして場所にいた。ここにいるのは俺と、生徒会長であるクローディア、そして検査職員のみだ。

 

「了解」

 

クローディアの言葉に、俺はポーチから《黒炉の魔剣(セレス)》の発動体を取り出し起動させる。

 

『セレス起きてる?』

 

《黒炉の魔剣》の柄を握りながら頭の中で、《黒炉の魔剣》の意識体であるセレスに声をかける。

 

『起きてるわ綾斗』

 

声をかけると、頭の中にセレスの声が響く。

 

『昨日の疲れはとれたかしら?』

 

『まあね』

 

『そう。それで、確か今日は適合率の再検査だったかしら?』

 

『みたいだね』

 

セレスと念話で話していると。

 

「それでは綾斗、《黒炉の魔剣》に自身の星辰力を流してください」

 

クローディアがそう言ってきた。

 

「ん、わかった」

 

クローディアの言う通り、セレスに自身の星辰力を流し込んでいく。すると。

 

『《黒炉の魔剣》との適合率30%・・・・・・55%』

 

スピーカーから検査している装備局の職員の声が流れる。

そのままセレスに星辰力を流していると。

 

『―――80%・・・・・・90%・・・・・・98%・・・・・・99%』

 

『適合率、100%に到達しました』

 

職員のそんな声が聞こえた。

その声にクローディアが喋ろうとすると。

 

「わかり―――」

 

『ま、待ってください!適合率、さらに上昇しています!』

 

職員の動揺した声がスピーカーから伝わってきた。

 

「なっ!?」

 

さすがのクローディアも職員のその言葉に動揺を隠せずにいた。

 

『120%・・・・・・130%・・・・・ま、まだ上昇しています!』

 

職員の声が流れると、アラームの音が響いた。

 

『あ、あり得ない・・・・・・こんなこと・・・・・・!』

 

『現在、適合率145%!・・・・・・で、出ました!天霧綾斗と《黒炉の魔剣》の現在の適合率―――150%!』

 

「150%ですか?!」

 

職員の言葉に何時もポーカーフェイスのクローディアに驚きの表情が見えた。その間、俺はセレスと念話で会話をした。

 

『ねえ、セレス』

 

『なに?』

 

『適合率が150%みたいだけど、それってすごいの?』

 

『まあ、そうね。適合率が150%なんて、見たことないんじゃないかしら?というより、そもそも100%超えなんて聞いたことないわ』

 

『へぇ』

 

『まあ、それくらいじゃないとこうして私と会話なんて出来るはずがないのだけどね』

 

『な、なるほど』

 

そうセレスと念話で会話をしていると。

 

「綾斗、もう結構です」

 

クローディアの止める声が聞こえた。

 

「了解」

 

セレスに流していた星辰力を止め、セレスを元の発動体状態に戻す。

 

「それで、再検査して何か分かったのクローディア?」

 

「はい。というより、あり得ないということが分かりました」

 

「んん?」

 

クローディアの言葉に首をかしげると。

 

「綾斗、このあと生徒会室に来てください。そこで話します」

 

クローディアにそう言われ、俺は一通り終わってからクローディアとともに生徒会室に向かった。

 

「綾斗、よく聞いてください」

 

生徒会室に着くなり、かなり真面目な表情でクローディアが言った。

 

「う、うん」

 

クローディアの真面目な表情に引き締めて聞く。

 

「綾斗、その純星煌式武装《黒炉の魔剣》は綾斗専用になっています」

 

「はい?」

 

「正確には、綾斗だけの《黒炉の魔剣》です」

 

「え、どういうこと?」

 

「要するに、その純星煌式武装《黒炉の魔剣》は綾斗だけの物ということです。星導館を卒業しても、それは返却せず綾斗が保持してください」

 

つまりはセレスは半永久的に俺の純星煌式武装(相棒)だと言うことだ。クローディアが言うには、100%超えなんて見たことないらしく、100%を越えた純星煌式武装は他者には扱えないらしい。それは設定をフォーマットしても同様だとのことだ。

 

「えっと、つまり《黒炉の魔剣》はずっと俺の剣ってこと?」

 

「はい。そうなりますね」

 

「そうなんだ」

 

俺自身かなり驚きつつクローディアと話す。

 

「つきましてはこれにサインをお願いしますね」

 

「ああ」

 

クローディアはそう言うと、俺に書類を渡してきた。俺はそれをサッと見てサインを記入する。

 

「はい。これで本日の検査は以上となります」

 

「了解」

 

「さてと、それでは行きましょうか。綾斗も待っている人がいますよね」

 

「あ、うん」

 

クローディアとともに生徒会室を出た俺は、クローディアと分かれて星導館学園と六花を繋ぐ橋にいた変装したオーフェリアと合流し、オーフェリアとともに六花に向けて歩いていった。

 

 

 

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