学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語   作:ソーナ

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天羅会合と歌姫の歌唱

 

~綾斗side~

 

 

純星煌式武装(オーガルクス)黒炉の魔剣(セル=べレスタ)ことセレスとの再適合検査を終えた俺は、クローディアの生徒会室で新たに手続きやらをし星導館学園を後にして、近くで待っていたオーフェリアと合流した。

 

「お待たせ、オーフェリア」

 

「・・・・・・平気よ」

 

俺を待っていたオーフェリアは、近くにあったベンチに腰掛けて読書をしていた。

 

「何読んでいたの?」

 

ブックカバーで本の冊子が見えない俺はオーフェリアに訊ねる。

 

「・・・・・・ふふ。ナイショよ」

 

「っ///!」

 

オーフェリアの片目をつぶって妖艶に微笑む姿を見て俺はドキッ!としてしまった。なんというか、とても様になっていたのだ。

 

「・・・・・・それで、検査の結果はどうだったの?」

 

「あ、うん。適合率150%だって」

 

「・・・・・・っ!?」

 

「オーフェリア?」

 

俺の言った適合率に、目を見張ったオーフェリア。その反応はまさに、先程のクローディアと同じだった。

 

「・・・・・・ごめん綾斗。もう一回言ってくれる?」

 

「え?適合率150%」

 

「・・・・・・聞き間違いじゃなかった・・・・・・!」

 

オーフェリアは、嘘でしょとでも言うような表情を浮かべた。

 

「そんなに凄いの?」

 

何故そこまで驚いているのか分からない俺はオーフェリアに訪ねた。クローディアも驚いていたけど。クローディアから100%超えなんて見たことなく、100%を越えた純星煌式武装は使用者以外の他者には扱えない、ということは聞いたけど。

 

「・・・・・・まあ、凄いといえば凄いわね。適合率100%越えなんて聞いたことないし」

 

「へえ」

 

「・・・・・・夜にでもシルヴィアを交えて話しましょう」

 

「了解」

 

「・・・・・・それじゃ、行きましょう綾斗」

 

「ああ。―――って、引っ張らないでオーフェリア!」

 

「・・・・・・ふふ」

 

昔と同じように、楽しそうに微笑むオーフェリアに引っ張られて俺はオーフェリアとともにアスタリスク市街地に向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アスタリスク市街地

 

 

「・・・・・・にしても、今日は凄い賑やかね」

 

「だね」

 

今は鳳凰星武祭(フェニクス)の最中のため賑やかだが、今日は格別に賑やかだった。その証拠に、ある一角には。

 

「・・・・・観て綾斗、シルヴィアのグッズやCDが売られてるわ」

 

「うわっ。すごいね」

 

シルヴィアのホログラフィック映像が流れており、物品の販売が行われていた。

 

「・・・・・・私たちもなにか買う?」

 

オーフェリアがそう訊ねてくる。それに答えたのは。

 

「───それはいい考え」

 

「だね。えっ!?」

 

「・・・・・・やっ」

 

「紗夜!?」

 

いつの間にか俺とオーフェリアの近くにまで来ていた紗夜だった。

 

「・・・・・・綾斗、再検査は終わったのか?」

 

「え、あ、うん。まあ」

 

「それで結果は?」

 

「───・・・・・適合率150%よ」

 

「・・・・・・なに?」

 

紗夜の問いに答えたオーフェリアの言葉に、紗夜は珍しく目を大きく開いた。

 

「それは本当か?」

 

「・・・・・・ええ」

 

「・・・・・・そうか」

 

神妙になっている紗夜のところに。

 

「さ、紗夜さん~!待ってください!」

 

「・・・・・・やっと来たか綺凛」

 

綺凛ちゃんが走ってやってきた。相当走ったのか、顔が火照っていた。

 

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・。もう、置いてかないで下さい!」

 

「すまん」

 

「紗夜・・・・・・」

 

「・・・・・・紗夜、あなたね・・・・・・」

 

後輩である綺凛ちゃんを引っ張り回す、先輩の紗夜に俺とオーフェリアは呆れて表情を作った。

 

「あ、綾斗先輩とオーフェリアさん!おはようございます!」

 

「あ、うん、おはよう綺凛ちゃん」

 

「・・・・・・おはよう、綺凛」

 

「はい」

 

「だ、大丈夫?」

 

「なんとか・・・・・・」

 

かなりお疲れ気味の綺凛ちゃんに、俺は紗夜をジト見する。その紗夜はというと。

 

「───これ、三つ」

 

「毎度あり!」

 

物品ブースで何かを買っていた。

 

「何買ってきたのさ紗夜」

 

「・・・・・・ん」

 

買った物の中身を見ると、袋の中にはシルヴィの新作CDが三つあった。

 

「なんで三つも?」

 

「・・・・・・ひとつは私の。もうひとつはお父さんとお母さんに」

 

「残り一つは?」

 

「・・・・・・綺凛の」

 

「ふぇ?わ、わたしのですか?」

 

「そう」

 

そう言って紗夜は、袋から出したCDのひとつを綺凛ちゃんに渡した。

 

「あ、ありがとうございます」

 

「別にいい」

 

その様子を見て、俺とオーフェリアはびっくり仰天した。

 

「あの紗夜が・・・・・・」

 

「・・・・・・明日は雨かしら・・・・・・!?それとも槍・・・・・?」

 

「む。二人ともなにか失礼なこと考えてる。これでも私は成長してる。えへん」

 

「え、えーと・・・・・・あはは・・・・・・」

 

俺たちのやり取りに苦笑する綺凛ちゃん。

そんなやり取りをして、俺とオーフェリアもシルヴィの物品を幾つか買って、紗夜と綺凛ちゃんと分かれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

 

「・・・・・・そろそろ一度家に帰って会場にいきましょうか」

 

「そうだね」

 

そう言って、俺とオーフェリアは一度家に戻るため近くの公園の中を通って行くことにした。

公園の中を歩いている最中、俺はふと妙な感じがした。

 

「あれ、ここっていつもこんなに人少なかったっけ?」

 

「・・・・・・そう言えばそうね」

 

よく通る公園のため、俺とオーフェリアは公園の人の数が少ないことに疑問を持った。

いつも、それなりの人がいるはずなのだが、今日はまったく居なかった。まるで、神隠しのように。そう思ったとき。

 

『綾斗!ここ、人払いの結界が張られてるわ!』

 

セレスから念話が来た。

 

「人払いの結界?!」

 

「・・・・・・まさか」

 

俺とオーフェリアはすぐに辺りを警戒するように意識を研ぎ澄ませる。

やがて。

 

「っ!」

 

突如目の前に、ピンク色のチャイナ服のような服を来た少女が現れ。

 

「いきなりすまんの!」

 

謝罪と同時に、手刀を振りかぶってきた。

 

『綾斗!』

 

俺は咄嗟に超高速で無詠唱の封印解除をし、視界を拡張した。

僅か一秒足らずで解除し、瞬時に視界拡張をした俺の目には少女の手刀が映し出されていた。

 

「(なっ!早いっ!)」

 

その少女の速度は今の俺でもギリギリ捉えられる位の速度だった。

俺は少女の手刀を星辰力(プラーナ)を集中させた左手で逸らし、立て続けにフェイントも交じ入れて繰り出してきた攻撃を捌いた。しかし、それにも限界があり。

 

「っく!」

 

少女の掌底を受ける。───はずだった。

それを阻止したのは。

 

「・・・・・・させないわよ」

 

俺の前に瘴気の壁を張ったオーフェリアだった。

さすがの瘴気の壁に、少女も瞬時に掌底を止め後ろに下がった。

 

「やれやれ、まさか主が助けるとはの孤毒の魔女(エレンシュキーガル)よ」

 

少女はオーフェリアの方を向きながら少々意外という感じの顔で言ってきた。対するオーフェリアはと言うと。

 

「・・・・・・わざわざ人払いの結界までしてなんの用かしら、范星露(ファンシンルー)

 

殺気を少し出して、范星露と呼ばれた少女に返した。

 

「范星露?どこかで聞いたような・・・・・・」

 

「ほっほっほっ!どうやら《叢雲》は妾を知らぬようじゃの」

 

「・・・・・・当然でしょ。綾斗がアスタリスクに来たのはほんの数ヶ月前よ」

 

「そう言えばそうじゃったの。すまぬの孤毒の魔女」

 

どうやらオーフェリアはあの少女の事を知っているみたいだけど。

 

『セレス、あの子って誰か分かる?』

 

俺は念話でセレスにあの少女について訊ねる。

 

『まあ、分かるといえば分かるわよ。だって、彼女ある意味有名だもの』

 

『有名?』

 

『ええ』

 

セレスがそう言い終えると同時に。

 

「・・・・・・綾斗、彼女は界龍(ジェロン)第7学院の冒頭の十二人(ページ・ワン)で、綾人や私、シルヴィアと同じ序列一位の范星露よ」

 

「それって確か・・・・・・!」

 

「・・・・・・ええ、彼女の二つ名は───《万有天羅》」

 

オーフェリアの言葉に、俺は目の前の少女。《万有天羅》こと范星露を見た。

 

「(この子が界龍の序列一位・・・・・・)」

 

恐らく年齢はフローラちゃんと同じか、それ以下だろう。にも関わらず序列一位。さすがの俺も本人を目の前にして驚きを隠せずにいた。

 

「ほっほっ。初めましてじゃの《叢雲》。妾は范星露。当代の《万有天羅》じゃ」

 

「天霧綾斗です・・・・・・」

 

「そう警戒せんで良い。何もせぬよ」

 

「・・・・・・初対面の人にいきなり攻撃してきてそれはないわよ」

 

朗らかに言う范星露にオーフェリアはジト目で呆れたように言う。

 

「すまんの孤毒の魔女」

 

「・・・・・・それで、一体なんの用?」

 

「用があるのはそこのお主じゃ」

 

范星露が指さして来たのはオーフェリアではなく。

 

「俺?」

 

「・・・・・・綾斗?」

 

俺だった。

 

「・・・・・・そう言えばあなた、綾斗に一直線に攻撃して行ったわね」

 

「うむ。昨日の鳳凰星武祭準々決勝、見事な戦いじゃったわ」

 

「ど、どうも」

 

「・・・・・・まさか、それで合間みえて見たくなって今日、わざわざ人払いの結界までしてやってきたって訳?」

 

「うむ」

 

「・・・・・・はぁー。あなたという人は・・・・・・」

 

疲れたようにため息を吐くオーフェリアに、俺は首をかしげた。

 

「オーフェリア、范星露と知り合いなの?」

 

星露(シンルー)で良いぞ叢雲よ」

 

「は、はあ」

 

中々の気軽な性格にさすがの俺も戸惑う。

 

「孤毒の魔女とは少々あっての」

 

「そうなのオーフェリア?」

 

「・・・・・・昔、私の瘴気が暴走しかけた時に偶然通り掛かった星露が助けてくれたのよ」

 

「えっ!?暴走!?」

 

初めて聞くことにさすがの俺も驚きを隠すせずにいた。

 

「あの頃のお主はまだそれを完全に掌握しきれて無かったからの」

 

「・・・・・・それ以来時々、星露の実践込みの練習に付き合ってるのよ。しかも、界龍の人達に内緒にしてまで」

 

「主はあの頃から、隠れた宝石の原石のようじゃったからの。妾も興味があったのじゃ」

 

「・・・・・・最近はその実践込みの練習してこないから不思議に思ってたのだけど?」

 

「ほっほっ。主と叢雲の事は歌姫に聞いておったからの」

 

「・・・・・・なるほど、そういうこと」

 

二人の会話に付いていけない俺を見たのか、オーフェリアがわかりやすく説明してくれた。

 

「な、なるほどね。あれ?そのこと、ディルク・エーベルヴァインは知ってるの?」

 

「あの小童なら知っとるのではないかの。どうなんじゃ孤毒の魔女」

 

「・・・・・・さあ。その事については分からないわ。それに、あの人からここ最近命令なんて受けてないし」

 

「なるほどの」

 

オーフェリアの言葉に、俺は以前あったディルク・エーベルヴァインを思い出す。確かに彼は何を考えてるのか分からない感じがした。俺たちの武ではなく、知で何かをするディルク・エーベルヴァインに俺は警戒を高めることにした。

 

「にしても、叢雲。お主、なにか枷に縛られておるようじゃの」

 

「「っ!?」」

 

星露の言葉に、俺とオーフェリアは目を見開いた。まさか、今の、一瞬の手合せにもならない刹那の時間に、それを見抜いたことに驚いたのだ。確かに、俺には制限(リミット)があることは既に周知の知っていることだ。だが、昨日の戦いで、俺が二つ目の封印を解除したことによりそれは事実か虚偽か意見が割れてるのだ。

 

「ふむ・・・・・・。なるほど、これは禁獄の縛鎖じゃな」

 

「・・・・・・星露、何故そのことを・・・・・・」

 

「先程軽く触れた時に分かったのじゃ。それに、主の星辰力はまだ余力があると見えるしの」

 

「・・・・・・さすが星露ね」

 

「なに、驚いたのは妾もじゃ。まさか、あの手刀を一点集中させた星辰力を込めた手で逸らし、フェイントも追えるとはの。中々の逸材じゃな」

 

「・・・・・・さすが綾斗ね」

 

誇らしげに言うオーフェリアに苦笑しながら星露を見る。星露は面白そうに、そして楽しそうに笑っていた。

 

「どうじゃお主。妾の界龍に来ぬか?」

 

「いや、俺は星導館の学生ですから。それに、仲間もいるので」

 

「それは残念じゃ。さてと、そろそろ妾も帰らぬとな」

 

そう言うと、星露はニッと笑みを浮かべ。

 

「また、合間見えようぞ叢雲よ」

 

そう言って消えていった。

星露が消えると、辺りにちらほらと人がやって来た。どうやら、人払いの結界が解かれたらしい。

 

「・・・・・・やれやれ、随分と面倒な人に目を付けられた見たいよ綾斗」

 

「あー、やっぱり?」

 

「・・・・・・ええ」

 

最後消える時に見せた星露の笑みに、俺は何となく嫌な予感がしたのだがどうやらそれは的中したらしい。

 

「・・・・・・星露のせいでかなり時間取ったけど、急いで帰って会場に行きましょう」

 

「了解」

 

俺とオーフェリアは近くに置いてあった買い物袋を持ち、急いで家に帰り、そこで身支度を整えてライブ会場に向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一時間半後

 

 

 

ベテルギウスドーム

 

 

 

あの後俺とオーフェリアは、ライブ会場であるベテルギウスドームに向かって歩いていた。ベテルギウスドームはシリウスドームより少し小さいが、それでもかなり大きいドームだ。

 

「うわぁ」

 

「凄いわね」

 

ベテルギウスドームに着いた俺とオーフェリアはあまりの凄さに口が塞がらなかった。そこに。

 

「ほお。さすが、歌姫と言うべきか。凄まじい人集りだな」

 

「あい!すごい人だかりです!」

 

「ユリス、フローラちゃんも」

 

ユリスと、ユリスの手を握っているメイド服姿のフローラちゃんの姿があった。

 

「・・・・・・来たのねユリス」

 

「まあ、な。本当なら明日に向けて調整したいのだが、フローラに見せたくてな」

 

「そう」

 

姉のようにしてフローラちゃんをみるユリスに、オーフェリアは少し微笑んでいた。そんなところに。

 

「ん?電話?」

 

視界に空間ウインドウが開いた。

オーフェリアたちと離れ、ウインドウのコールボタンをタップすると。

 

『ヤッホー、綾斗くん』

 

「シルヴィ?」

 

『うん。あ、今ドーム前?』

 

「え?うん、そうだけど」

 

『了解。それじゃあ、西側の入口に回ってくれる?そこにペトラさんがいるから、ペトラさんの後について行って』

 

「わかった」

 

『それじゃ、また後でね』

 

そう言って切れると、ウインドウはブラックアウトした。

 

「ん?また後で?」

 

最後にシルヴィの言った言葉に疑問を持ちつつも、オーフェリアたちの場所に戻る。戻ると、いつの間にか紗夜と綺凛ちゃん、イレーネ、プリシラさんがいた。俺はみんなにシルヴィの言葉を伝え、そこから西側の入口に回り、そこにいたペトラさんと合流し、シルヴィから受け取ったチケットを渡してペトラさんの後について行った。ペトラさんの後について行き、案内された部屋にたどり着くとそこはステージが一望出来る場所だった。

 

「す、凄いです」

 

「お姉ちゃん、凄いよ!」

 

「あ、ああ。そうだな」

 

みんなが驚いている中、ペトラさんが俺に声を掛けてきた。

 

「綾斗君、シルヴィアが呼んでますのでついてきてもらっていいですか?」

 

「あ、はい」

 

一応、ユリスたちに一言言い俺はペトラさんの後をついて、シルヴィのいる楽屋に向かった。

 

「ここですか?」

 

「はい。では、あとは」

 

「へ?」

 

そう言って足早に去っていってしまうペトラさんに戸惑う中。

 

「待ってたよ綾斗くん!」

 

部屋の扉が開き、中から恐らくステージ衣装だと思うシルヴィが出てきた。

 

「さっ、中に入って!」

 

「え、あ、うん。お邪魔します」

 

楽屋の中に入ると、さすが世界の歌姫なのか花束やらなんやらがあった。

 

「ふふ。まあ、座って綾斗くん」

 

「ああ」

 

シルヴィに促されて近くの椅子に腰掛ける。

 

「綾斗くん、初めてだよね私のライブ」

 

「あ、うん。動画のは見たことあるけど」

 

「そっかあ。嬉しいな」

 

「それで、どうしたの?」

 

「うーん、特に何かあったというわけじゃないんだけど、綾斗くんからパワーを借りたいなって」

 

「え?」

 

そう言うと、シルヴィはポーチから1枚の写真を取り出してみせてきた。

 

「これって・・・・・・」

 

その写真には小さい頃の俺とシルヴィ、オーフェリア、紗夜、姉さん、ウルスラ姉さんの姿が映っていた。

 

「ずっと持っていたんだ」

 

「うん」

 

この写真は紗夜が引っ越す一ヶ月前に撮った写真だ。

俺の部屋にも、この写真がある。

 

「これがあるから、今まで頑張ってこれたんだ」

 

「シルヴィ」

 

「大丈夫、このライブを最高のライブにしてみせるから」

 

そう言うシルヴィに、俺は近づき頭を撫でる。

 

「綾斗くん・・・・・・」

 

「大丈夫だよシルヴィ。いつも通り、普段通りのシルヴィでみんなに見せて」

 

「うん!」

 

緊張の取れたシルヴィがそう言うと。

 

「シルヴィア、そろそろですよ」

 

「オッケー、ペトラさん」

 

「それじゃあ、俺はみんなと上で見てるから」

 

「うん!ちゃんと私を見てね!」

 

「もちろん」

 

シルヴィは元気よく楽屋を出てステージの方に向かっていった。

 

「俺も戻りますね」

 

「はい」

 

そう言って俺もみんなのいる部屋に戻り、シルヴィのライブを見た。

ライブを見た感想は圧巻というより、さすがと言うものだった。昔からその姿を見た俺たち幼馴染以外にとっては凄いとかそんな感じなんだろうけど、俺たちにとっては、さすがという言葉が出た。それほどまでに熱狂的だったのだ。

ステージ上で観客に手を振っているシルヴィを見ながら、俺は固く決意した。必ずあの頃を取り戻すと。

 

 


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