学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語 作:ソーナ
第二話いきます。
それではどうぞ!
~綾斗side~
「まさか、また道に迷うだなんて・・・・・」
俺は今、転入するはずの学園『星導館学園』にいる。
今日、『アスタリスク』へ来た俺は早速道に迷っているところを十数年ぶりに再会した幼馴染のオーフェリア・ランドルーフェンに教えてもらい、今日の夜、シルヴィと共に会うことを約束しこの学園『星導館学園』に来た。
だが、時間にまだ余裕があったため周りを探索しようとした矢先に場所が分からなくなってしまったのだ。
「どうしようか・・・・・・・・ん?」
迷っていると空から1枚のハンカチがふわりと舞い降りてきた。
「何処から落ちてきたんだ?」
俺が周囲を見渡すと。
近くの建物から微かに慌てた様子の声が聞こえてきた。
『・・・・・・ええい!よりにもよって、どうしてこんな時に・・・・・!』
その声に俺は苦笑した。
聞こえてきたのはお世辞にも余り可憐とは言い難い悪態だったのだ。
声の発生場所を探すとその建物に大きく窓を開いた部屋が一つあった。
『とにかく、遠くまで飛ばされないうちに追いかけねば・・・・・!』
「・・・・・なるほど、彼処か」
俺はもう一度建物と声の主の部屋を見た。
「4階程度なら問題ないな・・・・・足場もあるし」
俺は助走もせずに軽々と鉄柵の上に飛び乗り、そこから近くの木の枝へと手をかけ目的の部屋に着地する。
「よっ・・・・・・と!えっと、こんなところからすいません。ひょっとしてさっき、ハンカチを落とし・・・・・・」
だが、俺はこの時問題かあることを忘れていた。
一つは、ここが女子寮だと言うこと。そしてもう一つはその声の主が着替えている最中だった、と言うことだ。
「えっ・・・・・・?」
「あ、あれ・・・・・・・?」
よくよく考えてみたらすぐに分かることだったのだ、聞こえてきた声と焦りようからこうだと言うことに。
もしこれがシルヴィやオーフェリアにばれたら確実にめんどくさい事以前に死ぬな俺。
「な、な、な・・・・・・・・!」
声の主は俺と同じ16、7辺りだろう。
若葉のような淡い碧色の瞳。すっと通った鼻筋に新雪のように白い肌。
シルヴィやオーフェリアとは違う感じの少女だと俺は思った。
そこまで俺は考え、すぐさま我に返った。
「ご、ごめん!べ、別に俺は覗くとかそんなつもりは全然なくて!」
俺は慌てた後ろを向いて弁解する。
「そ、そのままそっちを向いてろ!こっちを見るな!」
俺は少女の言うように後ろを向かないようにとバランスを崩さないようにした。
そして待つこと数分。
「ふぅ・・・・・も、もういいぞ」
俺は制服を着こなした少女の方を向いた。
少女はむっつりとした表情と険しい視線はこれでもかと言うほどの不機嫌さを主張していた。
「それで、ハンカチとは?」
「・・・・・はい?」
「さっきおまえが言っていただろう?ハンカチがどうのこうのと」
「あ、ああ、そうそう!このハンカチなんだけど・・・・・・」
俺はポケットから飛ばされた先程のハンカチを取り出し目の前の少女に渡す。
「さっき風に飛ばされたこれを拾ったんだ。この、ハンカチもしかして君のかな?」
「――――!良かった・・・・・」
少女は俺からハンカチを受け取ると、安心したかのように優しく胸に抱き締める。
「・・・・・・すまない。これはとても・・・・・とても大切なものなんだ」
「いや、別に俺は飛ばされたハンカチを偶然拾っただけで・・・・・」
「それでも助かった。本当に感謝する」
少女は俺に礼儀正しく深々と頭を下げた。
これで終わるかと思ったが――――
「・・・・・さて、これで筋は通したな?」
「え・・・・・」
「では―――くたばれ」
や、やな予感がする。
俺はその考えがすぐに分かった。
突如、部屋の空気が一変したのだ。
目の前の少女の
こ、これシルヴィと同じ・・・・・!
「―――咲き誇れ、
「やっぱり《
俺目掛けて少女が繰り出した巨大な火球を、俺はとっさに窓から飛び降り、空中で体勢を整えて着地した。
着地したのと同時に轟音が鳴り響いた。
轟音の発生元を見ると巨大な炎の花の蕾が開いているのが見えた。それは灼熱の花弁を重ねた、爆炎の大輪だ。
「・・・・いやいやいや。とんでもない威力だぞ!」
俺自体今まで実際に接したことのある《魔女》は俺の姉とシルヴィの二人だけだ。
いや、もう一人オーフェリアもそれに入れるべきか。
そんなこと思っていると。
「ほう・・・・・今のを躱すとは、中々やるではないか」
先程の少女が俺の目の前に降り立った。
「いいだろう、なら少しだけ本気で相手してやる」
「わわっ、ちょっと待った!」
「なんだ?大人しくしていればウェルダンくらいの焼き加減で勘弁してやるぞ?」
「いやいや、ウェルダンって・・・・それは中までしっかり火を通す気満々ってことだよね?じゃなくて、取り敢えず命を狙われる理由を聞きたいんだけど・・・・・」
「何を言っている?乙女の着替えを覗き見たのだから、命をもって償うのは当然だろう」
さも当然かのように物騒な事を目の前の少女は平然といってのけた。
「ち、ちなみにさっきお礼を言ってくれたのは・・・・?」
「もちろんあのハンカチを届けてくれたことには感謝している。だが・・・・・それとこれとは別の話だ」
「・・・・・・そこはせめて融通を利かせてくれても良くないかな」
「生憎、私は融通と言う言葉が大嫌いでな。そもそも届けるだけなら窓から入ってくる必要は無いだろう?ましてやここは女子寮。侵入してくるような変質者は、それだけで袋叩きにされてもおかしくないのだぞ?」
「・・・・・え?今、女子寮って言った?」
「む。ああ。言ったぞ」
「マジか?」
「まさか・・・・・知らなかったのか?」
「いや、知らないも何も、俺は今日からこの学園に転入する予定の新参者で、しかもここにはつい先程着いたばかりなんだ」
「それはホントか?」
「誓って嘘じゃない」
「・・・・・・わかった。それは信じてやろう」
「なら・・・・・・」
「だが、やはりそれとこれとは話が別だな」
少女はそう言うと再び自信の周囲に火球を出現させた。しかも今度は9つだ。
「咲き誇れ―――
「うわっ!」
俺は慌てて放たれたそれをすべて躱す。
俺が躱した場所はごっそりと刳れていた。
「なるほど、ただの変質者と言うわけじゃないようだな」
ひょっとしたらなんとかなるかも、と俺は思ったが。
「並々ならぬ変質者だな」
ならなかった。
「相互理解って難しいな~・・・・・・」
「ふん。冗談だ」
「さて、確かにお前にも言い分があるだろう。だが、このままでは私の怒りが収まらない。となれば、ここはこの都市のルールに従おうか。おまえ、名前は?」
「・・・・・天霧綾斗」
「そうか。私はユリス。星導館学園序列五位、ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトだ」
ん?ユリス?
俺はユリスと言う名前に聞き覚えがあったがそれがなんなのかは思い出せなかった。
「不撓の証したる赤蓮の名の下に、我ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトは汝天霧綾斗へ決闘を申請する!」
ユリスと名乗った少女は、制服の胸に飾られたこの学園。星導館学園の校章『赤蓮』に右手を当て言った。
「け、決闘!?」
「おまえが勝てば、その言い分を通して大人しく引き下がってやろう。だが私が勝ったなら、その時はおまえを好きにさせてもらう」
「ちょ、ちょっと待った!俺はそんな――――」
「ここに転入してきた以上、幾らなんでも決闘くらいは知っているな?」
「・・・・・そりゃ、知ってはいるけど」
「だったら早く承認しろ。いい加減、人も集まってきている」
俺はユリスに言われ周りを見渡すと、確かにチラホラと遠巻きに見ている生徒がいた。
どうやら、俺に拒否権は無いようだ。
「だ、だが、ほら、俺、武器持ってないし」
「ふむ。おまえ使う武器は?」
「え・・・・・剣だけど」
「誰か、武器を貸してもらえないか?出来れば剣がいい」
ユリスが周囲のギャラリーに向かってそう言うと、すぐに反応が返ってきた。
「おーらい、こいつを使えよ」
そんな言葉とともに、ギャラリーから俺に
「そいつの使い方が分からないとは言わせんぞ」
「はぁ・・・・・」
俺は大きく溜め息吐くと、投げ渡された煌式武装を起動される。
投げ渡された煌式武装を待機状態から稼働状態へモードを移行させると
俺が煌式武装を展開するのを確認したユリスは、制服の腰につけたホルダーから煌式武装を取り出し起動状態に移行させた。
ユリスの煌式武装は俺のと違い、鮮やかなピンク色の細くしなやかな
「さて、準備はいいか?」
「・・・・・・我天霧綾斗は汝ユリスの決闘申請を受諾する」
俺が受諾するのと同時に、俺の校章が再び赤く煌めいた。
双方が決闘を受諾するのを認証したのかシステムアナウンスにより決闘のカウントダウンが始まった。
『カウントダウン・スタート・・・・・・・
そして決闘が始まった。
「では行くぞ!咲き誇れ――
ユリスが細剣を振ると、その周囲に魔方陣が現れ巨大な青白い炎の槍が顕現した。
そして、現れた4つの槍はロケットのような勢いで俺に向かって飛び掛かってきた。
「くっ!」
一つ目は剣で斬り裂き、二つ目は躱し、3つ目も斬り裂いて、4つ目も斬り裂く。
「まだだ!
ユリスは再び白炎の槍を出すが今度は細く鋭くなっていた。
「行けっ!」
一つ目斬り裂き、斬り裂いた衝撃で後ろに飛び去り二つの槍を剣で受け流し、最後の槍はギリギリのところで避けるが、爆発の衝撃で撥ね飛ばされた。
「うわっ!」
俺は吹き飛ばされながらもなんとか体勢を整え剣を構える。
「へぇ、あの新顔中々やるじゃないか」
「お姫様が手加減してるんじゃないの?」
そんな感想が周囲のギャラリーから聞こえた。
ユリスの表情は怪訝そうな顔をしているのが分かる。
ここまでならば今の俺でもなんとかなる。
そう思っていると、突如先程とは違う量の星応力がユリスから出た。
「見極めてやる!咲き誇れ―――
部屋で見たのとは桁違いの大きさの火球が俺に迫る。
「・・・・・・ふっ」
俺は避けるのではなく自ら接近した。
「ふっ、躱して接近戦に持ち込むつもりか!だが―――爆ぜろ!」
「―――!」
ユリスが拳を握り締めると俺の目の前で火球が爆発した。
「よし。この距離からの直撃なら―――」
ユリスのそんなこと言う声が聞こえてきた。
ユリスはこれで勝利したと確信しているのだろう。
だが――――甘い
「天霧辰明流――――"
そう叫ぶと同時に十字に斬り裂いた。
斬り裂くと俺はユリスへ一息で間合いに詰めた。
「このっ――――!」
だが、俺は横で一瞬薄い光が散ったのを見逃さなかった。
狙いは俺――――じゃなくてユリス!!
そう判断した俺はとっさに。
「伏せて!」
ユリスを押し倒した。
押し倒したのと同時に、今までユリスが立っていた場所に1本の光輝く矢が突き刺さった。
「お、おまえ、なにを・・・・・!」
ユリスが抗議の声を上げようとするが、止めた。
自身が立っていた場所に1本の光輝く矢が突き刺さっているのを見たのだ。
「―――どういうつもりだ?」
「どういうつもりって・・・・・・それは俺じゃなくてこれを撃った本人に聞いてほしいかな」
「そうではない!なんでわざわざ私を――――」
と、ユリスがそこまで言って俺は、はたと気づいた。
ユリスの発展途上の膨らみを、思いっきり鷲掴みしていたのだ。そう――――俺が。
あ、これシルヴィとオーフェリアに張れたら確実に死ぬ。
俺がそう思うのと同時にユリスの顔がぼっと赤く染まった。
「ご、ごご、ごめん!いや、あの、俺は別にそんなつもりは全然なくて!その・・・・・・・」
「おお!なんだあの新顔、お姫様を押し倒しやがったぜ!」
「すげえ度胸だな!」
「情熱的なアプローチだわー」
今の光景にギャラリーが騒ぐ。
「お、お、お、おまえ・・・・・」
ユリスの怒気に反応して、炎が溢れ出す。
俺はそれに後退りするしかなかった。
そんなとき――――
「はいはい~そこまでにしてくださいね」
深く落ち着いた声とともに、パンパンと手を打つ乾いた音が辺りに鳴り響いた。
今回はこれで、次回もお楽しみに。
それではみなさん、Don't miss it.!