学戦都市アスタリスク 叢雲と歌姫と孤毒の魔女、3人の物語 作:ソーナ
では、どうぞ!
~綾斗side~
「はいはい~、そこまでにしてくださいね」
深く落ち着いた声とともに、パンパンと手を打つ乾いた音が辺りに鳴り響くと、その音の主が前に出てきた。
「確かに我が星導館学園は、その学生に自由な決闘の権利を認めてますが・・・・・残念ながらこの度の決闘は無効とさせていただきます」
歩きながらそう言い、ギャラリーの中から現れたのは、金色の髪を靡かせた一人の少女だった。恐らく俺やユリスと同じ年だと思うが、随分と大人びて見えた。
「・・・・・クローディア、一体なんの権利があって邪魔をする?」
「それはもちろん星導館学園生徒会長としての権利ですよ、ユリス。赤蓮の総代たる権限をもって、ユリス=アレクシア・フォン・リースフェルトと天霧綾斗の決闘を破棄します」
クローディアと呼ばれた少女がそう言うと、今まで赤く発行していたユリスと俺の校章が輝きを失った。
「ふふっ、これで大丈夫ですよ。天霧綾斗くん」
「はぁー・・・・ありがとうございます・・・・・・えーと生徒会長、さん?」
「はい。星導館学園生徒会長、クローディア・エンフィールドと申します。よろしくお願いします」
「だが、クローディア。いくら生徒会長といえども、正当な理由なくしては決闘に介入することは出来なかったはずだが?」
ユリスはこの裁定に納得が出来ないらしく、いかにも不満そうな顔でクローディアさんを睨み付けていた。
「理由ならありますとも。ユリス、彼が転入生なのはご存知ですね?」
「ああ」
「すでにデータは登録されているので校章が認証してしまったようてすが、彼に最後の転入手続きが残っていています。つまり厳密には、まだ天霧綾斗くんは星導館学園の生徒ではありません。決闘はお互いが学生同士の場合のみ認められています。だとしたら、当然この決闘は
成立しません。違いますか?」
「くっ・・・・・・!」
クローディアさんの説明にユリスは悔しそうに唇を噛んでいるのが見えた。
「はい、そう言うわけですから、みなさんもどうぞ解散してください。あまり長居されると授業に遅刻してしまいますよ」
クローディアさんがそう言うと集まっていたギャラリーは三々五々にあちこちに散っていきこの場は俺たち3人だけとなった。
「あっ!そう言えばさっきの狙撃」
俺は再び矢が飛んできた方向をを見渡すが既にそこには誰もいなかった。
どうやら逃げたようだ。
「逃がしたか・・・・」
俺がそう口走るとユリスとクローディアさんが答えた。
「別に構わん。《
「え?そうなの?」
「ええ。残念ながらそういうケースは少なくありません。ですが、今回のはさすがにやりすぎです。決闘中に第三者が不意打ちで攻撃を仕掛けるなど言語道断。犯人が見つかり次第、厳重に処分いたします」
「へぇ、クローディアさんもさっきの狙撃見えてたんだ」
「ええ」
クローディアさんは見えていたみたいだがあの爆炎の中の攻撃を捉えていたとするならば、この少女はただ者ではないない。
クローディアさんを見てそう思っていると。
「ところで・・・・・先程は、その・・・・・あ、ありが、とう」
ユリスがばつの悪そうな顔で俺に向き直った。
「ああ、うん、それはいいんだけど・・・・・もう怒ってない?」
「それは――まあ、怒っていない、事もないが・・・・助けてくれたのは確かだからな。私とて、あれが不可抗力だったことくらいわかる。だから、今度の事は貸しにしてくれていい」
「貸し?」
「ああ。わかりやすいだろう?」
なんともドライな気がするが・・・・・
隣のクローディアさんもそう思ったのか。
「まったく相変わらずですね、ユリスは」
やや呆れた様子で言った。
「もう少し素直になった方が生きやすいと思いますよ」
「大きなお世話だ。私は十分素直だし、これで人生になんの支障もない」
「あら、でしたらタッグパートナー探しの方はさぞかし順調にのでしょうね?まさか、まだなんて事は・・・・・」
「う・・・・そ、それは・・・・・」
分かりやすい。
誰がどうみても今のユリスの反応は分かりやすい。
「《
「わ、わかっている!それまでに見つけてくればいいんだろう!」
ユリスはそう言うと背を向けて寮の方に向かっていった。
「あらあら。可愛いですこと」
「アハハ・・・・」
その姿を見たクローディアさんの言葉に俺は苦笑いをして返すしかなかった。
「それでは、私たちも行きましょうか天霧綾斗くん」
「あ、はい」
星導館学園 廊下
「えー、そのような意味で前世記はまさしく災害の世紀であったといえるわけでありますが中でも
三日三晩にわたって降り注いだ隕石により、世界は否応なく変質させられたのであります既存国家の衰退と統合企業財体の台頭、それに伴う倫理観の変容、隕石がもたらした万応素による新人類―――つまり君たち《
クローディアさんに連れられて学園校舎に入り、通りすがった教室からは、授業をしている声が聞こえてきた。
「こんな朝早くから授業をやっているんですね。まだホームルーム前ですよね?」
「ええ。と言っても今こちらでやっているのは補習ですけれど」
「補習?」
「はい。一応、我が星導館学園のモットーは文武両道となっていますので」
「なるほど・・・・・・」
「ええ。ですから綾斗くんも補習にならないよう、気を付けてくださいね」
クローディアさんの気を付けてくださいね、と言う言葉に俺は苦笑いで返した。
正直、俺の成績はお世辞にも良い?とは言えない。
精々、上位の中程ぐらいだろう。
そうこうして歩いているとどうやら目的地の生徒会室についたみたいだ。
「そうそう。ちなみに私は綾斗くんと同じく1年なので、砕けたしゃべり方で結構ですよ」
生徒会室に入るとクローディアさんがそんなことを言ったので俺は軽く驚いた。
まさか同い年とは思わなかったのだ。
「と言うことは、クローディアさんも1年?あれ?でまそれで生徒会長ってことは・・・・」
「ああ、私は中等部から生徒会長を任されておりますので、今は三期目ですね」
「へぇ・・・・・」
「ええ。ですから、どうぞ名前でお呼びください」
「なるほど、わかったよクローディアさん」
「クローディア、で結構ですよ」
「いや、いきなりそれは・・・・・」
「クローディア、です」
「ええっと、だから・・・・」
「ク・ロ・オ・ディ・ア」
「・・・・・クローディア」
「はい」
さすがにこれは根負けするしかなかったためその通りに呼ぶとクローディアは嬉しそうに目を細めた。
「じゃあ、俺の事も綾斗でいいよ」
「了解です、綾斗」
「出来ればその敬語も止めてくれていいんだけど・・・・・」
「いえ、こちらはただの習慣ですのでお気にならず」
「習慣?」
「はい。私はとても腹黒いので、せめて外面や人当たりは良くしておかないといけないのです。昔からやっていたため、それが染み付いてしまいまして」
「・・・・・・・・・・・・クローディア、腹黒いんだ?」
「ええ。それはもう。私のお腹ときたら、
暗黒物質を煮立てて焦げ付かせたものをブラックホールにぶちこんで黒蜜をかけたくらい、って・・・・・・どんだけ腹黒いんだ?
て言うかどうやって暗黒物質を焦げ付かせて、ブラックホールにあるものに黒蜜をかけるんだ?
クローディアを見ながらそう考えていると。
「なんでしたらご覧になりますか?」
「へっ?」
呆気に取られるとクローディアは言うが早いか上着の裾を目繰り上げた。
「うわあっ!?ちょ、クローディア、いきなりなにを・・・・・・!」
俺は慌てて視線をずらした。
て言うか、腹黒いのって目に見える物だっけ?
「ふふっ、冗談です。彼女の言う通り可愛らしい反応をされますね、綾斗は。これは少し妬けますね」
「彼女?」
俺は今クローディアが言った『彼女』と言う言葉について聞いた。
「ええ。クインヴェールの生徒会長ですよ」
「クインヴェールの生徒会長・・・・・・・・・?」
「はい。シルヴィア・リューネハイムです」
「シルヴィ・・・・・・・」
俺はシルヴィがクローディアに俺のことを話したことについて頭痛がした気がした。
「て言うか、クローディア、シルヴィと知り合いなの?」
「そうですね・・・・・彼女とは生徒会長同士なので。それと、綾斗が此方に転入してくることに関して彼女と話したんです」
「そ、そうなの?」
「ええ。ふふっ。彼女ったら綾斗をクインヴェールに転入させたかったみたいですよ。クインヴェールは女学院ですのに」
「マジで?」
「ええ。マジです」
シルヴィ、何やってんのよ・・・・・って言うかペトラさん、クインヴェールの理事長だったよね?ペトラさんの苦労が何と無く分かる気がするわー。
俺はクローディアから説明されて更に頭が痛くなった。
「さて――――」
クローディアは窓際の近くにある執務席に座りこっちを見た。
「では、改めまして。ようこそ、綾斗。"アスタリスク"へ」
それと同時にクローディアの背後のカーテンが開き、水上学園都市『六花』――〈アスタリスク〉が見えた。
「我が星導館学園が特待転入生としてあなたに期待することはただ一つ、それは――――――勝つことです」
クローディアはガラス越しから見える町並みを見下ろしながら言葉を続ける。
「ガラードワーズに打ち勝ち、アルルカントを下し、
「・・・・・・・んー。すまないけど、俺、そういうのにあんまり興味は無いんだ」
俺はクローディアの言葉に、困り頭をかいて言う。
「ええ、あなたがそうしたことに関心が無いことは分かってます。特待生としての招請を一度ならず断っていることも。ですが、近年《星武祭》における我が星導館の成績は芳しいとは言えません」
クローディアの言葉に俺は前シーズンの星導館学園の総合順位を思い出した。
星導館学園は総合順位で5位だったはずだ。
クインヴェール女学院は総合順位6位だが、クインヴェールは総合順位を度外視してるとペトラさんが言っていたはずだ。
つまりクインヴェール女学院を除外するとなると実質的に星導館学園が最下位ということになる。
「我々はこの状況を打破せねばなりません。そのためには有力な学生を一人でも多く確保しなければなりません」
「そもそも、なんで俺を特待転入生に?」
「ああ。それはシルヴィアがあなたをベタ褒めしていたからですよ」
「なるほど・・・・・」
「それにしても、心変わりして招請を受けて下さってたすかりました。これで断られたら生徒会の面目が丸つぶれでしたから」
「どういうこと?」
「綾斗を特待転入生として招請したのは私なんです」
「く、クローディアだったの!?」
「はい」
「そ、そうだったんだ・・・・・」
「それで、何故綾斗は招請を受けたのですか?」
「んー。別に心変わりしたつもりは無いんだけどね」
「あらあら、では何故この星導館に?」
「・・・・・・・・・」
俺は真剣な眼差しでクローディアを見て言う。
「クローディア、聞きたいことがある。姉さんが―――天霧遥がここにいたってのは本当なのかな?」
「・・・・・・・その件に関して私が知っていることは一つだけです。こちらをご覧ください」
クローディアはそう言うと端末を操作し、俺にあるデータを送った。
「かつてこの学園に在籍していた『とある女生徒』のデータです」
俺は送られてきたデータを展開させた。
「・・・・・・っ!これは」
送られてきたデータを見て俺は息を呑んだ。
クローディアから送られてきたデータはあちこちがボヤけているがこの学園の生徒のデータなのだろう。
そして、右横の顔写真は所々が掠れているが、俺にはすぐわかった。これは姉さんだと。
「『彼女』は《星武祭》に出場した記録もありませんし『
「ありがとう。でもいいんだ。別に俺は姉さんを探しに来たわけじゃないからね」
「では、どうしてこの学園に?」
「うーん・・・・・・強いて言えば、自分が成すべきことを探すため、かな?」
「ふふ、なかなかどうして貴方も喰えませんね」
「え、そうかな?」
まさか自分で自分の事を腹黒いと言ってる人に、喰えない人と言われるとは思わなかった。
「それと、これはお姉さんに関係することなのか分かりませんが・・・・・」
クローディアは再び端末を操作しデータを俺に送信した。
送られたデータを展開すると、そのデータはとある煌式武装のデータだった。
「これは・・・・?」
「我が校が所有する
「純星煌式武装って、確か・・・・・」
「ええ、ウルム=マナダイトをコアにした非常に強力な煌式武装です。なかでも"触れなば熔け、刺さば大地は坩堝と化さん"と恐れられていたのがこの《黒炉の魔剣》なのですが・・・・・この純星煌式武装、貸与記録が無いにも関わらず実践データだけが残っていたのが判明したんです。そのデータが残っていたのが、綾斗のお姉さんが在籍していたと思われる時期と重なっているのです」
「そのデータが五年前・・・・・」
「その通りです」
「・・・・・・・」
「あ、そうそう。いい忘れてましたが。我が校の特待生には純星煌式武装の使用の優先権がありますが・・・・・どういたしますか?」
「それにはさっきの《黒炉の魔剣》も含まれるの?」
「ええ」
「じゃあ折角だから見ておこうかな」
「わかりました。では、手続きをしておきますね。それまではこちらをお使いください」
クローディアが差し出したのは煌式武装の発動体だった。
「ありがとう」
俺は受け取った煌式武装を腰のホルダーに収納した。
そして、思い出したことを聞いた。
「そう言えば、クローディア。さっき言っていた『最後の転入手続き』ってのは?」
「ああ、その事ですか」
「何かあるの?」
「ふふっ。あれは嘘です」
「え?」
「あの場を収めるためにはあれが一番効果的だったのですよ。ユリスはあれで根が真面目ですから」
「ああ、確かに」
「ええ。ですので、ルールを破ってまで決闘を続けることはしないと思ったんですよ」
「ってことは?」
「はい。手続きなんて何もありません」
「そ、そうなんだ」
「ええ」
アッサリと嘘だとバラすクローディアに俺は微妙な表情を浮かべた。
「綾斗には寮と『六花』の自宅、どちらからでも登校してもらっても構いません」
「ありがとうクローディア。ここに来る前にお願いしたこととはいえまさか通るなんて思わなかったよ」
俺の『六花』にある自宅の鍵は『六花』に来る前に制服と共に郵送されたのだ。
郵送されたとき、まさか本当に許可が降りるとは思わなかった。
「ええ。私自身少々驚きました」
「それと、クローディア2つほど聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「はい。なんでしょう?」
「お昼に誰も使わない教室や、人気のない場所ってあるかな?」
「そうですね・・・・・このフロアに空き教室があるのですが。それでも構いませんか?」
「ああ。ありがとう、助かるよ」
「では、その教室の鍵をお渡ししますね」
クローディアが再度端末を操作すると1つの鍵が送られてきた。
「今送った鍵で入る事が出来ますよ。まあ、何に使用するのか何と無く分かりますが」
クローディアは顔をニヤニヤさせて言った。
「うっ・・・・・・そ、それと、もう1つ・・・・・・オーフェリア・ランドルーフェンの所属校って何処か分かるかな?」
俺の質問にクローディアの表情が固まった。
「何故か、聞いても良いでしょうか?」
「・・・・・・・・そ、それは・・・・・」
「・・・・・・・」
「クローディア、これから話すことを、誰にも言わないって誓ってくれる?」
「わかりました。今ここで聞いたことは誰にも言わない事を誓いましょう」
「ありがとう。・・・・・・・・・オーフェリアは、俺の幼馴染なんだ」
「あの《
「うん。正確には俺とシルヴィ、オーフェリア、後もう一人いるけど。その四人が幼馴染なんだ」
「そうですか・・・・・分かりました、教えましょう」
「ありがとう、クローディア」
「彼女の所属校は、『レヴォルフ黒学院』です。そして彼女はレヴォルフの序列1位です」
「・・・・・・そう。ありがとう」
「綾斗、余り無茶なことはしないでくださいね」
「うん。分かってるよ。それじゃあ、俺はこれで」
「ええ。綾斗、何かあったら言ってください。力になりますよ」
「ありがとう、クローディア」
俺は聞きたいことを聞けると生徒会室を後にした。
その後、職員室に行き担任らしき女性の先生?と共に教室に向かった。
何故?がついてるのかと言うと、その先生は何故か・・・・・・釘バットを持っているからだ。
そして、先生と共に教室に行き入ると俺は思わず目を見開いてしまった。
何故ならば・・・・・・・同じクラスに今朝決闘したあの、ユリスがいたからだ。
いかがでしたか?
感想やアドバイスなどお待ちしてます。
それではまた次回、Don't miss it.!