ルーントルーパーズ 自衛隊の戦い   作:銀低

1 / 2
第1話

 その日の日本国神奈川県横須賀市の天気は、曇り時々雨という天気であった。

 横須賀にはアフリカに派遣される海上自衛隊の最新鋭のイージス艦一隻と護衛艦ニ隻と輸送艦三隻とヘリ搭載護衛艦一隻と補給艦一隻が停泊していた。停泊している艦隊の上空を新聞社の報道ヘリコプターが飛行していた。

 陸上自衛隊に所属する久世啓幸三等陸尉は、自分の部下や他の隊員達と共に輸送艦の縁に一糸乱れぬ姿で整列し、眼下にある海上自衛隊横須賀基地の埠頭を見下ろしていた。輸送艦の第一甲板は四階建ての建物と同じぐらいの高さがあった。

 雨がポツリポツリと少しだけだが降ってきた。

 輸送艦が汽笛を鳴らした。汽笛と同時に眼下に見えていた埠頭が少しずつだが、離れていった。

 自衛隊国連平和維持軍(PKF)派遣艦隊は、こうして、母国を離れた。同時期に 佐世保からも強襲揚陸艦を含む米軍艦隊も出港し、二つの艦隊は一旦合流して、アフリカに行く予定だった。

          ◇

 海上自衛隊最新鋭のいぶき型イージス護衛艦一番艦〈いぶき〉艦内では「配食始め」のアナウンスと同時に昼食が始まっていた。満載排水量約一万トン、全長百七十メートルに達する、世界的に見ても大型の艦なので、必然的に乗組員の数も汎用護衛艦の乗組員よりかなり多い。

 そのため、食事時の今一般乗組員用の食堂である科員食堂は非常に賑わっていた。曹士の階級の隊員達が唯一の娯楽を楽しんでいた。

 一方、幹部隊員専用の食事が提供される士官室は科員食堂のような賑やかさはなく、粛々とした雰囲気に包まれていた。

 艦の菜かで、この士官室だけは落ち着いた印象を受ける。

「司令臨場、気をつけっ!」

 幹部の一人が声を上げ、長テーブルに座る全員の幹部が一斉に姿勢を正した。

 そして、すっと士官室に入ってきた一人の男が、上座に腰をおろす。

 士官室に入ってきたこの一人の男。

 彼は蕪木紀夫海将補、国連平和維持軍派遣艦隊の最高責任者であった。

「休ませ」

「休めぇ!」

「ああ、後はいいさ。とっとと食べてしまおう。皆早く食べてくれ。お、今日はカレーか。早いな、もう金曜日か」

 真面目だったのは最初だけで、蕪木は号令をかけた幹部を止めた。

 そして、士官室にいた幹部達が食事を始めた。

「相変わらずですね。蕪木指令」

 向かいの席に座る派遣艦隊の指揮幕僚団の主席幕僚加藤修二二等海佐の声だった。

「ああ。指揮官の私がいいんだからいいんだ」

「それと、気象班からの報告です。昨日発生した台風は航路から逸れるそうです」

「ほう。航路を変えずに済むな。良かった。他には?」

「いえ、別に無いですね。あ、個人的な話なんですけど、昨日変な夢を見たんですよ」

「…どんな夢だ?」

 できるだけ蕪木や加藤の夢の話が気になる士官は平静を装い、加藤の夢の話を聞くことにした。蕪木自信も昨日変な夢を見たからだ。

「よく覚えていないんですが、確か背中に羽の生えた女の子が、血を流していて、それから…どうだったかな?すみません。忘れてしまいした」

 話を聞いていた士官達が顔を会わせていた。

「…僕も昨日その夢見ました」

「僕も」

 どうやらその夢を見ていたのは加藤だけではなかったようだ。

「不思議だな」

 蕪木が口を開いた。

「え?」

「私も見たんだよ。翼の少女が生け贄にされてしまう夢」

 蕪木のその発言で士官室に動揺が広がった。

「落ち着いて下さい。皆さんきっと疲れているんですよ。しっかり休んでください。それに、この話が曹士に広まったら、士気が下がります。なので、くれぐれも外では話さないで下さい」

 医務官の一人がこの話に口を挟んだ。

「そうだな。すまなかった。さっさと食べてしまおう。向こうについたらしっかり休むか」

「そうですよ。何せ今まで苦しい日程でしたからね」

 航海長も加わった。

 彼らが言わんとしているのは、この艦隊の出動経緯であった。

 それは今から半年前のことだった。紛争が起きているアフリカの中国の息がかかった独裁国から弾道ミサイルが乱射され、国連施設や周辺国が甚大な被害を受けた。それだけなら、介入はしなかったのだが、ジブチも攻撃を受け、運悪く海自のジブチ基地に弾道ミサイルが着弾し、その爆発によって離陸しようとしていたP-3Cの右翼エンジンに破片が命中して炎上し、爆発した。P-3Cは一瞬で火だるまになり、乗員が全員死亡した。日本はそれだけの被害だったが、アメリカ軍は宿舎に弾道ミサイルが命中し、70人が死亡した。さらに作戦行動中だった空母打撃群は国籍不明の潜水艦隊から攻撃を受け、イージス艦二隻と空母が撃沈された。

 アメリカは報復に核弾道ミサイルを発射したがS-500防空システムがその弾道ミサイルを撃墜した。日本は報復として艦隊と陸自の部隊の派遣を決定した。野党が猛反発したが与党が世論を味方につけ派遣を押しきった。

「蕪木司令や僕が普通に見えたら、危険信号だからね。医療班は注意してね」

「よしなさい」

 蕪木はどうも先程の話が頭から離れなかった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。