ストライクウィッチーズの世界に日本が転移!? 作:RIM-156 SM-2ER
今回は女性の皆様が不快になる描写があるかもしれません。また残酷な描写もございます。かなりソフトな表現にはなっておりますが、苦手な方は閲覧をお勧めいたしません。
では、本編どうぞ。
飯塚は、風呂に入った後私服に着替え部屋に戻る最中だった。
その途中、向かい側から誰かが来ることに気がついた。飯塚は目を凝らす。薄暗い廊下は明るい風呂から出てきたばかり飯塚にはひどく暗い。暫く見ていると、目が暗さになれてぼんやりと向かい側からくる人物が見えてくる。
「バルクホルン大尉?」
するとバルクホルンも気づいたらしく一旦足を止める。
「飯塚少尉か・・・・」
飯塚は昼間にバルクホルンに怒鳴ってしまったためそれを謝るべく、バルクホルンに近づく。
「あの、昼間はすみませんでした!」
飯塚は頭を下げた。
「いや、いいんだ。昼間ので目が覚めたからな・・・・・」
バルクホルンは窓の外を見る。それにつられて飯塚も頭を上げ窓の外を見た。
夜空には満月が浮かんでいた。その月光が、海洋汚染もほとんどない海にあたり美しい景色を生み出す。
「綺麗だな・・・・」
バルクホルンは思わずそう呟く。今まで夜空を見ていたことはあるが妹のことを考えていて景色をゆっくり見ることはなかったからだ。
「生きていればこそ、この景色を見ることが出来るんです」
飯塚がそう答えた。
「飯塚少尉はなんで私に構うんだ?」
「そうですね、雰囲気が10年前の自分に似ていたのと・・・・・妹に・・・・貴女が似ていたからですかね」
飯塚は微笑みながらそう答える。だがその目には少し悲しさが混じっていた。
「妹がいるのか?」
今まで飯塚はそんなそぶりを見せたことがなかったためバルクホルンは驚いた。
「ええ、自分より1歳年下の亜里沙という妹が
「え・・・・」
飯塚は確かに「いました」と言った。つまり飯塚の妹はもういないことになってしまう。病気か事故かわからないが飯塚の妹は既に亡くなっていることにバルクホルンは気づく。
「バルクホルン大尉は日中紛争・・・・って知っていますか?」
飯塚はバルクホルンのことを横目で見ながらそう尋ねた。
「たしか、日本が10年前に経験した人類同士の戦い・・・・だったか?」
飯塚たちが派遣された時にバルクホルンなどのストライクウィッチーズの幹部にのみ日本のたどった歴史や軍備再拡張の発端となった日中紛争に関する資料が渡されていた。
「そうです。20XX年、尖閣諸島領有権問題を発端として起こった戦いです」
尖閣諸島は中国でも古くから航路の目印などとして使われていたことはあるらしいが、領土として編入したことはなく明治18年に当時の大日本帝国政府がどこの国の領土でもないことを沖縄当局を通じ確認したのちに明治28年で閣議決定で大日本帝国領に編入したらしい。その後昭和16年ごろまで日本人が住んでいたがその後無人島となった。また、周辺海域は好漁場であり時々台湾や中国、日本の漁船で摩擦は起きていたらしいが、国家間での問題はほとんどなかった。だが1969年に国連が調査したところ周辺海域が将来有望な産油地域になる可能性があると発表したあと1971年に中国及び台湾が領有権を正式に主張し始めた。
「自分はY島K地区の出身でしてね・・・・。母は、自分が小さい頃に無くなり父が自分と妹を男で一つで育ててくれました。周りはエメラルドグリーンのきれいな海とサンゴ礁に囲まれた日本最南端の島です。夏になると観光客がものすごく多くて、妹と一緒に実家の食堂をよく手伝ったものです」
飯塚ははにかみながらそう言った。
「あれは6月にしては珍しく晴れた日でした。自分たちは中学校の修学旅行で京都に行っていたんです。ですが、修学旅行の最終日、中国軍が突然、尖閣諸島およびY島に侵攻してきたんです。そのため自分は同級生とともに国が用意したホテルに滞在しました。妹のことがとても心配でして・・・・」
―――――――
10年前 京都某ホテル
「今浦おじさんですか?あの、中国が島に侵攻してきたって・・・・・」
10年前、当時15歳だった飯塚はホテルのベットに座りスマホで飯塚に電話していた。電話の相手は小さいころから家族ぐるみで付き合いのあった今浦武人だった。航空自衛官で那覇基地に配属されているため飯塚は今浦に電話した。
『ああ、これから俺たちは敵と戦わなくちゃならん』
今浦はいつもとは違う厳しい声色でそう返してきた。
「亜里沙は・・・・亜里沙は大丈夫なんですか?」
『大丈夫だ。国際法で民間人に手を出すことは禁止されている。それをやりゃ世界中が中国の敵に回ることになる。いくら奴さんでもそれは避けたいだろう。それに何かあっても俺たちが必ず守る』
飯塚はそう言われたが不安をぬぐい切れずにいた。
「本当ですか・・・・?本当に守ってくれるんですよね」
『ああ、男と男の約束だ』
今浦は元気づけるようにそう言った。
「わかった。信じるよ。おじさんを・・・・」
―――――――
「その後、M島まで侵攻されたものの那覇から来た陸自の奮戦でM島から中国軍を撃退し、その隣のT島に米軍・・・・・こちらで言うリベリオン海兵隊と共同で上陸し奪還しました」
むろん作戦の主力は自衛隊だった。米合衆国は同盟国の防衛と言う面目のために作戦に参加したが内心は局地的紛争から第3次世界大戦の引き金を引きかねない行為はしたくなかったのだ。そのため派遣された海兵隊員は1個大隊1300名と少なかった。
「その後は、自衛隊も損害を出しつつ中国軍に出血を強いて行き占領された島を奪還いきました。あの時は連日、自衛隊の戦果がニュースで流れていましたね」
日中紛争当時、テレビからは連日自衛隊の戦果と紛争への議論が聞こえていた。先に仕掛けてきたのは中国であるため世論の大半は戦争やむなしという声で埋め尽くされていた。
「Y島の中国軍は紛争開始から4カ月後の10月中旬に大半が降伏しました。ですが、南方を占拠していた中国軍だけは粘りづよく抵抗していました。4日にわたる空爆のあと、陸上自衛隊の攻撃で全滅しました・・・・・。ですが・・・・・」
飯塚の顔がココで曇る。
「・・・・・その、部隊の一部のとち狂った中国兵がK駐在所に収容していた島民26名を殺害したんです。島民救出に向かった陸上自衛官の話によると、駐在所に突入した時にはすでに中は島民の血で真っ赤に染まりその中に島民の遺体が浮かんでいる・・・・・そんな阿鼻叫喚の地獄絵図だったそうです」
バルクホルンは息をのんだ。軍人と言えどまだ人と人との戦争は経験したことはない。しかも彼女はまだ10代の少女だ。足の引っ張り合いから人の悪意を知っていても人の狂気を知らない少女がその光景を想像した時のショックは計り知れない。
「その殺害された島民の中に自分の父と・・・・・・妹がいました」
飯塚はいつの間にか涙声になっていた。バルクホルンははっとして飯塚の方を見ると、目からはとどめなく涙が流れていた。
「発見した、陸上自衛官の話では妹は衣類を身につけていない状態で発見されたと・・・・・性的暴行を受けた痕跡があったと言われました」
日中紛争終盤に起きたその事件は後に「Y島奪還戦K駐在所島民惨殺事件」と呼ばれる事件だった。陸上自衛隊の攻撃が始まった後追いつめられた中国兵の内12名ほどが指揮命令系統からハズレK駐在所を警備していた中国兵2名を殺害したのち中にいた島民26名の内10代から30代の女性4名に性的暴行を加えた後他の島民22名とともに殺害した事件だ。この時自衛隊は潜入した特殊作戦群やUAVによる偵察などで収容場所を把握しており、救出のために自衛隊員2個小銃小隊76名が同駐在所に突入。その際、事件を起こした中国兵と戦闘になったが全員を排除し中に入った時にはすでに息をしている島民はいなかった。この時突入した隊員の中には余りにもショッキングな光景に紛争後
バルクホルンも自身の妹であるクリスがそんなことをされて殺されたらやり切れないだろうと思った。
「どんなに怖かっただろう、どんなにつらかっただろう、どんなに痛かっただろう・・・・・。そう思うととてもやり切れなかった。兄として何も・・・・・あいつに何もしてやれなかった・・・・・」
「・・・・・・・」
自身よりも辛い過去。それを聞いてバルクホルンは押し黙ることしかできなかった。
「そして、自分はその時から天涯孤独になりました・・・・・。一緒に食卓を囲み、笑いあい思い出を作っていく、そんな家族を失いました・・・・・・。だからわかるんです、家族を・・・・大切な人を失うことがどれほど辛いことか・・・・・・」
しばらく、二人の間に重苦しい沈黙が下りた。すると飯塚が涙をぬぐい話し始める。
「すみません。こんな辛気臭い話をしてしまって・・・・・・。でも、これだけは覚えておいてください。あなたが死んでしまったら、悲しむ人は沢山いても喜ぶ人はいません。そして、残された者は一生辛い思いをするんです・・・・・・。では、おやすみなさい・・・・」
「待ってくれ・・・・・」
飯塚はそのまま自室に戻ろうとするがバルクホルンはそれを呼びとめた。飯塚は歩みを止め振り返る。
「なんでしょうか?」
「昼間、ミーナに言われた。ウィッチーズの皆が家族だと・・・・・。だから飯塚少尉も天涯孤独じゃないと私は思う。今浦中佐たちが飯塚少尉の帰る家であり家族じゃないのか?」
飯塚はなにか記憶の奥底に似た物があった気がした。そしてその物の正体を思い出す。
まだ、自分が7歳頃。大好きだった母親を失った時、毎日が悲しかった時に父親が励ましてくれた時だ。
―――――――
「大輝、泣くな。お母さんはいなくなってしまったけどお前は天涯孤独になってしまったわけではないだろう?お父さんや亜里沙がお前の家族だろう?何があってもお父さんが守ってやる。だから泣くな、大輝」
父親はそういうと優しい笑みを浮かべその無骨な手で優しく自分の手を撫でた。
―――――――
状況や言葉は違えど、何かが似ている雰囲気を飯塚は感じた。飯塚はフッと笑い、窓の外を見る。
「・・・・・そうですね。バルクホルン大尉の言うとおりですね・・・・・」
飯塚はそういうとバルクホルンに右手を差し出す。
「これから、仲間としてよろしくお願いします」
一瞬バルクホルンは戸惑ったような顔をするがすぐにフッと微笑んで飯塚の右手をつかんで頷いた。
「ああ」
二人は微笑みあいがっちりと握手をした。既に飯塚の目には涙はなくなっていた。
いかがでしたでしょうか?
今回、作者はまぁまぁ満足いく作品が出来たと思っております。飯塚の過去がこれで明らかになりました。そしてバルクホルン編はこれで終了です。いやぁ長かったですね。
ご意見ご感想お気に入り登録お待ちしております。
ではまた次回さようなら!
次回 第22話 陸での戦い
お楽しみに!