ガンダムビルドダイバーズ MOON  ~宵月に笑う~   作:零八式

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2話 「あれは、D・フォールン、クアンタ!!」

 

 『ごきげんよう、我が同胞(チャンネル登録者)達よ。宵闇の夜会会長、オリヴィエだ。今宵は同胞諸君に重要な啓示(お知らせ)がある。それは、一週間後に開かれる我々のフォースイベントについてだ。何と、此度我は盟友(メンバー)を新たに増やそうと考えている。しかし、我も諸君らには厳しい使命(ミッション)を課す予定だ。我の出す使命を乗り越えた者にこそ、盟友の称号を授けよう。では、今宵も良い至福の時(GBNライフ)を』

 

 

◆◆◆

 

 

 ミッション開始エリアまで行くには、まず機体で飛んで行かなければならない。

 地上から宇宙へはサーバーの移動により一瞬だが、問題はその後だった。

 ソロモンに向かうまでの途中のあちこちに戦艦の残骸が散乱しているのだ。

 最初こそ慣れずに何回もデブリに衝突するコジローだが、戦域に向かうに連れて徐々にデブリへの接触が減っていく。

 

 「コジローさん、本当に今日が初めてなんですか?」

 

 「へへっ、実は俺オリヴィエさんのファンなんだけど、あの人難関ミッション実況時とかに手元映しながらやるでしょ? それ見て覚えたってわけ!!」

 

 「……そうですか、アレを見ただけで……」

 

 「え? 今なんか言った?」

 

 「何でもありません。それよりもう直ぐ戦闘領域(バトルフィールド)ですよ」

 

 白く塗装され、両手にGNソードVを持ったダブルオークアンタを操るセラフが注意を促すと、ソロモンが見えてくる。

 只の映像ではない本物の1/1スケールのソロモンを見て感極まるコジロー。

 しかし、警告音を発生しているセンサーを注視すると、既に五機ほどの敵がこちらを囲みつつある。

 

 「先手を打たれちゃいましたね。テラー?」

 

 「……分かってる」

 

 テラー・Lと名乗った少女の乗る機体は、非常にごつい重装甲機体だった。

 ガンダムフェイスではあるが片目であり、灰色のその機体はクロスボーンガンダムに搭乗するアマクサに似ている。

 しかし、武装はムラマサブラスターで左手には大型クローシールド、背部にはミノフスキードライブユニットらしきものが顔を覗かせている。

 恐らくは機動力重視の遊撃機体なのだろう。

 

 「私がわざと的になるから、二人は敵を倒して」

 

 「あ、あんまり無茶しないでくれよな!!」

 

 『こらご主人!! か弱き女子(おなご)を盾に使うとは何事じゃ!? 大体、折角の初陣なのじゃから、もっと派手にいかんか!!』

 

 「それもそうだよな……んじゃあ、いくぜぇ!!」

 

 提案を呑もうとするも、ハロサメに注意されたコジローはガンダムムーンXの背部に搭載されたサイコプレートから発せられる力場で、スラスターを吹かす事無く最大戦速でアマクサを追い越す。要はフルアーマーユニコーンガンダムのシールドファンネルと同じ原理だ。

 早速サラミス級戦艦の残骸の陰に隠れていたザクⅡを発見すると、両手持ち武装であるバスターシースライフルを放つ。

 本機の物は正に大太刀の鞘に取っ手を付けた様な形をしており、その後部にはその名に(たが)わず、大型ビームソードが納められている。

 

 敵の燻り出しをアマクサ(?)を操るテラー・Lに任せ、乗せられて出てきたところをコジローとセラフがそれらを各個撃破する。

 

 いつの間にか出来上がっていた作戦は上々で、三人は難なくフェーズ2までをクリアする事ができた。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 最終目的地であるソロモンを目前に、デブリ帯の中に一つだけマシな形を保っている衛星があった。

 それは無人のレスキューステーションであり、ガンダムX劇中でガロードとパーラが一時期身を置いた場所と同型の設備である。

 それが、この宙域ではちょっとした小休憩と機体の補給が行える安全エリアとなっていた。

 

 「はえー、こんな風に補給って行われるのか」

 

 「殆どは弾薬とエネルギー回復だけ、部位破壊されたら戻らない」

 

 補給が行われている様子を見て感嘆の声を上げるコジローに、テラーはそう簡潔に答えると腕を頭の後ろで組んで無重力に身を任せて浮かび上がる。

 

 「ごめんなさい、無愛想な子で」

 

 「気にしなくて良いって!! 何だかんだ言って色々教えてもらってるし、いい人だと俺は思う」

 

 「そうですか……」

 

 セラフはどこかホッとした様に胸を撫で下ろすと、作戦室の机に腰掛けながら、語り始める。

 

 「時にコジローさん。貴方、オリヴィエさんのファン、と言っていましたね? もしかして、来週のフォースイベントに出るつもりですか?」

 

 「あぁ!! あの有名実況プレイヤー、オリヴィエさんと一緒にGBNを満喫できるなんてファン冥利に尽きるってね!! ……と言うのは良いんだけど、実は不安なんだ」

 

 「不安……ですか?」

 

 「あぁ、一応GPDってのはやってた時期があるんだけど、その時先輩にコテンパンにされちゃってさ。ちょっと塞ぎこんでた時期があったんだよ。お陰でGBNが公開されても触れずにいてさ……そんな時に見たのが、あのオリヴィエさんの実況動画なんだ。あの動画には色々助けられたよ」

 

 「確かに、GBNの実況動画に関しては彼女が先駆けですからね。そして、その動画を参考にして練習を重ねた……と」

 

 「仮登録のアカウントで潜って色々ね。ま、その経験もあって、今じゃ自前のカスタム機体も作れるようになっちゃったって訳。だから俺……あの人に会って、直接お礼が言いたいんだ!!」

 

 いつの間にか初対面の人物相手に話し込んでいたことに気が付くと、コジローは我に帰り慌てて謝罪する。

 

 「ご、ごめん。俺の身の上話なんか聞いて貰っちゃって」

 

 しかし、彼女はどこか嬉しそうに微笑みながら、とんでもない、と切り返した。

 

 「いえいえ、それ程までに熱意のあるファン様でしたら、彼女もきっとお喜びになるでしょう。初心者の意見なのでなんですが、確かに貴方の機体、まだ荒削りではありますが、よく手を入れてある様に思います」

 

 「あはは……そう言って貰えると、頑張って作った甲斐があった気がするよ」

 

 コジローは照れて頬を掻きながらも立ち上がり、ハンガーの方へ歩み始める。

 そこではこちらの会話が終わるのを待っていたのか。テラー・Lが既にアマクサ(?)に乗り込んだところだった。

 

 「話は済んだ?」

 

 『そろそろ出撃じゃな?』

 

 「あぁ!! 次の相手はソロモンの悪夢、アナベル・ガトー搭乗機ゲルググ!!」

 

 「そして最後はビグ・ザム、ですね!!」

 

 「よぉし、作戦開始ぃ!!」

 

 改めて気合を入れなおし、補給エリアから飛翔する三機。

 戦闘領域(バトルフィールド)まではそう距離は無く、分と経たず戦闘領域(バトルフィールド)に突入、ミッション開始の通知が表示される。

 相手はあのソロモンの悪夢。コーイチの話によれば機体性能こそ初心者向けに落とされてはいるが、思考ルーチンがかなり手ごわい物らしく、油断はできない。

 しかし、奇妙な事に既に戦闘は始まっていた。

 

 「何だ?」

 

 「……おいでなすった」

 

 「皆さん、気をつけて……っ!!」

 

 しかし、そこでセラフは発見してしまった。

 胴体をビームに貫かれ、崩れ落ち電子の海へと沈んでいくソロモンの悪夢を。

 

 「おいおい、アイツがあのフェーズの相手だろ!?」

 

 「その筈ですが……っ!?」

 

 前進しようとした所を攻撃に気づいたセラフのクアンタが片手でムーンXに停止を促し、襲い掛かるビーム砲をテラー・Lのクローシールドが受け止める。

 しかしその威力はかなりのもので、破壊されたシールドの破片が辺りに散らばる。

 

 「チッ……Iフィールドさえ使えれば……」

 

 テラー・Lが悪態を吐きながらも、敵を見据える。

 その敵は三機のジェスタだった。カラーリングが黒く、ゴーグルセンサーを追加している事からエコーズ仕様のジェガンにも見える。

 他の二機もそれは同様で、更にこの三機にはもう一つ共通点があった。

 GBNの空間を歪ませる程のどす黒いオーラが、全身を覆っているのだ。

 

 「マスダイバー……」

 

 「やはり現れましたね、情報通りです」

 

 『あぁん? もしかしてお嬢さん方、俺達をご存知で?』

 

 『そいつは光栄だなぁ。けどまぁ、このミッションは俺たちがクリアしとくから、君たちはご苦労さんってことで』

 

 『連戦ミッションなんて途中めんどくさいでしょう? ランクポイントを稼ぐには最後の美味しい所だけをいただくのが効率的ってオハナシ』

 

 「はぁ……」

 

 偉そうに口上を垂れ流すマスダイバー三人組を相手に、コジローは露骨を通り越してはっきりと相手に聴こえるようにため息をつく。

 三人のうちの一人の女ダイバーから、不満も露わに苛立った声が返ってくる。

 

 『なに、そのため息?』

 

 「一つ言わせて貰うぜ……おいおばさん!!」

 

 『お、おばっ!? 失礼なガキね、私はまだ20代よっ!!』

 

 かかった、とコジローは口の端を吊り上げる。

 セラフが止めに入ろうとするが、何かを察したのか、テラー・Lがそれを引き止める。

 

 「知ったこっちゃねぇやい。大体、いい年こいた大人がチートで俺TUEEEEEEなんかしてんじゃねぇよ、見苦しい。そんな奴は決まっておっさんおばさんに決まってらぁ。チートが許されるのはオフラインゲームで小学生までだって知らねぇのか?」

 

 『こ、このガキ……言わせておけば……っ!!』

 

 コジローの挑発に見事引っかかり、黒いジェスタがバイザー型センサーを持ち上げてゴーグル型カメラを露わにし、コジローのガンダムムーンXにそのショットランサーを振りかぶる。

 挑発に乗せられたせいか、その動きは直線的で、立ち回りも迂闊過ぎる。

 

 「気を付けて下さい!! 装甲値も盛られています!!」

 

 「いくら装甲が厚くたってぇ!!」

 

 他の二機にコジローが囲まれないよう、セラフは注意を促しながら牽制射撃を浴びせる。

 しかし、ムーンXはそれを聞いてか、限界まで相手に近づき、大振りの攻撃をかわすと、膝の関節部分にあらかじめ抜刀していた大型ビームソードを押し当て、発振。

 全身のエネルギーコンダクターで増幅された大出力は、一瞬にして関節を焼き切る--------筈だった。

 まるでアンチビームコーティングで覆われたシールドで受け止められたかのように、ビームが貫通せず四散していく。

 

 「何!?」

 

 『悪いわね、前にしてやられてから対策済みなのよ!!』

 

 驚き一瞬動きが止まるムーンXに振り下ろされるショットランサー。

 突撃槍(ランス)を振り回すなどセオリー破りも甚だしいが、ブレイクデカールによって強化された膂力(りょりょく)によって、十分な威力を持つ鈍器と化す。

 

 「があああああああっ!?」

 

 「コジローさん!!」

 

 『躾のなっていない悪ガキには、お仕置きが必要ねぇ!!』

 

 吹っ飛ばされてデブリに背中から打ち付けられ、しかもめり込んでしまい身動きが取れないコジローのムーンX。

 ショットランサーを構え、狂気じみた笑みを浮かべながら迫る、女マスダイバーのジェスタ。

 コジローのカバーに入ろうと両者の間に割って入るセラフのホワイトクアンタが、相手の得物を破壊しようと二振りのGNソードVで斬りかかるが、その攻撃力を持ってしても破壊できない。

 それどころか、こちらが押されていた。

 

 『渾身の一撃のつもりだったかい? 残念だったねぇ、小娘!! 私には、お前達みたいに糞真面目にやる奴が滑稽に見えるのよ!!』

 

 ジェスタの操縦者は嘲笑うかのように吐き捨てる。

 不正をやっておきながら、さも自身が正当であるかのように振る舞い、他者を嘲る。

 その行為を前にして、彼女の中で何かのタガ(・・)が外れた。

 

 「……では()も一つ問おう。汝は何故このGBN(飽くなき世界)に身を置く?」

 

 『苦労の果ての結果にこそ価値があると勘違いしているクチかい? 大人の世界はねぇ、そんな甘ったれたもんじゃ勝てないんだよ!!』

 

 「はっ……」

 

 少女は微笑む。

 しかし、同じ微笑でもそれは先程浮かべたような微笑ではない。どこか自信に溢れた、尊大な笑い。

 その瞬間、純白だったクアンタの装甲が黒に変色(・・)していき、右側にもう一対のGNシールドが現れる。ダブルオーの第三世代機体に搭載されていた光学迷彩の応用だ。

 その姿を見てハッと気が付いた女マスダイバーは叫ぶ。 

 

 『お前……オリヴィエか!?』

 

 「ほざけ、下郎!!」

 

 先程までよりドスの入った声で叫び、もう一基のGNシールドに搭載されたGNドライブが有効になった事で出力が増した元ホワイトクアンタは、一瞬青く発光した(・・・・・・・・)後に強引に足を振り上げて胴体を蹴飛ばし、膝に装備されたGNソードビットでその装甲に傷を付ける(・・・・・)

 

 『コイツ……蹴りにトランザムを乗せて……!!』

 

「ほう、我の神速の一撃を受けて立っていられるとは。しかし、それの弱点は今ので見えた。少年、まだ立てるな?」 

 

 

 

 『ご主人、あれは……』

 

 

 

 「あぁ……俺、また夢見てるのか?」

 

 

 

 ようやくめり込んだデブリから脱出し、動けるようになったコジローは変わり果てた彼女のクアンタを見て、驚愕のあまり目を見開いた。

 

 宇宙の闇に溶け込んでいながら、それでも尚存在感を放つ黒い機体。背部に一対備えられたGNシールドから大量の黒いGN粒子を噴出し、それはまるでOガンダムのGNフェザーのように展開されていく。神々しかったOガンダムの物に対し、こちらの黒いそれは威圧感を兼ね備えている様に見える。

 

 そして武器は全身のソードビットと二振りのGNソードVのみ。

 

 ガンダムバエル並みに武装の少ないその機体を、彼はとてもよく知っていた。

 

 

 「あれは、D・フォールン、クアンタ!!」 

 

 

 「さぁ、我の可愛い同胞を痛めつけたその罪、宵闇の恐怖を持って刻み込もうぞ!!」

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