ガンダムビルドダイバーズ MOON  ~宵月に笑う~   作:零八式

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4話 「ツキは見えた!!」

 

『-------以上で、高難易度『舞い降りる150ガーベラ』の記録を終了する。同胞諸君、長時間の視聴感謝する。願わくば、この戦の記録(動画)が、同胞諸君らの攻略の助けとならん事を……あぁ、そうだった。五日後はいよいよ諸君のお待ちかね、夜会の開催日だ。いつも通りの宴は勿論、新しき盟友を迎え入れる儀式を執り行なう。最も、今回はそちらがメインなのだがな。ヒントは『ローレライの海』。では、諸君の健闘に期待する。今宵も良き夢を(おやすみなさい)

 

 

 

◆◆◆

 

 夜会開始四日前のベルファスト港、そこでは背後に控えているホワイトベースを護衛すべく、三機のガンプラが襲い来る様々なジオンの水陸両用MS、所謂水泳部と相対している所だった。

 その先陣を切るのは、三日月形の背部サイコプレートを左腕に装備し、サイコフレームが異常硬化する性質を利用した大盾として利用しつつ、突っ込もうとするコジローのガンダムムーンX。

 しかし、ズゴックの頭部から放たれるロケット弾着弾時の爆風により、見事に足止めを食らっている。

 

 『サイコプレート損耗率1%未満!! この程度なら何の問題も無いぞ、ご主人!!』

 

 「ユッキー!! そこお願いね!!」

 

 「任せて!!」

 

 しかし、防御をムーンXが担当してくれていることによって、砲撃戦仕様であるユッキーのジムⅢビームマスターが正確に狙いを定める時間が出来た。

 両肩に装備された三連装ミサイルポッド×2による一斉射撃。

 ズゴックはムーンXの背後から放たれたその攻撃に反応できず、榴散弾頭の洗礼を受けて大破し、電子の海にへと消えるが、その背後からはこのミッションのボス、ゴッグが港から這い出てくるところだった。

 

 「新武装、試させてもらうぜ!! リクゥ!! 頼りにしてるから!!」

 

 「了解!! 挟み撃ちで行きます!!」

 

 この三機の中では最も機動力に優れる、複数の刀剣を装備したリクのダブルオーダイバーエース。

 牽制射撃を浴びせながら回り込む彼の機体を横目に、コジローはリアスカートアーマーにマウントされた折りたたみ式の実体槍を装備する。穂先に装備された実体刃は切れ味に優れ、ムーンXのエネルギーコンダクターによる高出力から来る|膂力(りょりょく)の高さを生かせば、かなりの攻撃力を出せる一品だ。

 そして左手にもやや大型のハンドガンを装備する。こちらは二つの大型弾頭が装備された小型ロケットランチャーとなっていた。

 

 ムーンXは左手のロケットランチャーガンを発射し、発生する爆風が防御体勢に入ったゴッグを足止めする。

 その間に背後に回っていたリクのダブルオーダイバーエースが両肩のGNドライブにマウントされていた最も大振りの長剣、GNダイバーソードを抜刀し、突撃しながら突きの一閃。

 ゴッグは一撃目を左腕の手の甲で弾くが、二撃目がその左肩を貫く。

 そしてその背後からは大上段に槍、というよりは薙刀を構えたムーンXの姿が。

 

 「隙を与えぬ三段構え、ってね!!」

 

 振り回して勢いを付け、袈裟切りに振り下ろされるムーンXの薙刀。

 その一撃はジオン水泳部の中では重装甲の部類に入るゴッグを胴体から両断、爆散させ、残りの敵をユッキーの拡散ビーム砲が仕留めたことによって、このミッションは無事に成功した。

 

 「さーて報酬報酬……よっしゃぁぁぁああああ!! 落ちたああああああ!!」

 

 コジローが報酬一覧を確認すると、その一番左上には『G-Hammer』の文字が。

 これこそが、コジローが捜し求めていた武装データ(ドロップ品)である。

 

 「良かったですね、コジローさん!!」

 

 「あぁ!! リクもユッキーもサンキューな!!」

 

 「オリヴィエさんの言うあのヒント、もしかするとイベントは水中戦かもって事で始めた武器集めだけど……」

 

 『ご主人のお望みの品は全てドロップ率15%前後、その結果が----』

 

 「揃いきるのにほぼ二時間。苦労したぜ……悪ぃな、俺に付き合せちゃって」 

 

 昨夜のオリヴィエの放送の最後に言っていた『ローレライの海』、と言うキーワード。

 元々、ガンダム界隈におけるローレライの海とは、ガンダムXにてGビットやLシステムが沈んでいた海域の事だ。

 それは即ち、今回のイベント戦闘の内容は『海中の探索、もしくは戦闘』になるのではないかと彼は推測していた。

 加えて、フォースに所属するためにはミッションなどをこなして最低でもDランク以上にまで昇格しなければならない。

 そして、偶々THE GUNDAM BASEで出会った彼らに協力を依頼し、水中戦に使える武装の収集を手伝ってもらっていたのだ。

 

 「全然謝らなくてもいいですよ。憧れの人と一緒に戦いたいって夢、応援してますから!!」

 

 「あぁ!! そして俺、いつかリク達のビルドダイバーズと戦ってみたい!!」

 

 「勿論歓迎しますよ!! ……あ、そろそろ時間だ」

 

 聞けば、リクはGBNを始める際に親との約束事として『ダイブは一日二時間まで』という制約を設けており、宿題もきちんとやらなければいけないらしい。

 だと言うのに彼は、今日の時間を全てコジローの為に割いてくれていたのだ。

 その事に最大の感謝と謝辞を述べ、現実世界に戻ると早速新たな武器の製作に当たるのであった。

 

 

 ◆◆◆

 

 そして夜会当日。

 フォース 『宵闇の夜会』フォースネスト 堕楽園(フォールン・パラダイス)

 

 それは、まさしく天空に浮かぶ島だった。

 物々しい暗黒の雲を纏い、雲海の上を悠々と浮遊する、まるで魔王城のような形相の移動要塞。

 しかし、その一方宮殿近くはやや彩度が暗いが華やかに彩られており、幾つも並べられたテーブルには数多くの料理や、飲み物が並べられている。

 そんな夜会に参加したコジローと、彼の付き添いで付いてきたビルドダイバーズの面々がその光景に目を奪われていると、突如照明が切れて暗くなり、何処からともなく声が聞こえてくる。

 

 『---------今宵も月が美しい。そのような夜にこそ、この夜会は似つかわしい……これより、宵闇の夜会会長、堕天使オリヴィエの名の下に夜会の開催を宣告しよう!! 来訪してくれた同胞の紳士淑女諸君に最大の感謝を!!』 

  

 そして、壇上に当てられるスポットライト。

 その先には、透き通るような白い肌とは対照的な黒の露出度の高いビスチェ風の衣装と膝上まで覆うロングブーツ、そして無数のベルトを身に纏い、夕闇に染まりゆく空のような蜜柑色の長い髪をかき上げながら、常にどこか自信に満ちた笑みを浮かべ、背に生えた二つの翼をはためかせる漆黒の堕天使の姿があった。

 

 「オリヴィエ様だ!!」「我らオリヴィエ親衛隊の魂!!」「来た!! 天使来た!! メイン天使来たー!!」「これはUC流せる」「オリヴィエ様厨二病カワイイヤッター!!」「オリヴィエ様~!! 激しく叱って罵って~!! 冷たく笑って蔑んで~!!」「おいやめろばか」「おいやめろ」「おいやめろ」「」

 

 来場した殆どの訓練された同胞(チャンネル登録者)達は一様に異常なまでの盛り上がりを見せる。

 その光景を目を光らせて見ていたのはコジローとユッキーのみで、ビルドダイバーズの面々はその熱狂具合に驚かされるやら、呆れるやらと言った具合だ。

 

 「……呆れた」

 

 「ハハハ……凄い人気ぶりだね……」

 

 「そりゃあ、もう!! オリヴィエさんは難関ミッションの攻略動画から有名人を招いてのトークイベントまで行っていて、チャンネル登録者数に関してはあのチャンピオンのフォース・アヴァロンに匹敵するか、それ以上だって言われているんですから!!」

 

 「あの人が、堕天使オリヴィエさん……」

 

 「すっごいキレーな人……」

 

 「あの人……なんだか心から楽しそう」

 

 そんな中、コジローは改めて拳を握り直し、気合を入れ直していた。

 

 (そうだ。俺は今日、この日の為にガンプラバトルの世界に戻ってきたんだ!! 勝たなきゃ……絶対!!)

 

 「あ、やっぱり来てた」

 

 そんな彼に声を掛けるのは、宵闇の夜会メンバーの一人、幽霊剣姫ことフィリアだった。

 やや低い身長にアッシュグレイの髪、そしてスカート丈の短いウェディングドレス風の衣装と、美しさよりも可愛らしさの目立つ彼女だが、相変わらず手には大量のお菓子を持ち合わせており、今もエクレアを頬張っているところだ。

 

 「あの時以来、になるのかな? えーと……フィリア、さん?」

 

 「フィーで良い、私が許す。オリヴィエから伝言を預かってきた」

 

 そう言ってフィリアはエクレアを食べ終わると、コンソールを開いて一通のメッセージをコジローに渡す。 

 

 『ごきげんよう、少年。本当は直接言いたかったのだが、開催している側の立場上、そう易々と動けそうに無いのでこの様な手段を取らせて頂いた。君がこれを読んでくれていると言うことは、我が儀式に参加する準備は整っていると言うことだろう。本日の儀式参加者のリストを見た限り、君はただ一人のDランクだ。だが臆する事は無い。戦闘要素も勿論あるが、今回のイベントの主な目的は目標の探索だからな。あの時君と出会った縁と言うものを、我は信じよう。勝ちに(こだわ)って、楽しむことを忘れないようにな。では、壇上にて君を待っている。

 

 宵闇の夜会会長 堕天使オリヴィエ』

 

 そこに書かれていたのは、紛れも無くオリヴィエ本人からの激励文だった。  

 それを受けたコジローの眼には、感動のあまり既に涙が。

 

 「この世界に帰って来て……良かった……これが、読めただけで……」

 

 「それじゃ散っちゃうでしょ……? ま、勝ち取りたい者が無い無欲な馬鹿にもなっちゃダメだけど、勝ちに眩んで楽しむことを忘れちゃダメ。ここはGBNなんだから」

 

 それじゃ、と踵を返して新たなお菓子を求めて彷徨うフィリア。白い衣装を身に纏い、ユラリユラリと様々なテーブルの間をうろつくその姿は、確かに幽霊に見えなくも無い。最も、実際の彼女の幽霊剣姫と言う二つ名の由来は、かつてとっていたスレイブ・レイスにムラマサブラスター一本と言うスタイルから来ているんだとか。

 

 「楽しむことを忘れちゃダメ、か……そうだよな。ありがとう。オリヴィエさん、フィー」

 

 そうして感慨に耽っていると、再び壇上にスポットライトが集まり、オリヴィエが全体に呼びかける。

 

 『さて、会場も盛り上がって来た所で、これより同胞諸君に儀式の詳細を啓示しよう。今回の舞台はここローレライの海。この中には数々のお宝が眠っている。そこで、諸君達にはこれらを指定の座標まで運んで貰う事が儀式の目標となる』

 

 空間に投影された周辺地形の映像と、目標地点。同時に映される目標物となるお宝。

 その内容は金銀財宝の様な物から、ビットMSの残骸など、ファンタジー系からロボット系まで見事に網羅している。

 

 『------また、中には我が虚空より創造した(基礎設計を行った)武器の設計図もいくつか隠されている。ポイントの対象外ではあるが、手にすれば同胞諸君らの助けにはなるだろう。それでは諸君、覚悟は出来ているな?』

 

 「「「「「「「……おう!!」」」」」」

 

 『フッ……聞くまでも無かったか。では、出陣せよ!! 制限時間は90分、最も多くの財宝を集めし者に盟友(フォースメンバー)の称号を授けようぞ!!』

 

 気合の入った声と共に、フォースネスト 堕楽園(フォールン・パラダイス)より発進する100を超える機体。

 その中に勿論ガンダムムーンXの姿はあったが、彼は機体を月に向けて停止させる。

 ガンダムXの要素を取り込んだ機体に、良く見える満月。そしてここはGBN。当然アレを使わないはずも無く----

 

 「やっ、やばい!! おいみんな逃げろ!!」

 

 「あの野郎、参加者全員フッ飛ばそうってか!?」

 

 『マイクロウェーブ、4.03秒後に到達!!』

 

 「お前らのツキは見えた!!」

 

 ムーンXにマイクロウェーブが到達し、青白く光る全身のエネルギーコンダクターとサイコプレート。

 そして胴体が延伸し、フルチャージされたサテライトメガソニックを、出力を一点に絞った高出力モードで放ち、その反動とリフレクターを兼ねたサイコプレートからのサイコウェーブによって、ムーンXは一瞬にして他の機体との距離を開けていった。

 

 「へへっ、あーばよっ!!」

 

 「畜生!! 野郎、サテライトキャノンを推進力に使いやがった!!」

 

 「追えー!! 逃がすなー!! って、何だあの速度!?」

 

 戦慄する他の参加者達。

 そしてサテライトメガソニックの放射が終わる頃には、既に殆ど(・・)の機体が追い付けない程にその差は開いていた。

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