ガンダムビルドダイバーズ MOON ~宵月に笑う~ 作:零八式
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CODE NAME LUCHIA MAINSYSTEM BOOT
言語プロセッサ 日本語に設定……完了
起動につきセルフチェックシークエンスに移行。
周囲環境確認……海中エリア深度150m地点
心理パンタグラフ……正常値をキープ
学習率 35% ……起動に支障は無し
犠体ホログラム……損傷なし
システムオールグリーンにつきセルフチェックシークエンスを終了
演算シークエンス開始……対象『揺り篭』半径30m以内のMS型オブジェクト
指令コード入力……接近する対象の殲滅
識別指定……無し
……演算終了 G-BITの起動を確認
L-SYSTEM 対象の殲滅を開始……
◆◆◆
ローレライの海 上空
照らされた月明かりが綺麗に映りこむ夜のローレライの海。
その上空には一筋の青い流れ星が奔っていた。
腹部から青い光を放ち、その反動を生かして加速する背中に二つの三日月を背負った月の使徒。
『サテライトモード照射終了まで3……2……1……冷却開始!!』
サテライトメガソニックの照射を終えたムーンXは延伸していた腹部フレームを収納し、全身のエネルギーコンダクターとダクトから余剰熱を放出し、機体の冷却を開始した。推進目的の狭域照射だったとは言え、約60秒に及ぶ長時間照射だった為、マイクロウェーブを受信をしたにも拘らず貯蔵エネルギーの半分を使ってしまったが、この機体の推進力の大半はエネルギーを必要としないサイコウェーブで賄われる為、エネルギーの再チャージを待つ間でも戦闘行為をしなければ最大戦速で移動できる。
「へへっ、原作再現のサテライト推進、上手くいったぜ!!」
『ライバル機体との差は歴然じゃ!! これで追いつけよう者など……後方より戦闘機1!!』
「何っ!?」
ハロサメの警告に後ろを振り向くコジロー。
そこには、減速したムーンXに猛烈な勢いで迫ってくる一機の戦闘機の姿があった。
見た目はGファルコンに似ているが、後方のエンジンユニットや赤外線ホーミングミサイルポッドや拡散ビーム砲の数が倍増し、正面から見るとX字を構成している。
色は本家のよりも明るい色で塗られており、真紅のボディが目に映える。
『ははっ!! その機体、お前ツキシマだろ?』
「っ!? 誰だ!? どうして俺を知っている!?」
『つれないなぁ、昨日あんなに見せびらかせてきた癖に。隣も席だってのにさ』
「お前……ハラダか!?」
その真紅の戦闘機のダイバーはコジローことツキシマ シロウのクラスメイト、ハラダ ミキだった。
男勝りの快活な少女で、元々戦闘機のゲームが得意だった故にこのGBNでもMSではなく戦闘機を愛用している。
彼女の機体は旧キットのGファルコンをフル改造し、武装と推力を強化したXファルコンだ。
『いくらサテライトキャノンで飛ぼうが、人型が戦闘機の推進力に勝てるわけ無いっしょ!!』
「お前もフォース入団目当てか!? 俺の邪魔はさせないぜ!!」
『あたしは
「なんだって? じゃあ……」
『武装データの捜索さえ手伝ってくれれば、入団への協力はするぜ?』
しかし、彼女の目的はあくまでお宝であった。
入団するために最高の
利害がほぼ一致していた二人は協力することにした。
「なら行くぜ、ハーラ!! ドッキングだ!!」
『あいよ!!』
ムーンXは二つのサイコプレートの二枚を分割し、四枚の破片としてXファルコンのエンジン部の3mmジョイントに接続する。Xファルコンもコックピット部と後方の武装ユニットに分離し、その間に生まれた余剰空間にムーンXが収納され、コックピット部がその後頭部上方に覆い被さる。
サイコフレームの感応によって出力が強化された事により、MSを積んでも全く速度の下がらないXファルコン。
その加速度を生かして更に後続との距離を開けるムーンX。早速人工の群島が見え、その島にあったコンテナを破壊する。
すると、その内部からは小型の宝箱がドロップした。
「やりぃ!! 後部コンテナに収納だ!!」
『はいよ。……お? おいコジローさんよ。ここいら近海になんか妙に熱反応が多いところがあるぜ?』
後部コンテナの空いた空間にアームでお宝を収納しつつも、探索を怠らないハーラ。
後続が来るにはまだ時間があり、その先にもこの辺りでも一番深い海溝がある程度だ。
気になったコジローはXファルコンからのエネルギー充填が完了し、最大稼動が出来るようになったムーンXを指定された海域ポイントで分離させると、小型フォールディングバズーカを構えて水中にへと潜行する。
『あたしが手伝ってやれるのは海上だけだ。武装データを見つけたら宜しく頼むぜ?』
「分かってるって。海上のお宝集めは任せたぜ?」
ハーラに念を押しつつも、海中へと潜行するムーンX。
コジローはハロサメが横で現在の深度を読み上げているのを聞きつつ、機体を慎重に潜行させて行く。
噂によれば、調子に乗って潜行しすぎると圧死することもあると聞いたからだ。
そして、その深度がおおよそ150m付近に達した時、突然周囲に多数の熱反応を感知した。
『気を付けろご主人!! 周囲に敵機!! 数12!!』
「なんだってぇ!? いつの間に!?」
レーダーで確認した限りでは、いつの間にかムーンXの周囲を十二機の熱源が囲んでいた。しかし今は夜の海、それも海中。月明かりが届くのはギリギリで、目視では敵を確認しきれない。
「後続連中が待ち伏せするには早すぎる……オリヴィエさんの言っていたバトル要素ってヤツか?」
『恐らくは、そう考えるのが妥当じゃろうな』
「だったら……正面から切り抜けてやるぜ!!」
そう言って、コジローは背部の二枚あるうち一枚のサイコプレートを完全に分離させた。周囲に散った八枚のサイコプレートが発光現象を引き起こし、水中を赤く照らす。それは、コジローの中にある情熱と言う人の心の光の様だ。
照らし出されることによりはっきりと捉えられた敵機はガンダムXにも登場したビットMS、GXビットだった。それが全部で十二機。それぞれシールドライフルとビームソードで武装しており、周囲から包囲攻撃を仕掛けてくる。
「こいつら……何で水中でビームが減衰しないんだ!?」
バズーカの水中専用弾頭を撃ち込みつつ、左手に腰部後方にマウントされたG-ハンマーを手に持つ。
ビットMSの連携は完璧で、その動きは最高難易度CPUにも引けを取らない。その間にも肩部や腰部に被弾し、あちこちをビームソードで切り裂かれる。しかし……
「でやぁあ!!!」
コジローも負けてはいなかった。バズーカで牽制し、懐に潜り込んでからスラスターが搭載された棘付きの鉄球であるG-ハンマーを駆動させ、その質量攻撃を持ってGXビットの数を確実に減らしていく。
(!?!?!?!?!?!?!?)
四機ほど減らした辺りで、GXビットの動きが突然鈍くなる。まるで、想定外の相手を敵にして驚いているかのようだ。
(敵勢指数、想定規定値オーバー。演算結果修正の必要あり、データ学習率38パーセント。未来予測演算、最低レベルで使用可能。演算開始ーーーーーーー)
「でやぁぁああああああっ!!」
弾切れとなったバズーカを投げ捨て、G-ハンマーを腰に戻すと薙刀を展開。最大限の膂力を持って斬りかかる。しかし、そこから先のGXビットの動きはより苛烈になって行った。四機が射撃に徹し、二機がその射撃機の護衛、そして二機が前衛と役割がシフトし、波状攻撃が襲い掛かる。
「役割を分けたか……けどなぁ!!」
コジローは薙刀を片手で構えたまま左手でG-ハンマーの取っ手に仕込まれたスイッチを押す。すると、G-ハンマーが腰部にマウントされた状態でワイヤーで繋がれた鉄球が射出、スラスター推進で制御され、右後方から襲い掛かる。
片手で振るわれる薙刀とその後方、しかも死角から襲い掛かる鉄球。
当然回避が出来るはずもない攻撃の筈……だった。
GXビットはその攻撃をいとも簡単に避けて見せたのだ。まるで、初めからその方向から攻撃が来る事をわかっていたかの様に。
「何ぃ!? がぁはぁっ!?」
背部に被弾し、よろけるムーンX。サイコプレートの光も心なしか弱くなりつつあり、あまり長時間戦闘できそうには無い。そこでハロサメがレーダーの一端にオブジェクトがあることを確認する。
『ご主人!! 11時方向距離20!! そこから強力な電波の様な物が確認された!!』
「そいつが元凶か……よーし!!」
周囲に拡散させたサイコプレートのうち四枚を左手に戻して小型のシールドとして使用し、敵陣を突破する。
ビームライフルによる波状攻撃が一点に襲い掛かるが、サイコプレートの強度でなら耐えられる。
そのままGXビットをスルーし、ハロサメの指定した座標へと向かうと、そこには『L-SYSTEM』と記されていた正方形のコンテナが頓挫していた。
「これかぁ!!」
コジローは最大の力を持ってコンテナを蹴り飛ばす。
すると、突然GXビットの頭部が明滅したかと思うと動きが鈍くなり、遂には完全に停止してしまう。
『ーーーーーーー犠体に損害発生、思考ニューロ損壊発生、ERROR ERROR ERROR 指令ニューロ停止 自立思考シークエンスに移行 以後は
「……ハロサメ? お前ついにバグったか?」
『ち、ちがわい!! その正面の箱から受信したんじゃ!!』
コックピットに表示された小さいウィンドウの中で頬を膨らませて否定するハロサメ。コジローは不思議に思いつつもその箱に近づき、それを両手で持つとサイコプレートを回収して海上に飛び上がる。
そして近くの島に辿り着くと、その箱の蓋を両手を使って開ける。その中に入っていたモノを見てコジローは思わず息を呑む。
ガラスケースのようなカプセルと、その中に入った少女を見たのだ。
幼くも美しい顔立ち、腰上まで届く長い金髪、ワンピースに包まれた未成熟ながらも曲線が美しい肢体。
コジローの目をハッと覚ますような、控えめに言っても美少女に部類していいであろう少女の姿がそこにはあった。
「……いわゆる、ローレライの美少女ってヤツ?」
『感心しとる場合か。はよう出してやれい』
「分かってるって。よっ……と」
コジローはそのカプセルを箱の外から出し、島の地面に置くとムーンXから降りて開きに向かう。
軽く力を入れた程度で労せずガラスの蓋は開き、彼女を抱きかかえて外に連れ出すと、程無くして彼女はアメジスト色の瞳をゆっくりと開いた。
「ここ……は……?」
「あ、気が付いた? あんな所に閉じ込められてたみたいだけど、大丈夫だった?」
「私は平気……貴方は?」
「俺、コジロー。初心者ダイバーだよ。君は?」
「私は、ルチア……貴方が、私のマスターなのですか?」
「へっ!?」
初対面の美少女の突然の発言に声を詰まらせるコジロー。まさかマスターと呼ばれようとは流石に思っても見なかった。
「え、あ、い、いやあのっ!? 俺達は初対面っつうか何というか、でも君みたいな綺麗な子に言われるのも悪くないと言うか、じゃなくて何言ってんだ俺!?」
「混乱してる……?」
「あああ当ったり前だぜ!! って何を開き直ってんだ!! じゃなくて……いくらここがGBNって言っても、やっぱ女の子があんな所に閉じ込められてるのを見てられなかったって言うか……うん、そうだな。俺、君を助けに来たんだ……と思う」
いま一つ心の整理と思考が追いついていないコジローであったが、彼は決め顔でそう言った。
ルチアと名乗った金髪の少女はそんな彼をじっと見つめている。
美少女に見つめられて思わず顔がにやけるコジローだが、顔を振り払い決め顔を作り直す。
一瞬の静寂、そして先に口を開いたのはルチアだった。
「対象の脅威、及び敵意は無いものと推定、根幹プログラムの指令に基づき対象ダイバーをマスターとして登録……完了」
「……随分個性的な独り言だね?」
「気にしないで下さい。それよりもマスター、貴方にはやる事があるのでは?」
「マスターはよしてくれ、俺の事は普通にコジローでいいよ……っていけねぇ!! お宝集めないと!!」
コジローは慌ててムーンXにルチアを乗せて乗り込むと、機体を立ち上がらせて再び海中にへと潜っていく。
先程機能停止したGXビットの残骸がお宝の対象として使えるからだ。
しかし、この時彼は気が付いていなかった。
この少女もまた、人の意志が生み出した電子の世界に生まれし命だと言うことを。