夕暮れの君は、美しく輝いて   作:またたね

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タイトルの意味はなんでしょう。


GT in the FR

 

 

21話 GT in the FR

 

 

「あ、来た!おーい蘭!こっちこっち!」

「……ごめん、遅くなった」

 

 陽奈とひまりがプールで遊んでいる頃。蘭は巴に呼び出されて近所のファミリーレストランに来ていた。手を振る巴の元に近づき、席へとたどり着いたところで、軽く謝罪を入れる。

 

「遅かったねぇー、蘭」

「モカ。それにつぐみも……2人も来てたんだ」

「うん。私達も巴ちゃんに呼ばれて」

「なるほど……『ひまりから誘いが来ると思うけど断ってこっちに来い』なんて。おかしいと思ったらそういうことだったんだ」

 

 巴からの“お願い”は今言ったように、まるで不思議な内容だった。だが余りにも必死な巴の様子に気圧された蘭──モカやつぐみも同様だ──は、そのお願いを鵜呑みにせざるを得なかった。

 

「……で?そこまでしてわたし達を呼び出した理由は何?」

「あーあ、わたしもプール行きたかったな〜」

「悪い悪い……ただ、どうしても話したいことがあってさ」

 

 モカのぼやきに、巴が申し訳なさそうに笑う。その様子を見ながら蘭は思案する。巴がここまでして呼び出した理由、興味がないといえば嘘になる。プールに未練がないわけではないが、今の蘭にとってはこちらの方が重要なことだった。

 

 

 

 

「……それって」

「陽奈くんと……ひまりちゃんのこと?」

 

 

 

 

 モカの言葉をつぐみが繋ぐ。答えられることが想定内だったのか、巴は大きく驚く様子もなく頷いた。

 

「……アタシらの中だけでも、ハッキリさせたほうがいいんじゃないかって思ってな」

 

 神妙な面持ちで、巴は言う。つぐみがブンブンと首を振りながら頷き、モカもなるほどねー、と相槌を打っている。その中で蘭だけは──内心首を傾げていた。

 

 

 

 ──え?何を?何のこと??

 

 

 

 蘭の脳内を駆け巡る疑問符に、答えを示す存在はこの場にはない。陽奈とひまりのことについて、この4人で話し合い──?蘭には皆目見当もつかなかった。

 しかしこの空気、『何の話?』なんて事を言える雰囲気ではない。故に蘭は考える。今3人は、何に対しての共通認識を持っているのか。

 

 

 陽奈とひまりの事で話す内容。客観的に考えれば、2人の関係性のことだと直ぐに思い至るはずだ。だが蘭には残念ながら、この2人の微妙な距離感を感じられていなかった。

 陽奈と比較的仲の良い巴、人の心の機微に敏いモカ、漫画等から得た知識で恋愛に興味が深いつぐみと比較すれば、気付く要因にあまり恵まれていなかったとも言える。それは蘭自身が、これまで陽奈と必要以上に関わろうとしていなかったと言う面も大きい。

 もしこの話を持ちかけられたのが、今日ではなくもう暫く経ってからだったならば、蘭も気づいた可能性はある。蘭は家の事を通して、少しずつ陽奈と向き合っていこうと決めたのだから。だが今日(こんにち)の蘭がその事実に思い至るには、余りにもピースが欠けていたのである。

 

 

 足りないピースを予想で補いながら、蘭は必死で頭を回す。不信に思われぬよう、表面上は無表情を装いながら。しかしそんな中、次のモカの言葉は蘭にとって衝撃的すぎた。

 

 

 

「──まー、少なからずひーちゃんはどう見てもハルちんラブ、って感じだよねー」

 

 

 

「はァ!?」

「え……どうしたの?蘭ちゃん」

「あっ……い、いや、なんでもない」

 

 さも当然のように告げられたモカの言葉に蘭は驚き、椅子を鳴らしながらその場に立ち上がる。その様子を不信がったつぐみを、ぎこちない笑顔で誤魔化した。

 

「ラブって……す、好きってこと……?」

「いや、そうだけど……もしかして蘭、お前気づいてなかったのか?」

「ばっ、バカなこと言わないで。気づいてたに決まってるじゃん…」

 

 そうは言いながらも、蘭は内心動揺が止まらなかった。“気づいてたに決まってる”。

 

 ──そんなわけがない。

 

 蘭にとって陽奈とひまりの2人は、なんか仲いいなぁ、ぐらいの認識しかなかった。

 2人が家族ぐるみで仲が良いと言うのは知っていたし、この関係はその延長線上だろう。そんな風にしか考えてなかった蘭に、今の言葉は耳を疑うものだった。

 そんな蘭の動揺を、モカは見逃さない。

 

 

「……はっはーん、そっかそっかー、蘭は昔からこういうのは興味なかったもんねぇ。気づかないのも無理ないよ〜」

「だ、だから気づいてたって言ってるでしょ!?」

「無理無理、諦めなよ〜。蘭がわたしに、隠し事できるわけないでしょ〜?」

 

 ニヤニヤと笑いながら揶揄ってくるモカに蘭は強く反発するも、モカはそれを意に介さない。ここで食らいつき続ければ、痛い目を見るのは自分自身だ。今までの経験からそのことを理解していた蘭はぐっと怒りを飲み込んで溜飲を下げた。

 

「……で?ハルとひまりがどういうワケなの」

「やっぱり知らなかったんじゃーん」

「静かにして、モカ」

「ははは……んじゃま、蘭にもわかるように説明するか。ま、アタシの予想も入ってるけど、納得してもらえるとは思うぜ?」

 

 

 それから巴は話した。陽奈とひまりは、恐らく互いを意識しているであろうということ。

 陽奈はひまりに恋心を抱かないように、心の何処かで一線を引いているのではないかということ。

 一方ひまりは間違いなく陽奈の事を好いているが、それは恋心ではなく、家族に向ける情愛と等しいものだということ。

 

 以前にも言ったように、巴はこれを我が事のように感じている。第三者から見てもお似合いの2人だ。是非とも幸せになってほしい。なんとか出来ることなら、なんとかしてあげたい。そんな思いが、確かに巴の中にあった。

 

 

「……だから、アタシ達でなんとかしてやれねーかなって思ってさ」

 

 

 ──なるほど、ね。

 

 巴の話を聞き終わり、蘭は頬杖をつきながら窓の外に視線を移した。確かに出会った頃から2人の距離の近さに関しては認識していた。流石にそんな複雑な事情を抱えているなんて事は想像していなかったし、今でも若干信じられていない節もあるが……周りの反応を見るに、どうやらあながち間違いでも無いらしい。

 もしも今の話が事実なら、確かに何とかしてやりたいと思う。だが今の話を聞いた蘭には、どうしても看過できない点があった。

 

「……確かに何とかしたいと思うけどさ、()()()1()0()0()%()()()()()?」

「どういうことだ?」

「ひまりの方はまぁ、どう見てもハルのことが好きなんだとは思う。恋愛感情は置いといて。でもハルの方は本当にそう思ってるのか確認したわけじゃ無いんでしょ?ハルは、本当にそれを望んでるワケ?」

 

 語調を荒げないように努めてはいたが、それでも疑う気持ちを蘭は抑えきれなかった。

 陽奈は果たして、ひまりと結ばれることを望んでいるのか。その疑問は、蘭の中で拭いきれない懸念だった。取り越し苦労ならまだしも、余計なお世話だった場合、それは今の自分達の関係を壊しかねない爆弾となりうる。

 そんな危険な綱渡りを積極的に行おうとは、蘭にはどうしても思えなかった。

 巴は蘭の言葉を受けて考え込む様子を見せたが、しばらくしてゆっくりと口を開く。

 

「……確かめてはない、けど……やっぱり、()()()()()()よ、陽奈が」

「可哀想……?ハルが?」

「……アタシは多分、みんなの中で1番陽奈と接する機会が多かった。その分、少しだけ陽奈と仲がいい気がしてる、向こうは知らないけどな。だからアタシは、アイツがどんなコンプレックスを抱えてるのか、自分のことをどんな風に思ってるのか……何となくわかるんだ」

「ふぅん……」

「ひまりはあんな性格だから、何も考えずに言ってしまうんだよ──陽奈のコンプレックスを、根本から拭い去ってしまうような言葉をさ」

「だったら、ハルもさっさとそれを受け入れればいいじゃん」

「そうはいかないんだよ……アイツはさ」

 

 至極真っ当な意見を返したつもりの蘭だが、困ったように笑う巴の様子を見て首を傾げた。

 

「どういう……こと?」

「もしひまりが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、まだ可能性はあったかもしれない。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんてこと、アイツは絶対に認めない。陽奈は、そういう奴なんだよ」

 

 苦しそうに、さも自分の事であるかのように、巴は顔を歪めながら言葉を続けていく。

 

「この前見たんだよ、アタシ。ひまりが何気なく言った、自分を認めてくれるような言葉に対して、苦しそうな顔をしている陽奈を。きっとアイツは長い間、そんな顔をしてきたんだろうなって考えると……可哀想じゃないか。アタシは、何とかしてやりたい。陽奈がアタシ達を、助けてくれたみたいに」

 

 

 強く言い切った巴。その瞳は、蘭にはわからない何かを見据えているように見える。そんな決意は確かに立派で、高尚なモノなんだろうと蘭は思った。

 

 が、しかし蘭はこうも思う。

 ()()()()()()()()()()()()()()()と。

 当人から聞いたわけでもない予測だけを並べ立て、それを十割是として語る巴に、僅かばかりの違和感を覚えた。そしてそれに頷く、モカとつぐみにも。陽奈の気持ちも、ひまりの気持ちも、本人にしかわからないじゃないか。

 

 ───幼馴染だから。友達だから。

 

 確かに便利な言葉だし、事実その通りではあるのかもしれない。だが、万物すべてがそうじゃないだろう。寧ろ、ソレであるが故に見えないことも、沢山あるのではないか?現に自分達は、それで一度分裂の危機に陥ってしまったというのに。『きっと』、『多分』。そんな仮定と推論に塗れた決意を持って進んでいく道は、果たして正しいものなのだろうか。巴の話には、確かに芯がある。だが、芯を裏付ける根拠が、余りにもフワフワとしている。論拠に含まれている感情の割合が大きすぎる。そんな印象と疑念を、蘭は抱いた。

 

 

 ──しかし蘭は、その疑念を口にしなかった。

 

 

 理由は1つ。例えどれだけ疑念を抱いても、巴の言葉のとある部分にだけは強く共感することが出来たから。

 そう、蘭にも確かにあったのだ──陽奈を助けたい、という感情が。自分は確かに宮代陽奈という少年に、心の底から救われたから。そんな彼が何かに悩んでいるのなら、苦しんでいるのなら。助けてあげたい、彼が自分にしてくれたのと同じように。そう思ってしまうのも、仕方ないことだと言える。

 そして蘭は疑念と信念、その2つを秤にかけ。

 

 

 ──信念(救い)を、選び取った。

 

 

「……わかったよ、私も協力する。あの2人が結ばれるのは、確かに嬉しいしね」

 

 蘭が巴に微笑みを返す。

 

「っしゃあ!みんなが協力してくれるならアタシも嬉しいよ!」

「……でも巴ちゃん、具体的な策はあるの?」

 

 沈黙を保っていたつぐみが、心配そうに問いかけた。

 

 

「まずは、さっき蘭も言ってくれたけど陽奈の気持ちを確認することから始めていこうかなって。これに関しては責任とってアタシがやるよ」

「……なんかアテがあるみたいだね?」

「そういうわけじゃないけどな。アタシが言い出したことだし、お前らに任せるのも申し訳ないし」

 

 言葉通りに申し訳なさそうに笑う巴。そして彼女は、今度こそ名案を思いついたとばかりに言う。

 

「そうだ、今度“アレ”があるじゃないか」

「んー?アレってなーにー?」

「あ、もしかしてひまりちゃん考案の……」

「あぁ、アレか」

「そうそう!いい機会だ、アレを使って陽奈に確認するキッカケを探してみる。蘭はここで2人の関係を意識しながら見てみろよ。アタシらが言ってること、少しはわかってくれると思うからさ」

「……そう、だね」

 

 ぎこちなく笑う蘭。彼女らが言う『アレ』の正体がわかるのは、もう少し先の話である。

 

「……それはそうとさ、蘭」

「ん……何?」

 

 話題が変わるのだろう、そんな雰囲気を感じた蘭は、巴から質問を受けたにもかかわらず、完全に油断しきっていた。

 

 その質問が、完全に蘭を殺しにきているとも知らずに。

 

 

 

 

「───蘭は陽奈のこと、どう思ってるんだ?」

 

 

 

「…………はぁッ!?」

 

 

 質問の意図を汲めず呆然としていた蘭は、それを理解した瞬間に頬を一気に染め上げて声を荒げた。

 

「なっ、なんでわたしにそれを聞くわけ…?」

「……蘭反応デカすぎ〜」

「蘭お前……もしかして」

「ち、違うっ!誰があんなヤツなんか……!」

 

 からかいに走ったモカと巴を睨みつけ、蘭は勢いよく反駁する。しかしそれは意味をなさず2人のニヤニヤとした顔は止まらない。

 

「らーんー、早く白状しちゃいなよ〜っ」

「だっから……!本当に違うんだって!」

「必死過ぎて逆に怪しいんだよなー」

「本当だって!あんなヤツこっちから願い下げ」

「……そこまで言うか?」

「そうだよ。少なくともわたしはあんな根暗でスカしてるヤツとどーにかなりたいとは思わない……でも」

 

 怪訝な顔で聞き返した巴に、蘭は必死に言い返すが、それは段々と尻すぼみに小さくなっていく。そして蘭は頬を紅潮させたまま、他のメンバーに目を合わせることなく、窓の外を眺めながら答えた。

 

 

 

「──幸せになればいいとは、思ってる。

 

悔しいけど、わたしはアイツに助けられたから。アイツが居たから、今のわたしがある。だから……報われて欲しい、かも……っ」

 

 

 

「……蘭、お前いつの間にツンデレを身に付けたんだ?」

「ツンっ……!誰が、どこが!」

「お前の、そういう反応するところだよ」

「ふふふ、蘭ってば可愛いんだから〜」

「笑うなーーーっ!!」

 

 巴やモカは、蘭に申し訳ないとは思うものの、にやけ笑いが止まらなかった。そんな2人に、以前顔を真っ赤に染めたままの蘭が全力で噛み付いた。

 

「はぁ、笑った笑った」

「アンタ達、覚えてなさいよ……!」

「ごめんってば……ん?つぐ、さっきから静かだけどどうかしたのか?」

「……へっ!?あっ、ど、どうしたの?」

「つぐみ……?」

 

 我に返ったように慌てるつぐみの様子に、流石の蘭も違和感を覚えた。

 

「何でもないよ!ごめんね心配かけて!」

「何もないなら別にいいんだけどさ」

 

 強情に何でもないと言い張るつぐみの様子を見て、皆もそれ以上の追求はしなかった。

 

 それから話は、『アレ』を使った作戦の話し合いへとシフトしていく。

 

 

 

 ───もしもの話になるが。

 

 

  蘭が、今日感じた疑念を、口に出していたのならば。

 

 

  彼と彼女が迎える結末が、少しだけ変わっていたのかもしれなかった。

 

 

  だがその事を、今の彼女は知る由もない。

 

 

 

 

 ──彼と彼女の想いを巡る夏休みは、彼女達の加入を皮切りに、大荒れを見せることになる。

 

 

 

 

 





Girls
Talk
in
the
Family
Restaurant

でした。

投稿遅くなって申し訳ありません!実はとある小説の執筆に力を注いでおりまして……宣伝も兼ねて、言い訳させてください。

私またたねは、薮椿氏主催の企画、「ラブライブ!〜合同企画短編集〜」に参加させていただくことになりました。総勢32名もの作家の方々が、作品を持ち寄って1日1話ずつ投稿される、非常に大きな企画となっています!ラブライブ!の作者はもちろん、バンドリ作品の作者の方々もたくさん参加されています!私が昔からお世話になっている「お気に召すがままに」でお馴染みのかさくもさんも参加されています!

もうご察しかと思いますが、そちらの作品の執筆に時間を割いていた関係で、こちらの更新が遅くなってしまいました……本当に申し訳ありません。
私またたねの企画小説の方は、本日21時に公開されます!つまり、もう公開されているのです!笑 この作品を読んだその足で企画小説の方も読んで頂ければ非常に嬉しいです!リンクを1番下に貼っておくので、ぜひよろしくお願いします!

新たに高評価をくださった、

お伽の闇さん 本当にありがとうございます!!

次回もよろしくお願いします!!


企画のリンクはこちら↓
https://syosetu.org/novel/175458/

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