夕暮れの君は、美しく輝いて   作:またたね

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ひまりはヒロインであり、

もう1人の主人公でもあります。

そんな彼女が綴る、もう1つの第1話。


“introduction”は鳴り終えて──。

 

 

6話 “introduction”は鳴り終えて──。

 

 

 ──ハルちゃんはとても大切な存在です。

 

 私…上原ひまりは自信を持ってそう言える。

 幼い頃から、ずっと側に居てくれて、何をするにも2人で一緒。それが当たり前だったハルちゃん(宮代陽奈)。今までもそうで、これからもきっとそう。根拠なんてないけど、私はずっとそう思ってる。まるで家族みたいにかけがえのない存在が、私の中のハルちゃんの立ち位置。

 

 ハルちゃんは、昔から女みたいだってからかわれてた。艶のある綺麗な黒髪、中性的な顔立ち、同年代と比較しても線の細い体……極めつけは陽奈という名前。私達の同級生にも、女の子の“晴菜(はるな)ちゃんが居た事も相まって、からかわれてしまうのは最早当たり前だと言えるレベル。

 

 そしてハルちゃんはそれに屈する事もなく、かといって反抗する事もせず。

 

 

 ──それを()()()()()()()()と、受け入れてしまった。

 

 

 小学生にあるまじき、ある種達観した考え。

 そしてそのストレスは積み重なり続け、今の異常な自己嫌悪へと直結した。自分の名前を嫌い、自分の容姿(みてくれ)を嫌い──自分の全てを、嫌う様になってしまった。あんなに楽しそうにしていたピアノを、棄ててしまう程に。私はそれが、凄く悲しい。

 

 私はそんなに気にしなくてもいいのにな、って思う。だってハルちゃんは、それ以上に良いところがたくさんあるのを、私は知ってるから。

 

 私が泣けば誰よりも早く駆けつけて、『どうしたの?』と聞いてくれるハルちゃん。

 私の話を、いつも笑顔で聞いてくれるハルちゃん。

 私がバンドを始めた時、心から応援してくれたハルちゃん。

 私と喧嘩しても、仲直りするまでずっと側から離れないハルちゃん。

 私がワガママを言っても、なんだかんだ許してくれるハルちゃん。

 

 いつも私の味方で居てくれて、いつも私を支えてくれるハルちゃん。

 

 ──そんなハルちゃんのことが、私は大好き。

 

 優しいところが、一緒にいてくれるところが、私の話を笑って聞いてくれるところが、ワガママを聞いてくれるところが。

 

 ──ハルちゃんの全部が、私は大好き。

 

 女の子っぽくてもいい、無理して男らしく居ようとしなくていい。そんなことしなくたって、ありのままのハルちゃんが、私は大好きなんだから。

 

 

 

 

 

 ──でも

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 私にはわからない。ハルちゃんに抱えているこの気持ちが、1人の男性として向けているものなのか。そうだと言われればそんな気がするし、家族と同じだと言われればそんな気もする。答えを出すには、私達は一緒に過ごしすぎたんだ。

 

 でも、それでも。

 

 ハルちゃんを助けたい、っていう気持ちは、本物なの。

 

 ハルちゃんが自分を好きになれるように、何とかしてあげたい。

 

 

──『だってハルちゃんがピアノ弾いてる所、すっごく()()()()()んだもん!』──

 

 

 この言葉に、嘘はない。ピアノを弾くハルちゃんは、誰がなんと言おうとカッコよかった。私はよく口にしてから後悔することが多い。周りからは『空気が読めない』と言われてしまうこともあるし、現にコレもハルちゃんや巴には、いつもの考え無しだって思われちゃったに違いない。

 

 

 

 でも違う、そうじゃない

 

 例えこの気持ちに名前が付けられなくても

 

 ハルちゃんを思うこの気持ちは、確かなものだから

 

 

 

 私が大好きなハルちゃんを、ハルちゃん自身にも、好きになって欲しいと願うのは、私のワガママなのかもしれない。でもハルちゃんが苦しんでいるなら、助けてあげたい。そう思ってしまうことは、許されないことなのかな。

 

 ──薄々、わかっている。

 

 ハルちゃんは、私の事が好きじゃない。

 

 昔ほど、一緒に居られることが、嬉しそうじゃなくなった。私の言葉に、困った顔をすることが多くなった。素っ気ない態度をとることが年々増えていった。

 でもハルちゃんは優しいから、それを私に悟られないように振舞っている。自分がとてつもなく大きな劣等感を心に抱えていることにも、私に関わらせない様にと、気づかれない様にと意識している。

 

 

 ──()()()()()()()()()()()()

 

 

 私と何年一緒にいると思ってるの?

 隠し通せるわけのない優しい嘘は、私とハルちゃんの間に、互いの心に触れ合うことを許さない一枚の壁を築き上げ、その優しさ故に私を傷つけている。そのことには、きっとハルちゃんは思い至っていない。

 

 

 ──だから私は、気づかないフリをする。

 

 

 ハルちゃんが望んだように、ハルちゃんの思いに気づかない道化を演じ切る。それがハルちゃんの優しい嘘に対する、私の答えだから。

 

 

 それでも、ハルちゃんと一緒に居られるなら。

 

 それでいい、それだけでいい。

 

 

 その嘘を暴くには──余りにも優しすぎるから

 

 

 これはそんな私と、優しすぎる彼の物語だ。

 

 






これにて序奏─introduction閉幕でございます。
陽奈がひまりに抱く思い、ひまりが陽奈に抱く思い、第三者の巴から見た、2人の関係性。それぞれの共通点や差異を感じていただければ幸いです。ただ1つ揺るがないのは、互いは互いにとってかけがえのない大切な存在だという点です。
描写不足に感じる部分は、後々の伏線となりますので、読者様方で今後の展開を想像していただければと思います。

新たに高評価をくださった、

ガマハスさん、生ナマコさん、Wオタクさん、チンパン㌠さん

本当にありがとうございます!連続投稿することができたのも、お気に入りや評価をくださった皆様のおかげです。本当にモチベーションに繋がっています。

連日投稿は一旦ここまでです。次章は少し時間を開けてから投稿します。
と言いましても、2.3日の話ですが笑

長くなりましたが、次回もよろしくお願いします!

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