時をさかのぼること5分前。
サウザーは第二階層の墳墓エリアを底なしのスタミナとテンションを駆使し爆走していた。
「フハハハハ‼フハッ、フハハハハ‼何人足りともこの聖帝の歩みを止めることかなわぬわ!!フハハハハ‼」
そしてサウザーは残骸のような墳墓をまごうことなく残骸にしていく。
この時のサウザーは完全に油断していた。
ヤツは世界の至る所に森羅万象の一つとして存在していると豪語しておきながら。
サウザーは気付きたくなくて無意識に目を反らし続けていた。
聖帝在るところにターバンあり!
ということに!!
どかっ!!
というお馴染みの音と共に懐かしくも憎らしい激痛が、
サウザーの右太ももを襲う!
「ぬっぐぅ!」
ずしゃぁぁーと亜音速に達していたサウザーは右足の自由を失いそのまま勢いよく転倒し地面を抉りながら停止する。
「こっ、この痛み……まさかっ!」
慌てて立ち上がるも周囲にはターバンのタ文字もなくただ、右太ももに刺し傷があるのみ。
「くっ!ぬかったわ!!」
持てる力を振り絞りその場を離れようとした時再び
どかっ!!
と今度は左太ももに激痛が走る。
その時は走っていなかったため倒れはしなかった。
故に見た。ヤツを!ターバンの餓鬼を!
ターバンの餓鬼はニヤリと笑うと地面の中に消えた。
まるで地面をすり抜けたように。
「ば…かな…!」
戦慄するサウザーを他所にターバンの餓鬼は姿を消した。
すると、そこへシャルティアの眷族であるヴァンパイアプライドが現れサウザー発見をシャルティアに報告するに至り。
「説明しなんし!何があった!」
シャルティアの問いにサウザーは絞り出すように
「……ヤツだ……」
そして現在、ナザリック地下大墳墓第十階層玉座の間
アインズは各階層守護者に緊急事態であることを宣言する。
あの聖帝サウザーを、氷結牢獄の氷の壁をぶち抜き守護者と互角以上に戦う事ができるあの聖帝サウザーを害することができる存在がいることを。
そしてそれはナザリックの警戒網に一切気取られることなく難なく姿を現し、くらましたというのだ。
現在ニグレドが全力で捜索しているが依然影も形も掴めずにいた。
明らかにナザリックにとって驚異であるターバンの餓鬼なる存在。
だが、サウザーに奇襲を仕掛けただの二発の刺突により無力化してしまう能力の高さに頭を悩ませる一同。
「アインズ様、よろしいでしょうか?」
口火を切ったのはナザリック一の知恵者デミウルゴス
「なんだ?デミウルゴス」
「はっ、恐らくそのターバンの餓鬼なる存在がこの世界に来たのは、あの聖帝サウザーなる男を追って来たものと愚考いたします。故に放置していても問題ないかと」
デミウルゴスが立ち上がり更にその根拠たる事を口にしようと両手を広げた時
どかっ!!
どこからともなくターバンの餓鬼が現れデミウルゴスの右太ももにナイフを突き立てる。
「ぐっ!……おのれっ!」
通常であればダメージなどあるはずもないみすぼらしい小さなナイフによる刺突。しかし、それはデミウルゴスの右太ももに的確に牙をむく。
苦痛をこらえ、デミウルゴスがターバンの餓鬼へと右手を伸ばし、その細首を捻り切るべく掴もうとした時ターバンの餓鬼の体は煙のようにその手をすり抜け、デミウルゴスを嘲笑うようにその姿を消した。
「どうやら……違ったようね。」
アルベドが愕然として膝を屈するデミウルゴスを尻目に呟く。
「どうやら……その様ですね。」
刺された右足を回復させたデミウルゴスがヨロヨロと立ち上がる。
ダメージは最早残っていなかったが、自らの考えが外れていたことが余程ショックだったのだろう。
その顔は羞恥の赤に染まっていた。
「でも困ったわね、ターバンの餓鬼の狙いが分からない以上こちらも警戒のしようがないわ。
しかし、アインズ様ご安心をっ!この守護者一の防御力を誇る守護者統括たるこの私アルベドが必ず御身を御守りいたします。」
アルベドが護衛にかこつけてアインズににじり寄ろうとしたとき
どかっ!!
再びターバンの餓鬼が現れ、アルベドの右太ももにナイフを突き立てる
「ぬぅぅぅしっ!!」
アルベドの防御力を無視し、ナイフを突き立てたターバンの餓鬼はまたも煙となりその場より霧散した。
「どうやら防御力の高さはアテにならないようでありんすねぇ」
アルベドが妙な叫びをあげた事には一切触れずにシャルティアが前に出る。
「ここはナザリック最強の矛である妾が御身を御守りいたしんす……はっ!?」
ガギィィン!
ターバンの餓鬼のナイフがスポイトランスにより防がれる。流石にシャルティアもパターンを理解してきたらしく、素早く全力装備へと移行する。
そこへデミウルゴスが援護の一手を打つ
「転移はさせん!ディメンジョナル・ロック!」
転移阻害のスキルを発動するも餓鬼は煙となり霧散する
どかっ!!
シャルティアへの奇襲に失敗したことへの腹いせと言わんばかりにデミウルゴスへの二度目の強襲。
「ぐぅぅぅっ!」
「転移阻害ガ効カヌナラバ、凍リツカセレバ良イダケノ話。フロストオーラ!」
デミウルゴスへナイフを突き立てたままのターバンの餓鬼にコキュートスが全てを凍てつかせる絶対零度の領域を展開するもあえなく失敗
ギャリン!
外皮鎧により防がれる餓鬼のナイフ。
「ヌウ、ダメージガ無イ訳デハナイガ外皮鎧ニ救ワレタカ……」
どかっ!!
ターバンの餓鬼は今度は比較的鎧の薄い関節に的確にナイフを突き立ててきた。
「お、お姉ちゃん……」
「うん……あの子意外とフレキシブルなんだね」
最早諦めモードのダークエルフの双子を他所にアインズは一人冷静に状況を分析する。
「(考えろ俺っ!襲われた者と襲われていない者の違いはなんだ……考えろ、考えろ、考えろっ!
はっ!)」
最初に襲われたのはデミウルゴス、両手を広げ何かを語り出そうとした時だった。
次がアルベド、俺を守ると言いながら襲う気満々でにじり寄って来た時だった。
次がシャルティアだ、自らを最強の矛と言った時に襲われた。これは未遂に終わったが。
その次が再びデミウルゴス、スキルを使い転移を阻害しようとして襲われた。これも通用しないという事でターバンの餓鬼の移動術が転移系統と判断できる。
そして最後がコキュートス、ターバンの餓鬼の動きを封じる為にスキルを発動したときだった。
一方何もしていないアウラ&マーレにアインズ。
襲われた者と襲われていない者の違いがハッキリとした
つまりオーバーリアクション若しくは、でしゃばった真似をすると襲われる。
つまり……
「っ!!!パンドラズアクターが危ない!」
急ぎ宝物殿へと向かうアインズであったが、
時すでに遅し、パンドラズアクターは宝物殿で一人横たわっていた。
「何とかしなければ……!!」
これが発端となり、ナザリック地下大墳墓と聖帝サウザーによる、対ターバンの餓鬼連合軍が結成されたのであった!!
何これ超楽しいー!
ちなみにターバンの餓鬼は物質透過、物理無効、スキル無効、バッドステータス無効、魔法無効、超位魔法無効をもっております。