そういえばいつかやりたかったのにやれなかったネタPart2
「先輩、まじでありがとう!」
頭を下げる虎杖を見下ろす綴は、ぶっきらぼうに「おう」と返事をする。
「伏黒から聞いてたけど、古典得意だったんすね」
突然、綴の部屋にやってきた虎杖が持っていたのは国語の教科書。
呪術を学ぶ学校ではあるが、それはそれとして一般科目も彼らには必要な教養である。
そんな最中、虎杖は古典の授業にて行き詰まり、最終手段として伏黒から提示された綴を頼ることにした。
「一応、古文書とか読むために叩き込まれてるからな」
そういった経緯もあり、綴は書物を読み解くためね国語と歴史等の分野は得意である。
「へぇ……じゃあ苦手な教科とかあんの?」
綴はしばらく考えてから虎杖の質問に答える。
「…………英語は……30点以上取れたことねぇな」
あ、ぽい。
虎杖はなんの疑問も抱かずに納得する。
何せこの先輩、東京の街中で着物を着て、観光客の外国人に英語で話しかけられて目を回しているような人なのだ。
「いや、囲まれて平気な手前の尺度でものを言うんじゃねぇよ」
「うっす。
数学とかは?」
「あんまり……理系は苦手だな、美術とか家庭科も上手くできた試しはない」
「本当に呪術に関係することしか得意じゃない!」
苦手なことを恥じる様子もなく苦手だと言えるのは、綴がそこを恥ずべきことでは無いと思っているからだ。
あまりにも堂々しているため、虎杖も自分の成績のことなどどうでも良くなる。
「中学の時にあまりにも成績悪すぎて教師が頭抱えてたらしい」
「いやそれはちょっと焦ろうよ!」
「それ以降は英語以外は最低でも50点しかとってねぇよ、手前と一緒にすんな」
「はいはい、頭が悪くてすんませんしたぁ!」
地味に自慢されたことにより虎杖は少々不貞腐れるが、綴はニヤニヤと笑って謝る気も無いようだ。
「あ、でも英語は勝ってる!」
「英語なんかできなくても生きてけるんだよ」
だからといってローマ字も曖昧なのは如何なものか。
というかこの人ローマ字で自分の名前も書けなさそうだ。
「あ、でも【子供】は書ける。今年の6月に東堂が教えてくれた」
そう言いながら綴はノートに達筆な【KIDS】の文字を書く。
「なんでそれは知ってんの?」
「どうしてもパソコン使わないと行けない時に、五条にパソコン借りると表記されてるから覚えた」
「先輩パソコンできんの!?」
「驚くのそこか」
ちなみに東堂からは、綴の歳で某子供向けポータルサイトを使用している人は極々僅かだと言われていた。
が、それを五条に言うと、「まだ成人してないから、綴は子供向けポータルサイト使ってていいんだよ!なんにも変なことはないよ!」という風に言われてで丸め込まれた。
ちなみに五条が綴に子供向けポータルサイトを使わせる理由は、近代機器に疎くまた騙されやすい綴に配慮してのことである。
「ローマ字曖昧なのに出来るんだ」
「いや、あれ……えーと、きーぼーど?に平仮名あるし」
まさかのかな入力。
「字はめっちゃ綺麗なのに」
虎杖はしげしげと綴が書いた文字を見つめる。
とんでもなく達筆な文字を見て、ふと思うことがあった。
「古文書読むってことは、あれ読めんの?」
「あれ?」
「ほら、えーと……ミミズみたいな、戦国武将の手紙に書いてるみたいな文字!」
「あー、あれな……」
綴はそう言うと、おもむろに何かをノートに書き始める。
「?」
「それで虎杖悠仁と読む」
「まじで!? すっげ、読めねー」
名前ひとつで喜ぶ虎杖を見て、綴は思わず笑いが込み上げる。
「小学校入る前まではずっとそれだったんだが……1年ときの担任に読めないと言われてな」
周りからは達筆だと褒められていたのもあり、当時の担任から悪筆だと言われて、腹が立ったためわかりやすい字を練習したそうだ。
ペン字の先生になれそうな字を見て、虎杖は綴の負けず嫌いさを思い知った。
「練習して見せた時のアイツの顔といったら、本当に笑えたな」
「先輩そういうとこあるー」
今度は先程書いた文字の隣に、また【虎杖悠仁】の文字を書く。先程の字よりも読みやすく、また誰がどう見ても達筆だとわかる文字だ。
「ま、こっちは人に読まれる……報告書とかで書いてるな」
現在は使い分けているらしく、そういったトラブルは起きていないそうだ。
「もしかして、習字とかも得意?」
「見るか?」
「見たい!」
虎杖の返事を聞くと、綴は押し入れの中にぞんざいに入れていた巻物状の半紙を取り出す。そしてそれとセットで表彰状や盾等が並べられた。
その全てがどれも最優秀賞であるから驚きだ。
「久しぶりに人に見せた気がする」
「誰かに見せてたの? 五条先生?」
「いや……」
綴は目を伏せる。
「1番最初に必ず見せてたのは……世界で1番尊敬してる、大好きな人がいたんだ。俺がこういうことで良い成績取ると、俺よりも喜んでくれる人でさ。
それが嬉しくて……とれる賞は書道以外も全部制覇した」
「嬉しいの規模がでかい」
その人が英語をやれと言えば本気でやったのではないか?と尋ねるが、綴は首を横に振る。
「いや、人には向き不向きがあるから」
それもそうか。
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「傑兄ちゃん! 見て!」
「お、今度は作文で最優秀賞か……すごいな、綴は!」
表彰状を掲げながら綴は夏油の元へ走る。
「凄いでしょ?」
褒めて褒めて、と言いながら綴は夏油の周りをくるくると回る。
「うんうん。流石、綴は天才だな〜」
「悟兄ちゃんよりも!?」
「悟よりも!」
それが最上級の褒め言葉であるようで、綴は腕をパタパタさせながら甲高い声で叫びながら喜ぶ。
「おい聞き捨てならない言葉が聞こえたんだけど!?」
そこに現れたのは先程まで夜蛾に説教されていた五条だった。
「なんだ、もう終わったのか。まだもう少し説教されてても良かったのに」
「今度はなにやらかしたの? いいかげん、学習したほうが良いよ?」
「この師弟いつか絶対まとめて泣かす」
2人だけの世界を壊された綴と夏油は、五条を冷ややかな目で見つめる。
「俺を仲間外れにするとはいい度胸してるなぁ!」
「綴が来るから大人しくしてろって言ったのに、任務先でやらかした悟に言われたくない」
「そもそも、なんで俺がやらかしたの前提なんだよ!」
「え、違うの?」
「いや、俺がやらかしたんだけど」
ほらな、やっぱりな。と目で語り合う師弟の間に五条は割り込む。
「だから! お前らだけの世界を! 俺の前で作んなって!」
「なんだ悟、寂しんぼか?」
「しかたないから今日寝る時、悟兄ちゃんまんなかにしてあげるね」
などというたわいも無い会話をしていると、綴は思い出したかのように五条に表彰状を見せる。
「見て! 最優秀賞!」
「またー? ………うわ、マジだ」
もう6年間はこの調子で表彰状を総ナメにしていくんだろうな、と表彰状を眺める。
「ほめて!」
「はいはい、凄い凄い」
「心込めて!」
「込めてるよ、呆れてるけど」
綴はその場で地団駄を踏む。
先ほどの仕返しができたと、五条はニヤニヤと綴の地団駄を笑う。
「もう知んない! 悟兄ちゃんには表彰状見せたげないから」
「ごめんごめん、綴の反応が面白いから!」
「悟、それは謝ってないよ」
綴は夏油の後ろに隠れ、五条を挑発するようにぶーっと唇を震わせる。
「こら! どこで覚えてきた、そんなこと!」
五条は綴の頬を片手で鷲掴みにする。
「小学校。できなかったら仲間外れにするって言われたから」
クラスメイトとは仲良くしろと夏油から言われている綴だが、仲間外れにされるとそれができなくなるので焦って練習してできるようになったらしい。
「こんな所で小学生の闇を見たくなかった」
「誰だそんなこと綴に言った奴」
綴は夏油と五条に手を繋いでもらい、寮へ入って行った。
たった数日書いたなかっただけでこんなにも文章の書き方忘れるんだな……。
これからもちょこちょこ番外編を投稿します。
続編について
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このまま続きで書く
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新しい小説として書く
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そんなことより復讐劇の続き書けや
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すじこ