呪われた呪術師の走馬灯   作:千α

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20201207
五条先生お誕生日おめでとうございます!

半分ギャグのつもりだったのにシリアスになった感がある。
ちょっと節々ギャグの面影があります。

ちなみに子綴の声のイメージは花澤香菜さんです。


最強爆誕祭

「悟兄ちゃんなんて、嫌い! 大嫌い!!」

「あー、はいはいそうですか! 俺も嫌いだよ!」

「ばかー!!!」

 

 そう言いながら綴は走り去っていった。

 

「………今のはお前が大人気ないと思うぞ」

「はぁ?」

 

 夏油にそう言われて五条は露骨に顔を歪める。

 事の発端など、いつも通りの些細なことであった。

 ただ、連日の任務明け、それも今さっき帰ってきた五条は綴にブチ切れてしまった。

 いつもであれば、綴の扱いには慣れたもので、最終的に喧嘩も丸く収まるのだが今日は間が悪かった。

 

「アイツが訳分からねぇこと言ってるからだろ?」

「悟には訳のわからないことでも、綴にとって重要なことかもしれないだろ?」

「たかがゴミ捨てただけじゃん」

 

 そう、五条は綴が机に出していたお菓子の包装紙を捨てただけだった。

 それを見た綴は激昂、のち大泣き。

 大事なものなら持ってくんなと五条が怒鳴って叱りつけ、今の状況が出来上がった。

 

「その悟にとってのたかがゴミでも、綴にとっては大切な宝物だったんだよ」

 

 五条は首を傾げた。

 綴が持っていたのは、市販のどこにでもあるような、恐らく飴玉かを包んでいた袋であったのだ。これがプレゼント用の包装紙ならまだわかるが、どこにでもある飴玉の袋1つで何をそんなに綴が怒る必要があり、そして夏油から怒られる必要があるのだろう。

 

「そうやって甘やかすから綴がわがままになるんだぞ?」

「悟よりは手の掛からない良い子だと思うけど?」

「どういう意味だ傑おいこら!」

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「やっほー、おチビちゃん」

「硝子姉ちゃん……」

「そんなとこで何してんの?」

「…………たちけて……」

 

 綴は木の上から降りられなくなっていた。

 ため息を吐いた家入は脚立を持ってくると、それを木下に置く。

 綴はその脚立を使いやっとの思いで地面に足をつけることに成功した。

 

「なんでまた木なんか登ったの?」

「……悟兄ちゃんに、しかられた」

 

 おや珍しい。家入は目を丸くさせる。

 五条が綴を叱りつけることなんてなかなか無い。

 子供じみた喧嘩をすることは日常茶飯事だが、大抵のことは面白がって好きにやらせて、最後には綴諸共夜蛾に説教されている五条が綴がここまで落ち込むくらい怒るなんて。

 

「なにやったの?」

「…………」

「言いたくない?」

 

 綴は目に涙を貯めてコクンと頷いた。

 これは参った。

 家入は綴の姉貴分的な存在ではあるが、夏油と五条には1歩及ばない。

 それは仕方の無いことだから特に何を思うことは無い。だがこういういざと言う時に、綴になんと声を掛ければいいのか家入にはわからない。

 

「…………今日ね、悟兄ちゃんのたいせつな日なの」

 

 自分に言い聞かせるようにポソポソと綴は話し始める。

 

「だからケンカ、しちゃダメなのに。

 おめでとうって言いたかったのに、嫌いって言っちゃった……。

 兄ちゃんに、ぷれぜんと、たのまれてたのに買いに行けない………っ」

 

 よく見ると、がま口財布がポシェットのように綴の肩に掛けられていた。

 きっとこれから夏油辺りと買いに行く予定だったのだろう。

 

「何買うつもりだったの?」

「……あのね、わからないの」

 

 ん?

 どういう意味だろう。まるで謎掛けでもされたような気分だ。

 

「夏油が決める予定、だったとか?」

「ううん、もう決まってたの。でもわからないの」

「買う物は覚えるんだ?」

「うん、でもね、英語書いててわからないの、だからね、もってたらね、それ……それ持ってたら、わかるかなって………」

 

 そう思っていたのに……。

 ウルウルと涙が次々と目からこぼれ落ちる。

 

「見たら思い出せる?」

「……多分」

 

 家入は綴に手を差し伸べた。

 

「買いに行こっか。綴がいつまでも泣いてるの、嫌だし」

「しょーこねぇーちゃん!!」

「ぎゃっ! 鼻水ついた!」

 

 綴は感極まって家入り抱きつく。

 少し制服に鼻水がついたが、いつもの事なので怒る気にもならない。

 

「さて、どこで買おうか」

「すーぱーとかにあるって、傑兄ちゃん言ってた」

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「綴の奴が帰ってこない!」

「そうかそれは大変だ」

 

 お前は心配じゃないのかよ。と夏油を睨みつける五条だが、夏油は携帯電話を触って綴のことなど気にもしていない様子だ。

 

「そのうち帰ってくるから」

 

 携帯電話から目を離すと、夏油は出かけてくる、といとこと言って去っていった。

 

「………」

 

 まぁいいか。仮眠しか取れていなかったのだから寮でぐっすり夕方まで寝よう。そう決めた五条は自室へ戻る。

 綴は明日の夕方までいる予定だ。目が覚めた頃には帰ってきて、機嫌も戻っているだろう。

 

 ベッドに入ると眠気が襲ってきた。

 目を瞑ると、それから先の記憶が無いためすぐに寝てしまったようだ。

 

 

 けたたましく鳴るアラーム音。

 それを止めると、時間は18時30分をまわっていた。

 

「もうかよ……眠、もっかい寝よ」

「寝るなよ」

 

 枕元に立つ家入を見て五条はベッドから落ちた。

 

「何でいるんだよ!?」

「綴、もう帰るって」

 

 思考が停止した。

 

「……は?」

「そもそも今日は無理して来てたんだって。明日までいられなくなったらしい」

 

 少し怒った雰囲気の家入から何かを差し出された。

 

「なにこれ」

 

 よく見ると、それは薄黄色い飴の袋だった。

 

「誕生日おめでとう、だって」

「あ」

 

 そうだ。

 今日は12月7日、自分の誕生日だ。

 つい最近連日の任務でストレスが溜まっていた五条は色んなところに電話をして愚痴っていた。

 その中に綴も含まれていて、綴はそんな五条に元気を出してもらおうと、任務明けに誕生日を祝うと約束していた。

 

「「悟兄ちゃんが綴は特別な存在だからって言ってくれたから、今度は自分が渡す」て言って探してたよ」

 

 覚えてる。

 それは五条にとってはただのネタのつもりだった。

 テレビのCMで聞いた台詞をアレンジして、欲しそう目をキラキラとさせていた綴にあげたバターキャンディがあった。

 飴を貰えて嬉しそうにしていた。五条は余程欲しかったのだな、と思っただけでその出来事は記憶の隅にしまわれてしまっていた。

 

「帰ってきたら寝てるし、起きないし……あ、夏油がケーキ買ってきたって」

 

 そう言って家入は部屋から出ていった。

 

「あ、そういうことか………」

 

 あの飴の袋は、綴にとって宝物だったのだ。

 何も考えず近くにあったからというだけであげた飴が、綴には価値のある宝物になってしまっていたのだ。

 

 

──「とってもまろやかでこんなキャンディーを食べられる私はきっと特別な存在なのだと感じました」──

──「綴もまた、特別な存在だからです」──

 

 五条は飛び起きて家入を追いかける。

 

「綴、いつ帰った!?」

「今追いかけたら、間に合うんじゃない?」

 

 五条は寮を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

「本当に悟に直接渡さなくていいの?」

「つかれてるみたいだから……」

 

 夏油に肩車をされた綴は、その車に向かっていた。

 

「遠慮しなくていいんだよ?」

「でも……」

「悟なら、許してくれると思うけど?」

 

 俯いた綴の声は震えている。

 

「悟兄ちゃん、許してくれるかな?」

「許してくれるさ。

 綴、謝ることから逃げちゃ駄目だ。私達は呪術師だから、いつ死ぬかわからない。それは分かっているよね?」

 

 綴はゆっくり頷く。

 

「言いたい事は、ちゃんと口に出して言わないと後悔することになる」

 

 それが呪術師という存在。

 今日元気だった呪術師が、明日悲惨な死体となっているかもしれない世界。

 

「綴、今からでも遅くはないから……」

 

 その時、後ろから誰かが走ってくる気配を感じ、夏油は後ろを振り返る。

 

「ちょっと待てよ!!」

 

 そこに居たのは五条だった。

 

「綴!」

 

 五条が綴を呼ぶ。

 夏油は肩車をしていた綴を地面に降ろす。

 

「あの飴の袋………っ!」

 

 そう言いかけたところで、夏油が体育で使うようなホイッスルを吹いた。ピッと良い音が鳴ると、どこからかワゴンを押してきた家入が現れ、そのワゴンに乗ったいくつもある白い物体を綴と夏油、それぞれ1つずつ渡す。

 

「え、ちょっと待てそれ………っ」

「悟覚悟!」

 

 白い物体元いパイ投げ用パイは見事な放物線を描いて五条の顔面にヒットした。

 ちなみに綴が投げたパイは五条の足元にも及ばない場所のコンクリートに直撃した。

 

「何すんだよ!?」

「ドッキリだ〜いせ〜こ〜」

 

 家入が「ドッキリ大成功」とかかれたプラカードを五条の目の前に突きつける。

 

「間抜けな顔になってるぞ、悟!」

「状況が理解できない! 綴帰るんじゃねぇの!?」

「帰らないよ? 明日の夕方までいるよ?」

「なんじゃそりゃ!?」

 

 やったー、とハイタッチをする3人を見て五条は仰向けに寝っ転がる。

 

「さて、悟」

「なに?」

「綴に言うことがあるよな?」

 

 夏油に促された五条は起き上がり、顔面についたパイをある程度拭き取る。

 そして夏油の後ろに隠れる綴にしゃがんで目線を合わせる。

 

「……ごめん」

「いいよ……俺も、大嫌いって、言ってごめん」

「いいよ。はい、これで仲直り」

 

 五条と仲直りをした綴は静かに五条に抱きついた。

 

「悟兄ちゃん、大好きだよ。

 お誕生日おめでとう」

 

続編について

  • このまま続きで書く
  • 新しい小説として書く
  • そんなことより復讐劇の続き書けや
  • すじこ
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