今回完璧後付です。
吉野の遺体を筒の中に入れ虎杖の元へ急ごうとした時、前方から
咄嗟にそれを避けると、蝶は直ぐに灰となって消える。
「あれ? 避けた?」
「………誰だ手前……」
目の前に現れたのは見たことも無い男だ。呪霊ではない。
だが綴を襲ってきたということは、呪詛師か何かなのだろう。
「ああ、そう睨まないで。
俺はどちらかと言われると君の味方なんだから」
「味方は突然攻撃してこない」
それもそうだ、と男は嬉しそうに答える。
「手前は何だ?」
綴が構えると、男は微笑む。本当に敵意など無いようだ。
しかしこの男の呪力、どこかで感じたことがある。
それを思い出せず、綴は少々苛立つ。
「高専に素性がバレるのを避けてるから、本名は名乗れない。凄く、残念だけど。
俺のことは……そうだな、蟲飼いとでも呼んでくれよ」
蟲飼い。
そう名乗った男が恭しく一礼する。
「何が目的だ?」
「いやなに、君に会いたくて。
俺、蟲が好きなんだよ。蟲のことを考えていると、興奮してくる」
蟲飼いと目が合った。その途端、綴の背筋が凍る。
どこかで、会ったことがある目をしていた。
こちらを舐るような目、
「だから、子蜘蛛である君をこの目で、間近で見ていたいのさ」
だというのに……、と蟲飼いは項垂れる。
「五条
その瞬間、綴の左足に力が入らなくなり膝から崩れ落ちる。
何が怒ったのかさっぱりわからない綴だが、この感覚には覚えがある。綴は今呪力を大量に消費したのだ。
だがそんなことはしていないはず。呪力を無駄に消費することなど綴にとっては有り得ないことだ。
「今日は見て帰るだけだったんだよ。たまたま近くで、たまたまチャンスがあったから来ただけ。でもほら……俺って昔から我慢できないタイプだからさ……」
「………変態が…っ」
蟲飼いが綴に何をしたいか、何となく理解した。
この男は子蜘蛛にしか
綴の左足からボトボトと丸々と超え太った地虫が何匹も這い出てきている。どうやら、これらが綴の呪力を喰ったようである。
そして、次は右足にも力が入らず地面に膝をついた。右足を見ると、ズボンの上から見てもわかるほど地虫が蠢き、皮膚の下にいることがわかる。
いつの間にこんなものを仕組んだのだろう。
綴は蟲飼いの術式について考え始める。
術を使えば蟲飼いの残穢が残るはず。しかし蟲飼いの呪力は感じられない。呪力を消費せず蟲飼いは蟲を使える。
①蟲の呪力を使っている。
②蟲に先払いで呪力を与えている。
③蟲飼い自身が残穢を残さない技術を持っている。
このどれかだろう。
そう考えているうちに、綴の右足からも地虫が這い出した。
「あとは……腕かな?
それで君は抵抗できなくなるはずだ。呪力がないと、君は立つこともできなるからね」
「……俺をどうするつもりだ?」
「ん? まだわからない?」
わかっている。
だが
虎杖は大丈夫だろうか。七海は虎杖の元へ行っただろうか。
真人と戦っているであろう虎杖と七海を綴は思い浮かべる。
こんな所で油を売っている時間はない。綴が無理矢理足に力を込めた時、頭に何かが当たり、その場に倒れ込んだ。
「大人しくしててね?
でないと俺、もっと興奮しちゃうから」
「………くそっ」
「で、綴をどうしたいか、だっけ?」
そんなの決まってるじゃないか。
蟲飼いは倒れた綴の元へ向かい、その耳元でそっと話しかける。
「俺は蟲にしか
その一言で蟲飼いの目的が確信に変わった。
動けない綴の頬を蟲飼いがまるで壊れ物を触るかのように優しく撫でる。
栗肌を立たせた綴は右手でそれを払おうとするが、今度は急に重たくなった。
見ると右手に百足が巻き付いていた。締め付けてくる百足は、締め付ける度に重くなる。
「君と、こうすることだけを、あの日からずっと考えてきたんだ。
大きくなたね、綴……あの日のプレゼントは気に入ってくれた? ああ、五条先輩が燃やしたんだっけ? あの人なんでか俺の育てた蟲を燃やしていくんだからいい迷惑だよ」
蟲飼いの手が、今度はするりと首元にまでやってくる。
「はぁ……やっぱり、君は、綺麗だ」
綴は我慢できなくなって呪力を爆発させるようにして四肢に巡らせる。
自分の呪力ではなく、子蜘蛛の呪力を。
本来ならもう少し時間をかけて子蜘蛛の呪力を巡らせたかったが、仕方がない。
喉から血がせり上がってくるのを感じると同時に、大量に口から血が溢れ出る。
「おっと?」
綴は吐血したことも気にせず、蟲飼いを壁に向かって蹴りつける。
ブチブチと百足を剥ぎ取り、地面に捨てていく。
「気持ちわりぃんだよ、さっきからぁ。
俺は蟲でも子蜘蛛でもない、俺は甘菜綴だ」
「あらら…俺、もしかして振られた?」
「眼中にねぇんだよ、手前なんか」
心底残念がる蟲飼いに、綴は右腕から糸を伸ばす。
蟲飼いの右腕を糸で拘束し、距離を詰める。これ以上自分の呪力を消費するわけにはいかない。左腕から出た糸を口に咥え、それを蟲飼いの首に押し当て、首を斬ろうとしたが、蟲飼いの顔面程の大きさを持つ黒い象虫によって阻まれる。
──子蜘蛛の糸でも斬ることができない蟲か、厄介だな。
綴は一旦距離を置いて構える。
──1番硬い蟲を出してみたけど……傷がついてる。何度も受けることはできないな。
蟲飼いは子蜘蛛の糸の鋭さに驚かせられながら、次の蟲を出す。
その時、2人は禍々しい呪力を感知する。
「……両面宿儺…っ」
「…………」
虎杖はいったい何をしている?
宿儺が出てきたのか?だとすれば不味い、上層部か黙っていない。
途端に綴は目の前の蟲飼いについてよりも、虎杖のことを考え始める。
「…………んー……」
蟲飼いは蟲をしまった。
「ちょっと……やる気なくなったかも……」
「は?」
「俺のことだけ考えてくれないのは妬けちゃうな。
………虎杖悠仁のことが気になるんだ?」
どうやら、蟲飼いはもう戦う気はないらしい。
「手前には関係の無い話だ」
「ちょっとショック……さっきまであんなに楽しく戯れてたのに……あ、テレカクシ?」
「違う、断じて違う」
不愉快そうに眉をひそめ、綴は吐き捨てるかのように言った。
「そう怒んなよ。
さっきも言ったけど、俺は本気で君の味方でいたいと思っているんだ。君が呼んでくれたらいつだって力を貸すよ」
「いらん。
俺が死にかけようが、絶対に来るな」
綴の酷く冷たい蔑むような目を見て、蟲飼いはニヤける。
「いいね、背筋がゾクゾクした」
「気持ち悪い」
そう言って、綴は虎杖と七海の元へ行くために校舎を飛び出した。
その背中を見送り、蟲飼いはため息を吐く。
「俺はずっと君のことを見続けてきたんだ」
綴に蹴られた腹を、蟲飼いは愛おしそうに撫でる。
「綴の中にいる子蜘蛛が雌だとわかっただけ、良しとするかな?
あの感じだと、綴にベタ惚れって感じかな? 子蜘蛛にもそういう感情があるとは驚きだ」
子蜘蛛は呪いだ。人間を恨み、妬んでいる呪霊。
人に産み出され、どんどん巨大化していく呪霊。
百呪蜘蛛が産まれたのは約1000年前。子蜘蛛の状態、それも1匹も食べていないしのならばどんな呪術師でも祓えてしまう。しかし、子蜘蛛を祓えばその人間が子蜘蛛になる。
すぐに祓えてしまうからのこそ、厄介。昔聞いた話によると、他の呪霊を祓ったそばに子蜘蛛がいて、その祓った余波だけで子蜘蛛が消し飛び、その呪術師は子蜘蛛となって人間性を失った、とか。
それ故に弱すぎる呪霊であるにも関わらず、その等級は特級。
歴代の三十蠱毒の資料を見るに、成体となった三十蠱毒も同じ性質を持っており、またその強さも特級に見合ったものになっている。
「ああ……楽しみが増えるなぁ……」
蟲飼いはそう言いながら去っていった。
蟲飼いを気持ち悪くかけてたらいいな。
ちなみに蟲飼いはif番外編の復讐劇の方にも出ています。
続編について
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このまま続きで書く
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新しい小説として書く
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そんなことより復讐劇の続き書けや
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すじこ