全く新年と関係の無い番外編が出てきましたが………。
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うわ。
バスに乗った瞬間、私は顔を歪めてしまった。
バスの入口に1番近い場所に、金髪の、どう見てもチンピラって感じの男の子が座っていたからだ。そこ前には1歳くらいの子供を抱っこするお母さん、あと何人かいるけど……特に目立っていたのはこの辺りだろうか。
バスが出発すると、すぐに男の子は寝始めた。首筋には恐らく刺青と思わしきものが見え、私はゴクリと喉を鳴らす。
すると、バスが止まり、また何人か乗ってくる。とたんにバスは満員になり、3人ほどが立っていた。
──ん?あれ、なんだろ?
その時、私が見たのは黒いモヤのような何か。
子供も私と同じものを見たようで、次第に目に涙を溜める。
あ、泣くな……と思った時には遅く、子供はわんわんと泣き始める。
お母さんが泣き止ませようと宥めるがいっこうに止む様子がない。
正直仕事帰りなので、ちょっとイラッとしてしまうが、子供なのだから仕方がない。お母さんも大変だな……。
でも、後ろの男の子が気になる。
どう考えてもこの中で一番ヤバイ子だ。漫画みたいな優しいチンピラなんて、ほとんどいないに決まってる。
などと思っていると、立っていたサラリーマンの中年男性がお母さんに向かって怒鳴り始めた。
「早く黙らせろ! こっちは疲れてるんだ!!」
私はびっくりして、身を固くする。
周りの人達も同じで、中年男性を驚いたように見つめていた。
「いいご身分だな、子供連れてお出かけか?全くこんな時間まで……女は家で家事してりゃいいんだ!」
ちょっとこれは我慢できない。
でも酷い剣幕で、勇気もない私には何もできなかった。
バスに乗ってた人も同じだ。辛うじて運転手は何か言っていたが、それも無駄で、中年男性は好き勝手言っている。
すると、お母さんの後ろに乗っていた男の子がパチリと目を開けた。
その時気が付いたのだが、かなり綺麗な顔をしている。イケメンとかそんなんじゃなくて…………こう、とにかく綺麗とかそういう言葉が似合う顔。
「佐々木さん」
なんと男の子はお母さんに話しかけたのだ。どうやら知り合いだったらしい。
並べる席は埋まっていたから、前後で座るしか無かったようだ。
「あ、ごめんなさい綴君。疲れてるのに」
「いや、別に……車壊れたのおれのせいだし」
男の子の名前は少し変わっていた。
中年男性は、男の子とお母さんが知り合いだとわかると今度は顔を真っ赤にしはじめた。
「全くこれだから若いもんは!」
何のことだろう?
喚いている言葉を拾っていくと、お母さんと男の子が遊びで付き合っているのだと思っているようだ。旦那が可哀想だとか、恥ずかしくないのか、とか……。
「遥、大丈夫ですか?」
「ちょっと……やっぱり怖いみたい」
あれ?もしかして、この2人もあの黒いモヤのことが見えているんじゃ?
「……わかりました」
男の子がそう言うと、黒いモヤがいつの間にか出てきた糸に締め付けられていた。男の子が軽く腕を振ると、黒いモヤが消え去った。
黒いモヤが無くなったことに気が付いた子供は、ピタリと泣き止む。
「ありがとう、綴君」
お母さんは嬉しそうにそう言うが、中年男性は子供が泣き止んでも騒ぎ立てている。
「おい、お前!」
中年男性はとうとう男の子にまで怒鳴り始めた。
やめてくれ、絶対にその子は地雷だから。と思っていたが、男の子は中年男性のことなど気にせず、お母さんと話している。
「おい、無視するな!」
中年男性がグイッと男の子の服を掴む。が、男の子はピクリとも動かなかった。
かなりの力を入れていたらしい中年男性は、あれ?と首を傾げる。
「………おい」
男の子はジロリと中年男性を睨みつける。
「触ってんじゃねぇよジジイ」
糸が今度は中年男性の腕に巻きついた。
そこで、男の子がこの糸を出していたのだと確信する。
中年男性を睨みつけるその目は、嫌悪と殺意に塗れていた。いや、中年男性だけでは無い、このバスに乗っている全員にそんな目を向けている。
その時、バスが停る。
「佐々木さん、ここでいいんですか?」
「ええ、ありがとう綴君。
ごめんなさいね、遥のためにここまで付き合ってくれて」
そう言いながら三人はバスから降りようとする。
「伊地知さんに連絡してるから、そのまま高専に帰ってゆっくり休んでね」
バスにいた全員が呆気にとられていると、私は男の子と目が合った。
ヒエっと怯えていると、それまで乗客に向けていた目を変え、迷惑をかけた、と言うように小さく頭を下げた。
私にだけ。
いったい、なんだったんだ………?
「綴君、やっぱり見えない人には厳しいのね?」
「嫌いなんで」
キッパリそう言う綴に佐々木は苦笑する。
「本当なら高専で別れる予定だったのに、遥が我が儘言って、ごめんなさい。嫌よね、バスなんて」
「二度と乗りません」
「だよね」
佐々木は窓の人間として活動していた。
どうしても綴に会いたい佐々木の息子、遥の我儘で佐々木は高専へ来ており、たまたま任務で不在だった綴を、たまたま車で来ていた佐々木が、巻き込まれた補助監督の代わりに迎えに行くことになった。
その際、佐々木の車は呪霊との戦いで巻き込まれたのだが……。
「弁償します」
「高専から出るから大丈夫よ?」
「いや、でも……」
「遥とこれからも遊んでくれたらそれでいいから」
そう言うと、綴は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「遥、綴君とバイバイして」
「や!」
遥はそう言って綴に抱っこを強請る。
「も、遥ってば!綴君はお仕事の後だから……」
「いーやー!!!」
その後、伊地知が迎えに来るまで遥は綴によじ登って泣き叫び、それを佐々木が宥め、綴はどうしていいのかわからず、終始死んだ目をしていた。
去年は読者の皆様には大変お世話になりました。
ここまで続けられたのも、皆様のお陰です。
続編の方は、もう少し原作が進んでから……最短でも夏頃にまた連載する予定です。
題名は「呪った呪霊の人間観察」になる予定です。
去年は大変なことが沢山ありましたが、皆様がこうして新年を迎えられたこと嬉しく思います。
まだまだ油断ならない状況ですが、体調に気をつけて2021年をお過ごしください。
これからも、皆様が楽しんでくれるような作品を作り続けていきたいと思います。
今年もよろしくお願いします!
続編について
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このまま続きで書く
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新しい小説として書く
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そんなことより復讐劇の続き書けや
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すじこ