呪われた呪術師の走馬灯   作:千α

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友人にリクエストの無茶ぶりしたらリクエストしてくれました。本当に、良い奴だと思っています。
初めて海行く子綴の話です。

お気に入り登録、誤字報告、評価ありがとうございます!


海内冠冕

「うーみーだ!!!」

 

 真冬だというのにはしゃぐ綴を、夏油、家入は呆れたような顔をして五条を見ていた。

 

「海海!」

「はいはい。綴、海には入らないでくれよ」

「やだ!」

 

 夏油に言われるが綴は全力で拒否する。

 バシャバシャと海の中に入って行く綴を止めようとはしたが、結局袴のまま海に入ってしまい3人は諦めたように虚空を見つめ出した。

 

「私がカイロとタオルケット、持ってきてて良かったな悟」

「………その節は本当に悪かったと思ってます反省はしていますが後悔はしていません」

 

 それは昨日から東京にやって来ていた綴の一言から始まった。

 

 

「海見たい」

 

 無邪気な子供の声がポソりと耳に入った。

 五条がそちらに目を向けると、寝転びながら雑誌のかに特集を見つめる綴がいた。

 

「海が見たいんじゃなくて、カニが食べたいんだろ?」

「ち、ちがうもん! 海が見たいの! 俺、海見たことない!」

 

 いつもの五条なら速攻連れて行ってやるのだが、今は年末ということもあって色々と任務が立て込んでいた。

 

「海見たいなぁ……」

「………めんどいからヤダ。

 今、呪術師って大変な時期だし。だから今日は傑もいないって言っただろ?」

「………別に、悟兄ちゃんにたのんでないもん」

 

 キッパリとそう言うと、綴は口をとがらせたあと何も言わなくなり、かに特集をまた読み始める。

 綴が来る日に夏油がいない理由は、急な任務が入ったからだとだいたい決まっている。

 いつもなら行っていい日に東京へ来て遊んでいるのだが、綴は今回少し強引に東京へやって来ていたので、夏油はまだ任務へ行ったままだ。

 

「なんでそんなに海に行きたいんだよ?」

「え?」

 

 綴はそんなことを五条に尋ねられるとは思っていなかったようで、ぽかんと口を開けた。

 

「海なんて、物珍しいものじゃないんだからいつか見られるだろ?」

「……そう、だけど…」

 

 だけど、なんだと言うのだろうか。

 珍しく煮え切らない言い方をする綴はもごもごと何かを言い……そのまま口を閉じてしまった。

 

「言いたいことあるなら言えっていつも言ってんだろ?」

 

 綴はわがままを言うことは多々あるが、必ず相手の顔色を伺っている。

 言いたいことを言ってはいけないと一瞬でも思うと、こうやって口を噤んでしまう。

 綴と出会ってまだ1年も経っておらず、一緒に遊んだりするようになったのはここ数ヶ月の話。まだ夏油ほど信用はされていないらしい。

 わがままをどこまで許してくれるか、綴は五条に試していたのだろう。

 そのことにあとから気が付いて、五条は綴に言いたいことを言うように伝える。

 このまま何も言わない可能性もあるが、尋ねず後々引きずるよりもマシだ。

 

「…………あの」

 

 綴は正座をすると、神妙な面持ちで口を開く。

 

「……………」

 

 開けて、閉じてを数回繰り返してから、意を決したように目を瞑りながら話す。

 

「海、呪霊いっぱいいるから、家の人が行っちゃダメって……でも、夏に、紘平さんが……」

 

 五条は舌打ちをする。

 甘菜紘平。

 それは甘菜家の5男であり、京都校の1年生…つまり五条達とは同学年だ。

 彼は弟である綴に特に当たりが強い節があり、よく夏油と衝突しているところを見かける。

 綴と仲良くなってからは五条も援護しているのだが、御三家の五条が夏油と一緒になって言ってくることが気に食わないようで、激しさは増している。

 

「またアイツかよ。綴、気にすんなよ」

「え?」

「アイツの嫌がらせなんか無視しとけって言ってんだよ」

「そうじゃなくて………」

「?」

 

 モジモジとしながら綴は口を開く。

 

「夏にね、一緒に行こうって、言われた……海に」

 

 五条は思い切り顔を顰めた。

 そのことに気が付かず、綴は雑誌を目を輝かせながら見つめて話し続ける。

 

「紘平さん、怖いところある、けど……修行とかたまに一緒にサボってくれたり…するんだ」

 

 五条はさっきまで綴がわがままを言っているのだと勘違いしていた。

 だが違う。これは、嬉しさのあまり誰かに言わないと気が済まなかっただけなのだ。この様子だと甘菜家の人間には言ってそうだ。

 

 嫌な予感がする。

 五条は甘菜家が大嫌いだ。実際に見てそう感じたのだ。

 綴と初めて会った頃も、甘菜家の人間ということもあって偏見の目で見ていたがそれも無くなった。

 むしろ可愛い弟分だ。

 そんな可愛い弟分の口から嬉しそうに、甘菜家が嫌いな五条にとっては最悪な言葉を吐く。

 

「海、楽しみ!」

 

 ふにゃふにゃとした笑みで綴は雑誌を抱きしめる。

 その時、校門近くから夏油の呪力を感じ取った五条は綴をだき抱えて全力疾走した。

 

「す、傑ー!!!!」

「うぉ!?」

 

 夏油は全力疾走してきた五条と小脇に抱えられ、どこか嬉しそうに雑誌を抱きしめている綴に驚いた。

 

「兄ちゃん、もっかいして!」

「しねぇよ、馬鹿!」

 

 どうや抱えられての全力疾走がお気に召したようだ。

 

 五条は全てを伝えると、夏油は綴に本当のことか尋ねる。

 元気よく頷いた綴を見て、夏油は嬉しそうに頭を撫でた。

 

「そうか、良かったな綴」

「なにが!? なんも良くねぇよ!?」

 

 猛抗議する五条だが、しばらくすると夏油に待ったをかけられる。

 

「いいか、悟。綴は甘菜家でも微妙な感じ立場にいるんだ。

 味方になってくれる人間がいた方が綴にとっていいんだよ」

「わかるけど気に食わねぇ!」

 

 クワッと目を見開いて言うので、夏油は軽く引く。

 というか、なんで師である夏油よりも五条のほうが過剰に反応しているのだろうか……。

 

「………悟…といつか御三家は本当に甘菜家が嫌いなんだな」

「もう本能と言っても過言じゃねぇかんな!」

「え、悟兄ちゃん俺のこと嫌い?」

「綴は別枠!」

 

 ギュウギュウと綴を抱きしめると、小さく呻いた。が、五条にそんなことは関係なく。絶対離してなるものか、とさらに力を込めていた。

 

「悟、綴かま潰れるぞ」

「あの研究者気取りの甘菜家からこんな天使2度と産まれねぇよ!

 傑は知らないかもだけど、アイツら本当に害悪。やることが厭らしい!」

 

 だいたいの御三家からそう思われている甘菜家だが、綴は甘菜家からの洗脳じみた教育を回避してきたため、甘菜家特有の気質は出ておらず、それどころかいろんな人間から可愛がられる子どもに育っていた。

 

「なのにアイツらとつるんでたら絶っっ対に綴が洗脳される!!」

「せんのーってなに?」

「過保護か」

「かほごってなに?」

 

 首を傾げる綴を撫で気にしなくてもいいと夏油が伝えると、綴は更に首を傾げた。

 

「実際そうなんだよ、ガキの頃見たことある」

 

 幼い頃五条よりも少し年下の甘菜家の女の子と遊んだことがあった。

 その女の子は五条の容姿を見て顔を赤らめたりする子で、五条の頼みなら何でも聞く。当時の五条はそれを面白がって暇つぶしに、と適当にその子()遊んでいた。

 女の子は五条に文句を言うことなく、次も一緒に遊びたいと言ってきた。

 そんな女の子はたった数ヶ月後、五条に見向きもせず兄姉のために奉仕する子供へと変わってしまっていた。

 正直幼いながらにもゾッとした。あの時の女の子の目は到底正気だとは思えなかった。

 

「綴!」

「なに?」

「俺達と海行こう!

 アイツらよりも先に行こう!」

 

 綴を海へ最初に連れていったの自分達だと堂々言ってやれるように。

 

「いいの?」

「もちろん!」

「でも、この時期って忙しんでしょ?」

「ちょっとくらい大丈夫だし」

 

 だから行こう。と夏油を見れば、ゆっくり首を振るのが見れる。

 

「せめて5月くらいにしよう、悟」

「いいや! 明日行く!」

「明日!?」

 

 やめろそれ以上は綴がその気になる、と夏油が止めに入る前に綴が夏油を呼ぶ。

 

「夏油さん。明日、楽しみだね!」

 

 キラキラと目を輝かせて雑誌を見つめる綴を見て、夏油はとうとう折れてしまうのであった。

 

「そうだ、硝子も呼ぼう!」

「硝子姉ちゃんも一緒?」

「みんなで行こう!」

「夜蛾さんも?」

「それは勘弁して!」

 

 夏油はその会話を遠い目をして聞いていた。

 

「…………とりあえず、カイロとタオルケット大量に用意しとこ」




新op、edほんと素晴らしかったですね。
edとか、今後の展開知ってたら……ほんと……やりやがったな、MAPPA!!!!!
これにより、原作者もアニメ制作に関わる人も集英社も全員が鬼畜だということがわかりましたねありがとうございます。

続編について

  • このまま続きで書く
  • 新しい小説として書く
  • そんなことより復讐劇の続き書けや
  • すじこ
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