三十蠱毒・百呪蜘蛛
ある蜘蛛から産まれた百匹の子蜘蛛の呪物である。
これと同種の呪いは三十種あると言われているが、百呪蜘蛛以外全てはとうの昔に根絶されている。
子蜘蛛は全て四級程度の呪力しかなく祓うことは容易だ。
よって子蜘蛛達は兄弟を食べ、呪力を得る。百匹集まれば、特級呪物にすら匹敵するとされている。
しかし、この呪法は厄介なところがある。それは、祓ったものを苗床としてしまうところだ。
それはあの両面宿儺ですら有効。特級過呪怨霊・折本里香ですら、この子蜘蛛に攻撃を加えることができなかった。
苗床となったものは、徐々に子蜘蛛へと変容していく。
そうすることで、子蜘蛛の術式が苗床となったものに刻まれる。
この呪いの恐ろしいところは、子蜘蛛は子蜘蛛しか食べれなくなっていく所だ。どんなに食べても腹が満たされなくなる所だ。
子蜘蛛はいつでも飢えている。苗床はその子蜘蛛と同じ飢えに苦しむことになる。
飢えないためには子蜘蛛を食べるしかなく、すると子蜘蛛の呪力が増し苗床をさらに飢えさせる。
無理やり子蜘蛛へと作り替えられる身体は、それに耐えきれず内側からボロボロにされていく。それに耐えるには子蜘蛛を食うしかない。子蜘蛛を食えば幾らか楽になる。
だが忘れてはいけない。そうすることで、刻一刻と、苗床は死に向かっていくことに。
その子蜘蛛の現在唯一、人間としての形を保った苗床が甘菜綴である。
「何匹食ったらそんなに太くなれるんだよ、デブが」
悪態をつくが、もう甘菜にはこの子蜘蛛が食事にしか見えていない。
食えば人でいられなくなる。甘菜がそれでも高専に認められているのは、子蜘蛛を祓えるものは、上記の説明を見ての通り、子蜘蛛だけだからだ。
服の裾の中から、手のひらから糸が出る。それを巧みに操り、子蜘蛛を何度も地面に叩きつけた。
要所で呪力を子蜘蛛に流し込むことも忘れずに。
甘菜のメインはどちらかと言えば体術だ。
呪力を流す術、呪流術が甘菜の術式だ。それを使い生み出されたのが甘菜呪流体術。
流すのにも色々な種類がある。
相手の呪力を受け流す。相手に呪力を流す。相手の呪力の流れる向きを変える。自分の呪力の流れを早める。呪力の流れを反射的に変化させる。それらを応用して素早い動き、柔軟な動きを実現している。
──甘菜呪流体術・一ノ型蕾。
一ノ型蕾、相手の呪力を受け流す型。初歩の初歩。しかし甘菜家の者が使うからこそ発揮される。イメージは雨を凌ぐ傘。
──ニノ型牡丹。
ニノ型牡丹、自分の呪力を相手に流す型。
虎杖の逕庭拳はこれを元にして指導している。イメージは勢いよく身体に当たる滝。
基本はこの二つ。
今回はこの二つで、体力呪力共に大きく失わずに祓う。
甘菜はこの蜘蛛にさほど苦戦することはない。もうこの時点で、この子蜘蛛がどれほど食べているのか予想ができた。
おそらく十五前後、それがこの子蜘蛛が食べた数だろう。
対する甘菜は……いや、今はやめておこう。
甘菜は自分の食べた子蜘蛛から意識を逸らし、目の前のことに集中することにした。
「さて、いただきます」
本来なら、ここで五条辺りから制止が入る。
食べてはいけないと、言われる。甘菜が甘菜綴であるために、子蜘蛛を食べるのはなるべく避けなければならない。避けて、捕獲しておく。食べるのは甘菜の土台ができてから。
だが、もうそれが我慢できないほど甘菜の飢餓状態は限界に達しているのが現状だ。
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口元を拭い、甘菜は直ぐに校舎へ向かう。
虎杖と、もう一つの呪力のぶつかりを感じたかと思えば、その一つが消え、新たな一つを感じた。
校舎で見たのは、醜く変容した元人間。
それが誰なのかは言われなくてもわかった。
やっぱりこうなったかと、何もできなかった自分に嫌気が指す。
「吉野順平」
きっと、こうなると予感がしていたと虎杖に打ち明ければ、嫌悪されるだろう。
悲しいとは思わない、思ってはいけない。そんなことをしたところで、吉野順平への罪滅ぼしにすらならないのだから。
甘菜は、吉野を筒の中にいれた。いつものように。
スーパー説のための子蜘蛛。
あんまりダラダラ書くとあれだし、今回めっちゃ短いです。
次回はおそらく真人戦になる。なるといいな。