呪われた呪術師の走馬灯   作:千α

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気付いている方もいるかと思いますが、こちらのシリーズはあまり原作での会話などを入れないようにして作成しています。


11話

 甘菜はそれ(・・)を捕まえようと糸を出す。

 排水溝から呪霊が逃走するところを見た甘菜は、直ぐに糸を出したが何の手応えもなくスルリと逃げられた。

 

「クソがっ」

 

 傍には七海と虎杖。結局特級のそれとの戦いに間に合わなかったことに、甘菜は己に腹を立てる。

 悪態をついて直ぐに走り、逃がすまいとするが……。

 

「ゲホッ」

 

 甘菜は血を吐いた。子蜘蛛を食べた甘菜は今、急激に体内の構造が変わろうとしている。全ての内臓を一つずつドロドロにするという方法でだ。食べた子蜘蛛の数により、その速さが変わる。

 そんな急激な変化に人間の甘菜が無傷でその負荷に耐えられるはずがない。しかも立て続けに子蜘蛛を食べたのだから、苦痛も時間も長引くはずだ。

 

「甘菜先輩!!」

「馬鹿! 手前は、呪霊を……っ」

 

 甘菜の元へ駆けつけた虎杖に呪霊を追えと、そう言おうとするが、虎杖も限界であることを悟り口を閉じた。虎杖が甘菜の元へ辿り着く前に、まるで電源を落とされたかのように突然意識を失った。

 

「虎杖君!!」

「寝てるよ、七海さん……ついでに俺も限界だ」

 

 まともに動けない甘菜、気を失った虎杖。七海は今の状況では真人は追えないと判断する。

 

「ゲホッゴホッゴホッ」

「甘菜君、呪術の使い過ぎです」

 

 甘菜がこうなる場合考えられることは二つ。呪力の使い過ぎにより、抑えている子蜘蛛の呪力が一時的に強まってしまっている。もう一つは、子蜘蛛を食べたか。

 子蜘蛛を気安く食べるなんてこと甘菜はしないだろうと、七海は前者で考えた。

 

「すみませんね」

「子蜘蛛と戦ったようですが、どうなりました?」

「……………逃げられた」

「珍しいですね」

「だから言いたくなかったんだよ」

 

 嘘をつくのは、いつだって心苦しい。

 甘菜は何とか立ち上がり、筒を背負う。

 

「虎杖頼みます」

「わかりました」

 

 甘菜はフラフラと校門まで向かう。

 そこで視界が真っ暗になるのだが……。

 

 

 目が覚めると、そこは見覚えのある天井だった。

 それを見て、自分があの後気絶した事に気が付いた。

 

「甘菜先輩!」

「虎杖……」

 

 甘菜はゆっくりと起き上がる。腕には点滴がされていた。甘菜の貴重な栄養源である。そして目の前には、見舞い品の数々が鎮座していた。

 

「凄いっすね、こんなにいっぱい」

「……どーせ、家の連中からだろ……虎杖、食いもんあったら持って行っていいぞ」

「え、いいの!?」

「無駄に高いのあると思う」

 

 虎杖は甘菜に言われて見舞い品を漁る。

 

「これ、めっちゃ有名和菓子店のやつじゃん!」

「あー、そんなんか……俺は知らん」

「世の中に疎すぎる!」

 

 甘菜はそんなことより……と和菓子を食べる虎杖に言葉をかける。

 

「もう良いのか?」

「……うん」

 

 何が、とは聞かなかった。二人とも共通の人物を思っていたのは分かっていた。

 

「虎杖」

「はい」

「頑張ったな」

「………はいっ」

 

 吉野を助けることはできなかった。それでも甘菜はそう言った。

 真人を祓うことができなかった。それでも甘菜はそう言った。

 人間を殺してしまった。それでも甘菜はそう言った。

 慰めだということは分かっている。それでも虎杖は頑張ったと、甘菜はいつもの仏頂面でなく穏やかにそう言った。

 泣きそうになるのを必死に堪えて、虎杖は俯く。

 

「泣いとけ。言いふらすなんてことはしねぇから」

 

 病室に虎杖の押し殺すような声が響いた。

 この青年は、己が死んだ時もこうやって泣いてくれるんだろうか。なんて、考えてみるが未来のことをあーだこーだ考えるのは不毛だと、思考を中断させる。

 ポンと虎杖の頭に手を乗せる。昔、悲しいことがあるとよく母がしてくれた。それを思い出しながら甘菜は虎杖の頭を撫でる。

 

 

 

────────────

 

 

 

 それからまた幾らか経って、甘菜はとりあえず五条の脛あたりを蹴っていた。

 

 というのも、甘菜の筒を貸してほしいと言われて、貸したらなんと改造され、プレゼントボックスになって台車に乗っていたからだ。なにを言っているのかわからない思うが、甘菜も何をされたのかわからなかった。

 わかったのは絶対にコイツを許してはいけないということだ。

 

「さて、僕はそろそろいってくるよ!」

「手前、待やがれ!! 筒返せ!!」

 

 

 

 五条を追うと、そこには見知った顔ぶれがいた。

 

「……五条、手前……まさかその中身……!」

 

 甘菜は察した。これから起こることも、結果も。これ関係でこの男がまともなことを考案したことはないのだから、甘菜の想像はほぼ確定したも同然だ。

 そう、ここは姉妹校交流戦会場である。見知った顔ぶれとは、二年生の後輩と伏黒だ。

 

「綴、言うな。分かってるだろ?」

「マジでやるのか、可哀想だからやめてや…ぶふっ」

 

 我慢できずに笑った。五条のこういうくだらないことが自分に向くのは嫌だが、他人がその被害者だと途端に甘菜にとって愉快なことになるのだ。

 もちろん甘菜は黙っているつもりだ。

 それにそんなことよりもやることがある。

 

 今まで音沙汰なかったのに突然現れた甘菜に戸惑う伏黒は、甘菜に額を掌で(はた)かれた。

 

「甘菜……先輩?」

「相変わらず湿気た面しやがって、あとなんで身長また伸びてんだよ叩くぞ」

「もう叩かれているんですけど」

 

 そして更に視線を外すと二年生達が少々引き気味にこちらを見ていたので全員平等に額を掌で叩いた。

 

「なんで!?」

「しゃけ! しゃけ!」

「まだ何もしてないのに!」

「何となくに決まってんだろ、クソが」

 

 理不尽だ。

 

 この後全員にやらないのは不平等だと、釘崎野薔薇も二年に取り押さえられて甘菜に額を叩かれた。

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