呪われた呪術師の走馬灯   作:千α

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この作品でルビのない「叩く」は基本「はたく」と読みます。「たたく」にルビをつけることにしました。



12話


 後輩全員叩いてスッキリしていると、五条が京都校の面々にお土産を渡していた。

 それを横目で見ていると、この中で一番会いたくなかった男と目が合う。すると、男・東堂葵は何故かフッと笑ってこちらへ向かってくる。

 

「やっと会えたな、我が好敵手(ライバル)よ」

「変な呼び方すんじゃねぇよ、クソきめぇ」

 

 そんな甘菜の返答に、東堂はまたフッと笑った。

 

「相変わらずだな我が好敵手(ライバル)甘菜。だが俺は知っているぞ、お前の本心を!」

 

 東堂は腕組をして自信たっぷりにそう言ったが、彼の前から甘菜は既に消えていた。それに気づかないでずっとしゃべり続ける東堂を冷ややかに見つめながら、甘菜は後輩達に語り掛けた。

 

「おい後輩共、あんな感じの奴にはついて行くなよ」

「はーい先輩」

「勿論です先輩」

「しゃけ」

 

 まるで東堂を不審者扱いである。あながち間違ってはいないが。

 二年と甘菜のテンションに微妙についていけていない伏黒と釘崎を押し退けるようにして、五条が甘菜の筒で作ったプレゼントボックスを全員の目の前に置いた。

 

「さて! 東京都の皆にはコチラ!!」

 

 その声を聞いて、甘菜は吹き出して笑うのを堪える。

 

「故人の虎杖悠仁君でぇーっす!!」

「はい!! おっぱっぴー!!」

 

 中から登場したのはやはり虎杖だった。

 それを見て、感動も喜びよりも呆気に取られ何とも言えない表情になる一年。虚空に話し掛ける東堂。お土産に夢中な京都校の面々。抱腹絶倒して地面に崩れ落ちた甘菜。

 虎杖は盛大に失敗した。だいたい五条のせいだが。

 

 

────────────

 

 

 

「あー、笑った笑った」

 

 先程の爆笑していた甘菜とはうって変わり、いつもの仏頂面に戻った甘菜は、遺影の縁を顔の前に掲げる虎杖から目をそらす。

 

 今回の団体戦は"チキチキ呪霊討伐猛レース"。区画内にいる二級呪霊を先に払うか、三級以下の呪霊討伐数が多い方が勝ちとなる。

 

「甘菜先輩も参加するんですね」

「あ?」

 

 伏黒に尋ねられた甘菜は頭をボリボリとかく。

 

「初めは参加する気なんてなかったよ。俺以外の三年停学だし。

 でも気が変わった。少し、気になる事もあるし」

「そう、ですか……」

「なんか文句でもあんのか?」

「え、いや……また一緒に戦えるのが嬉しくて」

 

 素直な気持ちを甘菜に伝えると、当の本人は苦虫を噛み潰したような顔になった。

 甘菜はこの伏黒の、何故か自分を尊敬しているかのような顔が大の苦手だった。そう言った意味では虎杖のあのキラキラした尊敬の眼差しも苦手だ。自分はそんな風に尊敬できるような人間じゃない。

 苦手だが、それはイコール嫌いにはならない。寧ろだからこそ大事にしたい。苦手だと思うのは、少しでも彼らに後ろめたさがあるからだ。

 

「うるせぇ。ならその顔どうにかしろ」

 

 甘菜はまた伏黒の額を叩いた。

 ああ、苦手苦手。伏黒はいつだってそうだ。自分を善人だと決めつけている。なんだかんだで助けてくれる存在だと無意識下で思っている。本当は、自分よりも才能があるくせに。

 

「あの、ところで甘菜先輩?」

「まだ何か用か?」

「刺青、前より大きくなってません?」

 

 ゾワっと首筋に鳥肌が立った。子蜘蛛を食べたことを気付かれたか?それでも、もしそうだとしても……。

 

「さぁ、気の所為だろ?」

 

 嫌われたくはない。

 だから精一杯の仏頂面で、そう答えた。

 

「で? 二年、作戦は?」

「それなんですけど、メンバーが増えちまったから作戦変更しようかなっと……先輩いるし」

「何かいい作戦とかないですか?」

 

 真希とパンダに言われ、甘菜は少し考える。確かにここで一番に年上なのは甘菜だし、引っ張っていくのが先輩としての役割なのだろう。実力だって真人との戦いの後、晴れて準一級から一級になったのだから一番だ。

 だが、ぽっと出の自分が水を差していいのだろうか?今まで二年生だけで一年生を面倒見てきたのに、そんなことしていいのか?作戦だって、三人で考えたはずだ。

 

「……今回は二年が中心になっとけ。俺は従う」

「え?」

「どうせ、来年は俺いねぇし」

 

 交流戦に参加できるのは三年生まで。来年甘菜は参加できない。

 だから二年生にこの場を任せると甘菜は言った。そんな甘菜を一度足りとも見たことがなく、いつも理不尽に叩いてくるあの甘菜とは思えない。

 真希がそう思っていると、キッと甘菜に睨まれる。

 

「文句あんのか?」

「ないです」

 

 それでも苦手なのに変わりはないが。

 

「とにかく、相談なら受けるが基本的なことは一、二年で決めろ。

 あ、それと……くれぐれも俺を東堂に当てようとか考えんなよ?」

 

 そしてそれ以外は口出しはしないと言わんばかりに、甘菜はその場に座り込んで目を瞑る。

 

 

 

 

 

 その後、どうやら東堂と遭遇したら一人だけ置いて散る。東堂をまず引きつけることが決まったらしい。

 その人物が、虎杖だった。

 

「……負けたらクソ映画耐久十本」

「俺の事どうしたいの!? それなら甘菜先輩に勝つまで帰れませんの方がいい!」

「手前が俺に勝つとかまず無理。三十本じゃないだけありがたいと思えや」

「ですよね!!」

 

 甘菜はガクガクと肩を掴んで揺さぶってくる虎杖を蹴る。

 

「で、甘菜先輩には糸を張って貰いたいんですけど……」

「これだけ区画が広いと時間が掛かるぞ?」

「ま、そこは先輩に頑張ってもらうとして」

「……まあいいけどよ。張り終えるまで俺は動けねぇから、何かあっても助けに行けねぇぞ」

「早めにお願いします」

「まぁいいけどよ」

 

 索敵用の糸を張り終えるまで、索敵は伏黒とパンダで行われる。

 それが終わったら、二級呪霊へ当たる班と京都校妨害班に別れる。

 

「ところで、甘菜先輩はなんで東堂から好敵手(ライバル)とか呼ばれているんですか?」

 

 パンダが甘菜に尋ねた。

 東堂に話し掛けられ、なおかつ少し友好的な東堂の態度が全員少し気になっていたからだ。

 その問いに、甘菜は疲れたような目をパンダに向けてから、ズカズカと詰め寄る。

 

「うるせぇ、初対面で女の好み答えたらそういう事になったんだよ」

「先輩好みの女性いたんですか!?」

「全然興味無さそうなのに!?」

「虎杖と釘崎、手前ら後で校舎裏に来い」

 

 一番驚いていた虎杖と釘崎を指名して、甘菜はパキパキと拳を鳴らしながら二人を捕まえるためにゆっくりと歩く。

 

「いったい何て答えたらそうなるんだ……」

「おい真希、その哀れなモン見る辞めろ。またボコられたいのか?」

 

 はぁ、と溜息を吐く甘菜を見て、真希はまた甘菜が丸くなったと感じた。乙骨と里香の件が無ければ、一生分かり合えないと思っていた甘菜は、今こうして先輩として頼れる存在となった。

 質問には答えてくれるし、一年前のように邪険にされることも無くなった。

 五条からは、非術師にほぼ悪感情しか持っていないから、と言われたがその時は納得できなかった。

 パンダや狗巻には普通に会話するのに、真希にはそんなこと一切しなかった。だから真希は甘菜が嫌いだった。

 

「でもあの時助けてくれたのも、先輩なんだよな……」

「ん? ああ、百鬼夜行の時のことか?」

 

 逃げようとする虎杖と釘崎の服の襟を掴んでイタズラをするかのように笑う甘菜を見ながら真希は呟く。パンダに尋ねられると、真希はパンダと狗巻にしか聞こえないように話す。

 

「あの時からじゃないか? 嫌いな人から苦手な人になったの」

「しゃけ」

「わかる、その気持ち」

 

 同級生の友人を邪険に扱われ、嫌な気分にならないはずがない。

 

「あの一件で全部は許せないけどな。

 でもあの後あの人の事を聞いたら、やっぱり思うところはあるよ」

「それも全部引っ括めて甘菜先輩じゃねーの? あと何年かしたら絶対に勝てるようになるだろ。その時は全員に謝ってもらおうせ」

「明太子!」

 

 

…………それはいったいいつのこと?

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