呪われた呪術師の走馬灯   作:千α

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15話

 時は少し遡る────

 

 甘菜綴と東堂葵が出会ったのは高校一年生の頃、京都校との姉妹校交流戦でだ。

 同じ一年生での出場ということもあり二人は自然とお互いを意識していた。その戦いはまさに運命(Destiny)。二人は互いを認め、更に高め合うことを誓った。二年生時の交流戦でも死闘を交わし、いつしか二人の戦いは聖戦と呼ばれるようになった。

 今年の交流戦で決着がつくのだ……。

 

 綴が育てたと聞いていた伏黒恵は予想していたよりもつまらなかった。まず女の好みからしてつまらない。綴から様々なことを教わっているのにいったい何を学んできたのかと問うと、伏黒は目をギラつかせて東堂を睨みつけてきた。それを見て、随分と綴は後輩に慕われていると感じた。そして綴の見る目は間違いではなかったと考えを改めた。

 

 そしてもう一人、永遠の好敵手(ライバル)の弟子がもう一人己の前に立っている。

 

「我が好敵手(ライバル)甘菜は強い」

「そんなこと知ってるけど?」

 

 なんの疑問もなくそう答えるが虎杖よ、その強さの理由をお前は知らないだろう。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 虎杖と東堂は綴に額を叩かれた。それはもう響き渡るくらいに。

 

「全く……」

 

 それと同時にパンダもこの場に駆けつけた。これならば伏黒と真希を気遣う必要も無いだろう。

 

「パンダ、伏黒と真希を頼む」

「あいよ」

 

 東堂は同じ京都校の西宮から聞いた帳の効力について語る。だいたいは綴が思っていたことで合っており、この帳は対五条悟用でそれ以外であれば誰でも出入りが可能だということだ。

 

「待て!! いくらアンタ達でも」

 

 伏黒は綴達を引き止める。無理もない、相手は特級呪霊だ。綴が伏黒に何かを言う前に虎杖が口を開いた。

 

「伏黒、大丈夫」

 

 その一言で伏黒は言葉を紡ぐことを止めた。綴にはこの虎杖と伏黒の関係はよくわからない。初めから見てきた訳では無い。だが一つわかることがある。虎杖がちゃんと成長していることだ、それは伏黒もわかったことだろう。だが綴はあえて何も言わない(東堂がなにやらベラベラと喋っているが)伏黒には伏黒なりに考える時間が必要だ。

 

「次死んだら殺す!!」

「そんじゃ、死ぬワケにはいかねーな」

 

 虎杖は本当に成長したなー、口には絶対に出さないけど。と思っていると隣で信じられない言葉を聞いた。東堂はハッキリと黒閃を出さないと手出しをしないと言った。綴も同じだとハッキリと言った。空いた口が塞がらない。それに対して虎杖も満更では無い様子だ。

 

「おい、東堂……」

「甘菜よ、俺はお前のことを認めている。だがお前が虎杖に伝授した逕庭拳、あれだけはハッキリと違うと感じた」

「いや、アレは五条がだな……俺は鍛えてやれとしか言われてねぇ……」

「何も言うな、お前が何も考えずにアレを伝授したとは思わない」

「だから伝授してねぇって、俺は逕庭拳できないからな」

「そこで俺は考えた。甘菜、お前はわざと俺と虎杖が出会うために逕庭拳を伝授したのでは、と……」

「人の話を聞け」

 

 こうなったら話を聞かなくなるのはこの二年間でよくわかったことだが、今日はそれがいつにも増して酷いと綴はため息を吐く。

 しかし今はそんなことよりも虎杖が黒閃について東堂から教わっていたということの方が重要だった。今回のことが終わったら問いただしてやろうと拳を握りしめる。覚悟しろ虎杖。

 

「ところで、『松葉』を打ち込んだようだが……倒れない呪霊は初めて見るな」

「何度かやってるがな。まるで効果なし、てわけでもないのが救いだよ」

「虎杖が終わったら、俺達の実力を示してやろう」

「やだ」

「いい返事だ!」

 

 きっと東堂にはいい感じに綴の言葉が改変されていることだろう。今はもう諦めたが死ぬ前に一回本気で殴ろうと決めている。覚悟しろ東堂。

 

 

 虎杖と花御との戦いは見事、虎杖の黒閃連続四回の使用により幕を閉じた。

 ここからは三人で花御と対峙する……はずだったのだが、東堂の突拍子もない発言で綴は混乱させられることとなる。

 

「甘菜、ここは俺達に任せてサポートを頼む」

「は?」

「師として虎杖と共闘したい気持ちはわかる」

「ねェよ」

「しかし今は親友(ブラザー)との久々の共闘を俺に譲ってはくれないか?」

「手前ら今日が初対面だろ」

 

 では頼むぞ、と綴を振り返らずにそう言ってのけた東堂を止めようと腕を伸ばすが、その瞬間右手に引き攣るような痛みが走った。それを感じた綴は呪力の使い過ぎとこのくらいで動けなくなる弱くなった己の身体に悪態をつく。どうやら今回は、東堂に従わないといけないようだ。

 

「仕方ねぇか……」

 

 綴は虎杖達と離れ、糸を張る。バレないように戦闘の邪魔にならないように隠れながら移動を始める。

 そのことを知らない花御と虎杖は東堂も交えての戦闘となった。綴が裏で動いていることを知っているのは東堂だけ、だからこそ東堂は最高のタイミングで虎杖にも花御にも悟られないように誘導(・・)していかなければならなかった。

 

《所々に呪力で編まれた糸がある……先程別れた彼のものですね?》

 

 花御はここぞという時に動かなくなる身体で綴が裏で何かをしているということには気が付いた。それが何かはハッキリとはわからないが、きっと花御にとって碌でもないことだ。しかし狙いがわからない。彼はサポートをするために後ろへ下がったのだろうか。そうだとすればもう少し穴なく糸を張れていただろう。

 

《それをしないということは………もっと大きな何かがある》

「どうだろうな。甘菜はきっと何かしてくれる。だが長い付き合いの俺でもアイツのやることにはド肝を抜かされる!」

 

 東堂がそう言った途端、地響きが起こる。虎杖と花御がその場を見渡すと、花御の下から円形の模様が浮かび上がってきた。いや、これは模様ではない。花御が気が付いた時には既に遅く、地面に潜っていた糸が地表に出くると、そのまま花御を縛り上げた。

 

「捕獲成功だな!」

「うるせ! はよそれをどうにかしろ!!」

「甘菜先輩!」

 

 綴は糸を掴み引っ張っている、これを緩めれば花御は簡単に逃げてしまうことだろう。花御の抵抗が激しいこともあり綴の手のひらからは血が流れている。この糸は己すら傷付ける。完璧に子蜘蛛になれていない綴の身体がこの全く別物の呪力を受け入れるのは難しかった。きっと身体共に子蜘蛛であればこのように自分自身の身体を傷付けずに済んだのだろうか。

 というかそろそろ花御をどうにかして欲しい。このままだと手のひらがズタズタになって使い物にならなくなる。

 

「いや、どうやらその必要は無さそうだぞ甘菜」

 

 東堂がそれ(・・)を感知すると同時に綴もそれに気が付いた。タイミングを見計らって糸を緩めると、その瞬間地面に大きな穴が空いた。

 

「相変わらず規格外だな、これでは祓えたかどうかも分からん」

 

 上を見ると、いつの間にか帳が消え五条が空からこちらを見ていた。

 術式順転「(あお)」そして術式反転「(あか)」の二つを合わせた複合術式虚式「(むらさき)」により、地面がえぐれたのだ。

 

「………東堂、俺は寝る」

使い過ぎか(・・・・・)?」

「虎杖にはくれぐれも子蜘蛛のことは内密にしといてくれ」

 

 東堂は綴が好敵手(ライバル)自分にそんなことを頼んで来たことに驚く。プライドの高いあの綴が、誰よりも負けたくない(と、東堂は思っている)自分にこんな頼みをしてくるのだからただ事ではないのだろう。

 

「わかった、任された」

「………本当にわかってんのか、コイツ」

 

 まあいいか、と綴は目を閉じた。

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