過去現在を行き来するような内容にはいるので、少し見にくい場面があるかもしれません。
19話
伏黒恵と甘菜綴は中学が同じだった。
「はよ家帰れや」
「……もう少しだけ」
甘菜綴は善人でも悪人でもない。ただ優しい人ではあるため、自分の家に入り浸る伏黒を無理矢理追い出すようなことはしなかった。伏黒が何故ここに入り浸るのかは何となく察してる。姉の津美紀を避けているのだろう。
綴の家は、本家から与えられたこじんまりとした屋敷だ。そこには家事だけをして帰る使用人しか来ないことが拍車をかけ、伏黒は綴の家に泊まるなんてことも多々あった。
「先輩は呪術師になることに抵抗はなかったんですか?」
いつかそんなことを伏黒に聞かれた。
伏黒のことは五条に聞かされている。親が蒸発した子供が将来呪術師になることを条件に金銭的援助を受ける。それが五条が高専に通した話しである。
「……選択肢なんてもんがあったら、俺もお前もこんなクソみたいな世界にいねぇだろうがよ」
用意されていた夕食を二人分に取り分けながら綴は不機嫌そうに答えた。
そこでインターホンが鳴った。綴は眉をひそめながら玄関へ向かう。
「あ、甘菜さん…恵はいますか?」
「いるけど」
津美紀だ。帰りが遅い伏黒を迎えに来たのだろう。
「帰るかどうかはアイツに任せるからな」
綴はあまり津美紀とは関わりたくなかった。どうしても非術者であることが嫌悪感を抱かせるからだ。非術者は苦手だ。自身の人生の半分は非術者に壊されたようなものだから。
結局、伏黒はその日綴の家に泊まることになった。
「お前、そんなんで来年大丈夫かよ」
「先輩は寮に入るんでしたっけ?」
綴は中学三年生、伏黒は中学一年生。来年はこうやって一緒に食卓を囲むこともないだろう。
「だから今年までに津美紀との仲どうにかしとけ。
いちいち家に来くんのいい加減にして欲しいんだよ」
伏黒は眉に皺を寄せる。すると綴はため息を吐く。いつもの光景だ。
それから、綴は中学を卒業する。気に食わない不良達を軒並み叩きのめすという多大な悪影響を与えた伏黒恵を残して。
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綴の高校生生活は、お世辞にも上手くいっているとは言えなかった。
同級生達とは、自身にかけられた呪いのこともありもうすぐ死ぬからと言って距離を取っていた。
それから一年ほどが経ってから津美紀が呪いによって寝たきりになったと五条から聞いたが、やはり心が揺れ動くことはなかった。
伏黒はというと、あれから津美紀への意識を変えたようで綴に頭を下げて、わざわざ長期休みを利用し体術を習いに来た。
それからまた一年が過ぎ……綴は乙骨憂太と出会う。
「つーづーりー」
「鬱陶しいな。何だよ死ね」
「あー、昔は悟兄ちゃんって可愛かったのになー」
いったい何年前の話しをしているんだこの男は。
「綴はよく恵に体術教えてるじゃん?」
「そーですね」
「で、もう一人面倒を見て欲しい子がいるんだけど……」
「は?」