呪われた呪術師の走馬灯   作:千α

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28話

 死屍累々。

 そんな言葉がこの場には似合うだろう。疲れ果てた1年生を見下ろして、綴はフンと鼻を鳴らす。ちなみにマツリはその様子を見学していた。

 

「このくらいで倒れるなら、俺の相手はまだ当分出来そうにないな?」

「せんせー、お兄ちゃんたちだいじょうぶ?」

「しらん」

 

 虎杖、伏黒、釘崎に課せられた課題。それは綴から一本とること。明確なルールはなく。いつ、どこでも、奇襲でもなんでもいいとのことだ。ハンデとして綴は呪流体術や糸を使わないことにしている。

 しかし勝てない。かつて綴から一本取れたという伏黒ですら、赤子のように捻られる。

 

「おかしくない? 伏黒とか式神使ってんのよ?」

「釘崎のピコハンも避けに避けられるしな」

「式神ってビビるんだな」

 

 のろのろと起き上がり、3人は作戦会議をすることになった。このままだとどうやっても勝てない。噂によれば、2年生のなかで似たようなことをした先輩がいるそうだが、現在海外に行っていて国内にはいないそうだ。

 

「てゆーかさ伏黒、釘崎。俺の頭へこんでない? 大丈夫? めっちゃ痛いんだけど?」

「あー…逆に盛り上がってるな」

「あんた思いっきり床に投げ付けられてたもんね」

 

 虎杖に言われて伏黒と釘崎は頭を確認すると、見事なたんこぶができあがっていた。道理でさっきから頭がジンジンとしているわけだ。痛みは波のように虎杖を襲う。

 チラリと綴のほうを見れば、もうマツリに稽古を付けてやっている。

 

「………」

「どうしたの?」

 

 虎杖はその様子をジッと見ていた。

 

「え? いや、なーんか……羨ましいなーって」

 

 ツイ最近までは虎杖に付きっきりで面倒を見てくれていた綴が、あまり見てくれないとなり、虎杖はマツリに嫉妬していた。子供っぽいだの自分らしくないだの、思うことは沢山あるがもう少し構って欲しいというのが、虎杖の本音だ。

 

「手前ら、休憩にすんぞ」

「はーい」

 

 素直に返事をする1年生達だが、疲れ果てており、流石にやり過ぎたかもしれないと内心で思う。基本理不尽の塊みたいな綴だが、こういう時に申し訳ないといつ気持ちはちゃんと持ち合わせている。

 

「………虎杖、ちょっと付き合え」

 

 そうだ、飲み物でも買って来てやろう。面と向かって何が欲しいか聞けない綴は、こういうことに聡い虎杖を連れて行けば2人の欲しい飲み物がわかるだろうと、無理矢理立たせて連れて行く。

 

「頑張れ虎杖、骨は拾ってやるわ」

「多分叩かれる程度だろうから」

 

 ただ、飲み物を買ってくるなど一言も言わなかったため、3人の中では虎杖が何か不味いことをやってしまっていて、それについて叩かれるとしか思えなかった。誰も助けてくれないと悟った虎杖は渋々綴について行く。

 

 

 

────────────

 

 

 

「ほれ」

「え、何これ?」

「それで4人分の飲み物が買っとけ」

 

 綴が虎杖に渡したのは千円札だった。

 虎杖と伏黒、釘崎それからマツリの分だ。

 

「この手のことは、手前がよくわかってんだろ?」

「良いんですか?」

「良いから出してんだろうが」

 

 飲み物、というチョイスはこの場面で間違いなんだろうか?と虎杖の反応を見て焦るが、喜んで千円札を自販機に投下した虎杖を見て良かったと安心する。

 

「先輩は買わないんすか?」

「いくら残ってる?」

「えーと、460円です」

「麦茶」

 

 綴と虎杖は飲み物を分けて持つ。

 

「手前、何にやけてんだ?」

 

 ふ、と虎杖の顔を見ると、明らかにニヤけているのがわかる。なんだコイツ、と引き気味に見ていると虎杖は焦ったように「違うんです!」と叫んだ。

 

「いや、甘菜先輩って兄ちゃんみたいだなーって……」

「……世間一般の兄弟がどういう関係を築くこは知らんが、手前がそう思うならそうなんだろ」

 

 綴にとっての兄や姉は五条であったり、夏油であったり、家入であったり……とにかく綴と虎杖の関係性とはかけ離れている。綴はどうやっても弟だとかいう存在は守られてしまう、という思いがあるが、虎杖に関しては何も思わない。むしろもっと苦労して強くなっていって欲しい。守ってやるだなんてまっぴらだ。なんて思っている。

 

「綴兄ちゃん……なんつって」

「その口縫い合わせんぞ」

「すみません」

 

 虎杖からは耳しか見えなかったが、きっと綴の顔は真っ赤になっているだろう。照れている。

 

「伏黒達、喜んでくれたらいいっすね」

「いや、別にそこまでは思ってねぇよ。これは詫びだし……」

「詫び? なんで?」

「なんでって………その、今日は流石にやり過ぎた、から……」

 

 五条に乗せられたこともあり、イラついていたのを八つ当たりしていたようなものだ。自分だったらそんなことをされるのは嫌だし、それをならばどんな形でもいいから何かしらしておかなければならないだろうと、綴が思った結果だった。自分がされて嫌なことを他人にするな、と幼い頃に喧嘩っ早い綴に母親が言ってくれた。

 額を叩くのはもう、癖のようなものなので被害者達には我慢してもらうしかない。

 

 綴が用意した飲み物は初めは驚かれたが、大いに喜ばれたのでよしとする。次はチョコレートやスナック菓子などでもいいかもしれない。いや、ケーキ類の方が喜ばれるだろうか。しかし甘いものが嫌いという人もいるかもしれない。好き嫌いについては事前に聞いておくべきなのだろうが、そんなことにできない綴は悶々と考え込んでいた。

 

 

 

【数日後──】

 

 修行終わりにクッキー類やスナック菓子等を囲み疲れを癒していた綴達の元に五条がやってきた。

 

「あ、僕にも1個ちょうだい!」

「手前にくれてやる菓子なんてねぇよ。まあ、サルミアッキならある」

「なんで!?」

 

 これは虎杖と釘崎に買い出しに行ったスーパーで世界一不味い飴だと言われて、その場のノリで3人で買ったものになる。というかよくあったな。

 

「そのうちシュールストレミングとか買い出しそう」

「しゅーる……?」

「あれよ、世界一臭い魚の缶詰」

「なにそれめっちゃ面白そう」

 

 頼むからこれ以上綴に変な知識を与えないで欲しい。そう思っている五条が1番綴に変な知識を与えているのだが。

 

「で? なんの用だよ」

「用がなかったら来ちゃダメ?」

「うん」

「傷付いたー! 綴の辛辣な態度に五条先生は傷付いたー!!」

 

 用がないなら帰れよ。とため息を吐くが、本当に用があったようで五条は綴と虎杖、伏黒、釘崎を呼ぶ。

 

「突然だけど緊急で任務が入ったよ」

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