呪われた呪術師の走馬灯   作:千α

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虎杖、五条視点、かな?

虎杖と仲良くワイワイしてるだけです。
後編は五条先生とワイワイしてます。


02話

 五条と一緒にやってきたその青年の第一印象は"ヤンキー"だった。

 

甘菜綴

 

 そう名乗った彼は、色が少し抜けてきた顎下まである金髪。耳には両方合わせて5つピアスを開けており、口調は非常に荒い。オマケに首元からは背中に続くであろう刺青まで掘ってある。しかしこの高校に来て初めての先輩は、案外面倒見のいい人物であるらしく、文句を言いながらも虎杖の特訓に付き合ってくれている。

 

「隙あり!」

「ぐえっ!?」

 

 背中を床に叩きつけられた虎杖は咳き込む。

 これで、甘菜には30敗目だ。ちなみに勝てたことはない。甘菜は虎杖のことをズブの素人だと罵るが、自分は動けていると思っていた虎杖からすれば、少し納得がいかない。

 

「先輩、今日はどの映画見る?」

「……これ」

 

 納得いかないが、甘菜とはなんだかんだ言って仲が良く過ごせている。朝の特訓が終わると映画を見て、特訓して映画を見て、を繰り返す虎杖だが、同年代の甘菜との会話がココ最近では楽しみの一つだ。

 

「しっかし意外だよな、甘菜先輩映画見たことないなんて」

「キョーミなかったんだよ」

 

 そう言いながら、甘菜は虎杖から貰ったコーラを飲む。ちなみにコーラもこの間勧められて初めて飲んだらしい。見た目はヤンキーだし、口も悪い。そんな人だがどこか古風な人間だと虎杖は甘菜のことを認識していた。

 

「炭酸は骨が溶けるからって、飲ませてもらえなかった……あと単純に炭酸飲料は苦手だった」

「その迷信信じてたんだ」

「悪いかコラ」

 

 そういえば、この間はコーラを飲む甘菜を見て五条がとんでもなく驚いていたのを思い出す。あんなに戸惑った五条を見たのはアレが初めてだ。自分が何度も勧めても飲まなかったのに!と五条と、面倒臭そうな顔になった甘菜のやり取りは、今思い出しても吹き出して笑いそうになる。その他にもケーキだのチョコだのポテトチップスだの、色々と勧めようと決心した虎杖は、今日はどれにしようか悩んでいた。

 

「今日はせんべい持ってきた」

「え? 先輩が持ってきたの?」

「勧められるばっかじゃ、俺が気に食わん。たまには勧められろ」

 

 甘菜の持ってきたせんべいは、箱入りでまだ開封された形跡もない。この箱の見た目から、スーパーのせんべいではないことは確かだ。

 

「うまっ! 何これ!?」

「だろ? 茶もいれてやっから、まあ待っとけや」

 

 甘菜のせんべいとお茶は美味かった。現代っ子を物の見事に虜にしたせんべい、恐るべし。しかしこれが甘菜の1番のお勧めではないと聞いた虎杖に戦慄が走る。

 

「これより、美味しいの?」

「せんべいじゃないんだが……美味いぞ、アレは」

 

 この数日で本当にこの先輩のいろんな部分に触れてきたように思う。人は見た目だけではないのだ。

 

「そういえば、先輩のその刺青って……」

「…………」

 

 少し、空気が変わった。

 しまった、これは禁句だったのかもしれない。だが飛び出した言葉は引っ込みがつかない。この甘菜の表情を見るからに、あまり良い思いはしていないはずだ。

 

「………」

 

 甘菜に睨まれ冷や汗をかき硬直する虎杖だが、甘菜のため息により解放される。

 

「手前はよくわかんねぇ奴だな」

 

 そう言うと、甘菜は作務衣を脱ぐ。作務衣の下は腹掛けを着用しておりその背中には、いくつもの蜘蛛とその巣の刺青が彫られていた。蜘蛛と巣は一見してみると本物のようで、今にも動き出しそうなリアルさを持っていた。

 

「好きであるわけじゃない。これは…まぁ、ある意味術式だ。

 産まれた頃からこの術式があったわけじゃないんだ。これが無いと俺は生きていけねぇ。そういう身体になったってだけだ」

 

 刺青に息を呑む虎杖を見た甘菜はすぐに作務衣を着る。

 

「ビビったか?」

「いや……刺青ってやっぱり痛いの?」

 

 その言葉に、キョトンと甘菜は目を見開いて虎杖を見る。こんな反応は初めてだ。この刺青の意味を知っている者も知らない者も、初見では大抵が哀れんだり、非難の目で見てきたり…とにかく印象は良くない。

 

「痛かったぜ。それこそ死ぬかと思ったくれぇにはな」

 

 虎杖はあえて深く突っ込まなかったんだろう。そんな彼に、甘菜は感謝した。

 

 

 

────────────

 

 

 

「あれ? 綴じゃん?」

 

 こんな所で珍しいね、と五条は甘菜に話し掛ける。

 2人が今いる場所は近くのコンビニだった。甘菜は昔からこういった場所には来なかった。甘菜の家の人間達はこういった物が嫌いだったため規制されていたこともあるが、綴が特に非呪術師の人混みが嫌いだったからなのが主な理由だ。

 そのため高校生になり寮生活をしているので、いくらか規制も緩和されても甘菜は学校にある自動販売機ですら使わなかった(自動販売機を使わないのは()()()()()()())中学の時からしている金髪とピアスがせめてもの反抗だったのだろう。

 

「これ、虎杖に勧められて」

「悠仁に?」

 

 甘菜が五条に見せたのは、ポテトチップスだった。

 

「近くでなおかつ家の奴らに見つかりそうに無いっつったらここしかないなって………おい、なにニヤニヤしてんだよ、キメェぞ」

「いやー?」

 

 甘菜の性格を一言で表すなら、優しい子だろう。見た目からは想像できないが、甘菜はなんだかんだ言って最終的には人のために行動する。昔はどんな子に育ってしまうのか気掛かりだったが、今ではその心配もいらないだろう。

 

「悠仁のこと気に入ってくれてなにより」

「……伏黒といい虎杖といい…手前の考えてることはよくわかんねぇよ………あの人(・・・)以上は俺にはいねぇし、これからもできねぇからな」

「うん」

 

 例え殺されかけても、突き放されても甘菜にとって無二の存在がいる。それは五条にとっても無二の存在だった。

 

「その様子だと、あのことは言ったみたいだね」

「これが無いと(・・・)生きていけないことは言ってある」

「それがあるから(・・・・)生きていけないことも?」

 

 甘菜はそっと背中に触れる。忌々しい、という顔ではない。諦めていると言うのが正しいのだろう。どんなにかつての師に生きることを望まれても、この子は自分の生死について諦めてしまっている。

 

「……」

「綴、僕は長生きして欲しいって思っているよ」

「……それは、手前の目的のために?」

「うん」

 

 ここはもっと良いことを言う場面だろう。とジト目で五条を見て、やめた。目元が隠れているせいで、表情はよく分からない。でも五条の口元はきつく結ばれていた。

 

「手前の目的の手伝いならしてやんよ」

「協力はしてくれないんだ」

「……なら、この呪い(・・)をどうにかしてくれよ。最強なんだろ?」

 

 甘菜は諦めている。無駄だとわかっていて五条にこう言っている。まだ18歳の子供なのに、人生は普通これからなのに、甘菜はこうやって人と距離を取ろうとする。

 

「うん、何とかしてみせるさ」

「……は?」

 

 信じられないと甘菜は驚きポテトチップスの袋を落とす。

 

「………無理だ」

「それはわからない」

「無理だ。絶対に、無理に決まってる」

 

 希望を持ちたくないから否定していることはわかっている。どんなに素晴らしい呪術師でも、甘菜の呪い(・・)は祓えない。それでも五条は自身の夢のためにも、これからを担う彼ら(・・)のためにも甘菜には生きて欲しい。心からそう願っている。

 

「ちっ」

「え? 舌打ち? それは無いでしょ」

「うるせぇよ。手前のそういうとこは昔っから気に食わねぇんだよ」

 

 知ってる。

 だからこうやって五条相手につい意地を張ってしまうのだ。

 

「おい五条」

「ん?」

「このうすしおとコンソメ? どっちが美味いんだ?」

 

 急に話題が変わったことにしばらくキョトンとする五条だが、すぐにいつもの調子に戻る。

 

「……んー…僕はこっちの方が好きかな?」

「それ、チョコレートじゃねぇかよ」

 

 どうしてもポテトチップスが食べたいらしい。

 

「どうせチョコも食べたことないんでしょ? この際、色んなもの食べてみたら? あそこなら甘菜家の人の目も無いし」

「………それもそうか」

 

 うすしおとコンソメのポテトチップスを両方五条のカゴに入れると、今度は飲料コーナーへと足を進める。足取りは軽い。今までしてこなかったことをするのが楽しいようだ。

 

それでも蜘蛛は這い寄っている。




とりあえず、容姿と性格。呪いについて。
原作の話が進んだら訂正するかもしれないです。
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