呪われた呪術師の走馬灯   作:千α

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31話

 朝、3人で布団を片付けていると部屋のインターホンが鳴る。

 

「釘崎かな?」

「先輩、出てもらっても?」

「っんでだよ」

「着替えてんの先輩だけだし」

 

 悪態をつきながらも部屋の扉を開けると確かに釘崎はいた、のだがその後ろにいた綱治を見て綴は釘崎を部屋に引き入れてからすぐに扉を閉めた。

 

「おはよ、釘崎………あれ? 先輩どうかした?」

 

 綴に指を差しながら虎杖が聞く。釘崎はこの部屋へ向かう途中で綱治と出会い、何度断ってもこの部屋へ一緒に行くと聞かなかったそうだ。その結果、外から扉を何度も叩く綱治とその扉の前で硬い顔をしている綴、という図が出来上がった。

 

 

「いやぁ! 朝からすまないね。お邪魔するよ」

 

 いつまでも外にいられると周りに迷惑だということで、4人は渋々綱治を部屋の中に入れる。

 

「悪いと思うならはよ出てけや」

「ところでお茶を出してはくれないのかな?」

 

 綴がイラッとしたところで伏黒がティーパックだけを入れた湯呑みを机にダンと置く。

 

「こちら、セルフサービスです」

「あー……うんうん、わかった。綴、お湯入れて欲しいんだけど」

「なんで?」

「お兄ちゃん、綴が淹れるお茶飲みたいなーって」

 

 と言われても、電気ポットの使い方など知らない綴は思わずポットを睨みつける。

 なんだ、なんでそんなに電気ポット(手前)はボタンが多い?手前も爆発するのか?

 

「あー、はいはい、俺やるんで先輩は気にしないでいいっすよ!」

 

 綴の横からテキパキと虎杖が湯呑みにお湯を注ぐ。なんほど、これはそう使うのかと、虎杖の手元をマジマジと見つめる。

 なんだろうこの後輩3人組、心做しか機嫌が悪くないだろうか?

 

「うーん……まぁ、いいか。

 綴、早速本題に入ろうか!いやー、綴が後輩を指揮する姿なんて()()()()()()()想像できないなー!」

「甘菜先輩はめっちゃ頼りになるんスよ!」

「こっちはこっちでやっとくんで、お茶飲んだらどうぞお帰りください」

 

 虎杖、伏黒と綱治の雰囲気がギスギスしていないか?なんだこれ。何が起きているんだ?と釘崎に目線だけで訴えるが、何故かヤレヤレと首を横に振る。

 

 

「綴が後輩達に慕われてるっていう繚介の情報は本当だったみたいだね。安心したよ」

 

 綱治はお茶を飲み干すと、綴に手を振って帰っていった。パタン、という扉の音を聞いて、4人は深い深い溜息を吐いた。

 

 

 

────────────

 

 

 

 朝食はこの宿の大広間でのバイキング形式で食べることができた。

 

「あれ? 甘菜先輩は?」

「朝食はいらないんですって」

 

 それどころか単独行動をし始めた綴を今窓の人間が追いかけているところだ。

 

「しっかしなんか嫌な人だったわね」

「綱治さんのことか?」

「そうそう。そういえば、虎杖(あんた)は特に敵視してたわね」

 

 口を大きく開けて朝食を食べる虎杖に尋ねると、虎杖はうーんと腕を組み考える。

 

「……先輩の兄弟って、繚介以外は先輩のことを見る目が怖いって言うか……」

「あー、そうそれ。なんか粘着質よね」

 

 そら綴があれだけ警戒するわ……と綴の性格から考えるとすぐに分かることだった。

 

「伏黒、あんた知り合いなのよね?」

「顔を何回か見たぐらいだ」

「先輩の兄弟ってみんなあんな感じなの?」

「……まあ、度は超えてるとは思う。ことある事に兄弟全員が先輩を連れて帰ろうとするし。月イチで大量に土産送ってくるし、どうしても五条先生とは引き離したいみたいだし」

 

 うげぇと虎杖も釘崎も苦々しい顔をする。しかも連れて帰ろうとする兄弟のほとんどが綴とほぼ初対面だという事実が更に2人を戦慄させる。

 

「やぁ、何か楽しそうな話をしているね?」

 

 声をしたほうを見れば、3人は三者三様の驚きを見せる。そこにいたのは綱治だった。

 

「なんでここに!?」

「いや、私もここに泊まってるからね?」

 

 なんの疑問もなく3人が座っていた席に座ると、綱治も食事をとりはじめる。

 

「綴の話なら私も混ぜたまえよ」

「嫌です」

 

 同時に即答する3人に、綱治は苦笑いする。

 

「綴の子供の頃とか興味無い?」

 

 その言葉に釣られそうになった人物は約2名。虎杖と伏黒は知りたい気持ちと、この男からそれを聞くという屈辱の葛藤に挟まれる。

 

「何やってんのアンタら、あの人の子供の頃なんか五条先生に聞けばいいでしょ?」

「あ、そうか!」

 

 綴とは兄弟のようなものだ、と語っていた五条の言葉を思い出し、2人は何とか持ち堪えるが、その次でトドメを刺される。

 

「ちなみにこれ綴が6歳の時ね」

「え、めっちゃイメージと違う!?」

「おおい!?」

 

 まんまと一本釣りされた虎杖と伏黒。これだから男は、と額を抑え既にバイキングを満喫していた釘崎はそそくさとその場を後にする。

 

「やっぱり綴は後輩に慕われてるな。

 綴は6歳の頃に甘菜家の養子になってね。その時から綴の師匠となる男にはベッタリだったんだけど」

「え? 先輩の師匠って五条先生じゃないんですか?」

「長い期間ってならそうだけど、綴が唯一だと思っている人は五条悟ではないね。

 ……君達、本当に綴のこと何にも知らないんだね?」

 

 綱治はニヤニヤと笑いながらそう言い放った。

 

「私達としては君達なんか眼中にないんだ。あー、でも両面宿儺の受肉体には少し興味はある。

 綴はね、レアケース(・・・・・)なんだよ。だから兄様達はどうしても綴が欲しいし、私も研究してみたい。兄弟のことはなんでも知りたい。綴だけが持つ綴だけのあの術式を紐解けば、きっと我々もその恩恵に預かれるだろう。たとえ綴を犠牲にしても。甘菜の人間は甘菜の為に死ぬのが1番幸せなはずだ。

 そのためには、五条悟が邪魔なんだよね」

 

 ザワっと背中に鳥肌が立つ。やはりこの兄弟達はイカれている。兄弟のことはなんでも知りたいだと?何故?そもそもどうしてわざわざ綴もいないのにここに来た?

 

「五条悟は綴を弟分だと言うけどね、本当の兄弟にはきっと及ばないと思うんだよね。なんだかんだで綴は優しいし。

 で、先日聞き捨てならないことを虎杖君から聞いてしまったのだけど……綴がお兄ちゃんみたいだって?」

「………は?」

 

 確かに言った。しかしあれは誰もいない時の会話だ。

 

「呪力で操作出来る盗聴器ってやつだね。私は元々研究専門だから、綴の頭を弄り回した時にちょっとね。流石に呪力が不足するからしょっちゅうはできないけど、いざって時にはね……これからも改良に改良を重ねないと使い物にはならないよ。あの時はたまたま起動確認したら聞こえちゃって」

 

 つまり、何が言いたい?

 

「君達さ、目障りなんだよね。綴のことたいして何も知らないくせさ。あれはうちの財産だ。あれは甘菜の為に生きて甘菜の為に死ぬ義務がある」

 

 頭が真っ白になった心地になった。この男の、綴をまるで物扱いするその言動に。自分達に術師としての基本を教えてくれたあの人が教えてくれなかった苦悩に。

 

 

 

────────────

 

 

 

「甘菜君! 待ってくださぁい!!」

「?」

 

 今回4人の補助監督である重森は綴を呼び止める。

 

「足、速すぎますって!」

「アンタが遅いんだろ? 着いてくるんならもっとスピードあげれば?」

 

 先輩である伊地知から聞いた通り、親しい人間以外にはとことんこういった態度である。流石あの悪魔五条悟(重森の印象)の弟分だ。なんて酷いやつ。

 

「で、何か用?」

「いえ、たとえ貴方が1級術者であっても、連絡取れないと困るので……」

「なんで?」

「甘菜君、携帯電話使えないって聞きましたよ?」

 

 綴はたしかに機械を使うことが大の苦手だ。1度テレビを壊しかけてからなるべく機械には近付きなくない。

 

「…………情報収集は任せた」

「任されました!」

 

 綴と重森はお土産屋が立ち並ぶ通りを進んで行く。

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