すまん、嘘だ!!
着物着てるだけのダラダラしてる回。ダラダラするのは普段と変わらない?まあ良いではないか。
【現在・甘菜綴の部屋】
「なんか用?」
「あー、任務の後全然話せなかったから……」
綴の部屋を訪れたのは虎杖だった。
「……そういえば、東京に帰ってくるまでの記憶がねぇんだがよ、運んだのは手前か?」
体重が軽いため綴はそれをバレるわけにはいかないと、普段よりも低い声と睨みで虎杖に尋ねる。虎杖はそんな綴を見て背筋をピンと伸ばして答えた。
「五条先生です!」
「ほーん……ならいいか」
五条におんぶされて新幹線に乗ったことは黙っておこう。五条のため、何より綴のプライドのために心に決めた虎杖だった。
「ほら、入れよ」
「え、いいの?」
「あのな、せっかく来た奴を何もなしで追い出すわけねぇだろ? 茶菓子くらいは出す」
こういうところに綴の育ちの良さが垣間見られる。
綴の部屋は虎杖の部屋とほぼ間取りは一緒。しかし物が多いせいか少し狭く感じる。
「これ、全部家の人から?」
「そこら辺はな。そろそろ処分しねぇと……虎杖、欲しいもんあったら持ってけ。ついでに伏黒と釘崎、2年の連中にも欲しいもんあったら持って行っていいって伝えといてくれ」
「了解っス。相変わらず茶菓子多いっすね」
「俺は食べないって言ってんだけどな」
綴の部屋が狭い理由は甘菜家の人間からもらう茶菓子や貴金属類etc.....だった。毎回断るのだが、これくらいは受け取って、受け取ってくれないと泣くかもしれない、兄弟には伝えておくからとりあえず今日は受け取って、と言いくるめられて断りきれないのが常だ。
虎杖は綴の愚痴を聞きながら、兄弟に伝えておくとか言ってる奴は絶対に伝えてないな、と綴を同情するのと同時に綴の人が良いことを再確認した。
「緑茶飲めるか?」
「はい! 俺嫌いな物とか基本ないんで」
「ふーん……どら焼きでいっか」
綴は適当に兄弟の贈り物の中から選んだどら焼きの箱を開けて、2個皿に乗せて虎杖の前に出す。
「先輩はいらないの?」
「いらん」
「俺、最近先輩が飯食ってるとこ見ないけど、大丈夫?」
「食べてる食べてる。気にすんな」
若干棒読みになったが虎杖は納得してくれたようだ。
「あ、めっちゃ美味い!」
「ほーん、五条が狙ってただけあるな」
「え?」
なにやら聞き捨てならないことを聞いた虎杖は手を止めた。
「え、誰が狙ってたって?」
「五条だよ。誰にもやるなって言われてたけど全然来ないし、これ以上ほっとくと腐らせそう」
一応それなりの訳はあるのだが、恐らく十中八九は五条に向けた嫌がらせだろう。なんて酷い奴なんだ、巻き込まれるのは自分だというのにただただ五条への嫌がらせしか考えていない綴を今だけ恨む。
「そういえば、甘菜先輩の普段着初めて見た」
話題を変えよう。虎杖がそう思ってパッと目に付いたのが綴の着流し姿だった。
「そうだったか?」
「先輩、普段は着物なんスね」
「洋服は窮屈だ。制服だって色々と我慢している。
こういった服装で街出ると、写真一緒に撮ってくれと声かけられるし」
主に外国人観光客。そのためなるべく目立たない格好を選んでいるのだが、それがどうして上半身のみ作務衣になったかは本人しか知らない。ちなみに小、中学校は制服だったので、余計に普通の洋服を着る機会がなかった。
「大事に着れば、何年も着られる。今着ているのはお下がりだし、これで出歩くと恥ずかしいから外着にはせんがな」
「へー、他にもあんの?」
「箪笥にある。見るか?」
「見る!」
綴は着物箪笥を開けて何着か虎杖の前に並べる。
「と言っても俺の普段着は着流しがほとんどなんだがな」
「え、色々あんの?」
「袴着てるやつもいるよ。袴も見るか?」
色々出したせいですっかり部屋の踏み場が少なくなったが2人は気にしなかった。
着流しの他に、袴、作務衣、甚平、羽織に帯、襟巻まで綴は引っ張り出てきた。どれも綴が呉服屋に直接立ち寄って選んだと言うので虎杖は驚く。こういうことに綴は無頓着そうだと勝手に思っていたからだ。話を聞いていると、綴はこういったことが好きなオシャレさんらしい。
「靴はブーツとかで合わせてる」
「そこは洋物なんスね」
「草履も下駄も履くんだが……ブーツは鼻緒が切れなくていい。手入れは面倒だが、まあそれもまた良しだ。使えば使うほどいい味が出る。磨くの楽しい」
「先輩、もしかしてブーツ、革なんじゃ……?」
「……革以外のブーツとかあんのか?」
これだからボンボンは!!
叫びたいのを虎杖はぐっと堪えた。
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・
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「綴ー! お菓子食べに来た……てあれ?」
五条が綴の部屋にやって来ると、部屋中に散乱する(キチンと畳まれている)着物や帯に囲まれて虎杖が綴に着付けされているところだった。
「あ、五条先生」
「虎杖動くな」
五条に気が付いてそちらを見ようとするが、綴に言われてピシッと虎杖は固まる。
「悠仁のサイズあったの?」
「手前からのお下がりだよ」
「あー、3年前くらいにあげたやつ?」
「忘れてんのかよ」
「綴が今着てるやつは僕からのお下がりだよね」
「それは覚えてんのか」
帯を締め終わると、綴は羽織を選び始めた。
「うーん、この生地だとこれが1番合うんだが…… 俺のサイズだと袖が短くなるな……五条のは……手前のお下がり暗い色がほとんどだな!」
「えー? ならこっちで合わせたら?」
「虎杖にその色は合わん」
ダメだ会話についていけない。
「あ、絃栄さんの羽織なら……」
綴はブツブツと呟きながら着物箪笥を開ける。
「悠仁、綴に付き合ってくれてありがとう」
「え? あー、いや俺も気になってからっつーか」
五条と虎杖が話していても、綴はお構い無しに羽織を虎杖に合わせていく。五条と虎杖の会話は綴の耳には入っていないようだ。
「綴の数少ない趣味だからさ、腕は確かだ。僕も何度か綴に合わせて貰ってるし」
「え、先生も?」
「ちなみに恵も。祭りに行こう! ってなった時に、わざわざ買いに行ってさー」
その時は津美妃もいたので、女物を吟味する綴の目はとても輝いていた。曰く、女物の方が綺麗で選びがいがある、だそうだ。その時だけは津美妃とまともに会話出来ていたように感じる。
「あれからもう結構経ってるし、もしもの為に新しいやつ持ってた方がいいぞ」
「あら、聞いてたの?」
「伏黒のところから。
よし、これでいくか。虎杖、これ羽織っとけ」
ようやく決まったのか、綴は虎杖に羽織りを渡しその間に幾つか着物を片付けていく。
「流石に仕舞いっぱなしも悪いしな、着てくれるやつが近くにいて良かったよ………今度伏黒と狗巻も呼ぶか」
「先輩、これでいい?」
「おう。襟巻はこれがいいな。下駄と草履はこれかな」
ここからは綴の独断と偏見によってテキパキと決まっていく。
「あれ? 綴! 僕のどら焼きないんだけど!?」
「期限近かったから捨てた」
「えー!?」
「他の食べていいから」
文句を言う五条を軽く躱して、綴は全身鏡を出す。
「こんなもんかな? どうだ、なんかリクエストあったら聞くが?」
「うわ、凄! さっすが先輩だなー!」
「うーん……やっぱり羽織が……今度買いに行くか」
「え、俺着物もってないんだけど?」
着物を全て片付け終わった綴は、既に何箱か菓子を出している五条の前にメロンソーダ(五条用と書かれている)を湯呑みに入れて出す。
着付けが終わったというのに綴は納得が出来てないようで、ずっと唸っている。
「それやるよ。保管方法は教えるし、一式くらい持ってろ。
衣装箱あったかな?」
「先輩、本当になんでもくれるけど、いいの!?」
またゴソゴソと物置を探り始めた綴は桐でできた衣装箱を出してくる。
「あげた本人目の前にそういうことする?」
「手前のは俺には大きすぎる。全く着れないやつの手元にあるよりは着物も喜ぶ。うん、やっぱり手前がくれたやつは生地がいいな」
「こういう時だけ素直!」
虎杖から今度はテキパキと脱がせて衣装箱に入れていく。その隙に着替え直した虎杖はコソコソと五条に小声で話しかけた。
「着物って高いんだよね? いくらくらいすんの?」
「うーん、物によるけど綴の良く行くところの羽織なら、安くて7万円くらいじゃない?」
「やっぱり高い!」
「は? 何言ってんだ、俺に手前が付き合うんだから俺が買ってやるに決まってんだろ? 何を心配することがあんだ?」
どうやら会話は聞こえていたようで、綴は虎杖の頭にチョップする。
「……五条先生、俺たまに先輩の金銭感覚疑うんだけど」
「任務でお金入ってくるし、無駄に小遣いもらってるからね。何だったら家の人からの貰い物、売ってるし」
これだからボンボンは!!
「あ、そうだ釘崎がいるな。この際だ、伏黒のも選んでやるか。
おい虎杖、3人全員が休み被ったらその日空けとけよ。他2人にも言っとけ!」
この男、3人分買うつもりである。特に女物を見るのが楽しみで仕方が無いようだ。
「ま、テンション上がるとこうなるから、悠仁、
「マジで!?」
その後、五条は「酒盛り(メロンソーダ)だー」と2人を巻き込んで菓子パーティーを初め、3人物の見事に場酔いして次の日に支障をきたしたとかきたさなかったとか。どちらが真実にせよ、とにかく綴の部屋は大変な荒れようになっていたのは事実である。特に空のペットボトルと同じく空の菓子箱の残骸が。
番外編の順番決め
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初ケーキを食べる綴
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if夏油が高専からいなくならなかったら
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じゅじゅさんぽwith綴