呪われた呪術師の走馬灯   作:千α

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ギャグ回は書きやすくて好き。


会者定離⑧

「ついにこの日が来たわね!」

「めっちゃ気合い入れますね」

 

 京都校との交流戦当日、綴は尾上と共に京都校の生徒達を待っていた。

 

「当たり前でしょ。この日のためにいっぱい修行してきたんだから」

 

 そう言いながら尾上は両手を腰に当てて胸を張る。

 その姿に、あ、この先輩可愛いなと思ったところで、五条の騒々しい声で意識をそちらに引かれる。

 

「綴ー、無人島に持っていくならどんなバランスボールがいい?」

「………青木が遊べるサイズのやつ」

 

 その訳の分からない質問に綴は真面目に考えて真面目に答えた。スルーをした方が五条は面倒くさくなるので、こういったことはできるだけ答えるようにしている。

 

「それただのボールじゃん。あれでしょ? 最近買った青木と同じサイズの」

「青木にとってあれはバランスボールだ」

「前足でバランス取ってるから確かにバランスボールだけど」

「青木も爺ちゃんだからな、足腰の為にそろそろ犬用バランスボール買うか」

「今度恵にも同じ質問しよっと」

「多分めっちゃ嫌そうな顔されんぞ」

 

 もうなんの話をしているのか周りからはさっぱりだ。無人島の話をしていたはずなのに、今度は青木の話になった。と思ったらまた違う話になる。この独特の話のテンポは2人の長年の付き合いによる賜物なので深く気にしないことをオススメする。

 

「───だからさ、絶対わたあめがいいと思うんだよね」

「わたあめよりも麩菓子のほうがいい」

「なんだって、生意気なヤツめ」

 

 そんな会話が続き、そろそろ収拾がつかなくなりそうだという時に京都校の面々が到着する。

 

「あ、そうだ綴」

「なに?」

「個人戦で負けたら校舎裏な」

 

──あ、これマジなやつだ。

 

 五条が綴に多大な期待を寄せていることには気が付いているので特に何か思うところはなかったが、とりあえず負けると1から鍛え直されそうなので、今回の交流戦では少し本気を出そうと心に決める。

 

 

 

────────────

 

 

 

 弟分の様子が最近おかしい。そう感じるようになったのは医務室での一件からだ。

 五条は首を傾げるが、トンと心当たりがない。つまり自分が知らない内に何かしらあったということ。

 

「急に交流戦にも出るとか言い出すし」

 

 それまでほとんど興味もなかった交流戦に出ると言い出し、たいして仲の良くない2、3年生には歓迎されていた。というか綴と仲の良い生徒なんて同級生の青木か2年生の尾上くらいだ。噂によれば、3年生に言われて尾上が綴を交流戦に誘ったのだとか。

 それに応えるのだから、綴にとって尾上は本当に相性の良い先輩だったのだろう。

 

 そうこうしている間に団体戦が始まる。

 綴は噂の京都校1年生・東堂葵との戦闘になっていた。何か会話をした後、綴は着ていたシャツをビリビリと破り捨てた東堂から全力疾走で逃げ出していた。それまでは綴が東堂を圧倒していたので、恐らく綴と相性が悪かったようだ。

 

「綴君、変わったわね」

「でしょ? 僕の教育の賜物だよね!」

「絶対に違う」

 

 引率の庵歌姫はもちろん幼い頃の綴を知っている。夏油がいなくなり別人のようになった綴を見てこの子はいったいどうなってしまうのかと心配していた。しかもその綴の面倒をあの五条が見るだなんて。高校生になって、家入から綴が入学当日に上級生にドロップキックしたと聞いた時はそらみたことか、と頭を抱えたほどだ。

 だが、今日見た限りでは中学生の頃までのトゲトゲしさはだいぶ丸くなっているように感じる。

 

「良い先輩に会えたからってのもある。ほらあそこの小町と1回任務一緒にしただけで小町に懐いて……」

 

 ん?ちょっと待てよ?綴の様子がおかしくなったのは確か?なるほど、なんでもっと早く気が付かなかったんだろう。

 五条は綴の様子がおかしくなった理由を察してニヤニヤと1人で笑う。

 

「なに? 気持ち悪いわね」

「青春の波動を感じて」

「は?」

 

 なんで家入も七海もこんなに面白いことを教えてくれなかったんだ。楽しくなってきた五条は今すぐにでも綴を小脇に抱えて頭をグリグリと撫で回したい衝動に駆られる。

 確かに綴は尾上にだけ敬う言葉を使い、心配したり優しく接していた。尾上から貰った大嫌いな炭酸ジュースも工夫して全て飲むようにしていたし、1度尾上に綴が炭酸ジュース(というか市販のジュースは全般が苦手)が嫌いだということを伝えようとするとぶん殴られた。

 ちなみに炭酸飲料は尾上に貰った物が初めてで、あの炭酸独特のパチパチした刺激が衝撃的過ぎたらしく、炭酸が抜けないと飲む勇気が出ないらしい。

 

「それで今年は梅シロップ作らなかったのか。あれ美味しいのになー」

 

 名残惜しいがこれも綴の成長だ。もしかすると来年は作るかもしれないし、と期待も込めてみる。

 

「綴君の梅シロップなら今年も届いたけど?」

「は!? 僕貰ってないんだけど!?」

 

 新事実が発覚したところで、綴が東堂の脳天に牡丹を打ち込んで気絶させた。

 

「あとで絶対に問い詰めてやる」

 

 そんな事を言っている五条を見て溜息を吐きながら歌姫は、そういえば昔よりも()()()()()()()()()ような気がする、と綴の梅シロップの味が変わったことを五条に伝えようとするがその前に団体戦が終わりを告げ、そのタイミングを逃してしまった。

 

 

 

────────────

 

 

 

「こんな所にいたのか! 我が好敵手(ライバル)甘菜!」

「げぇ!?」

 

 団体戦後、綴は東堂に追い回されていた。

 逃げた先にいたのは尾上。綴はすぐに方向転換しようとするが、尾上に話し掛けられてしまい急ブレーキをかけてしまう。

 

「そんなに急いでどうしたの?」

「いや、その……っ」

「追いついたぞ!」

 

 前門の(尾上)後門の(東堂)

 

▽呪術師の尾上と東堂があらわれた!

▽どうする?

 ▽戦う

 ▽逃げる←

▽綴は逃げられなかった!

 

 などという幼い頃に五条に付き合わされたテレビゲームで見たような光景が見えたような気がした。1回ゲームの機械に躓いて五条に追いかけ回され、夏油が助けてくれたなーという記憶が走馬灯のように蘇ってくる。その時は新しいゲーム機を買おうという話に纏まったな。当時五条のやっていた機械は一昔前のものだそうだし。

 いや、そんなことはどうでもいいんだ。俺は今、ここから逃げたい。などと考えていると、東堂が尾上を頭からつま先までジロジロと見ているではないか。やめろ尾上をそんなふうにジロジロ見るなと目で訴えると、何故か東堂はこちらに向かって親指を立てた。

 

──任せろ(・・・)、我が好敵手よ!

 

──いや、何を?

 

 東堂は一応デリカシーのある男のようで、綴が尾上に好意を持っていることに気が付いたがそれを尾上に言うつもりはなく、むしろ綴と尾上の関係を進めたいと思った。しかし綴は東堂が何かを任せろと言っていることに気が付いたが、その詳細は全く伝わらない。ただただ困惑するだけである。

 

「えーと、東堂君だっけ?」

「そうだ」

「綴君、強かったでしょ?」

「甘菜と出会えたのは運命(デスティニー)だ!

 お前も()()()()()()()のではないか?」

 

──何を言っとるんだ手前は!?

 

──大丈夫だ、わかっているぞ!

 

 俺が言いたいことわかってねぇだろ!?頭を抱え、東堂を睨み付けるがその東堂は尾上と全く繋がらない会話をしている最中だ。

 綴は尾上に気付かれないようにジェスチャーで伝え、同じように東堂もジェスチャーで答える。わからないならジェスチャーにジェスチャーで返してくんな。

 

「うーん、まあ人との出会いは運命めいたところあるのはわかるよ?

 だから、綴君と出会えたのも運命ってやつだよね!」

 

 顔が赤くなる。やめろ東堂、そんな目で俺を見るな。なんでそんなに微笑ましそうな目でこちらを見るんだ?

 

「あ、綴ー! こんな所にいた!」

「五条?」

「なんで歌姫には梅シロップ送ったのに僕にくれないんだよ!?」

 

 またカオスなことになってきた。

 

「あ、小町と葵………? あ、あー……なるほど」

 

 この男はいったい何に対して納得したのか、おもむろに小町に話しかける。

 

「小町、綴の好きなタイプ知ってる?」

「え? 何の話?」

「なっ!? んで知って……っ?」

 

 これには東堂もビックリ。

 

「黒髪ショートで背のちっちゃい子」

「へぇ……結構具体的、綴はそんなの興味無いと思ってた」

「あとおしりの小さい子」

 

 思わず綴も東堂も叫んだ。なんで言っちゃうのコイツ、しかも好きな相手の目の前で。

 

「ちょうど小町の体系とピッタリだね!」

「……………………ふぅーん……?」

 

 終わった。なにもかも。

 尾上はそう言うと、五条を引っぱたいて(無下限で防いだが)怒りながらどこかへ行ってしまった。尾上の冷たい目が忘れられない。

 

「あれ?」

 

 キョトンとしている五条を綴は思いっきり五条を筒で殴る。

 

「いったあ!?」

「最低!! 最ッ低!!!」

「そんなことより早く追いかけろ、甘菜!」

「言われなくてもする!!」

 

 綴は走って尾上を追いかけた。

 

「あ、俺今日はもう五条とは口聞かねぇかんな」

「えー?」

 

 冗談だと思っていた言葉を本当に実行されると思っていない五条は、この時はまだ余裕だった。

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