呪われた呪術師の走馬灯   作:千α

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最近書くのが楽しくてめっちゃ投稿してしまいます。
え、大丈夫かな、これ?コイツ暇人かよって思われない???


会者定離⑭

「だぁから! 何回言わせんだよ!!」

 

 綴の容赦ない蹴りが伏黒の後頭部を襲う。外でやっているため、伏黒の服はもうドロドロだ。

 ビシビシと伏黒を指導(?)していく綴を見て、五条は微笑む。尾上が死んでからの綴の幻覚幻聴症状は治らなかったが、それでも綴がまた自ら部屋の外へ出ることがでるようになったことが嬉しかった。

 

「何度言われりゃ気が済むんだ手前は、隙が多すぎる相手をよく見ろ、そんで次を予想しろ」

「……っはい」

 

 既に伏黒は綴に30敗しているところだ。手を一切緩めない綴は、伏黒にとっても都合がよかった。この人なら最後まで鍛え抜いてくれるだろうと、伏黒は確信が持てた。

 

「綴ー、その調子で呪力操作もおねがいねー」

「ふざけんなそれは手前がやれや!」

 

 五条に言われて綴は筒を投げつける。それを避けて、五条はじゃあね〜とスキップをしそうなテンションでこの場をあとにした。

 

「……本っ当に信じらんねぇ」

 

 筒を拾い傷ができていないか確認し、綴は伏黒の前に立つ。

 

「呪力操作、手前はできるだろ?」

「基礎的なことはひと通り教えてもらいました」

「なら必要ねぇじゃん」

 

 しかし、伏黒は以前五条が言っていたことを思い出す。その時は自分には必要ないことだと気にしていなかったが……。

 

「五条先生は、甘菜先輩の呪力操作は自分に迫るものと言ってました」

「……なにそれ」

「言葉の意味そのままだと思います」

「あー、いや……そうじゃなくて」

 

 夏油と呪力操作の特訓中にかなり自信があった呪力操作をこき下ろされたことがあったので、綴は未だにそれを引きずっていたのだが、伏黒に五条がそう言っていたと聞いて混乱した。

 

「……つってもな……ここに小石が2個ある」

 

 綴はすぐ側にある小石を拾い上げる。

 

「俺の術式は知ってるな?」

「呪流術、ですよね?」

「そうだ。次、説明」

「自分の呪力を相手に流したり……流れを変えたりして攻守に利用したのが甘菜呪流体術です」

「だいぶざっくりしてるが正解。

 呪流体術には1から5までの型がある。その中で、三ノ型・松葉はその呪力操作が極限まで必要になってくる。だから(うち)で三ノ型ができる人間はそれだけ重宝される」

 

 見とけ、と伏黒に言うと手のひらに乗せた小石に呪力を流す。するとどうだ、2個あった小石のうち1つだけが砂のようになって砕けた。

 

「手のひらに乗せた小石を1つだけ残して砕く、今の俺なら手遊びでもできるが昔は散々だった。

 俺は式神なんざ使えないから、こういうことしか教えられねぇけどまあ、何かしら考えといてやるよ」

 

 伏黒は砕けた小石を見つめながら頷いた。

 

「それから戦闘時情報は大切になってくる。事前にどんな術式かもわからない敵に遭遇することもあるだろう。俺が事前に調査することがないからがしれんが……とにかく、戦闘時にわからないことがあれば死にものぐるいでそれを分析しろ。

 だが熱くなるな、冷静に、主観も客観も織り交ぜて。ただし分析したからといって戦略がわかるわけでもない。ここは経験でどうにかするしかないな」

 

 さてどうするか、と考え始める綴の横で伏黒は目を輝かせた(普段とあまり変わらない表情だが)五条はここまでの説明をしない。彼が適当だからそうなってしまうようだが、綴は違った。必要なことは全て教える。特訓中は一方的に殴られるだけだったが、要所要所でこういったことを教えてくれる。

 一方、綴は内心で教えているのが伏黒1人で良かったと感じていた。多分これが複数人になるとまともに指導なんてできない、理解力の薄い奴なんかぶん殴りたくなるだろう。伏黒でよかった、本当に良かった。

 

 

 

「ありがとうございました」

 

 予定の時間を迎えた頃、伏黒は綴の元から去ろうとする。

 

「何言ってんだ? 手前はこれから俺の任務に連れていくぞ?」

「え? 俺を、ですか?」

「基礎の次は応用だ。実戦、するだろ?」

 

 まるでいたずらっ子のような笑みを伏黒に向けて、綴は伏黒に校門に集合な、と一方的に言うと去り際に伏黒の額を叩いてから自室へ帰って行った。

 

「……急な無茶振りするところが似なくても……」

 

 伏黒は軽薄な笑みを浮かべる五条を思い浮かべながら、しかしどこか期待して、額を擦りながら手のひらに2つ小石を乗せる。

 

「……………やっぱり無理か」

 

 

「あれ? もうそんな時間?」

「この際、なんで俺の部屋に勝手に入って菓子食ってジュース飲んで布団を占領してるかは聞かない」

 

 綴は制服に着替える。しかし一切五条の方は向かなかった、向いたら負けなような気がして。

 ふと、学ランに手を伸ばしたところで綴の動きは止まった。思い出深い学ランだ。同時に辛いことをいっぱい一緒に経験してきた。ボロボロになったそれを、綴はまたクローゼットに仕舞う。

 

「綴?」

 

 その様子を見ていた五条は首を傾げる。しかし綴は何も答えず、1着の作務衣を取り出した。

 

「五条、俺もう仲間を死なせないから。だから学ランは脱ぐよ。ただの気分って感じだけど、でも俺は学生だからって理由で誰かに守られんのは御免だから」

 

 そう言って壁に掛かっていたゴーグルを取り、そのまま部屋を出て行った。

 

「………僕としては、まだ守られていて欲しいんだけどな」

 

 五条はそう呟くと、あることを思い出して部屋の扉を開ける。まだすぐそばに居た綴を五条は引き止める。

 

「行ってらっしゃい、綴」

「……うん、行ってきます」

 

 白い作務衣をはためかせながら、綴は寮を出た。

 

 

 

......................................................

 

 

 

【現在・東京都立呪術高専】

 

 

「今、なんか悪寒がしたんだが?」

「東堂辺りが噂でもしたんじゃないですか?」

「縁起でもねぇこと言うんじゃねぇぞ、真希」

 

 真希の額を叩いて綴は溜息を吐いた。

 

「もう一本するか?」

「もちろん!」

 

 綴と真希はこれで通算10本以上組手をしているが、どちらも疲れた様子が見れない。ちなみに真希は1度も勝てなかった。

 虎杖はそれに混ざりたそうにその様子を見ていた。

 

「悠仁は本当に綴のことが好きだな」

「いやー、やっぱり憧れが強くって」

 

 そう言いながら後頭部を照れたように掻きむしる虎杖を見て、五条はニンマリと笑う。

 

「そう言えば、悠仁はいつまで綴のこと名字で呼ぶわけ?」

「え? だってこの前"綴兄ちゃん"て呼んだらめっちゃ怒られたよ?」

「綴兄ちゃんって呼んだの?」

 

 そりゃ怒られるわ、とゲラゲラ笑う五条を見て、虎杖は少しムッとする。

 

「多分、兄ちゃんの部分が嫌だったんだと思うよ。綴にとって、それは大好き〜って言葉と同じだから、自分に使って欲しくないんだと思う。面と向かって大好きって言われると照れるタイプだし」

 

 なるほど?と理解出来たような、出来なかったようなそんな釈然としない気持ちになるが、ふと気が付く。

 

「じゃあ綴先輩って呼んでいいってこと!?」

「むしろ、この界隈に甘菜が多すぎるから名前で読んだ方が僕はいいと思うよ? 1回呼んでみたら?」

 

 虎杖は五条に背中を押されて勇気を振り絞って綴の名前を呼ぶ。だが小さな声だったため、聞こえなかったようだ、もう1度虎杖は大きな声を出す。

 

「綴先輩!!!」

 

 すると綴はグリンと虎杖の方へ首を向ける。睨みつけられているのは気の所為だと思いたい。

 

「っんな大声出さなくても聞こえんだよ! 耳イカれるかと思ったわ!」

 

 綴は虎杖の元へズカズカとやって来ると、そのまま額を叩いた。

 

「いったぁ!?」

「──で?」

「?」

「呼んだだろ? なんか用か?」

 

 綴は急に名前を呼ばれたというのに、そのことに怒らず、当たり前のことのように虎杖と接していた。

 

「いや……その」

「用もねぇのに呼んだとか抜かしたら叩く」

「ある! あります! 俺も、混ぜて!!」

「だから声がデカいんだよ」

 

 結局叩かれた。

 声が大きくなるのは緊張しているからだ。いろんな意味で。

 

「真希、悠仁(・・)も混ざるってよ」

 

 ん?虎杖は信じられないものを見たかのように目を丸くさせて綴を見た。真希も目を丸くさせ、五条は愉快そうに笑っている。

 真希は名字でなく名前で呼ばれることを好んでいるため、京都校の真依と被るからという理由で名前を呼んでいたが、虎杖はそうではなかった。そんな虎杖を綴は名前で呼んだのだ。

 

「……なんだ、手前ら? 鳩が豆鉄砲食らったみてぇな顔しやがって」

「な、なんでもないです! ほら、続きしましょう!」

「?」

 

 嬉しそうに笑う虎杖を見て、綴はそんなに混ざりたかったのか、と虎杖が嬉しそうにしている本当の理由に気がつくことはなかった。




そんな訳で会者定離編終わりです。
次回渋谷編、やっと書こうかとおもいます。ただ、原作でまだ渋谷編が終わっていないのと、そろそろオリジナル要素を混ぜていこうかな?と考えているので原作沿いとは違う感じになるかもしれません。ご了承ください。
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