結局、
呪術と関わってしまった人の末路は、よく知っている。それ故に、呪術と関わり始めた頃の感覚が無くなってきている。
酷い奴だと言われるだろうか。
もちろん、今回の被害者に対してある程度の感情は持ち合わせている。同情するし、許せないと思える。
しかし、だからと言って……そう、虎杖のように怒れるか、と聞かれれば「否」と答えるだろう。
なんとなくそんな自分を、誰にも知られたくなかった。
「あ、こんな所にいた」
「虎杖……」
「ナナミンが呼んでたっすよ」
本当に、なんでこんな人間に限って呪術と関わってしまうのだろう。
「わかった。直ぐに行く」
「…………甘菜先輩」
「ん?」
虎杖の横を通り過ぎ、中へ入ろうとした時虎杖は甘菜を呼び止めた。顔は見なかった。それでも、なんとなくどんな顔をしているかは予想が着いた。
このまま、見ないでいるのが正解なのか、それとも不正解なのか……積極的に後輩と関わることなんてしてこなかったから、甘菜には正解がわからない。
「俺、できるかな?」
「………」
それは初めて聞いた虎杖の弱音だった。
できるかな?
そんなこと、答えは決まっている。
「お前がいきなりできるなんて、俺はコレっぽっちも思ってねぇよ。正直戦力にも数えてねぇ」
「………そッスよね」
「……お前にできることは全力でやればいいんじゃねぇの?
それをどうにか補助するために俺がいるわけだし……つまり……あれだ……! くそっ、言葉が出てこんっ」
言葉は呪いだ。だから慎重に選ばないといけない。いけないのだが……この目の前の落ち込んだ青年を見ているとどうしようもない気持ちが湧いて出てくる。
頭をグシャグシャと掻きむしり、それから虎杖をキッと睨みつけるようにして見る。
「兎に角だ! お前が一丁前に呪術師として心構えを付けようとしているところが気に食わん!!」
「は!? へ!?」
「いいか! お前はまだまだ呪術師として何にもなっていない! やっていない!
……まだ、何も
この青年を、一人前にしてやりたいと思うのは、きっと自分勝手なんだろう。できるだけゆっくり育って欲しい。そんな思いもきっと自分勝手なんだろう。
この世界で早く成長しても、才能が溢れていようと、結局行き着く先はきっと全員碌でもない。
そんなことを考えていると、虎杖は何故か照れくさそうに頬をかいた。
「なんだ、その顔は」
「いや、先輩ってやっぱり良い人だなーって」
「は?」
目が点になった。
「甘菜先輩、俺さ……
「…………いや、本当に何言ってんだお前?」
「いや、何その有り得ないもの見る顔は!」
「待て、落ち着け虎杖、落ち着くんだ。俺が? ん? なに? なんて??」
「むしろ落ち着かないといけないのは甘菜先輩な気がしてきた」
良い人と面を向かって言われたこと……いや、伏黒から一度言われたような気もするが、あれはまぁ、置いておいてだ。
「俺が? なに? 先輩で良かった?」
「もー、甘菜先輩は変なところで自信がないな……」
とりあえず、虎杖の胸倉を掴めばいいのか?と自分よりも背の高い虎杖の胸倉を掴んで無理矢理しゃがませる。
「うるせぇ、虎杖コノヤロー」
思ったよりも何倍もドスの効いた声が出た。サッと顔色を悪くした虎杖を見て、甘菜は突き飛ばすようにして虎杖を解放する。
「あれだ。今日のこと七海さんから聞いたけどよぉ……あー…まぁ、体術の基本はできてきてるよ。逕庭拳もいい感じにできてきてんじゃねぇの?」
「……! あ、ありがとうございます!!」
「あ、でも一応確認はすっからな! 後で道場に集合だからな!!」
「はい!」
──良い先輩?
馬鹿野郎、それはこっちの台詞だ。
「俺はつくづく良い後輩に巡り会えるな……」
虎杖といい、伏黒といい……乙骨といい……。
だが、嗚呼なんてことだ。
遅れたのに文章短い。
許してヒヤシンス。