呪われた呪術師の走馬灯   作:千α

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続編の主人公が登場しています。



58話

 幼い頃子供の姿のそれ(・・)は白い蜘蛛が倒れ絶望する彼らの目の前に現れた。

 長く白い髪は顔を覆ってしまってよく見えない。身体も同様だが、服を着ているようにはみえない。

 それ(・・)は彼らに手を伸ばす。

 初めは警戒していた彼らだったが、自分達を必死に守っていた白い蜘蛛の跡から産まれたのがそれ(・・)だと気が付くと、思わずすがりついてしまった。

 

 白い蜘蛛は倒されんたじゃない。

 白い蜘蛛は自分達と同じ姿になってくれたんだ。

 私達はこの神様に守られている。

 私達はこの神様を信じている。

 

 それはこの渋谷に来ていた若者達の心の底からの信仰だった。

 

「お願いします、私達を助けてくださいっ!」

 

 誰かが必死になってそれ(・・)に頼む。

 1人が言うと次々に声が上がる。

 

「助けてください」

「死にたくない」

「お願いします」

「死ぬのは嫌」

「助けて」

「助けて!」

「死にたくないの」

「助けてください!!!」

 

 初めは状況がよく読み込めず小首を傾げていたそれ(・・)だったが、彼らが自分を畏れ敬っていることに気が付く。

 

 恐れている訳ではなく、彼らは畏れている。

 そして何より、信仰してくれているのだと感じとる。

 

 それ(・・)は両膝をついて懇願する彼らの1人の頭を撫でた。

 彼が頭をおそるおそる上げると、髪の隙間から綺麗な顔が間近に見えた。

 ニッコリと微笑んでいて、安心するようなそれ(・・)笑顔。やはりこの人は神様かなにかなのだろうと思わざるを得なかった。

 

 しかしそんな穏やかな雰囲気は長くは続かない。それ(・・)の後ろから呪霊が襲いかかってくる。

 誰かが声を掛けるよりも早く、それ(・・)は呪霊に気が付くと印を結んだ。

 その一瞬で呪霊はただの肉塊となっていた。ビチャリと生暖かい血が彼らに降り注ぐ。それ(・・)も勿論血で汚れ、それ(・・)の白い髪は真っ赤に染まる。それを気にしたのかフルフルと頭を振っていると、1人の女性がタオルをカバンから出した。

 

「わ、私が拭きます!」

 

 女性がそれ(・・)に断ってから頭を拭いてやると、それ(・・)はとても嬉しそうにしている。赤い血は拭き取られ、思わず見惚れてしまう美しい白い髪が顔を出す。

 頭を拭いていた女性の頭をそれ(・・)がお礼を言うかのように撫でる。女性は途端に涙を目に溜めた。

 

──なんて慈悲深い存在なのだろう。

──なんて美しい存在なのだろう。

 

 この時のみ、それ(・・)の姿をその場にいた全員(・・)が見えていた。

 

 

 

 

 

 髪を切る。

 服を呪力で作り出す。

 

 白い髪に白い着物。そして黄金色の瞳が爛々と輝き、渋谷を見つめている。

 

「白蜘蛛様」

 

 そう呼ばれて白蜘蛛様(それ)は微笑んだ。

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