呪われた呪術師の走馬灯   作:千α

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毎度のことですが13巻以降のネタバレ含みます。
自衛をお願いいたします。


63話

 七海を見つける前に時間は遡る。

 虎杖が気を失っているうちに、宿儺の指を計11本食わされ、宿儺が虎杖の身体を乗っ取った。

 その後渋谷にいた多くの人々を殺す記憶を思い出しながら、虎杖は意識を浮上させる。

 

 後悔と絶望、己への殺意…そして、()()()()()()()という思いに突き動かされ、虎杖は走り出す。

 

 

 俺はどうすれば良かったんだろう?

 こんな時に、綴先輩はなんて言ってくれるだろう?

 会いたい。話したい。あの時(・・・)のように、穏やかに笑って自分を受け止めて欲しい。

 

 

 思えば、そういったところを見せたのは綴くらいだった。

 額を叩く感覚を思い出し、泣きそうになる。だが虎杖はそれをグッと堪えて走る。

 

 

 

 

 

......................................................

 

 

 

 

「そういえば、1回死んだんだよな?」

 

 ある日、綴は虎杖にそう尋ねてきた。

 それは綴と初めて出会ってからまだ数日しか経たない頃である。

 

「何で生き返ったのかは、さっぱりなんスよね。

 五条先生は俺と宿儺が条件とか契約?とか持ちかけられたんじゃないか、とか言ってたけど」

「なんだ、呪いの王とか呼ばれてるクセに都合の悪いことは記憶から消すのか」

 

 度々綴は宿儺に喧嘩を売るようなことを言ってみせていた。

 正直見ててハラハラするのだが、不思議なことに宿儺は綴に直接干渉しようとはしなかった。

 宿儺が綴に興味が無い、というわけではないはずだ。

 なぜなら修行中、特に体術では宿儺は綴の動きを観察しているように感じていたからだ。

 あの五条が、綴の体術に1目置いてるのだから宿儺もそうなのかもしれない、と虎杖は考える。

 

「それはない」

 

 しかし綴はバッサリと虎杖の言葉を切った。

 

「え? なんで?」

「なんでって……」

 

 綴の中にいる子蜘蛛は1000年前から生きている。

 その始祖の蜘蛛も今代の子蜘蛛の母親も、宿儺と戦闘をしたと記録されている。

 実際はそういうものではないが、確かに始祖の蜘蛛は宿儺と交流したことがあるようだ。その記憶が、ぼんやりとではあるが綴も見ることができていた。

 その時の宿儺を思い出すが、宿儺がただの体術に興味を抱くだなんて想像もできない。

 それを直接言えない綴は言い淀む。

 

「……なんとなく」

「えー…」

 

 納得していないようではあるが、虎杖はそれ以上の追求をやめる。

 この頃の綴と虎杖はそこまでの信頼関係を築けてはいなかった。

 あまり踏み込んで欲しくない、というオーラを出しまくっているように見えて、いくら虎杖でも、どこまで接すればいいのかわからず少々困っていた部分もあった。

 そもそも、虎杖に修行をつける手筈となっていた五条がここにいないのは、少し虎杖にとっては不服である。

 虎杖のそんな気持ちをわかっているのか、綴も虎杖に対して深く踏み込もうとはしなかった。そりゃ、修行をつける、と言った相手がほとんど他人に任せていたら嫌な気でも起こすものだろう。

 

 だが、それでは駄目だ。

 長年呪術師を見てきたからこそ、今の虎杖は非常に危険な状態であると確信することができた。

 このままでは虎杖は死ぬ。あまりにも弱くて頼りない存在だと綴は思っていた。

 当たり前だ、この間までは呪霊も見えない、呪力も扱えないような一般人だったのだから。

 

「死ぬのは、怖かったか?」

「え?」

 

 虎杖は綴の問いについて考える。

 

「そりゃ、まあ……あの時は痛いし、辛いし……死にたく、なかったよ。

 っつーかなに、いきなり?」

 

 また叩かれるかもしれない、呪術師になるのに、そんなものは必要ない、とかそんなふうに言われるのだろうか。虎杖は警戒しながら綴に聞き返す。

 

「……俺も、最初は怖かった。

 初めて呪霊に襲われて、死にそうになった。記憶もあんまり残ってねぇガキの頃だけど、それだけ強烈な出来事だった」

 

 しかし、返ってきたのは予想外の答えだった。

 

「その後も、なんで俺が? とか、あの時あれをしていれば、とかそんなことばっかり考えてたよ 。

 でもそれでいい」

 

 綴は堂々と胸を張る。

 

「そうやって俺達、呪術師って言う生き物は強くならないといけない」

 

 まるで虎杖を試すかのように綴はジッと見つめる。

 

「甘菜先輩はさ」

 

 顔を俯かせて長考していた虎杖は、顔を上げて綴を見つめ返す。

 

「正しい死が、なんだかわかる?」

「正しい死?」

 

 虎杖の求めるそれを綴に問い掛ける。

 今度は綴が長考を始める。

 正しい死、それいったいどういう意味かはよくわからない。綴にとっての死とは正しいも正しくないもわからない。

 

「なんでそんなこと聞くか知らんが……」

 

 それでも綴は答えを求める後輩の為に口を開いた。

 

「正しい死、というものは俺にもよくわからん。

 お前にとっての正しい死と、おれにとっての正しい死は違うからな」

 

 同じ人間でないのだから、同じ思想を持っているわけではないのだ。それを綴は虎杖にまず伝える。

 その後、綴はできるだけ虎杖が納得できるよう言葉を選んで、自分にとっての死というものを話していく。

 

「俺にとっての正しい死は……誰かが悲しんでくれることだと思う」

「……誰かが、悲しんでくれる?」

「そうだ」

 

 綴は頷く。きっと虎杖のために考えた答えなのだろう。

 

 誰かが悲しんでくれる、ということはそれだけ惜しまれる人間である、ということ。きっとそれには犯罪を犯した者もいるだろう。無残な死を遂げたものもいるはずだ。でも、そうでも考えないと……。

 

「だって辛いじゃないか、死んだ後に誰の中にも自分が残らないなんて」

 

 綴は、死に近いところにいる。

 どれだけ願っても綴の中にある呪いによる死へのカウントダウンは止まらない。

 誰かの記憶の中に残りたいと、強く思っているわけではない。それはその人の勝手だ。

 もしかするとすぐに忘れられてしまうかもしれない。そもそも死を喜ぶ人間の方が多いはずだ。

 でも、せめて五条を筆頭とする彼らの中に甘菜綴という人間の記憶が残ってくれたらと思ってしまう。

 

「……うん、それは、悲しいっすね」

「ま、思いすぎるとその感情自体が呪いに転じる可能性もあるんだが」

「ダメじゃん!」

「だから、俺達がいるんだろうが」




改めまして、呪術廻戦アニメ化おめでとうございます!!!
呪術高専の時からずっと大好きな作品が、こうしてアニメになって動くだなんて、本当に嬉しいです。
芥見先生の益々の発展と健康を願っております。
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