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先日、55話から書いていた暗号を解読した方がいると聞き驚きました。そこまでやっていただき、ありがとうございます!
当意即妙
「学校、行きたくない」
なんてことを甘菜家の人間にすると、たちまち取り囲まれて事情聴取されるから下手に言えないけれど。
甘菜綴、現在小学2年生は布団の中にうずくまって目覚まし時計が鳴るのを待つ。
そもそも綴は非呪術師のことが大嫌いだ。
そんな非呪術師の巣窟である学校など、行きたくないに決まっている。
「あー、嫌だなぁ……」
目覚ましが鳴る音を聞いて、綴はため息を吐いた。
「綴君、おはよー!」
小学校につくと、クラスメイトの女の子に囲まれる。
綴はクラスメイトの中で1番の早生まれなためか、弟扱いされることが多い。
女子生徒は特に多く、何かと綴に構うのだ。
「おはよ」
控え目に返事を返すと、女子生徒達は黄色い声を上げる。
そんな綴のことが気に食わないのが男子生徒であった。
綴は初め、男子生徒と遊ぶことが多かったがいつの間にか女子生徒達に囲まれていた。
「綴君は私達と遊ぶの!」
と1人の女子生徒が言ってからこの状態が続いている。
正直に言おう。勘弁してくれ。
綴は非呪術師が嫌いだ。
クラスメイトと仲良くしているのだって、夏油に仲良くするように言われているからだ。
言われてなかったら今頃小学校を登校拒否して高専に入り浸っている。
「ねぇ、綴君お休みの日どこ行ってたの?」
「東京でね、お兄ちゃんに会いに行ってた」
嫌悪を隠してニッコリ笑うと、彼女達は「いいなー」と口を揃えて言う。
同時に何故か「可愛い」と口々に言われるのだから、納得が出来ない。目標は夏油のようにかっこよくなることだからだ。
綴の扱いは、動物園にいるパンダと変わらない。東京へよく行くことも、ただ珍しいからだろう。
そんな綴に、男子生徒はある言葉を投げかける。
それは綴への嫉妬や憧れなどが入り交じった言葉だ。本気で言ったわけではなく、本当にただのやっかみだった。
しかし、綴はその言葉が頭から離れなかった。
女子生徒達は男子生徒の言葉に怒ると、綴の手を取って男子生徒から引き離した。
その時の彼の顔が少しショックを受けていたのは気の所為だろうか。
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「綴ー! 綴が大好きな悟兄ちゃんだよ!」
「なんでここに!?」
「任務で近くまで来たから。ちなみに傑はいない」
「えー……」
「露骨に嫌そうな顔すんな」
その日の放課後、いつものように女子生徒達に囲まれながら下校しようとしていると、校門に五条が待ち構えていた。
急に現れた五条を見て、女子生徒達はきゃあきゃあと黄色い声を発している。
「さて、今日は時間あるから一緒に遊びに行こう」
「でも、家の人に言わないと……」
「大丈夫大丈夫、俺が許可貰ってるからさ!」
といっても半ば無理矢理なのだが……今頃五条から電話を受けた使用人は甘菜家の人間に圧を掛けられガクガク震えている頃だろう。
「いいの!?」
「もっちろーん! 俺が嘘ついたことあった?」
「めっちゃある。けどうれしい!」
綴は女子生徒と別れると、五条と一緒に帰路へつく。
その時、綴にあの言葉を投げてきた男子生徒と目が合ってしまう。すぐに目を逸らされ、彼は走って行ってしまうが、綴は五条と繋いだ手をそっと離す。
「………あのさ、さと………
「は?」
そう呼ぶと五条は立ち止まってしまった。
「い、今なんて言った……?」
「………五条さん」
「まさかまた甘菜のヤツらになんか言われた!?」
まるで天変地異の前触れだと言わんばかりの慌てっぷりに綴は苦笑する。
「ちがうよ」
「じゃあ、何があったんだよ」
「兄ちゃんって言うの
「誰だよそんなこと言った奴。ちょっととっ捕まえてくる」
「やめてよ、五条さんがやると色々と目立つから」
綴が夏油に、同級生達と仲良くするように言われているのは五条も知っていた。
個人的には綴は非呪術師のことが嫌いなのだから無理矢理馴染ませなくても、と思っているのだが、夏油曰く「それで日常生活に支障が出たらどうする?」とのことだ。
五条がそういう世界で生まれ育ち、夏油は非呪術師の親から産まれているからこその意見の不一致だ。
しかし、綴の師は五条ではなく夏油だ。五条が口出しをするようなことではない。(それで露骨に綴が傷付くなら話は別だが)
「まさか、傑のことも……!?」
「これからは、夏油さんって呼ぶ」
やめてやれ、絶対しばらく現実世界に帰って来れなくなるやつだから。
「だって、傑兄ちゃ………夏油さん、師匠だし、いつまでも子供みたいに呼んでたらだめ、じゃない?」
「俺はそのまんまでいいと思うけど?
というか今頃そんな他人みたいに呼ばれるのは絶対嫌!」
「でも……恥ずかしいもん」
多感な時期、にしてはだいぶ早いが人に何かを言われてそれを気にしてしまうようになった綴を見て、成長を感じた。
この間までは夏油や五条、家入のように身近にいる存在の言葉を盲目的に信用するような子供だったのに……綴はいつの間にか、他人の存在も気にするようになったのだ。
──ま、いっか……多分すぐに戻るだろうし。
────────────
「…………」
「まあ、元気出せよ」
あれから数ヶ月後、東京へ遊びに来ていた綴は未だに呼び方を変えなかった。
むしろ馴染んでしまっているような気さえする。
五条は落ち込む夏油を慰めるが効果はない。
「任務が忙しいせいで数ヶ月会えなかった弟子兼弟分が突然他人行儀になった時の気持ちがお前にわかるか?」
「ノンブレス早口がここまで怖いとは」
夏油と綴の出会いを五条は知らない。夏油がまだ高専に入学する前からの出会いだ、ということ以外は何も。
そんな夏油だからこそショックは五条よりも数段大きいもののようで、しばらく頭を抱えていた。
「悟はね、いつかそんな日が来るだろうとは思ってたんだ」
「おい、傑おいこら」
「でも、私までそんな……そんなふうに………悟ならまだしも。悟なら、有り得たけど」
「え、何これ殴っていいやつ?」
綴は校庭で高専生にもらった竹とんぼで遊んでいる。
上手く飛ばず、あれ?と首を傾げる姿が癒されるが、そんな気分も吹き飛ぶくらい2人の呼び方の改名は衝撃的だった。
「誰だ、綴にそんなこと言った奴、ちょっととっ捕まえてくる」
「思考が俺とまんまだけど、綴に止められるからやめといた方がいいよ」
ちなみに言ったのは綴の同級生であることを夏油に伝えると、なるほど、と苦笑いした。
「ちょっとは馴染もうとしている気があったことを喜べばいいのか、人の言葉を真に受ける性格を嘆けばいいのか……そこが可愛いところなんだけど」
「そういえば、自動販売機は爆発するって教えたら信じたぞ」
「なんでその時任務だったんだろう」
上手く竹とんぼを飛ばすことができた綴が嬉しそうに夏油と五条に手を振った。
「今度リング見せようぜ」
「それ綴がテレビ見れなくなるやつだろ、せめて呪怨にしてやれ」
そんな恐ろしい会話をしているとはつゆ知らず、綴はまた竹とんぼを飛ばす。
「ま、呼び方は多分直ぐに戻るって」
「悟は綴の頑固さを知らないからそう言えるんだよ」
「え、綴は素直じゃん」
「1度こうと決めたら曲がらないよ。それ以外は素直」
ひとり遊びに飽きたのか、綴が夏油と五条の元に走ってくる。
夏油は手を広げて綴を待ち構えると、綴の目が輝きすっぽりと夏油の腕の中に収まる。
「夏油さん、この竹とんぼめっちゃ飛ぶよ!」
「そうか、良かったな綴」
竹とんぼを持って自慢する綴を肩車してやると、綴はケラケラと笑う。
「今から飛ばすから五条さん取ってきて」
「俺にそんなことさせんの綴だけだぞ」
先日、メッセージにて綴がいてもいなくてもいいんじゃないか?二次創作の意味ある?という質問がありました。
もしかすると他の読者も同じことを考えている方もいるかと思います。
それが正解です。そうなるように書いています。
その辺も続編で解明する予定です。
できるかな、伏線回収。
伏線回収を綺麗にするのが苦手なので、補足があればまた後書きでお知らせします。
続編について
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このまま続きで書く
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新しい小説として書く
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そんなことより復讐劇の続き書けや
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すじこ