じゃあデッキ見せてね。賭けデュエルを申し込んだのはそっちだし……ふんふん成る程。
「お、俺のデッキに何するんだ!」
「「 し、師匠? 」」
何もしないってば。
ふーん。ミニマミーたちは展開重視な効果なんだね。それに『ミニマミー・クリーニング』の効果も面白い。
一度再度召喚したモンスターを通常モンスターにすることでまた再度召喚できるようにする効果。
……あぁ、だから『弱肉一色』が入ってるのか。通常モンスター扱いのレベル2モンスターたちが並ぶから。
となると僕のサイレントデッキはかなり相性が悪かったんだね。逆転の手段が魔法カードだし。
はい、返すね。
「っ!? ……と、取らないの?」
小動物のようにデッキを奪い返した男の子は、驚いたように聞いてくる。
けど、え、なんで? ……あぁ、そういえば君僕のカードを取るとかいってデュエル仕掛けてきたんだったね。
じゃあ……カキカキ……と。あ、ちょっと長くなるから。
うーん、まあこんな感じかな。一枚目を見せる。
『ミニマミーは君のデッキだから、ぼくが使うべきじゃない。』
「……」
二枚目。
『だけどかけデュエルは良くないからし、ストーカーもどうかと思うよ。』
「うっ……」
か、書き間違えは気にしないで! 三枚目!
『君のデッキはステータスが低いけど展開力があるからスピリットバリアみたいなダメージを受けなくするカードを入れるといいよ』
でも『スピリット・バリア』って地味に見つからないんだよね。『アストラル・バリア』はそこそこ見つかるのに……。
「……」
なんで目をぱちくりしてるの? ……ま、いっか。今が何時だか分からないけど、お昼食べてない……し……。
僕、岡部さんたちの所出たの、12時少し過ぎたぐらいじゃ無かったっけ……? 普通小学校って、お昼の給食の後に掃除してお昼休みがあって―――
キーン……ーンコーン
遠くから鐘の鳴る音。多分、多分だけど、小学校の午後の授業始まりじゃないっけ……?
「げっ授業!」
「「 忘れてたぁっ! 」」
三人は慌てて走り出していく。……二人は転びそうになりながら走ってて、ちょっと怖かった。
それにしても、学校かぁ。そもそも自分の年齢さえ分からないけど、実際どうなってるんだろ。僕は多分中学生なんだと思うけど……うーん。一人で考えてても仕方ないし戻ろうかな。
僕は警察署の近くの寮に
といっても部屋に居ることはほとんどない。荷物もないしやることも無いし。服は買ってもらってるから、本当に寝泊まりするだけの場所だ。
ご飯は寮の食堂で作ってもらえる。ただ、お風呂がなぁ。シャワーだけなのはなぁ。今度おこづかいで温泉行こうかな。近くにあればいいんだけど。
ってそうじゃなくて。僕も勉強したーいって警察さんに伝えなきゃ。それか水砂さん。
こんこん、お仕事中失礼しまーす! あ、お客様? 取り込み中……邪魔だったかな?
「ん? 岡部、この子は?」
「あぁ、この間保護した迷子だ。色々手を広げて親を探しているんだが全く成果があがらなくてな」
「ほう」
緑と黒の雲模様の服を着た男の人は、僕をまじまじと見てくる。
警察さんとは違う怖さだ。なんていうか……ごつくないのに、大きく見える。
「迷子か。しかし何処かで……」
凄いじろじろ見てくる。僕の全部を見通そうとしてきて怖い。
「なんだ、心当たりがあるのか?」
「いや……この子供は見たことがない。ない、筈なのだが」
うむむと唸る男の人。熊の前にいるみたいだな、とか考えながら、僕はあらかじめ書いておいた紙を警察さんにわたす。
「うん? ……勉強したいのか」
そうだよと頷く。
「うーむ。なら明日にでもテストするか。今の学力を知らなければならないからな」
うえ、テスト!? ならやっぱりいいかな……なんちゃって。
ガターンッ
うわっ! なにっ!?
見たら男の人が立ち上がっていた。さっきの音は椅子が倒れた音だった。
「お、おいどうした急に立ち上がって。この子が怯えてしま―――」
「お前、デッキは?」
男の人は僕を睨み付けてくる。な、なんで怒ってるの……?
とにかくデッキを見せなきゃ殴られそうだから、全部見せる。
「……四つもあるのか? ふむ……これは『サイレント』。 そして、こっちは『破壊剣』か。気のせいだったか……っ、『メタファイズ』……そして罠デッキ―――ウリアか」
そうだったぁ! ど、どどうしよう、怒られる! 謝る準備を!
「おい、岡部。今日……いや、明日この子を借りるぞ」
「はぁ? 構わないが、何をするんだ?」
あれ、ウリアについてはスルー? っていうか警察さんそこはもっと構ってよ!
「ただの確認だ。この子はあいつの使っていたカードに……そっくりなんだ」
「なに?」
え? カードにそっくり?
『ミニマミー』
低レベルのデュアルモンスターたちのカテゴリー。
デュアル状態を戻すというトリッキーな魔法により通常モンスター専用のサポートを受けられる