一人一つの性格《カテゴリー》   作:yourphone

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強さとは孤高なり

 ガタガタと 車に揺られて 何処へ行く

僕   

 

 いやほんとどこに向かってるの? なんか山を登ってるみたいだけど。

 ゴツくて四角い車を運転してるのはあの怖い男の人。小野寺さんって言うらしい。自衛隊なんだって。

 車の中だと文字を書けなくて僕は何故か喋れないから、車の中は沈黙で包まれている。

 

 ―――気まずっ! 気まずいよ! もっと親しくしたいよ!

 なんかたまに睨んでくるし。でなくてもずっと何か考え込んでるし。

 そう言えば僕の事カードに似てるとか言ってたな……。そのせいかな? どんなカードに似てるんだろう。

 

「着いたぞ」

 

 やっと着いたー! ……何ここ。荒野? 森を抜けてきたみたいだけど。

 黄色と黒のロープと進入禁止って看板があるけど?

 

「ここは……昔とある大罪人が死んだ場所だ」

 

 ひえっ!? なんて所に連れてくるのさ! ゆ、幽霊とかで、でないよね?

 出たとしてもデュエルでどうにかできるよね!?

 

「……何も感じないか?」

 

 え、んー? 特に何も……。と首をふった途端にぐるるるー、と。

 

「む、獣か? おいこっちだ!」

 

 小野寺さんに車の中に放り込まれた。力の差が酷い……抵抗出来なかったよ。で、でもね。そのー、あのー。

 そしてまたぐるるるー、と音がする。

 

 僕のお腹から。

 

「車の中からだと? ……あ。……す、すまん」

 

 ぎゃー! 恥ずかしいー! お腹すいてるんだよお昼食べてないんだよ緊張しっぱなしだったんだよー!

 

「そうだな、仕方ない。先に飯とするか……といっても携帯食とカロリーサモンしかないが」

 

 カロリーサモン? 僕はメェプル味がいいな。ピョコレート味も可。でもご飯って感じじゃないか……。

 携帯食ってどんなのだろう?

 

「ツナマヨとイクラがある」

 

 おにぎり……あの、その、思ってたのと違う! 普通!

 もっとこう缶詰めとかパックとか出てくるのかと思ったよ!?

 まぁイクラを貰おうかな……。

 

「……」

 

 もぐもぐと食べる。お喋りは無いけど、こうしてるとなんだか親戚のおじいちゃんと二人でこっそりお出かけしてるみたい。……実際は大分違うんだけど。

 小野寺さんはノーマル味のカロリーサモンをむしゃむしゃ食べてた。ノーマル味ってたしか水砂さんが、カロリーの塊な上に味なしだから絶対に食べちゃだめって言ってたやつ……。

 

「よし行くか。本当は岡部を待ちたい所だが……ここで日が暮れるのは不味いしな」

 

 カロリーサモンを一箱食べ終え(一箱四本入り)、そう声をかけてくる。

 えーと、警察さん待とうよ。なんか仕事で忙しくて後から来るって言ってたけど。

 

「行くぞ。……さて、鬼が出るか蛇が出るか」

 

 聞こえてるからね。そんな危険な所なのかなぁ……。そうだ。

 

大ざい人って何ですか?

「ん? 岡部から聞いてないのか。そうか……ならこの際だ、話しておこう」

 

 そして森の中を歩きながら語られたのは、とある男の復讐劇だった。

 

 

 

 

 

 

 まず、世界は一枚のカードから作り出されたらしい。カードの裏表に六つずつ、計十二の世界。その表側の世界の一つにその男は産まれた。

 男は孤児だった。貧乏故にろくに食事も取れず、勉学を学ぶ事も出来ず、周囲から見下されて育った。

 それでも必死に生き、足掻き、カードを集めた。そうして出来たデッキは決して勝率がいいとは言えなかったが男にとってかけがえのないものだった。

 そのデッキが心無い者たちに破り捨てられた時、一つのカテゴリーが生み出された。

 世界を憎み、怨み、妬むそのカテゴリーを持って男はその世界を滅ぼした。しかしそのカテゴリーの怒りは鎮まらなかった。

 世界を一つ滅ぼす程度では止まらないカテゴリーは数々の世界を攻撃し、この世界―――つまり僕たちの住むこの世界へとやってきた。

 

 

「―――そのカテゴリーの名前は『DOD』、使い手の男は、天野地草(あまの ちぐさ)という」

 

 あ ま の 、ち ぐ さ …… 。

 

 なんでだろう、聞いたことがある気がする。でも警察さんにも水砂さんにも勿論あの双子にだってこんな、話、は……。

 

「奴とのデュエルではダメージが実体化し、奴に倒された者は……今も、意識不明の重態だ」

 

ん、そう。……って、あれ? 普段ならもっとこうええぇぇ~!? って反応するのに。

あーもうっ、自分が自分じゃないみたい!

 

そうもやもやしてたら、突然目の前が開けた。森を抜けたんだろう。その先には何も無かった。

いや、正確には荒野が広がっていた。けどここは山の筈だしそれも上の方だし……。

 

「……ここは奴が最期を迎えた爆心地だ。もう少し歩くぞ」

 

 爆心地って、天野さんって爆散でもしたの? あー、でもダメージが実体化するって事は爆弾使うモンスターでも使われたのかな。アリジバクとかダイナマイトガイとかDDB(ダーク・ダイブ・ボンバー)とか。

 

「ここだ。ここで奴は倒された」

 

 ……えぇと……なんかある。あるっていうか、裂けてる……あ、これ、次元の裂け目だ! 次元が裂けてるよ!?

 いいの? こんなの放置して!

 

「……何も感じない、か?」

 

 感じるも何もヤバイのがあるんですけど! ……ん? なんか裂け目の中で何かがキラッと光った。あ、また。

 んー、取った方が良いのかな? でも次元の裂け目に手を突っ込みたくないよ?

 

「そうか……お前なら何か分かるかと思ったんだがな。例えば、『DOD』のデッキの場所とかな」

 

 それって天野さんを倒したのに『DOD』デッキがどっかいったって事? じゃあ、もしかしたらあの次元の裂け目の中で光ってるのは『DOD』?

 そうだよとでも言うように光が瞬く。そっかぁ。……覚悟を決めて手を突っ込む。ちょうど小野寺さんは周りを見回してる。

 

 つめたっ! あつぅっ! いたたたたっ!? ぎゃっ、舐められた! うわああっ引っ張らないでよ!

 

 ―――な、なんとかデッキを取り出せた。うわぁ手が真っ赤。ビリビリしてる。

 こっそりデッキをポケットに入れて手をさすってると、次元の裂け目がゆっくりと閉じていった。やっぱり天野さんが仕組んだんだろうね。

 んー、でもなんで僕はその仕組みに気付けたんだろう。

 

「っ! これは……この感覚は、『DOD』!」

 

 えっ、小野寺さんなんで気付いたの!? い、いやまだ僕が原因だとは気付いてない筈!

 

「何処だ……ん? ……お前、来るときは、ポケットに何も入ってなかったよな?」

 

 んんんんっ!? 目敏い! 自衛隊じゃなくて探偵になりなよ! 無駄かもしれないけどぶんぶんと首を振ってみる。

 

「おい、出せ」

 

 ひえっ、こわ! やっぱり駄目だったよ首ぶんぶん。

 ……渋々とデッキを差し出す。じゃなきゃ殺されそうだったし。

 

「……」

 

 大丈夫大丈夫、ちょっと仕組んだから。あれは―――

 

「……『ウリア』デッキか」

 

 そう! ポケットに入れたデッキは元から持ってたデッキだ!

 ふっふっふっ、デュエルディスクのデッキとすり替えたのには気付けまい!

 

「ならその旧式のデュエルディスクに入っているデッキはなんだ?」

 

 な ん で さ !

 なんでそんな目敏いんだよ! むしろ気持ち悪いよ!

 ここは逃げる! ……のは無理だから、あれだ! デュエルディスクを構える。

 

「……デュエルで確かめろ、と? 良いだろう」

 

 よーしこの世界の人たちはデュエルを拒まないからね!

 

「デュエル!」

 

 僕の先攻! ……んー? 『DOD』が居ない。いやまあ隠したいから良いんだけど。

 

「『闇の誘惑』」

 

 二枚ドロー! 『バトルフェーダー』を除外。

 

「『闇の誘惑』」

 

 二枚目! 二枚ドロー! ……『異次元の偵察機』を除外する。

 

「……『闇の誘惑』」

 

 三枚目ぇ! 二枚ドロー! うっそでしょ!? 『バトルフェーダー』を除外!

 

「『チキンレース』」

 

 ライフを1000払い一枚ドロー!

 

「セット、セット、セット。『カードカー・D』」

 

 効果で……リリースして……二枚ドロー!

 

「ターンエンド」

 

 『カードカー・D』の効果で『異次元の偵察機』は特殊召喚出来ない。

 ……っていうか『DOD』来ないんだけど!? なんでぇ!? あれ、もしかして『DOD』ってカードの種類少ない?

 

「……違うのか? まあいい。俺のターン、ドロー!」

 

 そう言えばどうして小野寺さんは天野さんとか『DOD』に詳しいんだろう。僕、未だに別の世界とか信じられないんだけど。でも警察さんが信頼してたし頭がイカれてるヤバい人じゃない筈。

 

「まずは『炎舞―「天キ」』を発動する! 発動時にデッキから獣戦士族である『ウルフソロジャー』をサーチする」

 

 

『ウルフソロジャー』

 レベル4 風属性 獣戦士族

 ATK 1800 DFE 1600

 自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、このモンスターの元々の攻撃力は半分となり①の効果を発動出来ない。

 ①このカードが守備表示モンスターを攻撃するダメージ計算前に発動できる。その相手モンスターを破壊しこのモンスターに装備する。このモンスターの攻撃力はこの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

 

「そして『キャットソロジャー』を通常召喚」

 

 

『キャットソロジャー』

 レベル3 炎属性 獣族

 ATK 1100 DFE 200

 このカード名の②の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 ①このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキから『ソロジャー』カード1枚を手札に加える。

 ②自分フィールドに他のモンスターが存在しない場合に発動できる。デッキからレベル4『ソロジャー』モンスター1体を特殊召喚し、このカードを攻撃力1100アップの装備カードとしてそのモンスターに装備する。

 

 

 現れたのは青紫の体毛の猫。二足歩行してるし眼帯してるし鎧着けてるしで可愛くはない。

 

「『キャットソロジャー』の効果発動! デッキから装備魔法『ソロジャーアーマー』を手札に加える!」

 

 

『ソロジャーアーマー』

 装備魔法

 このカードは自分フィールド上のモンスターが1体のみの場合にのみ発動できる。

 ①装備モンスターは効果では破壊されない。

 ②このカードが墓地へ送られた場合に発動できる。手札・デッキから『ソロジャー』モンスター1体を特殊召喚し、このカードを装備する。

 

 

「俺のフィールドのモンスターは『キャットソロジャー』のみ。よって『キャットソロジャー』の効果発動! デッキから『グリズリソロジャー』を特殊召喚しこのモンスターを装備させる!」

 

 

『グリズリソロジャー』

 レベル4 地属性 獣戦士族

 ATK 1400 DFE 2000

 自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、このモンスターの元々の攻撃力は半分となり①の効果を発動出来ない。

 ①1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。手札からレベル4以下のモンスター1体をこのモンスターに装備する。このモンスターの攻撃力はこの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

 

 猫がニ゛ャーと鳴くと何処からか熊が出てきた。こちらもまた眼帯を着けている。猫は腰に下げていたレイピアを熊に渡して地面の中へともぐっていった。……猫って地面掘るんだっけ?

 ちなみに熊は茶色のでっかいハンマーを背負ってる。レイピアが場違いだ。

 

「俺のフィールドには『グリズリソロジャー』のみ。よって効果発動! 手札の『ウルフソロジャー』を装備させる! 更に『ソロジャーアーマー』を装備!」

 

 おぉ、もう三枚もカードを装備してる! 武器はハンマーとレイピアに加えて短剣が宙に浮いている。

 それに(まばゆ)い光を放つ真っ白な鎧も合わさって、凄く強そう。

 

「『チキンレース』の効果でライフを1000払い……自壊させよう。バトル! 『グリズリソロジャー』でダイレクトアタック! 攻撃力は4400だ!」

 

 いっ!? それはダメ!

 

「『バトルフェーダー』」

「ふん、だろうな」

 

 ガッコンと鐘を鳴らしながら悪魔が現れる。取り敢えず、(しの)いだ。

 っていうか攻撃力4000オーバー!? 怖すぎるよ!

 

「カードを一枚セットしターンエンドだ」

 

 伏せ一枚か……。こっちの伏せ三枚は全部『デモンズ・チェーン』。相手の効果がよく分からなかったし『バトルフェーダー』を特殊召喚したかったから使わなかったけど……使った方が良かったかな?

 

「ドロー」

 

 っ、来た『DOD』! なになに……えー? んー。

 

「メイン。セット、『カードカー・D』」

「またドローか。エグゾディアでも揃えるのか?」

 

 だったらもっとドローしてるよ! リリースして、二枚ドロー!

 

「ターンエンド」

 

 ふんふん。ようやく『DOD』が来るようになったね。まだ動けないけど。

 

「俺のターン、ドロー! ならば攻めるのみ! まずはセットカード、『メタバース』! デッキからフィールド魔法、『強者の頂き』を発動!」

 

 

『強者の頂き』

 フィールド魔法

 ①このカードが存在する限り、自分フィールドの『ソロジャー』モンスターは相手ターンにも効果を発動できる。

 ②1ターンに1度、墓地の『ソロジャー』カード3枚を対象として発動できる。対象のカードをデッキに戻しシャッフルする。その後、デッキからカードを1枚ドローする。

 

 

 うわわ、荒野に山が出てきた! 熊が頂上で吼えると威圧感が襲ってくる。ぐぐぐ……っていうか小野寺さんも山の上に居るし!

 

「そして装備魔法、『ソロジャークロー』を『グリズリソロジャー』に装備!」

 

 

『ソロジャークロー』

 装備魔法

 『ソロジャー』モンスターにのみ装備可能。

 ①装備モンスターの攻撃力は300アップし、守備表示モンスターを攻撃した時に攻撃力が守備力を越えていた場合その分の戦闘ダメージを相手に与える。

 ②このカードが墓地へ送られた場合に発動する。このカードを自分フィールド上のモンスターに装備させるかデッキの一番上に戻す。

 

 

「これで攻撃力は4700、守備貫通、効果破壊耐性!」

 

 ちょっ、嘘でしょ!?

 

「バトル! やれ『グリズリソロジャー』!」

「『デモンズ・チェーン』」

 

 四つもの武器と長い鉤爪で襲いかかってくる熊に向けて鎖が発射される。

 一瞬でがんじがらめにされた熊はそれでも闘志を消さずに僕を睨んでる。こわっ!

 

「む……だが効果破壊耐性と守備貫通、攻撃力300アップは消えない。攻撃力は1700にまで下がってしまうがな」

 

 攻撃力1700なら、なんとかなる!

 

「残念だが魔法・罠ゾーンは埋まっている。ターンエンドだ」

「ドロー」

 

 さーてどうしようか。やっと『DOD』が動けそう。……動かして良いのかなぁ。出来れば隠したいんだけどなぁ。いやでも、負けたらどっちにしろデッキ取られると思う。

 

 なら動くしかないね!

 

「『DOD―ブラックタイガー』。『デモンズ・チェーン』をリリースし特殊召喚」

「やはり『DOD』だったか!」

 

 

『DOD―ブラックタイガー』

 レベル5 闇属性 悪魔族

 ATK 1200 DFE 1600

 このカード名の②の方法での特殊召喚は1ターンに1度しかできない。

 ①このモンスターはリリース無しで通常召喚できる。その場合、このモンスターはレベル4、水属性、水族となる。

 ②このカードは自分フィールド上の表側の罠カード1枚を墓地へ送る事で特殊召喚できる。この方法で特殊召喚したこのモンスターはチューナーとして扱う。

 

 

 熊に巻き付いていた鎖が崩れ、真っ黒な影で出来た虎が現れる。……エビじゃないの?

 まぁ、『デモンズ・チェーン』はまだ二枚あるから恐れず進め!

 

「この効果で特殊召喚したブラックタイガーはチューナーとなる。『DOD―ヨウシトラ』召喚」

 

 

『DOD―ヨウシトラ』

 レベル5 闇属性 悪魔族 ペンデュラム

 ATK1800 DFE1000 ◇9

 《1ターンに1度フィールド上に表側で存在する魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを持ち主のデッキに戻す》

 ①このモンスターはリリース無しで通常召喚できる。その場合、このモンスターはレベル4、地属性、獣族として扱う。

 

 

 出てきたのは牛。普通の、白黒の、牛。……虎じゃないの?

 

「リリース無しの召喚の場合、レベルは4となり地属性、獣族として扱う。

 レベル4、『DOD―ヨウシトラ』にレベル5チューナー、『DOD―ブラックタイガー』をチューニング」

「来るか、黒きシンクロ!」

 

 牛と虎が星となり、重なる。合計9個の星が空に開いた裂け目に突入する。

 

「集いし星が重なりあうも、無味乾燥の終局を迎える。闇満ちる道となれ!」

 

 キイィィィィ―――

 

 遠くからかすかに聴こえるのはジェット音。徐々に徐々に、僕の体を、魂を、揺らしていく。

 

 ―――イィィィィイイイッ

 

「シンクロ召喚! 逃避せよ、『DOD―Star(スター) Dust(ダスト)』!」

 

 

 直後、裂け目から何かが()()()()()

 どす黒い紫の体表は光の反射を抑えているのかどこかざらついた印象を受ける。

 翼はボロボロだが飛行機のジェットのようなものが付いており、そこからは黒い炎が見えている。

 四つん這いの格好で尻尾を地面に叩き付け、それは吼えた。

 

 キイィィィィアァァァッッッ!

 

 

『DOD―Star Dust』

 レベル9 闇属性 ドラゴン族 シンクロ

 ATK 2500 DFE 1200

 『DOD』チューナー1体+『DOD』モンスター1体

 ①このカードが墓地へ送られる場合、エンドフェイズまでゲームから除外される。

 ②このモンスターは相手にダイレクトアタックできる。この効果を適用したバトルフェイズ終了時、このモンスターはエンドフェイズまで除外される。

 

 

 

「くっ……シンクロ次元の災いの象徴、絶望のあまり闇に堕ちた『スターダスト・ドラゴン』……」

 

 僕よりも『DOD』の事知ってるの、ちょっとムカつく。

 でもそっか、『スターダスト・ドラゴン』か。確かに黒い『スターダスト・ドラゴン』みたいにも見えるね。地に這いつくばってるけど。

 

「バトル。『DOD―StarDust』で攻撃」

 

 ブオォォ、ォォ…ボフッ………ブウゥゥウゥ……

 

 僕のその宣言と供にStar Dustがジェットの噴射を始める。

 更に四肢の位置を調整して、小野寺さんに襲いかかる体勢を整える。

 

「だが『デモンズ・チェーン』が外れた事により『グリズリソロジャー』の攻撃力は4700に戻っている!」

「『DOD―Star Dust』は相手にダイレクトアタックできる」

「ぐっ」

 

 バチィッと派手な音とともにStar Dustの前の次元が裂ける。

 

「ダッシュ・アウト・ディメンション」

 

 ふ、風圧が凄い……! 行くなら速く行って倒れる!

 そんな思いが通じたのか、唐突にStar Dustの姿が消える。消えた?

 

 キイィィィィ―――

 

 あ、でも例のジェット音が聞こえてくる。徐々に徐々に音が大きくなっていく。

 

 ―――イィィィィイイイッ

 

 あれ、僕の後ろから音が……!?

 

「」

 

 本能に従って地面に倒れこむ。そんな僕の上空すれすれを、Star Dustは音速(マッハ)で通過した。

 

「うおぉっ、『ピッグソロジャー』!」

 

 ちらっと小野寺さんの方を見ると、オークが小野寺さんの代わりにStar Dustの突撃を喰らって弾けてた。うへぇ、グロい。

 

 

『ピッグソロジャー』

 レベル3 地属性 獣族

 ATK 1000 DFE 0

 このカード名の①の効果は1ターンに1度しか発動できない。

 ①手札のこのカードを捨てて発動できる。このターンに受けるダメージを1度だけ0にする。

 ②自分フィールド上の『ソロジャー』モンスターが破壊される場合、代わりに墓地のこのカードを除外する事ができる。

 

 

 

 それにしても2500ダメージぐらい受けてくれてもいいのに。立ち上がって服についた土を払う。

 

「……『DOD―Star Dust』が自身の効果でダイレクトアタックした場合、エンドフェイズまで除外される」

 

 いつの間にかStar Dustは次元の彼方へと飛び去っていった。静かになったなぁ。どうせすぐに戻ってくるけど。

 

「セット、エンドフェイズ。ディペンド・アワー・ディメンション」

 

 僕の上空に次元の裂け目が現れる。……ねぇまって真上はやめてよ!

 思わず腕で顔を覆ったけどそれが正解だったみたい。また暴風で吹き飛ばされるところだったから。

 もう! ギリギリ砂が目とか口とかに入るのは防げたけどさ!

 

 さて、これで手札全部使っちゃった。伏せは『デモンズ・チェーン』二枚に『DOD』が二枚。フィールドにはStar Dust。……と、『バトルフェーダー』。

 

「ちぃ、ドロー! まずはバトルだ! 『グリズリソロジャー』よ、『バトルフェーダー』を破壊せよ!」

「『デモンズ・チェーン』」

 

 貫通付与されてたよね? だから動くのは駄目!

 

「ならばメイン2! 『ライオソロジャー』通常召喚!」

 

 

『ライオソロジャー』

 レベル4 炎属性 獣戦士族

 ATK 1700 DFE 200

 自分フィールド上に他のモンスターが存在する場合、このモンスターの元々の攻撃力は半分となり①の効果を発動出来ない。

 ①1ターンに1度、このモンスターより攻撃力の低いモンスター1体を対象として発動できる。その相手モンスターを破壊しこのモンスターに装備する。このモンスターの攻撃力はこの効果で装備したモンスターの元々の攻撃力分アップする。

 

 

 再び鎖に縛られた熊の横にライオンが立つ。ライオンは熊を笑い、熊はグルルと唸っている。……なんか、仲悪いの?

 

「俺の『ソロジャー』たちは孤高のモンスター。故にフィールド上に一人で居なければ本来の力は発動できない……だが、それだけが俺のデッキの戦い方だと思うな! 俺は2体のモンスターでエクシーズ召喚! 『恐牙狼(きょうがろう) ダイヤウルフ』!」

 

 うわ、綺麗。山の頂上で遠吠えをあげる美しい狼。……Star Dust? まだジェットは吹かさなくていいよ?

 

「そして墓地へ送られた『ソロジャークロー』の強制効果、そして『ソロジャーアーマー』の任意効果を発動!

 『ソロジャーアーマー』によりデッキから現れよ『ライオソロジャー』! そのまま『ソロジャーアーマー』を装備!

 その後墓地から『ソロジャークロー』を『ライオソロジャー』に装備! この効果は処理時にデッキの上に戻すか装備させるか選べる効果だ!」

 

 うわ、またライオンが出てきた。鎧に鉤爪も着けてる……けど忌々しげにダイヤウルフを睨んでる。でもどうせすぐに消えるんでしょ?

 

「一気に行くぞ! ダイヤウルフの効果! エクシーズ素材を取り除き、自身とStar Dustを破壊だ!」

「『デモンズ・チェーン』」

「それは読んでいる! チェーンし、『ダブル・サイクロン』! 『炎舞―「天キ」』と今発動された『デモンズ・チェーン』を破壊!」

 

 うげぇ、そこまでしてくるの? いいの? だったらこっちも容赦しないよ!

 

「相手の魔法カード発動時、『DOD―Protect』は発動可能」

「くっ……」

「『DOD―Protect』が存在する限りフィールドの全ての永続魔法・永続罠は破壊されない。効果も同時使用。セットカードは『DOD―Not』のみ」

 

 

『DOD―Protect』

 永続罠

 このカードは相手が魔法カードを発動した時にのみ発動できる。

 ①このカードが表側で存在する限り、フィールドに表側で存在する全ての永続魔法・永続罠カードは効果で破壊されない。

 ②1ターンに1度発動できる。フィールドにセットされた魔法・罠カードを全て確認する。その中に永続魔法・永続罠カードがあった場合表側にする。それ以外は元に戻す。

 

 

 まず僕の『DOD―Not』が表側になる。そして『DOD―Protect』によって永続魔法と永続罠を対象にしていた『ダブル・サイクロン』はどちらも破壊出来ない。

 よって破壊を免れた『デモンズ・チェーン』によって『恐牙狼 ダイヤウルフ』は効果を無効化される!

 小野寺さんが自分で言っていたように『ソロジャー』モンスターたちは他のモンスターが居ると効果を発動できない……。これは僕の勝ちじゃない? ほら、流石の小野寺さんも困ってるし。

 

「ぐ……まだ終わっていない! 『強者の頂き』の効果を発動! 墓地の『グリズリソロジャー』、『キャットソロジャー』、『ピッグソロジャー』の三枚をデッキに戻し、一枚ドロー!」

 

 これで小野寺さんの手札は二枚。『ライオソロジャー』に『デモンズ・チェーン』がかかってないのがちょっと怖いけど、『DOD―Not』があるからまだ安心できる。

 

 

『DOD―Not』

 永続罠

 このカードは相手がフィールド上でモンスターの効果を発動した時にのみ発動できる。

 ①このカードが表側で存在する限り、フィールド上のモンスターは効果を発動できない。

 ②このカードと自分フィールド上の他の永続罠カード1枚を墓地へ送って発動出来る。デッキからカードを2枚ドローする。

 

 

「『烏合無象』を発動! ダイヤウルフをリリースし、同じ獣族である『マスター・オブ・OZ』を特殊召喚!」

 

 ん? 何してるの? このでかいボクサーコアラは確かに攻撃力は破格だけど、もう攻撃出来ないしエンドフェイズに破壊されちゃうし……あっ。

 

「エンドフェイズ、『烏合無象』の効果により『マスター・オブ・OZ』は破壊される。すまない!」

 

 だけどこれで小野寺さんのフィールドは『ソロジャー』モンスターのみっていう形になった。自分のカードを破壊するっていうデメリットを受け入れてでも『ソロジャー』の舞台にする……カッコいいよ、そういうの。

 

 もう遅いってとこに目をつぶればね!

 

「ドロー」

 

 うーん、今は必要ないかな。このまま攻撃して終わり!

 

「バトル」

 

 ブオォォ…ボフッ……ボフッ…ブウゥゥウゥ……ボフッ……

 

 待ってましたとばかりにStar Dustがジェット噴射を始める。……始められてないよ? 大丈夫? エンジン点火に手間取ってるけど攻撃できるよね?

 

「『DOD―Star Dust』で攻撃。ダッシュ・アウト―――」

 

「待て! そこまでだ!」

 

 ん? この声、警察さん?




Star Dustの効果を調整。6/20

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