地下大墳墓のクレリック   作:中村信宏
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34話:ナザリック少女戦隊完成の巻

「……はあ、面倒な事にならないと良いのですが」

 

フィレアナとアルシェは店を閉め、屋敷への帰路へについた。気が重くなったフィレアナを見て不思議に思ったアルシェが、何があったのかと尋ねて来る。

 

「あの、何があったのですか?たぶん、あの騎士の事ですよね?」

「アルシェちゃんなら…もういいかな?実は、この国の戦士長であるガゼフという人物を助けた事があるんです。敵はスレイン法国の特殊部隊でして、それを壊滅寸前にまで追い込みました。その際、第十位階魔法と超位魔法を使いまして…それで、驚かれたんです。どうあがいても死ぬしかないと思われる状況を単独でひっくり返しちゃいましたので……」

「ああ、なんとなくわかりました。今なら私もわかりますけど、世の中は広いですよね……」

 

フィレアナとアルシェは世間話をしながら街の通りを歩いていた。その最中に嫌な気配を感じた二人は顔を見合わながら頷き、何かを確認し合う。屋敷に戻る前に少し迂回して、人通りの少なさそうな街道へ移動した。視界がそこそこ開けた所に来ると、二人揃って立ち止まった。すると、前と後ろから、口を布で覆った目立たない色の動きやすそうな服を着た男が二人ずつ現れた。

 

「前と後ろにそれぞれ二人ですか。アルシェちゃん、後ろは任せますね」

「はい」

 

男達は無言で短剣を取り出し、体を屈めて四人同時に襲い掛かって来た。手には金属の球の様な物を持っている。恐らく何らかの飛び道具だ。明らかにその手の暗器を使う後ろ暗い集団だというのが見て取れる。アルシェも手元に用意していた万一の護身用の短剣を手に取り応戦した。彼ら以上に素早く動き、相手の脇に出ると、蹴りを食らわせ壁に吹き飛ばし、魔法の矢(マジック・アロー)の追撃を出し命中させる。その男はくぐもった声を出して動きが止まった。もう一方の男は短剣で左腕を突き刺し怯ませた後、アルシェはすかさず脚を蹴り上げた。

蹴り上げた脚は男の股間に命中し、蹴られた男から変な声が漏れた。男にとってそこを攻撃されるのは地獄の痛みである。その男は武器から手を離し、両手で股間を抑えながら地面に倒れ、その場で悶絶した。

 

アルシェの育成が上手く行った結果をフィレアナは満足そうに眺めていた。自分に襲いかかろうとしている男達には目もくれない。この自分達を舐め切っているとしか思えない様子を見た男達は怒ったらしく、毒らしき物を塗った短剣をフィレアナに向けて斬り付けようと振りかぶった。

フィレアナはその短剣を右手と左手で握り締めて両方止める。レベル六十未満の攻撃は無意味の為、ダメージは全く無い。

これを見た男達は驚愕する。短剣を素手で受け止める有り得ない行動を目にしたためだ。しかも、切り傷すらつかないのはあまりに異常だ。普通なら傷が付いた場所から毒が流れ、自分達の勝利が確定している。彼らが驚いている間にフィレアナは男達の両手首に手を伸ばし、手首をひっくり返らせて、彼らの胴体に向けて腕を押し込んだ。その結果、彼らは自分の短剣に塗った毒を、自らの手で味わう事になってしまう。

 

「「うぐっ!?」」

 

彼らは短剣を突き刺せられたために、呻き声をあげた。どうやら短剣についている毒は即効性らしい。すぐに傷口から毒が回り、彼らの動きが鈍くなってくる。

 

「さて、尋問といきましょうか。どうせ、余罪で死罪辺りは確定でしょうし…では……急所をやられた彼がいいでしょうか」

 

フィレアナは股間を蹴り上げられた男に近づく。

 

支配(ドミネート)をかけて洗脳したら…さて、大治癒(ヒール)

 

回復魔法と精神の洗脳魔法をアルシェに襲いかかって来た暗殺者にかけた。これを使えば、一々尋問の手間が省ける。

 

「では質問です。貴方達は八本指の一員ですね?」

「そうだ」

 

目の前の男は素直に答えた。

 

「では、続きです。貴方は私達を捕まえて取引の材料にしようとした。あるいは、見せしめに殺そうとした。そうですね?」

「そうだ。ただ、後者は間違いだ。俺達はそんなに優しくはない」

 

どうやら、自分の想像は正しいらしい。しかし後半の意味がよくわからない。殺そうとしたのが優しくないという意味があまりピンとこない。普通に考えたら、殺さないのが優しいのが間違いだ。あまりいい予感はしないが、今の言葉の意味を聞いてみた。

 

「優しくない?殺すのが優しいとはどういう事です?」

「お前達は見た目が良いから殺すのは惜しい。娼婦として使い倒した後、病気にでもなったら捨てて、野垂れ死にでもさせる」

 

想像以上にひどい理由だった。隣にいたアルシェも顔を歪め怒っている。八本指は王国の暗部と言える組織とは聞いていたが、これは確かにその通りだと納得する。以前の自分なら放置でもするかと考えていただろうが、本当にそれでいいのかと考え直した。しかし、よく考てみれば今日アインズ達が人間姿でこの都にやって来る。どうせすぐ壊滅するのだし、彼らと相対したら死ぬのは確定だ。面倒なので、彼の処分は王国に任せる事にした。

 

「貴方、これから王国の騎士団の元へ行き、自首してきなさい」

「わかった」

「それで、彼らはどうしますか?」

 

アルシェの言葉で、そこら辺で倒れている男達を見る。個人的には更生の機会を持たせてあげたいのだが、彼らは余罪が多すぎるだろう。これで助けたとしても、公正な裁きを受けた結果死ぬ事は避けられないと思われる。そこで、彼らにも支配(ドミネート)をかける。そして、命令を下した。

 

「貴方達も王国の騎士団の元へ行き、自首してきなさい」

「はい」

 

意識のある男がその場でそう答えた。これで良しと判断したアルシェとフィレアナは屋敷へ向かって歩き出す。なお、フィレアナの命令が遂行される事はなかった。彼らは何者かによって、闇の空間に放り込まれたからだ。男達が四人も追加された事で、その空間の主は大喜びする。

 

「この調子で我輩の眷属たちの餌が増えると、とても嬉しいですね。では、殺しても問題ないとの事ですし、美味しく頂きましょう」

 

その言葉を合図に、人間にある穴という穴にゴキブリが侵入を開始した。恐怖公は一日で五人も眷属の餌を得られた事でご満悦である。暗殺者達の人生は、ゴキブリの餌となる事で終焉を迎えた。

 

 

 

 

「ただいま戻りました~」

「あら、お帰りなさい」

 

帰って来たフィレアナとアルシェにやや遠くからソリュシャンが帰って来た自分達に挨拶をした。屋敷の中へ入って廊下へ行くと、壁を拭いているソリュシャンの姿を見た。壁には、血の跡が有る事に気づく。

 

「あれ……もしかして、屋敷にも何か来たのですか?」

「屋敷にも?ああ、そちらにも行ったのね。私達に勝てる訳ないでしょうに。あの、ツアレとかいう人間を誘拐するつもりだったみたいね。それじゃあ、後で貴女も手伝ってくれる?今夜ヘロヘロ様達が八本指を討伐して、この屋敷に戻ってくるから、その前にしっかり屋敷を綺麗にしておきたいのよ」

 

そう言って、ソリュシャンは屋敷の掃除を再開した。レベル100の強さを持つ化け物屋敷に入り込んだ愚か者がいたらしい。セバスとソリュシャンに勝てる猛者がこの国にいるとは思えない。ご愁傷様としか言いようがない。フィレアナ達の会話に気づいたのか、セバスが扉を開けて廊下に出て来た。

 

「おや、フィレアナ様、お疲れ様です」

「セバスさん、お疲れ様です」

 

セバスが帰って来た自分達に挨拶をした。

 

「フィレアナ様、帰って来たばかりで申し訳ないのですが、少しお話があります。こちらの客室へ来ていただけますか?」

「えっ、はい。アルシェちゃん、先に部屋に戻っててね?」

 

セバスは奥の客室へ指を差し、客室へ向かって歩き出した。フィレアナもアルシェに部屋に戻って欲しいと何処となく伝えておく。聞かれるとまずい話かもしれないためだ。セバスの後ろに続いて、客室の中に入る。部屋の中央にある窓側のソファーに彼は座っており、自分は対面側に座った。

 

「ヘロヘロ様から話は聞きました。デミウルゴスの提案で、この王都の建物を破壊し、場合によっては人も死ぬと」

「……そうなんです」

「その事で貴女を意見を聞きたいのです。貴女は厳密には私達の組織の者ではない。貴女は、これをどう思われますか?」

 

私達の組織ではないどころか、本当は至高の御方である。とりあえず、フィレアナは今回の計画に対しての個人的な意見を言う事にした。

 

「デミウルゴスさんの提案がナザリックにとって有益に働くというのはわかります。ただ、あの自作自演の計画の為に死ぬ必要の無い方達が巻き添えで死んでしまうのは……賛同できません」

 

フィレアナは本心からそう答えた。今の彼女は基本的には異形種である竜人なので、人間に対しての同族意識はさほど無い。しかし、自分達の悪事の結果、死ぬ必要が無い者達が大量に死ぬとなると、話は別だ。何とかして助けたい。

 

「私もです。アインズ様は、もし死人が出たら貴女に蘇生魔法を使わせて可能な限り助ける事になっているとの事でしたが……」

「それが、ちょっと問題があるんです。実は、低位の蘇生魔法だと戦士として能力の優れた方でないと、魔法の力に耐えきれなくて灰になってしまうんです。ですから、一般人の方が死ぬと、真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)を使わないと駄目なんです。ですから、もし一般人の死人が多いと、蘇生しきる事が……」

 

セバスはフィレアナが下手をすると第九位階の魔法を乱発する必要がある言っている事を理解した。そんなのは不可能である。彼女の力は相当なものだとセバスも理解しているが、仮に一般人に大量の死者が出た場合、全員に真なる蘇生(トゥルー・リザレクション)を使える訳がない。魔力切れを起こすのが関の山だ。

 

「そうなると、死者を何とか抑える事が重要だと?」

「そうなんです。デミウルゴスさんも死人を出しすぎると客が減るので、死者は可能な限り抑えるとは言っていましたが……」

「そう都合よくはいかないでしょうな。どうしても悪魔に立ち向かう人間は出るでしょうし、事故に巻き込まれる者も出るでしょう」

「何より、広範囲に広がる悪魔達に対応できるかと言うと……」

 

セバスとフィレアナは意見が一致する。どうやって犠牲者を減らそうかと話し合いを始めていた。

 

(どうしようかなあ……悪人になっちゃったアインズさんを説得して、防衛要員を増やす手段は一応思いついてあるんだけど……)

 

フィレアナの脳内で浮かんだのは、アルシェの魔法少女の姿だ。アインズから後から話をされたのだが、シャルティアがあの服を着たいと言い出したそうだ。シャルティアに衣装を渡したところ、彼女は満足そうにそれを着ていたと言う。

 

続けてフィレアナが思いついたのは、プレアデスの面々を全員防衛に参加させる事だ。自分が我慢してアルシェが着ているあの魔法少女の衣装を着て、活躍したいと願い出るのである。つまり、魔法少女姿の美少女、美女で五人戦隊を組むのだ。シャルティアが嬉しそうにあの衣装を着ていたという話があるから、フィレアナ、アルシェ、シャルティア、ナーベラル、ルプスレギナの五人で部隊を組むのである。ルプスレギナには犬耳があるが、カチューシャを付ければ可愛く着飾っていると誤魔化せると思う。

 

シズにはセーラー服っぽい衣装を着させて、銃を持って活躍させたいと言ったら、これもまた賛同される気がする。彼女自体の力はそこまで大した事はないのだが、いかんせん武器が強力すぎる。重火器がいかに便利で強力なのかは、リアルの世界で思い知っている。

 

ユリはチャイナドレス姿だ。確か、そういったネタ装備もあった気がする。もしあるなら、ぺロロンチーノの私有物に絶対あるはずだ。あのエロバードマンが持ってないはずがない。恐らく、ナザリックの宝物庫にある。

 

ソリュシャンの衣装が思いつかなかったのは、彼女の服がヘロヘロが用意した代物だからだ。彼女にとってメイド服は最高の衣装であり、簡単に着替えるとは思わなかったのである。戦うメイドというのも、ヘロヘロからしてみれば100点満点だろう。

 

さて、もしアインズやヘロヘロに、今あげた面々を連れてきてこの衣装を着て戦ったら駄目でしょうか、と聞いたらこの意見に悪乗りして賛同すると確信していた。自分も男の時だったら、面白がって賛同は間違い無しである。衣装を着るNPC達も、もし至高の御方の装備を下賜されるとなったら、彼女らが歓喜する事は間違いない。魔法少女の知識もないから、喜ぶ事間違いなしだ。

彼女達には、無駄な犠牲が増えると後々商会の商品を買う人間が減るので、犠牲を抑えろと命令を出したら断らずに動く…と思いたい。

 

この計画があまりに上手く行きすぎる様子が手に取るようにわかり、少し俯きながら右手で額の辺りを抑えてしまった。セバスはその様子を見て「どうすれば犠牲者を減らせるのか悩んでいるのでしょうか」と誤解をしてしまっていた。確かに犠牲者を減らす手段を考えていたのだが、今フィレアナが悩んでいるのは、羞恥心と人の命を天秤にかけて、どちらを優先させるかという葛藤である。

 

悩んだ結果、フィレアナの脳内の天秤の皿は羞恥心の皿が軽くなり、人の命を載せた皿が重くなった。こんなバカな事は今回だけだと我慢する事にしたのである。そうと決めたフィレアナは、メッセージをアインズに送る事にした。

 

「セバスさん、少し待って頂けますか?」

「ええ、構いませんが」

 

セバスに待ってもらえる事を確認すると、フィレアナは頭に指を当て、アインズにメッセージを送る。

 

『アインズ様、聞こえていますか?今、よろしいですか?』

『なんだ、フィレアナか。どうした?』

 

どうやら今は大丈夫らしい。フィレアナは、恥ずかしさを我慢して、ある提案をした。

 

『あの、アルシェちゃんの装備ですが、色が違う物が有りましたよね?あれ、五人分ありませんか?あれをルプスレギナとナーベラルに着せて、ついでにシャルティアも呼んでください。私もあれを着るんで、五人で戦隊を組みます。あと、シズにセーラー服っぽいのを着せられませんか?最後に、ユリにチャイナドレス。確かユグドラシルの装備でありましたよね?ソリュシャンはメイド服で戦うメイドさん。エントマには、屋敷にいるとある人物の護衛をお願いしたいのです。それで、王都の人々を防衛。駄目でしょうか?』

『……なんだと?』

 

アインズがメッセージを送った先でフィレアナの提案を推考し始めた。アインズの脳内で魔法少女姿の少女達が戦隊を組んでいる姿すぐに浮かぶ。そして、シズが銃を持ったセーラー服姿のオマケつきだ。ユリがチャイナドレスである。すぐ結論が出たらしく、嬉しそうな声で快諾された。

 

『よし、少し時間があるから、装備を取って来よう。ナーベラル達には例の時になったら説明する。シャルティアとプレアデスの面々を全員連れて来よう』

『ありがとうございます』

 

アインズは一瞬にして餌に食い付いてしまった。

 

(ええい、あの骨!絶対悪乗りしやがるな!!即決かよ!!)

 

今のアインズに性欲なんてないだろうが、魔法少女姿の一団が活躍する面白そうな光景が浮かんで、一発で釣られたのだろう。

シズ、ユリ、ソリュシャンの衣装は違うが、美女、美少女が可愛い姿で戦う姿を思い浮かべ、面白いと思った事は確定である。フィレアナはセバスに向き合って、釣りが上手くいったと報告した。

 

「セバスさん、アインズ様にお願いして、プレアデスの全員を王都の人々の防衛に参加させる事のお許しを得ました。それと、シャルティアちゃんもです。これで、なんとかなるかと思いますよ」

「プレアデスの面々はともかく、シャルティアもですか!?それならば、なんとかなるかもしれませんが……しかし、よくわからない言葉が混じっていたのですが、どういう意味でしょう?」

「セバスさん、わからなくていいですよ……」

 

我ながら言いすぎたかもしれないと思い、天井を見上げて遠い目をした。その様子を見て何かがあるのだろうと察したセバスは、これ以上追及するのを止めた。

 

「では、セバスさんもその時になったらお手伝いをお願いできますか?」

「もちろんです」

「では、私は部屋へ戻りますので」

 

フィレアナは立ち上がり、部屋の外へ出た。廊下に出て奥を見ると、ソリュシャンを手伝うアルシェの姿が見える。こちらも話が終わったので、ソリュシャンに手伝うと話しかけた。元々そういう約束である。

 

「あの、ソリュシャンさん、話が終わったので、私も手伝います」

「それじゃあ、一階の廊下は任せようかしら。はいこれ、廊下の掃除はよろしくね。あの奥はまだ何もしてないから、あちらをよろしく」

 

ソリュシャンはモップを手渡した。フィレアナはソリュシャンの指差した方向へ行き、モップを持って、掃除を始めた。

 

(……今夜は、地獄だ)

 

自分で招いた事とは言え、気を重くしながら掃除を続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、夜になるとプレアデスの面々が屋敷の客間に勢揃いした。その中には、シャルティアもいる。

 

「久しぶりね、ソリュシャン」

 

赤いチャイナドレスに着替えたユリが、ソリュシャンを労った。チャイナドレスの構造上、ユリの大きな胸でドレスが持ち上げられ、その巨乳が非常に目立っている。しかも、スリットから脚が見えるため、色っぽい。なお眼鏡は付けていない。乱戦が予想されるから、念の為に眼鏡を外したのだ。髪は夜会巻きではなく、下ろしてストレートになっている。見た目は中華美人だ。

 

「……この服、メイド服みたいにスカートが長い」

 

セーラー服に似た服を着たシズが銃とスカートの端を持ちながら、服を着た感想を述べた。色は白と青の古風なタイプである。セーラー服のスカートは非常に長い。ミニではなく、ロングだ。

 

「ふふふ、ぺロロンチーノ様のお作りになられた装備……ああ、最高のご褒美でありんす!」

「まさか、至高の御方の作った装備を頂けるなんて……光栄です。アインズ様!」

「いやー、本当っすねえ!」

 

ナーベラルが黒い色を基調にした魔法少女の衣装を着ており、ルプスレギナが黄色の魔法少女の衣装だ。シャルティアは赤色である。服の意匠は全員同じであり、アルシェとは色違いである。ルプスレギナは頭についている耳を誤魔化すために、カチューシャを付けている。犬耳カチューシャで誤魔化すためだ。

 

(……ワタシハ、アオデスネ)

 

フィレアナの衣装の色は青だ。シャルティアが赤、フィレアナが青、アルシェがピンク、ルプスレギナが黄色、ナーベラルが黒だ。リアル世界の子供向けの特撮戦隊ものが魔法少女になったような感じである。ここにアルシェはいないが、横一列になって爆発でも起これば、戦隊モノとして完璧ではないのだろうか。

 

「はっはっは!喜んでくれて何より。では作戦は理解しているな?もうすぐ作戦時刻だ。私達が八本指をこれから倒しに行くから、その後は、宜しく頼むぞ?」

 

嬉しそうな声で自分達に話しかけた。フィレアナの脳内では、表情なんて全く無いはずのアインズの顔の骨が、目を閉じ口角が上がって、にっこりと笑っている姿に、脳内変換された。

 

(絶対楽しんでるなあん畜生!!そこにいるヘロヘロさんも!!)

 

ヘロヘロもこの場にいる。自分達に興味は当然あるが、彼にとっての最高の衣装とはメイド服だ。やはりソリュシャンに視線が向かう回数が多いようである。

 

「姉様達ぃ、ずるぅいぃ……」

「申し訳ありませんねエントマ。貴女には、ツアレの護衛をお願いしたいので」

 

エントマだけが何も装備を受け取れていない。セバスは彼女を慰め、ツアレの護衛を念押ししていた。フィレアナ的には、唯一彼女だけが、至高の御方々の悪意から逃れられた幸運な少女だと思っているのだが、エントマ的には至高の御方の装備を下賜されなかった事が不満でしかないらしい。

 

「すまんなエントマよ。では、今度はお前の主人である源次郎さんの道具を何か下賜するという事でどうだ?」

「えええっ!!ぜ、是非ぃ!!」

 

アインズの言葉を聞いて、エントマの不満が一瞬にして消し飛んだ。彼女は喜色に満ちた声をあげ、腕をバタバタと音をたてて動かしている。

 

「ああ、デミウルゴスの合図が待ち遠しいでありんす!!アインズ様!その何とか指を、できるだけ早く倒して欲しいでありんす!!」

 

うっとりとした表情のシャルティアが、デミウルゴスが悪魔を召喚する時が早く来ないかと、今か今かとその瞬間を待っていた。

 

(お願い、デミウルゴス、八本指が倒れたら早く!俺の精神安定のためにも!!)

 

フィレアナも笑顔の裏で、デミウルゴスに早く助けてくれと懇願していた。ユグドラシルのネタ装備を着た美女戦隊が活躍する瞬間は、目前であった。

 






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