荒ぶる神な戦艦水鬼さん   作:ちゅーに菌

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 どうもちゅーに菌or病魔です。

 作者他の小説も大量に掛け持ちしているのでそちらを更新していたので更新が遅れました。後、リアルが最近ちょっと忙しいですね。早くも年末ブーストです。

 ああ、ギルくんは後でちゃんと話を作るので安心してください。

 前話の感想が8ページ以上あって震えるため、返信は少し待ってください! お願いします! なんでもカナちゃんがしますから!



聖なる探索/Zero

 

 

 何故か俺がハルさんに"あなたの子よ!?"を言うハメになってから約15分後。

 

 ケイトさんと共に、ハルさんにケイトさんがここまでに至る経緯を要約して説明し終え、ハルさんはそれを神妙な面持ちで聞いていた。

 

 ちなみに何故か俺はソファーでケイトさんとハルさんに両サイドから肩に手を回されて、全く逃げ場がない。気分は捕まった宇宙人である。

 

「………………」

 

 ハルさんは黙って聞き終えた後、瞳を閉じて考え込む。そして、目を見開き、俺を見つめながら口を開いた。

「カナ……でいいのか?」

 

『好キニ呼ンデ』

 

 ハルさんが問い掛けて来たのでそう返す。するとハルさんは立ち上がり、ソファーの前のテーブル越しに俺の前に立ったと思えば、勢いよく頭を下げる。

 

「ありがとう、ケイトを助けてくれて……ッ!」

 

 それはハルさんの全てを投げ出したようなこれ以上ない程の感謝の印であった。その様子に流石に俺も面食らう。

 

『エエ……好キデヤッタダケダカラ……』

 

「カナちゃん」

 

 すると隣のケイトさんが俺に抱き着いて来たため、思わず身を固くする。花が咲くような笑みを浮かべているケイトさんは本当に美人だ。

 

 そのままケイトさんは口を開く。

 

「ありがとう」

 

『…………………………ウン……』

 

 俺は嬉しくて、幸福で、恥ずかしくて、たったそれだけの言葉を返すだけで精一杯だった。

 

 

 

「そろそろいいかな?」

 

 

 

 いっそ溶けてしまいたいと思い始めていると、いつの間にかテーブルの真横に立っていた研究室の主である細目の男性――サカキ博士が声を掛けて来た。

 

「博士……いや、今は支部長代理でしたっけ?」

 

「博士でいいよ。支部長代理なんて私の柄じゃないからね」

 

 ハルさんの問いに直ぐにサカキ博士は答え、更に言葉を続けた。

 

「ハルオミ君。気づいているとは思うが、カナ君たちが来てからは私が一枚噛んでいるよ」

 

「でしょうねぇ……」

 

 ハルさんはサカキ博士なら仕方ないとでも言いたげな表情でそう呟く。実際、そうなのだが、ハルさんにまでそう思われているのか。

 

「ケイト君とカナ君と君たちの子供については安心していい。私が全てを懸けて最良の結果になるようにしてみせよう」

 

 そう、説明した時のサカキ博士の目は開いており、一目で本気で言っているという事が理解出来た。

 

「博士がそこまで本気になるなんてよっぽどなんですね……」

 

「カナ君には既に十分過ぎる程見返りを頂いたからね。カナ君にも報告したい事があるんだ」

 

『私モ?』

 

 すると部屋の電気が落ち、床からスクリーンが伸びて現れる。

 

 見れば研究室でサカキ博士の助手をしているカグラちゃんが部屋の電気を消したり、持ち運び式のスクリーンを立ち上げたりしている姿があった。

 

『………………――!』

 

 プロジェクターの位置が納得いかなかったのか暫く動かしていたカグラちゃんだったが、お気に召したのかある位置で鼻息をひとつ立ててから、奥の研究室へとそそくさと戻っていった。えらい。

 

「あの娘は?」

 

『私ノ娘』

 

「なるほど」

 

 いったいそれで何を理解したのかわからないが、ソファーに座り直したハルさんは特に何も聞かずにスクリーンに映し出され始めた映像を眺め、いつの間にかケイトさんはハルさんの手に抱き着いて座っている。ポップコーンを渡したらそのまま普通に食べ始めそうな様子である。

 

 映像では2m×2m程で1枚の金属板がチュートリアルマップの中央に立てられていた。金属板の色はどす黒く、なんだが俺の黒色そっくりに見えた。

 

「まずこれだ。私の研究室で培養しているカナ君のコアのオラクル細胞から作られたアラガミ装甲だね」

 

『オイ、何人ノ心臓ヲ増ヤシテンダ』

 

 どうやらサカキ博士が俺が来てから研究の方は大人しいなと思っていたが、そうでもないらしい。

 

 そう言えばハナちゃんの箸とか、フォークとか作った時にコアのオラクル細胞を採ったが、多めに取られていたようだ。

 

 まあ、サカキ博士ならば悪用はしないだろうから特に問題は無いだろう。

 

[あの……新型のアラガミ装甲の耐久テストってこれですか……?]

 

[――――――!]

 

 次に映像に映り込んで来たのは我らが誤射姫――台場カノンちゃん様と、カメラに向かって手を大きく振っているキグルミ――中身はケイトさんの第四部隊の面々である。無論、神機を持っている。

 

「着ぐるみもケイトは似合うな……」

 

「も、もう……そんなこと言って……」

 

 これはあれか、突っ込み待ちなのだろうか?

 

 そう考えていると場面が動き、ケイトさんがロングブレードでアラガミ装甲を斬りつけようとし、カノンちゃんの前に出た。

 

 瞬間、狙っていたかのようにカノンちゃんが動く。

 

[――――――!?]

 

 ケイトさんに放射弾が直撃し、ケイトさんはきりもみ回転しながら吹き飛ばされ、端の壁に当たった。ケイトさんはちーんとでも効果音が付きそうな様子でぐったりしている。

 

 うーん……ゲームだと上にちょっと飛ぶだけだが、現実だとこの誤射はヤバいな。車に撥ね飛ばされたような光景だ。着ぐるみを着ていなければ即死だと言われても特に驚かない。いや、着ていたって中身がぐちゃぐちゃになりそうなものだ。

 

[射線上に入るなって、私、言わなかったっけ?]

 

 いつもの。

 

 そんなことを考えているとハルさんが動いた。

 

「け、ケイトぉぉぉ!?」

 

「わ、私ぃぃぃ!?」

 

 何故かハルさんに加えて、カノンちゃんに飛ばされたケイトさんまで叫ぶ。

 

「そんな……折角会えたのに……また死ぬだなんて……!」

 

「イヤ……ッ! どうして死んでしまったの私!?」

 

 そう言いながら涙ながらに身を寄せあって抱き合う二人。見ているだけで頭がどうにかなりそうだ。

 

 というかコイツら、ハルさんがボケでケイトさんがツッコミかと思っていたが、両方ともボケか……たまげたなぁ……。

 

「この通り、ブラストの砲撃ですら傷ひとつ付かないんだけど、欠点もあってね。一度、アラガミ装甲としてオラクル細胞が嫌う性質を持たせて整形してしまうと、硬過ぎて現在の技術では二度と加工できないんだコレが。ついでに普通のオラクル細胞と違って全く思い通りに増えてくれないから取れる量も限られる。いやー、面白いよカナ君は」

 

 やだ……私の装甲かたすぎ……?

 

 それは兎も角として、この博士よっぽど研究成果を他の誰かに話したかったんだろうなぁ……夫婦漫才を意にすら介さずに生き生きしている。

 

 アレ……ひょっとしてこの四人の中だと俺が相対的に常識人になるのだろうか……?

 

 その事実に俺は愕然としながら混沌とした場を過ごした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「カナちゃんカナちゃん!」

 

 ハルさんとの奇遇から数日後。いつも通り、私の自室と化した研究室でアニメを楽しんでいるとケイトさんが入って来た。

 

[バカにしないでくれる!? 知ってるわよそれぐらい!!]

 

『ヤッパリ"エルフェンリート"ノナナチャンハ天使ネ……』

 

 でもやっぱり一番はルーシーことカエデさん。異論は認める。

 

「聞いて聞いて! ハルがね――」

 

『ソウナノカー』

 

 肌がとても艶々しているように見えるケイトさんは俺の隣に座ると、ノロケ話を始める。それが最早いつもの光景になりつつあった。1日2日なら未だしも毎日がこれならば対応が雑にもなろう。

 

「むー……カナちゃんノリが悪いわよ?」

 

『ケイトハ胎教ニ悪イワ』

 

「私の子よ!?」

 

 ケイトさんは俺の肩を掴んでガクガク揺さぶる。あなたの子だからこそ心配なんだよなぁ……。

 

「胎教って言うならカナちゃんが見てるアニメはどうなのよ?」

 

『アラガミガ闊歩スルクソッタレナコノ世界ヨリ、多少ハマシジャナイカシラ?』

 

「…………何も言えない……」

 

 ケイトさんはよよよ……と泣き崩れるように俺にもたれ掛かった。ケイトさんひとり分でどうにかなるような人間的な耐久はしていないので、暫くそのままにしておく。

 

「邪魔するぞ」

 

「お邪魔します……」

 

「ハル!?」

 

「おっ、ケイトじゃないか」

 

『コンニチワ、アヤメ』

 

 そんなことをしているとハルさんと、何故か感情を失ったような表情をしたアヤメちゃんが入って来て、俺の肩で垂れていたケイトさんがシャキッとする。なんだかどうも俺の前ではケイトさんは少し子供っぽくなる気がするな。それだけ信頼してくれていたり、気の置けない友人だと思っているのなら嬉しい限りだ。

 

「お前さんが言っていたのはコレで合ってるか?」

 

 ケイトさんを少し構った後、俺の前に来たハルさんは手に持った袋から"女の子の絵柄が描かれたDVD"を取り出す。それを見て、俺はかなり驚いた。

 

『マサカ、本当ニ持って来タノ……?』

 

「当たり前だろう? 女との約束は守るもんだ」

 

「え? 二人の間に何があったの?」

 

 そう言いながら差し出された袋を受け取り、その中から一本のDVDを掴み取る。そして、それを胸の高さに掲げた。

 

 ハルさんから渡された袋に並んでいたのはそう――。

 

 

 

 "To LOVEる -とらぶる-(レンタル版)"

 

 

 

 未だ曇らぬ俺たちの青春の輝きであった。

 

 どうしてこうなったのかは2日程前に遡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、カナ?」

 

『何カシラ?』

 

 私はフォウ姉ちゃんの隣でリッカさんの好物である冷やしカレードリンクを二人で飲みながら、ここに来たハルさんに対応するフォウ姉ちゃんを眺めていた。

 

 ハルさんはとてつもなく真剣な瞳でフォウ姉ちゃんを射ぬき、口を開く。

 

「"謎の光"ってなんだ?」

 

『ブフゥー!?』

 

 フォウ姉ちゃんの冷やしカレードリンクは綺麗な虹を描いた。

 

 ちなみにフォウ姉ちゃんの個人情報な冷やしカレードリンクの味の感想は、"不味くは無いが買ってまで飲むぐらいならレトルトカレー作ると思うような味"だって。

 

 謎の光って何……?

 

『謎ノ光ッテ"光渡シ"ノ事カシラ……?』

 

「やっぱり知っているのか!? 俺に教えてくれ!」

 

 そう言いながらハルさんはフォウ姉ちゃんの肩を掴んでガクガク揺さぶる。ケイトさんもよくフォウ姉ちゃんの事を物理的に揺すってるよね。

 

『謎ノ光ッテ言ウノハネ――』

 

 咳払いをしたフォウ姉ちゃんはハルさんと似たような真剣な眼差しで口を開く。

 

 

 

 2050年以前の日本の深夜帯にて放送しているアニメ作品では、基本的に女性の裸体やパンツが派手に映るシーンで、脱いではいても画面には映らない状態とするために、何かを上から被せて隠していることが非常に多い。

 

 そのような用途で隠す場合、入浴シーンでは湯気、暗いシーンでは影、自然の多い場所では葉っぱ等様々なものが使われる。しかし、入浴中でも暗くもない上、辺りに隠せそうなモノもない場所の場合はどうするのか?

 

 そこで使われるのが謎の光である。不自然なまでの強烈な逆光、入射光のレンズフレア、ハレーション状態を作り出す等により、隠したい部分の上部を縦断及び横断させ、映らなくするのである。もしくは不自然を通り越して、白い透過光で描かれた不定形なスライムがまとわりついているような状態だったり、光に見えるような体裁を取らず、白っぽい棒状のなにかが画面を横切って隠している場合もある。

 

 そのため、実況板やネット等ではこのような表現を指して"謎の光"や、"おまもりひまり"というアニメにあった技とスタッフの悪ノリにより"光渡し"等と呼ばれているのである。

 

 ちなみにDVD化した時にその表現だけなくなったり薄くなったりすることもあるが、それはDVD版ではモザイクが取れます的な事である。そのため、謎の光は無くなってしまう。

 

 

 ものすっごくどうでもいい内容だった。ええ……寧ろフォウ姉ちゃんにハルさんが聞くのは軽くセクハラなんじゃ……。

 

「なん……だと……? じゃあどうやって謎の光を拝めば……」

 

『勿論、一番確実ナ方法ガアルワ』

 

「それはいったい……!?」

 

 フォウ姉ちゃんは少し間を開けてからハルさんと確り目を合わせて呟いた。

 

『"レンタル版"ヨ。レンタル版デ乳首ガ出ルト場合ニヨッテハ店側ガ不味イカラ、テレビ放映版ソノママガ多イノヨ!』

 

 私の……大好きなフォウ姉ちゃんはどこ……ここ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ト言ウコトガアッタノ』

 

「アヤメちゃん大丈夫だった……?」

 

「がんばる……」

 

 アヤメちゃんはケイトさんの隣に座り、寄り掛かりながら小刻みにぷるぷる震えているように見えた。

 

 はて? 何故アヤメちゃんの心配なのだろうか? 何故かわからないが、ケイトさんに似ているとのことでハルさんは大変アヤメちゃんの事を気に入っているので問題なかろう。

 

『シカシ、ヨクレンタル版ノ円盤ナンテ残ッテタワネ? ソレモ私ノイチオシノ奴』

 

「なーに、極東の古い友人の伝だ」

 

 なるほど。極東なら仕方ないな。

 

『~♪』

 

 そう言うわけでとりあえず俺のモニターに映るように円盤を入れて再生する。誰かと真面目にアニメを見るなんてそんなにないから楽しみだ。

 

 ハルさんはケイトさんの隣ではなく、俺を挟んだ位置に座ると流れる"forever we can make it!"を興味深そうに眺めていた。

 

「………………」

 

 すると何故か俺の隣にいるケイトさんがぷるぷる震える。

 

「うわーん! カナちゃんにハル寝取られたわ!」

 

『人聞キノ悪イ事言ウナ』

 

 ケイトさんは立ち上がると、引き止めて欲しいと言わんばかりにそこそこゆっくりな速度で、この部屋の出口に向かって行く。

 

「待てケイト!」

 

 勿論、引き止めた者はハルさんである。

 

 

「これは――男のロマンだ!」

 

 

 それで女性を引き止めれると本気で思っているのなら大したものだが、俺なら全力で同意して引き止められる自信がある。

 

「一理あるわね」

 

 しかし、ケイトさんは同意しながら戻ってくると元の位置に座り直した。

 

 やはりアレか。ケイトさんはケイトさんというより、ハルさんの嫁という表現が正しい人物なのかもしれない。

 

 そんなケイトさんに対して、"えっ……"とでも言いたげな表情で少し上げた手を宙に漂わせているアヤメちゃんが印象的である。

 

 とりあえずケイトさんと俺の間にアヤメちゃんを移動させ、逃げられないように肩に手を回して押さえておく。本当なら膝に乗せて抱えておきたいところだが、このお腹では難しいのでこれでいいだろう。

 

 そうして、観念したのか死んだ魚のような目をし始めたアヤメちゃんを伴いつつ聖なる探索が行われて行った。

 

 

 

 

 

 








素敵な保護者の方々ですね。




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